大学生向け新聞解説シリーズ第2弾です!
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キーワード→ で示してあります。
特捜部(※2)→カルロス・ゴーン容疑者を起訴
カルロス・ゴーン→起訴内容を否認
※1:両罰規定
会社の誰かが、業務に関することで違法行為をしたら、「会社として必要な注意をした」という証明をしなければいけない。証明できなければ、会社自体も罪に問われてしまうという決まりのこと。
※2:特捜部
汚職や不正、脱税などの事件を主に捜査するところ。東京地方検察庁の部署のひとつ。
「厳密には」とはどのような意味なのか、具体的に見ていきましょう!
目次
前提知識
・金融商取引法の内容
「企業、業者の重要な情報」についてウソの記載をすることを禁じる法律
・「役員報酬」に関するウソが起訴されるのは初めて。
今までにも、報告書にウソを書いた会社はたくさんありました。(下記表を参照)
これら過去の事件はすべて、表を見てわかる通り、明らかに「企業の業績」に関わる内容でした。
一方、今回の事件は、企業業績ではない「役員報酬」についてのウソです。
↓
つまり、
後で、「ポイント」で詳しく解説しますが、この「(企業業績ではない)役員報酬」についてのウソが「金融商取引法に違反しているか否か」で様々な解釈が出来てしまうことが問題なのです。
法の解釈が割れてしまっているんですね。
前例がないからこそ、ここまでニュースになっているということです。
法で定められている「企業、業者の重要な情報」に当たるかどうかの判断基準としては、「投資家の投資判断に影響するか」「金額の大きさ」などがあります。
ポイントで記事を読む!〈法の解釈の違いって?〉
ゴーン元会長の主張である「厳密には違反していない」という部分などを解説していきます。
ポイント①今までにあった多くのウソ記載の事件と「目的」が違う
過去の事件たち:売上高や利益の水増しなどで、企業の業績などを実態よりもよく見せかけるのが目的
今回の事件:ゴーン元会長が、自分たちの役員報酬を実態よりも小さい数字で記載し、会社のお金を私的に使うのが目的。また、国内外からの高額報酬への批判を避けることが目的。
→つまり、前例がないということ。
ポイント②今までにあったウソ記載の事件と「書かれている場所」が違う
過去の事件たち:財務諸表(※3)にウソを記載
今回の事件:コーポレートガバナンス(※4)の体制などを説明をする、役員報酬にウソを記載
※3:財務諸表
経営成績を報告する文書のこと
※4:コーポレートガバナンス
企業が適切な経営をするように、経営者を監視する仕組みのこと。会社が守るべき決まり。
→つまり、役員報酬のウソの記載を巡る起訴は過去例がなく、行政処分も前例がないということ。
ポイント③特捜部とゴーン元会長の対立点
- 役員報酬を報告書に記載する義務があったかどうか
内閣府は「受け取る見込み額が明らかになった時点で記載する」ように規定している。
特捜部は、ゴーン元会長の署名が入っている文書を根拠に、支払いが確定していたことを証明している。
ゴーン元会長は、支払いは確定していなかったと主張。
→つまり、文書が根拠として有効かどうかが、カギとなるということ。
- 違法性の認識の有無
有罪の判決のためには、ゴーン元会長が「報酬を意図的に隠した」という証拠が必要となる。
特捜部は、「ゴーン元会長らは自らの高額報酬への批判を避ける」狙いがあったとして、意図的だと主張。
ゴーン元会長は、「ケリー役員から合法的であると聞いた」と反論。
→つまり、わざとかどうか証明する必要があるということ。
まとめ
・役員報酬に関するウソが金融商取引法にある「重要事項」に当たるのかどうか(「前提知識」)
・起訴内容は刑事罰に値するのかどうか(「ポイントで記事を読む!」)
この2点をどのように解釈するのかが大きくかかわるということでしたね。
あなたは、どのように考えますか?
当記事は大学生向けに必要な情報をわかりやすくまとめたものです。数字など、より詳細な情報を知りたい方は以下を参照してください。
参考
日本経済新聞(2018年12月)
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