社会問題

【3】西村宏堂さんと考える、世間の”こうあるべき”やカテゴリーと上手につき合う考え方

こんにちは、ヒナです。 今回の記事は前回に続き、ハイヒールをはいたお坊さん、西村宏堂さんのインタビュー記事の第三回です。第二回では、自分らしく活動を続けるためのモチベーションの保ち方と、物事に対して憤りを感じた時にそれを自分のパワーに変える向き合い方をお聞きしました。第三回では、メディアの性的マイノリティの描き方に感じたモヤモヤを、西村さんと一緒に考えます。

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2】 ハイヒールをはいた僧侶 西村宏堂さんの考える「自分らしさ」と試練の乗り越え方

西村宏堂さんのご書籍 :正々堂々 私が好きな私で生きていいんだ 
 
記事一覧

1】 世界で活躍されるメイクアップアーティストの西村宏堂さんにとってメイクとは?
1. 20代の頃からメイクアップアーティストとして世界で活躍されてきた西村さんにとってメイクとは?

2. おしゃれは自分の発信を聞いてもらうための武器である

2】 ハイヒールをはいた僧侶 西村宏堂さんの考える「自分らしさ」と試練の乗り越え方
3.自分らしさを保つには、良いモチベーションと悪いモチベーションを使いこなす。相手に見下された時こそ丁寧に接しよう

4.偏見ある社会に憤りを感じた時こそ、ポジティブな気持ちを持とう

【3】 西村宏堂さんと考える、世間のこうあるべきやカテゴリーと上手につき合う考え方
5.メディアの性的マイノリティの描き方への違和感

6.自分をカテゴリーに当てはめなくても大丈夫

4】 西村宏堂さんの24年間隠し続けたセクシュアリティと家族へのカミングアウトの瞬間
7. 家族へのカミングアウト

【5】 西村宏堂さんと考える、社会で違和感を抱いた時に私たちができること
8.違和感には声をあげ、より良い社会にしていこう

9. ICU PRISMメンバーからの感想
編集後記

5.メディアの性的マイノリティの描き方への違和感

ーメデイアで、娯楽として性的マイノリティが扱われていることについて話していきます。

さり(P):近年の流行といっていいのか分かりませんが、例えばゲイの二人を描く時、監督や脚本家の人が作品作りの後のインタビューで偏見に満ちた発言をされていたり、ゲイ役でも異性愛者の方が演じていたりすることに違和感を覚えます。

西村:私はマイノリティの役柄を作品に入れることは良いことだと思います。もしリアリティを追求するのであれば、実際に体験をした人を取材し、勉強し、偽りなく再現することが大切だと考えています。しっかり勉強せずに、その作品を作ることは無責任なことだと感じるし、特定の人やグループの印象を悪くするような演出はやめてほしいです。また、笑いやジョークの対象にするのは、誰に対してもしていいことではないので、私は好きではないです。「間違っていますよ」と声をあげることで気づいてもらえることもあるので、間違っていると思った時は声をあげることが大切だと思います。

さや(P):映画やドラマの他にも、例えば、本屋ではBL漫画は男女の恋愛の本棚とは違う場所に置かれます。男性同士の恋愛になった途端に世の中から隠される存在になるのは、漫画の文化にも差別があると感じてしまいます。

西村:本当は間違ってないことを堂々と好きだと言うこと、好きなものを自分が信じていて自信を持って好きだと言うことを保っていれば、それを聞いた周りの人も「ちょっと読んでみようかな」という気にさせることができると思います。私が「オカマかと思ったぜ」って言われた時に「そうだよ」と言えたことが、聞いてきた人の意見をそのあとに変えて応援して貰えるきっかけになったことがありました。

参照正々堂々~私が好きな私で生きていいんだ~」90.91ページ(要約):「僧侶の修行をしている時に、同じ修行僧の一人が「てめえ、最初に見たとき、カマかと思ったぜ」といきなり大声で話しかけてきました。周りには他の人たちもいて、その瞬間に高校時代に「オカマでしょ?」と言われて固まってしまった感覚がよみがえりました。ここでごまかしたら何も変わらないと思い、勇気を出して「そうだよ」と答えると、彼はびっくりし、グイグイと質問をしてきて困っていました。そんな時に友人が「西村くんはニューヨークでメイクアップアーティストをしていて、ミス・ユニバースとかで活躍しているんだよ」と助け船を出してくれました。すると、「カマかと思ったぜ」と言ってきた彼は「ニューヨークでも頑張れよ」と声をかけてきました。敵かも?と思っていた相手が応援してくれるとは思っていなかったから、今度は私の方がびっくり。

 

世間一般の方とは違う傾向があったとしても、そこにある良さやそれを好きでいる自分を隠さないで堂々とすることが周りの価値観の変化に繋がると考えています。言い出すときは、最初はなんて言われるのか分からなくて怖くなるし、気持ち悪いと言ってくる人はもちろんいます。でもそこでいかに耐えられるかが私は大事だと思います。うまくバランスを取りながら活動することが賢いかなと思います。

あっきー(P):メディアが作品を作る時に完璧な表現をするのは難しいです。どんなにマイノリティの立場を考慮して表現したとしても、必ず「これは良い表現じゃない」と反論してくる人がいます。反論がずっと存在すれば、メディア側は作品を作ることを諦めてしまうこともあります。メディアが完璧な表現を追求し続けるのと、反論を恐れて完璧な表現をやめてしまうのと、どちらがいいのでしょうか。

西村:完璧じゃないメディア表現は炎上したり、人々に議論を生みますよね。私は議論を生んで人が考えるきっかけになるのであれば、それは悪いことではないと考えています。自分に議論するエネルギーがないときは無理をする必要はありませんが、議論を起こすことで人の考えも進んでいくと思います。難しいですよね。だからこそ研究、準備、練習が必要になります。最近ではナイキのCMが炎上し話題になりましたよね。

 

ナイキのCM:ナイキが2020年11月28日に公開した約2分のCM。アスリートのリアルな実体験に基づいて日本にある差別を描いたCMで「感動した」「次はナイキの靴を買いたい」というようなポジティブなリアクションがあった反面「日本に差別があるようだ」「二度とナイキの靴を買わない」などのネガティブなリアクションもあり、炎上した。

 

CMの内容に共感したり賛成したりする人もいれば、ナイキを批判したり、ナイキの商品を買わないと言う人もいる。CMを見て気づいたり、考えたりするきっかけが生まれたことは良いことだと思います。

6.自分をカテゴリーに当てはめなくても大丈夫

「男性」「女性」「ゲイ」「レズビアン」のように自分自身のセクシュアリティをカテゴリーで呼ぶ事がありますが、どれにも当てはまらない方もいらっしゃいます。そういった方はどうすれば良いのでしょうか。

あっきー(P):自分をカテゴリーに当てはめることで安心感を得ることができる一方で「自分はこうじゃなきゃいけない」となることもある気がします。

西村:LGBTQ+に「当てはまる」人にはカテゴリーがあると便利で良いけれど「当てはまらない」人は無理に自分を当てはめる必要はないと思います。カテゴリーというオプションがあることで自由に生きやすくなる人もいますが「オプションが無いこともオプション」であるということを忘れてはいけません。

人間の性指向や性自認は流動的でいいと思うんです。私たちは「この時はゲイ、でもこの時はそうではなくてバイセクシャルなのかも」というように、自分が主体となってそのカテゴリーを利用する、そのカテゴリー自体を使わないという選択肢を持っていると認識することが大事だと思います。

 

自分のカテゴリーを説明できなかったり、自分が当てはまっていると思うカテゴリーが見つからない時、自らカテゴリーを探したり、作ったりするということはどう思われますか?

西村:カテゴリーを探しに行くことはしなくていいと思います。好きになった人を好きでいればいいだけで「自分はこういう性だからこういう人を好きにならなきゃ」と無理やり好きになるのってすごく辛くて不自然なことだと思います。だって変わったら困るじゃないですか、決めたのと違ったらどうするのって。だから決めなくてもいいんじゃないのかな。

今回の記事はここまでです。第四回では、LGBTQ+の当事者である西村さんと、ICU PRISMメンバーがカミングアウトした際に苦しんだことをお聞きします。彼ら・彼女らの周りでは、「カミングアウトの必要がなくなってきている」という前向きなお話も印象的です。ぜひ続きもチェックしてください!

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【4】24年間隠し続けたセクシュアリティと家族へのカミングアウトの瞬間

この記事はガクセイ基地メンバーの西木桃子と作成したものです。

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