社会問題

ファッションを活用したアフリカ支援の裏にある思いに迫る〜CLOUDY代表銅冶勇人さん

今回はファッション、貧困についてのインタビュー記事です。

 アフリカの民族衣装や伝統のファブリックを取り入れたアパレル商品を手掛けるアパレルブランド、<CLOUDY/クラウディ>。NPO法人「Doooooooo」(ドゥ)でアフリカに工場・職業訓練学校の建設、そこで作った衣服や服飾雑貨をCLOUDYの商品として日本で販売し、その売り上げの一部をNPOの活動に割り当てています。

(CLOUDY ホームページよりhttps://cloudy-tokyo.com/donation/

NPO法人「Doooooooo」(ドゥー)とアパレルブランド<CLOUDY/クラウディ>、この二つの法人を主宰する銅冶勇人(どうやゆうと)さんにインタビューをさせていただきました。アフリカの貧困について、衣服について、仕事の根底にある思いなど深いお話が盛りだくさんです。ぜひ最後まで読んでいってください^ – ^

 

きっかけは大学の卒業旅行で行ったケニアのスラム街訪問

ーーでは、改めて現在の活動の内容を教えてください。

まずNPOの方では、アフリカのケニアとガーナを中心に教育、雇用、健康を促進させる活動を行っています。教育に関しては主に学校建設とその運営を行います。雇用に関しては現地に小学校と職業訓練学校の建設とアパレルブランド<CLOUDY/クラウディ>を通じて主に仕事がない障害者や現地の女性たちに雇用を生み出しています。健康に関しては学校での給食提供や性教育を行なっています。

<CLOUDY/クラウディ>は、アフリカ現地の女性や障害者の方達に雇用を作るために立ち上げました。アフリカのファブリックやファッションの文化を用いており、製品はNPOの一環で設立した現地の自社工場で生産しています。

 

ーーNPO法人「Doooooooo」(ドゥ)とCLOUDYの2つの法人を立ち上げるまでの経緯を教えてください。

もともと「ウルルン滞在記」というテレビ番組が好きで、その影響で大学4年の時にアフリカのケニアにひとり旅をしに行きました。その時に偶然行くことになったキベラ地区という、世界で2番目に大きいと言われるスラム街に衝撃を受けました。インフラ設備は劣悪。町中ゴミだらけで匂いもひどく、仕事も学校もありません。とにかく全てが衝撃的で、自分の人生をかけてこの現状を良くしたい、そんな風に思うようになりました。

日本に帰ってからは内定をもらっていたゴールドマン・サックスに入社しましたが、アフリカ支援に対する思いはより強くなっていきました。会社に勤めながらアフリカ支援を目的としたNPO法人を立ち上げ、そのあと会社を退職しました。理由は当時の会社の部下に「NPOの活動の方が楽しそうですね」と言われ、もう自分はこの組織で目指すべき人間ではないということに気づいたからです。

NPOでの活動を続けていくうちに、アフリカのファッションを用いた事業を展開し、そこで出た利益をNPOの活動に回せないかということから、アパレルブランド<CLOUDY/クラウディ>を立ち上げることになりました。

 

ーーなぜアフリカンファッションをビジネスで生かそうとお考えになったのですか。

日本に現存するアフリカのデザインを用いたエシカル、またはフェアトレードのブランドは商品にアフリカらしさを前面に押し出して、「彼らが可哀想だから買ってあげてください」と言わんばかりに商品展開をしているように感じました。ファッションの一部としてちゃんと捉えながらブランド展開できているところは少ないなと。僕はこれがいわゆるエシカルあるいはフェアトレード商品を展開する事業の盲点だと思っているのですが、結局お客様が「欲しい!」と思えるものを作らない限り、ブランドとしては継続していきません。アフリカンファッションを用いながら、そのクオリティとお客様に沿ったニーズを兼ね備えられたブランドって僕はあまりイメージができなかったので、自分たちでそういうブランドをつくってみようと思ったんです。

「やってもやらなくてもいいことはやる」

ーー当時の会社を退職するのは、相当勇気のいる行動だったのではないですか?

そんなことはないかな。もともとゴールドマン・サックスに入社しようと思った理由は、僕が思う組織の理想があったからでした。

これは僕の持論かもしれませんが、どんな組織にもみんなとは違う方向を向いた、足を引っ張ってしまう人間が必ずいます。しかしゴールドマン・サックスは僕が生まれて初めて、組織全員が同じ方向を向いていると感じた場所でした。ここで働いたら何であれ自分の中で成長できるだろうと思いました。実際入社したばかりの頃から責任のある仕事をたくさんやらせてもらって、とても良い環境だったと思います。

なので、自分が同じ方向を向いていないということに気づいた瞬間、この企業で働き続けるという選択肢は僕の中で消えました。実際、退職届けを出したのも部下に言われた次の日でした。

 

ーーそこまで自分の考えを行動に起こせるって、なかなかできないことだと思うんですが、大事にしている考え方などはありますか?

親に教えてもらったことで小さい頃からずっと大事にしているのが「やってもやらなくてもいいことはやる」という教えです。何事もやらないうちから判断をしない、行動に移してから「成功した」「失敗した」の判断をしなさい、と。

この家訓から、小さい頃から学校の大体の「やらなくてもいい活動」はやっていました。当時はやる意味がわからなかったものでも「やらなきゃ良かった」と思ったことは一度もありません。なので、とにかく行動に移していくことは小さい頃から今でもずっと大切にしています。

 

商品企画について

ーー商品の開発はどのようにされているのですか。

基本的に企画に関しては社内で話し合って決めています。ただ一部の商品でアフリカの伝統的な形をモチーフにしたり、現地で働いていただいている女性の方々が持っている色彩感覚を取り入れることもあります。その場合は、現地の働いて頂いている方達の意見を聞きながら商品計画を行います。

 

ーー先ほど「クオリティとお客様に沿ったニーズを兼ね備えられたブランドお客様のニーズを兼ね備えられたブランド」というお話をお聞きしました。ニーズとは具体的にどういうことなんでしょうか。

基本的にお客様は日本人が多いのですが、アフリカンファブリックと比べると明らかなように、日本ではモノトーンの服が多いしそういう服を好む人が多いんです。そのため日本人でも無理なく身に付けることができ、かつアフリカンテイストを絶妙に取り入れた商品をつくることを念頭においています。

 

ーー<CLOUDY/クラウディ>が使用しているアフリカのファブリック(生地)やデザインはとてもユニークなものが多いですよね!個人的にも、CLOUDYの商品といえば、やはり色とりどりのデザインが印象的です。

 そうですね、アフリカのファッションに使われる柄はどれも色彩豊かなものばかりで、実はその柄一つ一つに深いメッセージ性が込められています。

アフリカ大陸は長い間イギリスとフランスの植民地として奴隷制度の中で生きていた時代があり、そこから独立をしたわけです。そんな中で彼らは「主張する」ということを、歌と踊りと色で表現をしていきました。この色というのは彼らの生きてきた証みたいなものなんです。そして一個一個のデザインに対して愛、絆、悲しみ、富、自然などの様々なメッセージが込められています。どれも彼らの辿ってきた歴史や人生を示すものであり、言葉では表せない魅力がたくさん詰まっています。

 

ーー商品生産を担う現地の工場の方達は、CLOUDYがどんなものづくりを求めているのかを理解しているのですか。

もちろん!商品のコンセプトは全員が理解した上でつくって頂いていますし、彼女たちが自分で作ったものが販売されていること、どこで売られているかなどを動画で見てもらったりします。彼女たちからしたら自分たちが作ったものが日本という国で販売されているということ自体が夢物語のようで(笑)店頭に商品が並んでいるのを動画で共有した時はみんなキャーキャー騒いでいてとっても嬉しそうでした。そんな姿を見て、企画している僕たちも嬉しくなるし、もっと頑張ろうと思えます。

 

ーーより多くの方に活動のことを認知してもらい、商品を消費してもらうためには、何が大切だとお考えですか。 

自分たちの活動を知ってもらうには、「活動の本質をしっかりと伝えられているかどうか」を最も大切にしています。この本質というのは、我々のアクションが、ただ団体に寄付しましたとかいうモワッとしたものではなく、ここの場所のこういう人たちにこういう風に支援をしましたとか、ここにいる人たちが支援によってこんな風に成長しましたというように、サポートしてくださる方々に自分たちの支援をより正確かつ明確な意味で伝えることを意味しています。

今は多くの組織がビジネスを通して国際的な支援をしていることを掲げていますよね。その組織の多くが知ってもらうべく「サスティナブル」「エシカル」「SDGs」といった様々な言葉を並べています。しかし、本質をしっかりとらえたアクションができている組織は本当にごくわずかだと僕は感じています。その活動が現地で何の役に立っているのか、どのように問題解決できているのかをどんどん掘り下げていくと、意外と現地のためになっていないこともあります。簡単に「SDGsやってます!」みたいに言葉を並べているだけでは、本質を捉えたアクションはできないと思うし、そうあってはならないと思うんです。そういうことも含めて、しっかりと本質を伝えることが大事なんじゃないかなと思います。

  

ーー確かに…支援をしていることはわかっても、具体的にどんなことをしているのかまでは、消費者からすると不透明であることが多いです。そういった意味で、やはり現地訪問などは大切なのでしょうか。

はい。通常は年間の1/5の間現地に行っています。現地というのは主にガーナとケニアのことで、ケニアには学校が2つと工場が1つ、ガーナには二つ目の学校が年内に開校予定であるのと、5つの工場があります。(ケニアに関しては工場は<CLOUDY/クラウディ>とは関係なく、現地の人たちに雇用の機会を与え、作ったものは現地で販売をしています。)

最近はコロナウイルスの影響でガーナの国境が封鎖されていたのがようやく開いたので、<CLOUDY/クラウディ>から一人日本人スタッフが現地に行きました。通常だと彼女は一年の半分くらいは現地で過ごしています。日本と行き来しながら、現地の方と一緒にものを作っていくことは本質を捉えるという意味で大事ですが、現地の方がしっかり責任を持ちながら自分たちで仕事を回していけるようになることも同じくらい大切です。というのは、結局一生僕たちは一生現地に行ってサポートすることをゴールとしていないからです。彼らだけで仕事を運営でき、それが支援なしで持続することが僕たちの考える理想です。なので、それを目指すためにも、ある程度現地の人たちに干渉しすぎないようにも気をつけています。

 

NPOの活動について

 

ーー学校建設に関して、私立だけでなく公立の学校建設も行なったというお話を聞きました。これも責任をある程度持って自立した生活を送ってほしいという願いからですか。

はい。私立の学校は僕たちがお金を継続的に払って運営していくことになります。そうするとその地域の教育レベルは確かに上がりますが、運営する大人たちは僕たちから支援を受けることが当たり前だと思い込んでしまい、危機的意識が無くなってしまうんです。なので、公立の学校を建設することで政府、自治体、村の人々が全員責任を持ちながら運営するようになります。

実際どちらの建設も行なって、公立と私立の学校の違いが徐々に見えてきました。公立の学校だと、学校周辺を取り巻く大人たちの責任感が圧倒的に違います。もともと現地では政府による教育の優先度が低く、国に「教育を受けさせたい」という気持ちが極めて低いという状況です。そんな中で子供の親が教育を受けさせたいという気持ちが強くなっているのを感じます。

 

 

(<CLOUDY/クラウディ> ホームページより https://cloudy-tokyo.com/donation/)

ーー現地の方に学校や職に就いていない人たちに教育や雇用の話をするとき、何を大事にしていますか。

一緒にものさしを作るということを大事にしています。これはどんな場面でも言えることですが、人が育ってきた環境は人それぞれなので、考え方も違います。僕が生きてきた環境と現地の方達が生きてきた環境はまるで違うから、一緒に何かをやっていく上で、僕のやり方で教えたとしても理解できる部分とできない部分が必ずできます。僕たちが良しとしていることを彼らは良しとしないかもしれません。逆に、僕たちが間違えとしていることでも彼らにとっては正解だったりします。例えば、まだ工場を建設したばかりの時に、お金に困っている女性が工場にあるミシンをどこかに売りに行ってしまったことがありました。それをされた時は最初はどうしようかと思いましたが、生きている環境が違かったらそんなことが起きるのも当たり前なんじゃないかと思えました。もし仕事に就けず、自分に子供がいて明日食べさせるものが何もなかったとしたら、どうするか。日本で生きてきた僕には、日払いのバイトに行くとか、周りの人を頼るといった選択肢が思い浮かびます。しかし現地で生きてきてその選択肢が思い浮かばなかったとしたら、僕もミシンを売ってしまうかもしれません。

だから頭ごなしに僕たちがやっていることを押し付けるのではなく、彼らの意見や考えを尊重しながら人生の選択肢を増やしていく、その価値観の不一致を調節するものさしを一緒に作っていこうと常に思っています。

 

<CLOUDY/クラウディ>の新たな挑戦

 

ーー今後の目標を教えてください。

一つは雇用と教育を通してライフモデルを育て、世界に発信していくことです。アフリカ出身で有名な人と言われて多くの人が思い浮かぶ人の数は少ないと思います。実際現地の子供たちにとっても人生の目標となるような人物がいません。未来に対して思い浮かぶ選択肢が少なく、将来の夢を聞いても10通り以内に収まってしまいます。なので、より多くの子供たちに教育の機会を与え、彼らの将来の夢の幅を広げる、そのためのライフモデルを育成していきます。

もう一つは、ファブリック(生地)のデザイナーの育成も行なっています。今後の展開として、自社のオリジナルのファブリックデザインを作ることを考えています。<CLOUDY/クラウディ>から世界に発信していくことで、アフリカにはこんな素敵なデザインを考える人たちがいるんだということを多くの人に知ってもらい、現地はもちろん世界にいる人たちのライフモデルとなるようなデザイナーを育てていきたいと思っています。

 そして10月16日から、渋谷の宮下公園にショップをオープン致しました!初めての店舗展開に向けて、アフリカの教育や雇用の問題を解決するだけでなく、社会問題をリデザインしていくこともミッションにしています。具体的にはアパレルのボディも含めて環境問題に配慮した素材作りに取り組んでいます。例えばTシャツをペットボトルのゴミから作ったり、無水染色といって、服を作る際に必ず流出する大量の汚水を出さずに服を作るやり方を取り入れたりしています。

(インスタグラムより)

夢を叶えるだけじゃなく、叶えてあげられる側へ

ーー最後に、学生に何か一言あればお願いします。

今僕の人生の軸になっていることは大学卒業間近の、アフリカ旅行で起きました。学生の皆さんの中でも就活や進路などいろんなことに悩んでると思いますが、生きている限りこういった出会いやチャンスがあって、可能性というのは無限大に舞い降りてきます。だから「こうじゃなきゃいけない」とか「これをやらなきゃいけない」と割り切ってしまうのではなく、いろんなことに目を向け、ちゃんと自分の目で見て、耳で聞いて、肌で感じて、いろんなことに触れながら自分のやりたいことを一生かけて見つけていくということはすごく大事なんじゃないかなと思います。そのためには先ほども出た「やってもやらなくてもいいことはやるというのは心がけてほしいなと思います。

夢を叶えることは壮大で大変なことに思うかもしれませんが、人間誰でも夢は叶えることができます。ですがそこで止まらずに、夢を叶えてあげられる人の方になってほしいです。人に選択肢を提供して、その人の人生がどんどん豊かになるような仕事をできるように、自分の人生を切り開いていってほしいなと思います。

ーー大変貴重なお話、ありがとうございました。

(最後に、写真を撮ってもらえました、、、!)

 どんな人もが抱える悩ましいこと、苦しいことで溢れた「くもりの日」が「晴れの日」になるようにー。<CLOUDY/クラウディ>というブランドの名前はそんな思いから名付けたそうです。CLOUDYの商品を購入することで、自分の悩みも、遠い国の誰かの人生も幸せにできる、そんなインクルーシブなビジネスを展開するCLOUDYの今後の活動に目が離せません!新しく宮下公園にオープンした店舗に、皆さんもぜひ足を運んでみてください。

 

 

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