社会問題

【5】西村宏堂さんと考える、社会で違和感を抱いた時に私たちができること

こんにちは、ヒナです。 今回の記事は前回に続き、ハイヒールをはいたお坊さん、西村宏堂さんのインタビュー記事の第四回です。第四回では、LGBTQ+の当事者である西村さんと、ICU PRISMメンバーがカミングアウトした際の状況をお聞きしながら、最近では「カミングアウトの必要がなくなってきている」と多様性への良い兆しに気づくことができました。

最終回では、LGBTQ+への理解不足から起こる社会問題について、一人ひとりがどう向き合うか、西村さんと考えます。

LGBTQ+って何だろう?という方はこちらをチェックしてください!
現役大学生によるLGBTQ+に関する用語解説!入門編
 

>> 前回の記事を読む
4】 24年間隠し続けたセクシュアリティと家族へのカミングアウトの瞬間

 
記事一覧

1】 世界で活躍されるメイクアップアーティストの西村宏堂さんにとってメイクとは?
1. 20代の頃からメイクアップアーティストとして世界で活躍されてきた西村さんにとってメイクとは?

2. おしゃれは自分の発信を聞いてもらうための武器である

2】 ハイヒールをはいた僧侶 西村宏堂さんの考える「自分らしさ」と試練の乗り越え方
3.自分らしさを保つには、良いモチベーションと悪いモチベーションを使いこなす。相手に見下された時こそ丁寧に接しよう

4.偏見ある社会に憤りを感じた時こそ、ポジティブな気持ちを持とう

【3】 西村宏堂さんと考える、世間のこうあるべきやカテゴリーと上手につき合う考え方
5.メディアの性的マイノリティの描き方への違和感

6.自分をカテゴリーに当てはめなくても大丈夫

【4】西村宏堂さんの 24年間隠し続けたセクシュアリティと家族へのカミングアウトの瞬間
7. 家族へのカミングアウト

【5】 西村宏堂さんと考える、社会で違和感を抱いた時に私たちができること
8.違和感には声をあげ、より良い社会にしていこう

9. ICU PRISMメンバーからの感想
編集後記

 

8.違和感には声をあげ、より良い社会にしていこう

当事者の人々が声をあげて初めて、周りの人々が知るということも多々あると思います。より多くの人々が、例えば性的マイノリティの方への差別などの社会問題について問題意識を持つようにするには、どうすればいいのでしょうか。

西村:本当に学ぼうとしない人は、時代や社会に置いていかれるだけだと考えています。例えば「ここは男性だけでやっている会社です。女性はお茶を汲むだけの会社です」という会社があったら、周りの人から「あの会社は新しいアイデアもないし、時代に必要とされているものを提供できていない」と見なされてしまうと思います。学びたくない人はそこで進化が止まるだけなのではないでしょうか。

伝えていかなきゃいけない立場にいると、すごく大変で辛くてめんどうくさいと感じることがあるかもしれませんが、それをやることによって自分が楽になることもあるし、他の誰かが生きやすくなることもあると思います。一人が疲れたら、他の人が助けてあげるようにチームワークでやっていくのが楽しいし効果的だとも考えています。

あっきー(P):コミュニティで広めていくのが良いということですか。

西村:コミュニティじゃなくても、家族でも、友達でも、インターネットの知り合いでも良いのではないでしょうか。やっぱり一人で活動するのは寂しくなることもあるので、応援してくれる人がいれば、それだけで頑張れると私は思っています。「辛いよね」「頑張っているね」と声をかけあうだけでもいいかもしれないので「チーム」自体はそんなに大きくなくてもいいのではないでしょうか。

まずは、自分の周りの人たちを助けてあげることが大事だと思います。「できることがあったら言ってね」とタイミングも考えながら伝え、手伝いが必要な人がいたら手伝うことで良い関係が生まれると思うので、そうしたら、周りの人たちに自分の話も聞いてもらって、仲間を増やすのがいいと思います。

ーLGBTQ+のような性的マイノリティについて勉強したいと思っている人には何ができるでしょうか。

西村:マジョリティの人々ができることは主に2つあります。一つは、LGBTQ+の文化を楽しむことです。例えば、ミュージカルやファッションショー、ドラマや映画など、楽しいメディアを通して勉強することです。

もう一つは、誰かが差別的な発言をしたら、言葉を選びながらその偏見を解いていくこと。例えば「女の人は持ち物が多い」と言う人がいれば「女の人は持ち物が多い人もいるよね」と言ってみるとか「男の人は準備が早い」と言う人がいたら「男の人は身軽な人が多い傾向にある」と言ってみるなど、その属性の人全てがその固定観念に当てはまる訳ではないことを、柔らかい言葉で言い換えて、みんなを正していくんです。

LGBTQ+の問題に限らず、当事者も当事者でない人も、差別的な発言に対して自分が共感できないと思ったら、正直に伝えていくことが大事だと思います。例えば、アメリカに行ったことがない人や独断の偏見を持っている人で「アメリカ人ってこうだよね」と言う人がいたら「そうかな。そういう人だけがアメリカ人じゃないかもよ?」とアメリカに住んでいた私が違う意見を提案してみるんです。実際にアメリカの人に言われるよりも、日本の友達に言われる方が、文化が似ているからより受け入れやすいと思います。

ーこれで西村宏堂さんとICU PRISMの対談は以上です。ありがとうございました。

9. ICU PRISMメンバーからの感想

西村さんにご自身の体験を打ち明けながら、より生きやすい社会をつくっていくにはどうしたらよいのだろうと、真剣に対談してくださったICU PRISMの皆さん。本当にありがとうございました!

さや(P) 写真一番左:「マイノリティであることを理由に努力を怠ってはならない。むしろ誰よりも努力をしないと。」というお言葉がとても印象に残っています。自分のマイノリティ性を訴えるだけではなく「人」として尊敬されることをするというのは並大抵のことではありません。しかしそれを、背中で示してくださっている宏堂さんのお姿に感銘を受けました。私も、自分自身を強く保ちながら、努力を惜しまない生き方を追求していきたいです。この度は貴重な経験をさせていただき、誠にありがとうございました。

さり(P)写真左から二番目:社会の不平等や理不尽に怒ることに終始していた自分は、マイノリティという立場を言い訳にせずに努力を重ね、またどんな人とも対話しようとする姿勢を持ち続けていらっしゃる宏堂さんにとても影響されました。ICU PRISMとして、少しでもポジティブなインパクトを広げていきたいと強く思います。今回は、このような貴重な機会をありがとうございました。

ひなこ(P)写真右から二番目:今まで、マイノリティの人々とともにジェンダーイシューに取り組むことについて、マジョリティとして分類される自分の立場に悩むことが多くありました。しかし宏堂さんのお話を聞いて、マジョリティに属する自分がこれらの問題に取り組むことは、自分にしかないものだし、自分にしかできないことがあるならやらなければならないと気付きました。貴重な機会を本当にありがとうございました。

あっきー(P) 写真一番右: 今回の対話の中では周縁化された人々の経験や問題意識を否定せずに、より対話的に接することは決して難しいことではないというメッセージが印象的でした。ややもすれば周縁化された人々とともにある立場をとっていきたいという思いは、我々対そうでない人々というナラティブであったりに回収されたり、些細な配慮のミスを自他ともに責めるような態度を引き起こしてしまうこともあるのではないか、そしてそれはある種周縁化された人々のコミュニティを疎外することにつながってしまうのではないか、という意見はしばしば耳にします。しかし、そのような状態を否定することはいわゆるトーンポリシングではないかと悩んでいました。今回対談で、自分に余裕があり対話できるときにしていくことと、構造に対する強い感情を持ったり、それを持っている人を否定しなかったりすることは決して矛盾するものではないと強く意識させられました。実りある対話の機会をくださった西村さんと関係者一同に感謝します。

ICU PRISMについて
ICU PRISMのインスタグラムアカウント
ICU PRISMの過去のインタビュー記事もあるのでチェックしてみてください:
全ての人のための”safe space” / ICU PRISM【インカレ学生団体】

編集後記

ヒナ

私がLGBTQ+について興味を持つようになったのは大学に入学してからのことでした。それまではLGBTという言葉を聞いたことはあっても何の略か知らず、正直あまり興味もありませんでした。しかし、入学してからLGBTQ+に興味も持って学んでいる友達と繋がるようになりました。そして私も興味を持ち始め、少しずつLGBTQ+に関する情報を見るようになりました。そのため、西村さんの「それを知らない人は、それを勉強する機会に恵まれなかっただけで、聞かれたら丁寧に教えてあげれば自分にもいいことがある」という発言にはすごく共感しました。自分がLGBTQ+のトピックに触れる機会がなかったから、今まで知らないまま過ごしてきたけど、環境が変われば、毎日のようにLGBTQ+に関するトピックを目にします。それは西村さんが仰っていたように、LGBTQ+ではない別のトピックでも共通して言えることなので、私が得意なエリアでは、自分が丁寧に教えてもらったように、それを知らない人を責めるのではなく、丁寧に接しようと思いました。

また、今回の記事では、LGBTQ+以外のことでも共通するマインドセットの方法がたくさん詰まっています。LGBTQ+への興味の有無に関わらずこの記事を読んで、人生のヒントや辛いこと、苦しいことを乗り越えるためのコツを見つけて頂ければとても嬉しいです。悩んでいる人や困っている友達がいる人が少しでも楽になれるような内容になればいいなと思っています。また、LGBTQ+に興味のなかった人もこの記事をきっかけに、関心を持ってくれたらそれもすごく嬉しいです。

第4回目の記事のカミングアウトのセクションで「家族に話して仲良くなれた」と西村さんが仰って「自分の気持ちを今まで偽ってきたが、自分に正直になることで自分にとってポジティブな影響があった」とあり、私はそこが一番印象的なメッセージでした。私はよく「私にとって自分らしさって何だろう」と悩むことがあります。多くの人が「自分らしく」いることの大切さを叫び、広めようとしていますが、私はいつも自分の「自分らしさ」が分からず「自分らしさ」という言葉が私にとってプレッシャーのように感じることがありました。西村さんの本や、取材では「自分らしく」を様々な優しい言葉で表現されていることが個人的にとても印象に残っています。例えば「自分に正直に」「自分の好きな自分で」「自分がありたいと思う自分で」などです。優しい表現だからこそ、西村さんの言葉はまだ「自分らしさ」が分からずにどうすればいいのか悩んでいる私のプレッシャーにならず、これから見つけていけばいいんだと思えるようになりました。今回は大変お忙しい中お時間を割いてお話してくださり、本当にありがとうございました。

 
 
ももこ

改めまして、このような貴重な機会をくださった西村さん、マネージャーの小島さん、対談取材を引き受けてくださったPRISMメンバーのさりさん、さやさん、ひなこさん、あっきーさんに感謝します。本当にありがとうございました。

私が気づかなかっただけで、今まで出会った人の中でLGBTQ+の当事者にあたる方はいらっしゃったかもしれませんが、少なくとも当事者の方、そうでない方とLGBTQ+のことについて話すことをしてこなかったから、今回のインタビューはとにかく新鮮でした。

マイノリティ側に様々な不安を持たせてしまっている社会は「男か女か」の二項対立で成り立っていると感じました。「多様性が大事」と唱える社会の構造がそもそも多様性を認めていないのだとしたら、今の社会にある多様性は誰のためにあるのか。その社会にいる私たちができることは「問題意識を持つこと」であり、このインタビューは私にとってそのアクションを起こす最初のステップになりました。これから出会う人に対して「彼氏/彼女はいるの?」ではなく「付き合っている人いるの?」と聞くなど、自分にできることを少しずつアクションに起こしていくことで本当の「多様性」を実現することに繋がるのだと思いました。

周りに流されずに自分らしく生きること、その自分を肯定することで幸せな人生を導けることは、きれいごとなんかではなく事実であることを西村さんにお会いして知ることができ、もっと多くの人に届いて欲しいです。この記事が、当事者はもちろんLGBTQ+に当てはまらない方の人生や気持ちを少しでも豊かにすることができれば、本当に嬉しいです。

この記事はガクセイ基地メンバーの西木桃子と作成したものです。

About the author

gakuseikichi

Add Comment

Click here to post a comment

ワーキングホリデーin Canada

就職サイト一覧

就職サイト一覧

アルバイトサイト一覧

グッドデザイン特集‼