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「ラベルは目的ではなく、持続可能な社会を作るきっかけ/日本サステナブルラベル協会」

 地球温暖化や気候変動など、環境への関心が高まる中で、企業にも持続可能な社会のための取り組みが求められつつあります。

国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)を、経営指針として掲げている企業も増え続けています。
 けれども、実はSDGsは、審査なしに「私たちはSDGsの取り組みをしています」と言えてしまうという特徴があります。

つまり、SDGsは募集のようなもので、どれだけ本気で企業が取り組んでいるかに関わらず、「環境に良い」というイメージを与えることができるのです。
 そんな中で注目されているのが、商品などについている「認証ラベル」。第三者機関からの厳しい審査を受けて、実際に商品や企業に付与されるものです。

今回は、認証ラベルの普及活動に取り組む日本サステナブルラベル協会(JSL)の代表理事である山口さんにお話を伺いました。

 

サステナブル・ラベル協会

サステナブル・ラベルとは
―環境や社会に配慮した商品には、それに応じたラベルが印字されていることがありますよね。

エコラベルやフェアトレードのマークなどが有名ですが、私たちは分かりやすく、それらを総称して「サステナブル・ラベル」と名付けて、普及・啓発活動をしています。

サステナブル・ラベルは、ほとんどが海外の認証団体によって作られていて、現在では何百もの種類があります。
例えば、森林関係の商品ですと「FSC」、漁業関係ですと「MSC」、オーガニックコットンのラベル、フェアトレードなど、さまざまなラベルがありますが、消費者に対しても、また企業に対しても、その存在だけではなく、その認証システムや仕組みなどを理解していただきたいと思っています。

 

日本サステナブル・ラベル協会について
―私自身、大学院で認証についての研究をしていたのですが、日本において、認証ラベルについて誤解されていたり、認知度が低かったりする現実と向き合いました。

そして、どうにかこの認証制度やラベルの仕組みなどを分かりやすく、数多くあるラベルをまとめて普及できるようにしたいということで、2年前(2017年)に私たちがサステナブル・ラベル協会を立ち上げました。
具体的な活動としては、イベントや媒体等を通じて、知ってもらうための普及啓発や情報提供、行政・自治体・企業・消費者・学生も含めた関係者との連携等を始めています。また、個人的には、講演させていただいたり、企業のCSR報告書の第三者意見などを執筆したり、環境・サステナビリティ関係のお仕事やコンサルティング、教育等をしています。

 

認証ラベル:企業の視点

認証ラベルのきっかけ
 ラベルの認証の仕組みは、それぞれ似ていますが、分野や認証機関によって異なることもあります。
 「ラベルをつけたい」と事業者から名乗り出る場合もあります。例えば、有機JASの場合は、オーガニックの野菜を作っている事業者は、たとえオーガニックの野菜を生産していたとしても、第三者の認証機関によって審査されなければ、「オーガニック」と言って売り出すことができないという法律があります。
 取引先に言われて、認証ラベル取得に取り組む企業もあります。例えば、MSCなどのラベルを商品に付ける場合、生産・加工・流通・販売過程で関わるすべての業者がMSCを取得する必要があるのです。認証のものと、そうではないものが混ざらないようトレーサビリティを確保するためなので、MSCを取得した漁業者がいても、流通方法によっては認証製品として売ることができない可能性があり、認証をとっていない業者を説得する必要があるのです。
 また、認証機関の説明を受けて、納得していただき、「ここの一部を改善したら、自社の製品にラベルをつけることができる」というきっかけで、認証を取得する企業もあります。

日本での認証ラベル
 日本の認証システムは世界で比較的遅れています。ラベル自体も海外から来るものが多く、海外では、街中の小さなコンビニでも、ほとんど全ての商品にラベルがついていることも珍しくないです。
 日本発の認証ラベルもあるのですが、認証スキーム自体の成り立ちが比較的若いと、認証に必要不可欠な「公平性」や「信頼性」を担保するのが比較的難しいのが現状です。

企業が認証ラベルを取得するハードル
 やはり事業者も、お金を払って認証してもらうので、経済性がそこにあるかという問題は常に問われます。また、認証審査を受けるために、事前に準備しておくべき項目、トレーサビリティ(追跡可能性)や管理体制が明確化されているかという物理的な問題もあります。その時にはやはり、トップの人がリーダーシップを発揮するかが重要です。

それでも企業は変わり始めている
 近年、多くの企業でサステナビリティが謳われるようになった背景として、もちろん消費者や社会の意識変化もありますが、それよりも、その企業がこれからも良い原材料を安定して調達することができるか、という意味での持続性も必要となるでしょう。サステナビリティ(持続可能性)とは、環境資源のことだけではなく、会社や事業をこれからも安定して続けていけるか、という持続可能性にもリンクしています。そのようなことを企業のガバナンスの一つの視点として持っているべき、というESG意識は広がっていると思います。
 また、環境系NGOによるネガティヴキャンペーンによって、ブランドイメージを損なうリスクもあるので、それらから企業が守られるようにという意味もあります。

環境改善へのパートナーシップ
 認証を取ることは、実は一つの企業だけでは達成できないようなことです。取引先も巻き込む必要があるし、その調達方法が業界内で浸透するために競合他社をも巻き込んでリーダーシップを発揮するような企業もあります。それが一般化しなければ、原料の価格が高くなり調達できないということが発生しかねないからです。

 

認証ラベル:消費者の視点

 消費者に対しても、今まで見た目とか価格とか量とかの基準で選んでいたものが、サステナブル視点で、認証ラベルを目的ではなく、一つの選択のきっかけとして知ってもらい、手にする製品が生産されてここまで届くまでの背景を気にしてもらえればと思っています。

現在、消費者は改善しているのか
 消費のやり方が大きく変わったというのは見られてはいませんが、多くの人(特に若い人)にラベルの存在が認知されて、サステナブルなものを求めている人に対しての情報提供は十分にされつつあります。

これから…
 企業が環境・社会的配慮を気にし出して、消費者が考えなくても大丈夫という世の中があるといいと思います。なぜ私が消費者だけではなく、特に企業に対して認証を啓発しているかというと、消費者は日々毎日ストイックに意識することなんてできないからです。企業が一番先頭で意識し、サステナブルなサービスを当然として社会に提供するからこそ、消費者も安心して商品を選ぶことができるのだと思います。
 消費者に求められて企業が変わるのも、一つのやり方。けれども企業が主体的に変わるのがより好ましいと思います。その意味で、教育に大きな期待があります。今、こうして環境に対する考え方を学んできた学生が、たとえば会社の商品開発などを任された時に、「サステナブル」という視点を持って仕事ができるように、長期的な視野も必要だと思います。

 

一般社団法人 日本サステナブル・ラベル協会(JSL)

公式HP https://jsl.life/

Facebook:https://www.facebook.com/一般社団法人-日本サステナブルラベル協会-148676425768221/
Twitter:https://twitter.com/jsl_life

 

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