環境問題に取り組むことは大切なのは分かるけど、面倒くさい。
そう思って諦めてプラスチックや使い捨ての製品を使ってしまうこと、ありますよね。
もしその使い終わった製品の容器が、そもそも自分のものではなかったら?
使い終えた製品の容器を「ゴミ」ではなく「資産」として返却・洗浄し、再利用することでゴミを減らす全く新しい循環型プラットフォーム「Loop(ループ)」が、近年様々なブランドや製造業社と結託して事業を展開しています。
今回はそのシステムをアメリカから日本に広める「Loop Japan 合同会社」の代表エリック・カワバタさんに取材させていただきました!
「捨てるという概念を捨てよう」というミッションのもと、循環型ショッピングプラットフォーム Loop を日本で展開するソーシャルエンタープライズ。Loop は、これまで使い捨て容器で販売されていた製品をリユース可能な容器で販売する取り組みのこと。使用された容器を回収し、洗浄・ 製品の再充填を行い、再び販売することで、使い捨てプラスチックを削減するのみなら ず、「使い捨て文化」からの 脱却を目指す。2019年1月に発表以降、既に世界 5 か国(米、仏、英、加、日)で展開されており、今後オーストラリアやドイツなど計7ヶ国で展開する予定。
環境及びサステナビリティ分野に10 年以上携わってきた豊富な経験を持つ。2013年からはテラサイクルで働き始め、2014年1月にテラサイクルジャパンの日本代表に就き、アジアでの事業を正式に開始。その後、2016 年にはテラサイクルのアジア太平洋統括責任者として中国(2016 年)や韓国(2017 年)でテラサイクルの現地法人を設 立。2019 年からは Loop のアジア太平洋統括責任者と日本代表も兼務する。
目次
Loop誕生の由来「ヒントは昔ながらの慣習」
ーー本日はよろしくお願いします。早速ですが、Loopが生まれたきっかけを教えてください。
我々はリサイクル事業を手がける米ベンチャー企業「テラサイクル」の日本法人として、廃棄物をリサイクルして新たに商品化するという活動をしてきました。事業を展開する中でプラスチックが含まれた製品はリサイクルするのがとても手間と時間がかかり、再生プラスチックの原料価値の低さがリサイクルするコストに見合わないことなどを知り「プラスチックのリサイクルの経済合理性」という課題に直面しました。
「このままリサイクルを続けていても廃棄物を減らすことはできない」
この課題を解決するために提案されたのが商品容器の再利用でした。この提案は、テラサイクルの創業者であるトム・ザッキーが従来の消費財の使用方法をヒントにしたところから生まれました。
ーー具体的に従来のどんなところを参考にしたのでしょうか。
現在の一般的な食品や消費財のほとんどは、プラスチックや使い捨ての容器に入れられています。しかし以前は、耐久性のある詰め替え用の容器が使用されていました。昔の牛乳配達を想像していただけると良いかと思います。
消費財を売るメーカーは、通常容器も自分たちで作っています。メーカーは、売上の向上と商品のコスト削減のために、用いる容器を「安く」「軽く」する必要がありました。そこで、その二つの条件に加えて「便利さ」も兼ね備えているプラスチック容器を使用し始めたのです。メーカーにとっても消費者にとってもメリットがあるように見えました。しかしこのような「安く軽く」を追い求めた結果、リサイクルしにくい製品が増え、ゴミ問題も深刻化しました。そこで、従来の使い捨て文化を覆せるようなプラットフォームはないかと考えた時に、「Loop」が生まれました。
Loopの仕組みについて
ーーLoopの仕組みと事業内容について詳しく教えてください。
スポンサーとなるパートナー企業やブランドと組んで再利用可能な容器で商品を、ECサイトや小売店で販売します。商品の容器は使用後に我々が回収・洗浄し、各メーカーが中身を再充填して再販売します。弊社が容器の回収や洗浄などを手配し、商品を販売するメーカーはスポンサーとなり、容器本体の洗浄、輸送のコストを負担してもらいます。
現在はECサイトと小売店(東京中心に17のイオン店舗)での販売を行っており、ECサイトは8月から5000世帯に向けて販売を開始しております。現時点でアース製薬(モンダミン)、味の素(ほんだし・丸鶏がらスープ・コンソメ)、エステー(消臭力)、ロッテ(キシリトールガム)など計28社のメーカーに参画していただいています。
ーーLoopを設計する上でどんな部分にこだわったのでしょうか。
使い捨て容器に勝る機能性とデザイン性です。機能性に関しては、
②耐久性(製造から再利用までのサイクルを最低10回できる)
③LCA(Life Cycle Assessment)」(商品が寿命に達した時にリサイクルしやすい素材である)
という3つの基準を定めています。またデザインは、ステンレスやガラスを使ったとにかくかっこいいものにしています。従来のプラスチックとは異なり、インテリアに馴染むスタイリッシュなパッケージになっています。
ーーLoopに参加することで消費者にはどんなメリットがあるのでしょうか。
Loopの一番のメリットは、消費者が無理をしなくてもサステナビリティに貢献できるようになっているところです。使い捨て文化が当たり前になっている今の社会では「サステナビリティ」や「環境問題」という言葉に対して、難しくて面倒くさいものだという印象を持っている人は多いです。環境に対する意識を社会全体で上げていくためには、このように面倒だと感じる人にどれだけ我々の取り組みに参加してもらえるかが大きな課題となります。機能性とデザイン性のどちらも備えたLoopの商品は「環境に優しいから」という視点でなくとも環境保全に取り組むことを可能にしています。
ーー従来の使い捨て文化とどう差別化することができるのでしょうか。
むしろLoopの商品は従来の使い捨て容器よりも、より簡単なライフスタイルを提供できると思います。例えば、使い捨て容器は便利な反面「燃える?燃えない?これは分けて捨てるのか?」というように、処理する方法がいまいち分からないということがよくあると思います。Loopの商品を使えば「捨てる」という手間がなくなるので、環境への取り組みが面倒だと感じる人にとってより負荷が少なくなります。生活スタイルを大きく変えなくても、参加できるような使いやすいシステム。消費者にとってメリットが増え、負担は増えない(むしろ減る)。このようなところで使い捨て文化と戦えるのではないか、と考えています。
ーーLoopの商品はプラ容器の製品と比べて割高になっていますが、販売価格についてはどうお考えでしょうか。
最初は少量で作っているため、単価が高いです。紙やプラスチックと比べるとステンレスやガラスは原料価値が高いので、預かり金を含めると商品価格は高くなります。しかし、使い捨て容器と何回も再利用できる容器を比べると、後者の方が圧倒的にコストパフォーマンスは良いです。たとえばメーカーが100回以上使えるような耐久性の高い容器をつくれば、再利用1回あたりの容器コストを限りなく抑えることが可能になります。つまり最初はコストが高いものの、今後販売量を増やすことで、それを抑えることができます。そのためには機能性を重視した商品を販売し続けなければいけません。
Loopの今後の展開について
ーーお仕事の中で大切にしていることはありますか。
より多くの方に協力していただくために、またその関係性を持続させるために自分たちが何ができるかを考えることです。Loopの循環型プラットフォームは、他の参画していただくステークホルダーがいてこそ成り立つシステムです。自分たちの利益だけを考えていては、パートナーになっていただく企業にとってメリットがなくなってしまいます。そのため、常に相手のことを考えて協力する姿勢を持ち、我々にもメリットが生まれるように事業を進めています。
ーーLoopの今後の課題はなんでしょうか。
2つあります。1つは、商品の種類を増やすことです。現在は日用品が多いので食品をもっと増やしたいですね。まだ参加されていない企業にもどんどん協力していただきたいですし、我々からもどんどん働きかけていかなければいけません。2つ目は、先ほども話した通り、商品の価格が高く設定されているので、最初はメーカーも利益が出しにくいです。長期的な視野で根気よく販売を続けていくことで、利益を出すことでスケールアップを図る必要があります。
ーー最後に大学生に向けてメッセージをお願いします。
就活や将来について悩むことは多いと思いますが、自分にとって意味のある職業を見つけて欲しいなと思います。なぜなら、仕事をする上で何か課題を見つけそれを解決しようとする時に、より力が入るからです。「意味がある」ということは、しっかりと目的を持って仕事ができているということです。沢山の学びを得られる学生の間に、是非自分なりの「Purpose Driven Life(目的に導かれた人生)」を見つけて欲しいと思います。
ーー質問は以上です。ありがとうございました。
Loopについてもっと詳しく知りたい方はこちらのサイトをご覧ください!↓
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