スキルアップ

組織の垣根を越えた新たな学び方/卒業生マイゼミ

みなさんは「ゼミ」や「研究室」に所属している人が多いのではないでしょうか。

そしてそれは、在学生と教授で構成されていると思います。

 

しかし、SFCでは卒業生も含めたゼミを授業中に行っています。

それが「卒業生マイゼミ」です!

 

「卒業生マイゼミ」とは!
卒業生の方が、仕事が忙しくなかなか実現できないテーマや、事業化が難しく実験しにくいテーマを、学内に持ち込んでもらい、それについて在学生とともに考えていくというもの。

 

今回は、この「卒業生マイゼミ」を立ち上げた八木さんにお話をお聞きしました。

 

―本日はよろしくお願いします。まず、「卒業生マイゼミ」を始めたきっかけを教えてください。

 きっかけは、社会人側と学生側という2つの観点があります。

 まず、社会人側の観点です。SFCの卒業生の方が、日頃検討できない課題や所属している会社では取り組めないプロジェクトを抱えていても、自分で動き出せない背景があったということがあげられます。自分でやりたいプロジェクトはあっても、収益性が見込まれない、また仲間が見つけづらく、動きにくいと感じている人が多かったのです。だから、そのような人にその課題を持ち込んでもらって、現役生と一緒に立ち上げるプログラムを考えれば、その課題が解決できるのではないかと思いました。

 

―卒業生の方が感じている課題を、学生と一緒になって解決しようとしたんですね。

 そうなんです。次に、学生側の観点です。私は大学の授業というものでは、学生が自分のやりたいことやキャリアを考えることが少ないのではないかと感じました。例えば、グループワークの授業は、計画しただけで実装しませんし、インターンも社会人の真似事で割り振られたものをやるだけで、不確実な状況から自分で課題を見つけていく、ということがありません。だから、これらとは違って、目の前の現実から社会を少しずつ変えていくという実感を持てる機会を提供したいと思い、このプロジェクトを立ち上げました。

 

―では、実際に行ったプロジェクトについて教えてください。

 3つあります。1つ目が「土地活用を考える」ことテーマとしたゼミです。内容としては、フィールドワークへ行って、土地活用のあり方を考えたい地主さんと話し合いながら、地域に寄り添った土地活用を提案するものです。この提案者の方は、現代社会における地域のあり方に問題意識を持たれている卒業生の方でした。具体的には、現代において空いている土地があれば、コストパフォーマンスの観点から駐車場にしてしまおうという発想が多くなってきていることに問題意識を感じていらっしゃいました。このような収益性という単一的な観点だけでなく、もっと地域社会に還元できるような土地活用のあり方を考えたい、ということでした。

 

―確かに駐車場にとして土地活用するのは、地域にとってはあまりメリットがないかもしれませんね。では、2つ目は何でしょうか。

 2つ目は「商品開発を考える」ことをテーマとしたゼミです。amazon.comに出展されている方々に向けたコンサルティング業務をやられている卒業生の方のゼミです。内容は、実際にクライアント企業をつけて、その企業の製品であるキッチンタイマーをアメリカに売っていくための戦略を考えるものです。実際にデザインまで考えて提案しました。このゼミでは大量の英語のレビューを読むなどして、細かく業者のニーズを考えていました。

 

―実際の企業と関わることもあるのですね。では、3つ目は何でしょうか。

 3つ目は、「新しい新人研修を考える」ことをテーマとしたゼミです。社会に出たばかりの新卒社員を対象に提案しました。現在、人事界隈では、新卒社員が疲弊していてすぐにやめたがったり、なかなか会社にうち解けられなかったりしているということが言われています。だから、これを解決すべくゼミが立ち上がりました。このゼミには、卒業生の方だけではなく、その周りの社会人の方が30人くらいサブサポーターとして参加してくれました。この活動を通して、実際に学生が自分事として話し合いを進める大変さというものを学べたと思います。

 

―30人も協力してくれる人がいたというのはとてもありがたいことですね。では、責任者としてやりがいを感じることは何ですか?

 学生が誰一人脱落することなく、自分事としてプロジェクトに取り組んでいることですね。通常SFCで行うグループワークの授業は、学生がただこなすだけで、1人に負担がかかることもあります。でもここでは誰も脱落することなく、一人一人が本気でプロジェクトや卒業生、周りの友人と向き合って取り組んでいました。おそらく、このプロジェクトで合宿を行ったことが活きているのではないかと思います。

 

―合宿を行うのですね。

 はい、合宿は学生や教授、卒業生を含めた全員が参加します。卒業生マイゼミがある半年の間に3回行い、プロジェクトについての話し合いを進めています。18時から朝9時まで行うので、ほとんどの学生が寝ずに議論しています。合宿で夜中まで対話と議論をすると、より深い相互理解ができます。それにより深い関係が築け、一人一人が責任感を持つようになったと感じています。

 

―では、苦労した点はありますか?

 多様な関係者を巻き込むのが大変でしたね。たとえば、卒業生の方に説明した時に、多くの人が共感してくれるのですが、一緒に動き出してくれる方が少なかったんです。だから、その方たちをどう巻き込むか、どう説得するか、ということに苦労しました。

 

―卒業生はどう巻き込んだんですか?

 卒業生の方に、考えられるリスクや得られるメリットを丁寧に説明して、協力してもらおうとしました。その結果、卒業生の方の理解を得ることができ、3つのゼミができました。

 

―これからの目標や卒業生マイゼミのプランはありますか?

 このプログラムはSFCにしか通じないものではなく、多くの大学でも再現可能であると思っているので、各地に普及させたいです。また、このプロジェクトのように、組織の垣根を越えて志で人がつながり、協働を促進するプラットホームをもっと作っていくべきだと思っています。

 

―最後に、読者へのメッセージをお願いします。

 世の中の大局を見据えながら、自分がやりたいことの領域を見つけていくことが大事だと思います。常に個人レベルの問題意識と普遍性や社会性という俯瞰した視点の、ミクロからマクロまで考えを行き来させ、世代を超えて普遍的な価値を発揮し続けるsustainableな仕組みを、自分のできる範囲で身の周りから小さくつくっていくのです。

 私も哲学や世界史、社会学の本を大量に読んで知見を積み立てながら、世の中のあるべき姿を描きました。

 私は、金銭的な価値を求めて企業という組織形態ができた歴史を踏まえて考えました。具体的には、現代は「価値」そのものの捉え方が多様になり、かつ様々なリソースを融通し合える世の中になってきましたが、その中で企業という組織形態はどう変化していくかを考えてみたわけです。こう考えていくと、自立したプレイヤー同士が本来の役職や機能に関係なく、「どんな社会を創りたいのか」という自分自身の価値観に根ざしたミッションをお互い共有し、それに共感した仲間が、定められた期間で提携関係を結び、プロジェクトを立てるのではないかと思いました。そして、プロジェクトが終了するとともに別のプロジェクトに所属するという形で、人が事業内容の変化に合わせて、柔軟に組織の内外を移動する形になっていくのではないでしょうか。その結果、個人が自分の潜在価値を最大限に発揮し、志を具現化する動きが加速していくでしょう。

 これを踏まえ、私はSFCで実験的に、卒業生が個人的に取り組みたいプロジェクトを在学生と共に実行できる「卒業生マイゼミ」をカタチにし、成功モデルの確立を目指しているわけです。

 

―社会が今後のあるべき方向性を考えた上で、それに向かって行動するのが大切だという事ですね。八木さん、本日はありがとうございました。

 

 

<編集後記>

 今回八木さんのお話を聞いて、自分でプログラムを立ち上げ、それを授業として盛り込んだことはとても行動力があると思いました。確かに、授業やグループワークでは将来について考える機会があまりないように感じますが、それを改善しようと行動に移す学生はほとんどいません。したがって、教授や卒業生の方を巻き込み、自分の考えを実現させた八木さんはとても素晴らしいと思います。

 八木さん、貴重なお話を聞かせてくださって、本当にありがとうございました!

 

 

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