環境

作り手・使い手・産地を「木」で繋ぐーコイヤ協議会の考えるものづくりとは?

突然ですが、皆さんは「もの」を買うとき、一番こだわっていることはなんでしょうか。

人によってそれぞれだと思いますが、特に学生にとってものの「値段(=求めやすさ)」は避けられないですよね。同じものが2つの価格で売っているとき、人はどうしても安い方に目が行きます。当たり前ですよね。

 

しかし、安さ重視でいいのでしょうか。安かった分すぐに壊れたとか、長持ちしなくて結局同じものを何度も買ってしまっているとか、そんな経験をされたことはないですか。

 

もしかすると私たちは、より安いものを求めるせいで、商品がもつ本来の魅力を見落としてしまっているのかもしれません。

 

そんな風に語るのは、日本で育てられた木材を用いた商品展開を試みている「コイヤ協議会」事務局長の石田達也(イシダタツヤ)さん。どんな思いで事業を立ち上げたのか、お話を聞いてきました。

 

 

コイヤ協議会とは
地域の山や木と、ものづくりや社会をつなぐデザイン連合体。国産のヒノキやスギを使用した製品を提供することで、消費者が作り手とその産地と繋がることを目標としている。製材、加工行、塗料屋を全国から呼び寄せ、才能溢れるデザイナーと共に検討会を重ねて現在商品販売の準備を進めている。詳しくはこちら→https://koiya.org

 

 

国産材の需要は減り続けている…知られざる日本林業の危機

ーーコイヤ協議会の設立のきっかけと経緯について教えてください。

石田さん:私たちが活動で主に使っているスギの木というのは日本固有の品種で殆どの地域に自生し古くから建築や日用品の素材として使われていました。また、スギの木というのは成長が早く、まっすぐ伸びる特徴があります。政府はこれを利用して、戦後の復興のための「拡大造林政策」を実施し、のちに全国にスギの木が拡大していったのです。しかし、そのすぐに高度経済成長が始まり、1964年から木材輸入が自由化されたことで、国産材の価値はどんどん落ちていきました。その影響はいまだに続いています。現在スギの木を丸太1本で購入すると、4万円ほどしていたのが今では1万円切るか切らないかくらいです。

加えて日本の林業は少子高齢化による生産量・消費量の減少というもう一つの問題を抱えています。日本の国産材を育てる地域をなんとか活性化できないか、林業を盛り上げることができないか、そんな思いを持ち始めて地域のスギやヒノキを使ったものでビジネスをしようと考えました。「日本全国スギダラケ倶楽部」というスギに関わる様々な人たちで構成された任意団体の方達と2018年からお話を進め、コイヤを立ち上げることになりました。

 

ーー高度経済成長でなぜこんなにも落ち込んでしまったのでしょうか。

石田さん:森と地域と都市のつながりが希薄になってしまったのだと思います。経済が成長するにつれて日本の暮らしはどんどん豊かになり、人はどんどん便利なものを買い求めるようになりました。しかし、便利になったことで大切なものを失っているのではないか、と林業に携わる身として感じます。より安価なものや手間がかからないものを求めることで、製品に込められているはずの地域の文化、自然、伝統や作り手の価値が忘れられてしまっているのではないでしょうか。

 

ーーなるほど…日本の林業が衰退してしまうと、私たちにどんな影響があるのでしょうか。

石田さん:業界が落ち込んでしまうと山に生える木の手入れをする経費もかけられないので、様々な問題が生じます。山は二酸化炭素を吸収して酸素を作ってくれたり、木は山からの水を保水してくれたりしています。そのおかげで生態系が保たれるし、私たちは安全な水を飲むことができています。そしてそれが今までうまくできていたのは人間が山の手入れをしていたからです。もし今後山林に大量に残ってしまっているスギの木の手入れができなくなると、土砂崩れなどの自然災害につながってしまいます。

 

「産地」「作り手」「使い手」を「木」でつなぐ

ーー具体的にどのような計画をされているのですか。

石田さん:産地、作り手、使い手を、国産材を使うことで繋げていく新たなサプライチェーンを作ろうと計画しています。ポイントは「地産地消」です。国産材で製品を作る「作り手」を全国各地から協力を得て製品を作ってもらいます。そうすることで「使い手」によってオーダーされた商品をその「使い手」が住んでいる地域の木材を使うことができるからです。デザインは全国共通なので、木材の出どころは違っても同じ製品になります。そしてもう一つのポイントは国産材に含まれた地域の文化の価値に気づいてもらうために、「使い手」を「共創者=ファン」として育てることです。具体的にどういうことかというと、私たちはお客様に商品を届けるとき、あえて半完成品として提供します。「使い手」の方達が少し手間と時間をかけて自分たちで製品を完成させることで、製品に愛着をもってもらいます。また共に製品を創ることで収益が産地に還元され、作り手、デザイナー、流通業者、そして資源の元の地域と繋がることができます。繋がった後は「この木はどんなところで育っているんだろう」「これを作っている人はどんな人なんだろう」と地域の産業に興味を持ち、愛着心を通じてその地域のファンになってほしいと思っています。ただの使い手と作り手ではなく、両者が互いにどんな人なのかわかっている関係の中でしかできないことだと思っています。

ーー「半完成品」で商品がお客様の手に届くということですが、具体的にどのような状態なのでしょうか。

石田さん:家具の形がもうできていてあとはネジで止めるだけ、ではなく、本当にDIYをしてもらう形になります。家具のDIYを経験したことがある人はわかると思うのですが、普通に家具を買うのと自分で作ってみるのとでは商品に対する愛着や満足感はまるで違います。組み立てや仕上げは自分でもしくは地域の工務店でやっていただく形になります。

 

ーー商品のデザインはどのように決定しているのですか。

石田さん:商品のコンセプトを月に一回の検討会を行なっています。検討会には連携している全国の木材供給会社、デザイン会社の方達に集まってもらい、どのように発送するか、価格をどう設定するかを話し合っています。本来であれば今年の4月からネット販売を始める予定だったのですが、コロナでミーティングができなくなってしまって商品販売は延期になってしまっています。が、近いうちに販売できるよう着実に準備を進めています。

 

ーーコロナウイルスで販売が滞ってしまっているのは残念ですね…

石田さん:はい。しかし逆にコロナ禍で多くの人が家で過ごす時間が増えている今だからこそ、普段は目を向けられなかったことを見直せる機会なんじゃないかと思います。忙しい毎日を過ごしていると、面倒くさくてできなかったことってたくさんありますよね。特にDIYとかは楽しいけれど時間と労力が必要で手をつけられない方は多いと思います。そこでコイヤがDIYとして皆さんの生活に関わることで、「面倒くさいことってこんなに面白かったっけ」と感じ取れるきっかけになったらいいなと思います。販売延期になってしまってはいますが、家で時間を過ごすという今の時代に合っているし、手間をかけて商品を自分のものにすることに価値を見出すことがこれから増えていくのではないかと考えています。

 

最後に

ーー石田さんにとって、ものづくりとはなんでしょうか。

石田さん:ものづくりとは、その「もの」の魅力を、購入してくださる方に最大限に伝えることだと思っています。どんな商品にもそれぞれの魅力があります。その魅力とは商品がどんな工程を通って作られているか、どんなところでどんな人によって作られているかということだと思っています。

しかし、経済が発展することで、人は大量生産・大量消費を好むようになりました。商品の裏側を知ることなく、便利で求めやすい価格のものが良いとされてきました。先ほども申し上げたように、便利で安価なものを求めるようになった結果今まで大切にされてきたものがないがしろにされてしまっています。

私たちはもっと身の回りにあるものだけで生きていけるはずなんです。生きることに忙しすぎて、手間暇をかけることで得られるワクワクを忘れてしまっています。コイヤはそういった日本人が本来持っているはずの価値観を、使い手が参加できるものづくりを通してより多くの人に持ってほしいと考えています。

「より安いものを買うよりかは、少しだけいいものを買って長持ちさせる」という価値観をより多くの方に持ってほしいです。それが理想だし、いつかそう考えなくては経済や自分たちの環境が持続不可能になる時代がくると思います。コイヤの事業に「使い手」として参加していただくことでその危機感と、ワクワクを同時に味わってほしいと思っています。

ものと通じて産地を知ってくれる機会になってほしい。今度そこにいってみたいと思ってほしい。もっと自分の近くにあるものに魅力を感じてほしい。コイヤはそんな希望を持ちながらものづくりをしていきます。

 

石田さん、貴重なお話をありがとうございました!

読んでくださった皆さん、いかがでしたか?とっても素敵な事業だと思いませんか!

商品が販売されるのが楽しみです、、興味を持った方はぜひコイヤのホームページもチェックしてみてください!(https://koiya.org

 

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gakuseikichi

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