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環境問題の専門家! 環境コンサルタントって?

 今回は、環境コンサルタントとして、企業の商品設計などにおいて環境負荷を計算する職業に就かれている正畠宏一様のインタビュー記事を提供いたします。皆さんは環境問題に関して「電気をこまめに消す」、「ゴミを分別する」といったような対策を思いつかれるかもしれませんが、今回はそういったものとは一味違った視点を提供できる記事になったと思います。お楽しみください!

 

正畠宏一(Koichi Shobatake)
東京大学理学系大学院研究科化学科卒業。在学中は大気環境化学専攻し、越境大気汚染の研究に従事する一方、大学院在学中よりIT分野で起業する。ITベンチャーの技術統括責任者等を経た後、サーフィンに専念するためオーストラリアへ移住するが、そこで数々の自然災害を目の当たりにし、地球レベルでの環境対策の必要性を痛感。カーボンオフセットを手がけるTCO2(株)を設立。その後、研究機関、グローバル企業、大学等へライフサイクル的思考に基づく環境負荷や社会リスクの定量化に関わるコンサルティングやITツールの開発といったサービスを展開。世界的LCAソフトウエアSimaProの日本総代理店。

 

環境負荷を計算する

 

–まずは、環境コンサルタントという職業について軽くご説明頂けますか?

 

わかりました。環境コンサルティングにも様々な形態がありますが、我々はライフサイクルアセスメントという分野のコンサルティングになります。やっているのは、環境影響評価をするということですね。例えば自動車でいうと、普通の自動車・ハイブリッド車・電気自動車が作られて、使われて、最後捨てられるまでの一生でどれだけの影響を環境に与えているのか総合的に評価しているわけです。

 

–どのような形でそのサービスにはニーズが発生するのですか?

 

例えば、企業などでいうと、市場のシェアが大きい企業は必ずLCA(Life Cycle Assessment)をやっています。自分たちの開発している製品やソリューションが実際のところ環境に優しいものかを彼ら自身が知っている必要があり、自社の製品の環境負荷が他社よりも小さいと主張するためには不可欠なプロセスとなります。

また、大手企業もそうですが、国のような単位でもこのようなサービスを必要としています。たとえば、環境に関連して何か政策を打つ・補助金をつけるというときに、その政策が実は違うところで環境負荷を増やしてしまうようなものだったなんてことがあると、後から大変なことになりますよね。だから、あらかじめ様々な関連する環境負荷を総合的に把握してそんな情報も政策に反映していくわけです。

再生可能エネルギーに関しても、太陽光パネルの製造工程でも温室効果ガスは排出されます。だから、1kw/hを作り出すのにいろいろな発電方法が、ライフサイクルでどれくらい二酸化炭素を排出しているのかを把握した上で議論する必要があることになります。過去に、このような議論が十分にあって、FITのような再生可能エネルギーを支援する政策が導入されています。

 

–でも、そのような環境負荷というのは、消費者から見たときには非常にわかりづらいものになるのではありませんか?

 

それはもちろん分かりませんよね(笑)。一時期Carbon Footprintという製品のライフサイクルの中でどのくらいのCO2を出しているのかを示すラベルをつけよう、という国の試行事業が行われました。製品の裏側の見えない部分についても「見える化」して企業と消費者が一体となって総合的にCO2の低い製品を応援していこう、という試みだったわけですが、CO2排出量の数字だけが提示されても、あまり実感が湧きませんよね?果たしてそんな数字があっても、それが大きいのか、小さいのかなど消費者は判断のしようもないわけです。企業側からは、「ラベルをつけることでその商品の売上が伸びるのか?」、「ラベルをつけた会社が消費者に評価されるのか?」といった疑問も上がりました。結局、鶏と卵のような問題ですが、ラベルに対する消費者の認知度の向上が重要な課題になります。これは環境問題に対する意識面での課題と言えるでしょうね。

 

なぜ認知度は低い?

 

–やはり一般的に環境問題の認知度が低いのは問題としてあるようですが、それはなぜなのかについて正畠様のご意見を伺えますか?

 

おそらく問題が大きすぎるからではないでしょうか。人間は環境や自然と自分たち自身を切り離して語ることがままあると思います。人間は本来自然のシステムの一部に過ぎないのですが、それを認知できるレベルに人類が達していないのだと思います。人間社会は確かに発達していますが、人間自身はあくまで動物なので、見える範囲や考慮に入れられる時間の範囲に限界があるのだと思います。例えば、温暖化というと、地球全体・百年単位で語るべき問題ではあるのですが、なかなか我々ではそのレベルで問題を認識し、論理的に思考を展開することができず、それが環境問題の認知度の低さの原因だというのが私の考えです。

 

–なるほど。そのような状況下だとどうしても個々の行動の影響力が限られてくるような感覚を覚えてしまうのですが、実際に私たちが企業などにインパクトを与えることは可能なのでしょうか?

 

少しでも選び方を変えると何かが変わるような気がします。企業は、消費者が願うことをそのままやってくれる性質があるわけです。だからこそ、製品の環境問題に関心があるような素ぶりを見せるだけでもかなりインパクトがあると思います。消費者が、価格・品質以外に環境側面も考慮して商品を選んでいることがデータで見て取れるようになると、経営者も環境側面を考慮した商品を積極的に開発するようになるでしょう。

 

–そうなると、正畠様のようなお仕事に対するニーズがあるということは、すでに一般的に環境に関する認識はある程度には高まっていると思って良いのでしょうか?

 

どちらかというと、今は企業側でも少しずつ本格的なリスク・チャンスという観点から環境負荷について議論する段階に来ていると思いますね。今までは自社の環境への良い取り組みをアピールするという時代でした。これからは、消費者にその時点でどう思われていようと、本業で将来的な消費者や政策の動向の変化に対する予防線として環境への影響を把握して対策を考えていく段階ということです。たとえば、現在の海洋プラスチック問題の浮上で、プラスチックストローを作っている会社は打撃を受けることになるかもしれないわけです。このように何かのきっかけで消費者の関心が向き、動向が一気にシフトするかもしれませんので、そういった時のことを考えて今から自分たちの強み・弱みは少なくとも十分に把握しておかなければいけないということです。環境や社会の制約を受けてビジネスが立ち行かなくなるようなリスクに備え、そして、いざそのような問題が顕在化した時に十分なソリューションがあれば逆に自社のシェアを一気に拡大させるチャンスにもなるわけですので、そういったことをお手伝いしていくというのが、私たちの仕事、ということになります。

 

 

B to B・小規模の良さ

 

–そういった部分でB to B企業というのは縁の下の力持ち的な役割を担う部分が大きいと思いますが、自分たちのビジネスが社会的に認知されにくいことに対してはどのようなお考えをお持ちでしょうか?

 

仕事上の満足度の話をしますと、私たちが目立たなくとも、私たちのお客様が基本的には有名企業ですので、それらの企業の意思決定にコミットしているという充実感はありますね。おそらくこの点は多くのコンサルタントと変わらない気がします。例えば、BCG、マッキンゼーなど多くの有名企業が利用しており、様々な場面でこれらの企業の意思決定や業務の改善に関与しているわけですから。たとえば、この企業があるときこのような意思決定をしたのは私たちの仕事があったからだ、といったようなことを感じられるのは非常に楽しいと思います。

 

–なるほど、ちなみに従業員の数の面でも非常に小さい企業のようですが、小さい会社ならではの良さなどはありますか?

 

何か合理的なことをやろうとした時に、すぐに判断して好きにやっていくことができるということではないでしょうか。よくも悪くも意思決定に関わる人間が少ないので方向転換もすぐにできます。大きい組織では、様々な人のバランスをとりながらルールを作ったり、何かを動かしたりしなければいけないのですが、私たちのような企業では、直接会って話せば良いだけのことですから。こういったところに関しては小さい会社だからこそのメリットを感じています。

 

–確かにそのようなメリットはありそうですね!環境問題に関するアプローチを中心に貴重なお話を聞かせて頂き本当にありがとうございました!

 

 

 

まとめ

 

いかがでしたでしょうか?個人的に最も印象的だったのは、環境問題についてのアプローチにおいて、企業を動かすことで社会を動かすことができるという視点でした。環境問題を考える上でよく、個々人の意識が重要といったようなフレーズを耳にしますが、実際に自分たちの意識と行動がどのように社会に波及していくのかは中々知る機会がないように思います。

 

また、企業形態に関していえば、大企業・社会的知名度の高い企業を動かす企業というものが存在すること・そういった企業が実は社会に本当にコミットできる可能性を秘めていることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

 

今後もみなさんと、このような普段の生活の中では得られない視点・考え方を共有していければと思います。よろしくお願いします!

 

最後までお読みくださった皆さん、ありがとうございました。

そして、今回お話を聞かせてくださった正畠様、本当にありがとうございました!

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gakuseikichi

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