「炭素に値付け」地球温暖化を食い止めるには(2019年1月日本経済新聞掲載)
新聞解説シリーズ第6弾です!
そしてもう一つに、環境対応したら補助金や税制優遇をするというもの。問題点として、国の財政支出が膨らんでしまうことが挙げられる。
※カーボンプライシング…二酸化炭素排出のもとになる化石燃料の消費に税などを課し、地球温暖化対策を促す案。
目次
前提知識
・COP24
2018年12月に開かれたポーランドで開かれた気候変動会議。もとは1992年に国連によって開催された「国連環境開発会議(地球サミット)」から始まった。ここで採択された国連気候変動枠組条約(※)以来、見直しのために開いているのがこの「COP」と呼ばれる会議。今回は24回目なのでCOP24。
※国連機構変動枠組条約(UNFCCC)…人間の気候に対する悪影響を予防するため「大気中の温室効果ガス濃度を安定化させる」ことで合意した条約。
・カーボンプライシングには大きく2通りある
カーボンプライシングとは炭素にコストを加えて、温暖化対策を促進することだが、2通りの方法がある。スイスなどで実施されている。
⑴炭素税
石炭やガソリンなどCO²を排出するエネルギーの消費に税金を課すというもの。18年にノーベル経済学賞を受賞したノードハウス教授(アメリカ)による提唱とされる。
⑵排出量取引
企業などに、温暖化ガス排出の可能範囲を与えるもの。
可能範囲を超える排出をする場合は、排出量が少ない企業から排出枠を買うことが出来る仕組み。
ポイントで記事を読む!
ポイント①カーボンプライシングの利点
企業などの消費者がコスト削減のために、省エネに取り組むことや再生可能エネルギーを積極的に使うことを促進する効果が見込まれている。
ポイント②カーボンプライシングの欠点
⑴炭素の価格をいくらに設定するかで議論がとどまってしまっていることが問題だ。
進行する温暖化を食い止めるためには、CO²1トンあたり最低で約4000円の価格をつける必要があるといわれている。
ちなみに、環境省によると、2017年度の日本の二酸化炭素排出量は12憶9400万トンだった。1トン4000円とすると、5兆1760億円相当だ。
東洋経済オンラインによると、日本企業で一番二酸化炭素を排出しているのは、「新日鐵住金」で9060万トン。金額に換算すると、3億6240万円となる。
このような数字から見ても、実行に移すにはまだまだ工夫が必要だ。
⑵国の競争力をそいでしまう点だ。国の規制によって、税負担の少ない海外へ移転するなど、企業が国の一員として競争することをやめてしまう恐れがある。
こちらは、海外と税の水準を合わせれば解決するが、現実的には難しいとされる。
ポイント③カーボンプライシングに対する意見
カーボンプライシングとは逆に、課税ではなく補助金を出す案も出ている。こちらは企業や消費者からも受け入れられやすい。しかし、財政支出が膨らみ、国の負担が大きくなることが課題となる。
ポイント④地球温暖化対策の遅れの深刻化
図をみれば、一目瞭然。CO²の濃度は着々と高まっている。環境省によると、現状のまま温暖化対策を取らなければ、21世紀末(2081~2100年)には平均気温が最高4.6度上昇するというデータが出ている。つまり、日本の夏の気温は44度ほどになるということだ。お風呂より高い温度の空気に私たちは耐えられるだろうか。
(環境省HPより引用)
2019年1月時点でのCOP24ついてのまとめは以上です。当記事は大学生向けに必要な情報をわかりやすくまとめたものです。数字など、より詳細な情報を知りたい方は以下を参照してください。
参考
日本経済新聞(2019年1月)
Add Comment