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【時事解説】イギリスEU離脱問題/ 「合意なき離脱」の足音

EU離脱案否決 2019年1月15日(日本時間16日)

 

忙しい人はここだけ!1分でわかるまとめ
イギリスのEU離脱予定日は3月末に迫っている。しかし、議会での意見がまとまらず、本当に離脱が成り立つのか、見通しが立たない状態だ。


2016年に行われたEU離脱に対し賛成か反対かを問う国民投票によって、賛成派が勝利したことを受け、イギリスのEU離脱は進められてきた。当時のキャメロン元首相は結果を受けて辞任し、テリーザ・メイ現首相が後継者となった。


イギリス政府とEUで合意のもと作成された「EU離脱案」が15日のイギリスの議会で採決されたが、大差で「否決」となった。このままでは、離脱時期の延期、または議会の合意がないまま離脱を強行突破することとなるかもしれない(「合意なき離脱」)。


メイ首相は反対派にも受け入れられるEU離脱案の代わりとなる案の作成を目指す方針。残りの日数も少ない中、EUを始め他国にも受け入れられるものが果たして成り立つのか、先行きは暗い。

 

 

前提知識

イギリス議会の仕組み

イギリスの最高立法機関は、国王上院下院の3部で構成されている。上院は、貴族や国教会の主教らで構成されており、終身制で、原則無給である。下院は選挙で選出され、議会法により、「下院優先の原則」が定められている。

現在の二大政党は、保守党(与党)労働党(野党)。保守党は、経済界などを支持層に持つ。労働党は、労働組合にサポートされる。首相は国王が任命し、原則として下院で過半数を占めた政党の党首が選ばれる。

 

 

EU(欧州連合 European Union

共通通貨ユーロの導入や、共通安全保障政策の実施など、幅広い分野での協力を進めているヨーロッパの組織。政治的、経済的基準などの審査を通った国が加わることを許される。現加盟国は、交渉中であるイギリスを含め28か国。

 

2016年国民投票

経済の低迷、移民の急増などによる国民の不満に応えるために行われた国民投票。EUは加盟国間の経済格差が大きい。豊かな国は、豊かでない国にお金が吸い取られる。大国イギリスにとって役に立っていないのではないかという考え方があった。また、EU加盟国の市民は、域内でビザなしで就労できる。イギリスは賃金が高く、多くの移民がやってきた。国民には、職を奪われる不安があった。よって、EU離脱に対する賛成の声は大きかった。

 

ポイントで記事を読む

ポイント① EU離脱案の内容/ 批判される要因は?

合意されたEU離脱案には、離脱にあたり既に決まっていたEU予算への拠出金などを清算金としてEUに支払うことや、急激な変化を避けるため、2020年末まで完全離脱の準備をする移行期間を設けて人やモノの移動の自由を守ることなどが記されている。

 

批判が集まっているのは、イギリス領の北アイルランドと、EU加盟国アイルランドの国境問題について。EU離脱後、双方が国境管理の方法で合意できなければ、イギリス全土をEUの関税同盟に残すという取り決めだ。現在のように摩擦のない国境と、イギリス全土の一体性を保つために決定した。しかし、離脱後もEUにしばられ続けるのではないかという反発が生まれている。

 

ポイント②メイ内閣にふり注ぐ、困難の嵐

今回の採決では、野党のみならず与党からも大量の反対数が出てしまった。EU離脱派も残留派も、離脱案に対し反対で一致している点はメイ内閣にとって痛手だ。

 

離脱派は、今の離脱案では離脱後もEUにしばられ続けてしまう、と主張。具体的には、アイルランドとの国境問題について、EUの処置に問題があるとする。対して残留派は、経済的な悪影響を与えかねないという理由。現在の合意では貿易などの面でもマイナスな点が大きいと主張する。

 

さらに、EUは「今の離脱案が唯一の案」とし、大きな修正に応じない構えをとっている。ユンケル欧州委員長は、「英国はもうすぐ時間切れになる」と強調。代替案を早期に示す必要がある。

 

ポイント③「合意なき離脱」による影響

2019年1月17日発行の日本経済新聞では、離脱による問題点が大きく3つのテーマで分けられていた。「貿易」「金融」「移民」である。

 

まず「貿易」について、イギリスがEUを離脱することにより、イギリスとEU加盟国間の貿易に世界貿易機関(WTO)ルールに基づく関税が生じる。物流コストの増加が起こる。加えて、不要だった通関作業を行う必要が出てくる。急な変化は、物流の混乱につながるだろう。

 

「金融」面では、EU共通の免許である「単一パスポート制度」の即時失効が懸念される。「単一パスポート制度」とは、EU域内なら1つの免許で自由に金融事業を営めるというものである。EU離脱により、イギリスの免許でEU客向けの業務ができなくなったり、移行期間が設けられず、実務対応が間に合わない恐れがある。

 

最後に「移民」である。「ヒトの移動の自由」が保障されてきたEUでは、サービスや農業など人手不足にあえぐ産業が移民によって支えられてきた。ところが今、離脱後の雇用の不透明さにより、移民による母国への帰国が増えているという。イギリス政府はEU離脱後、高度な熟練労働者を優先して受け入れる方針を打ち出しているが、賃金が安い労働力に頼ってきた産業界には打撃である。

 


2019年1月20日時点でのイギリスEU離脱についてのまとめは以上です。当記事は大学生向けに必要な情報をわかりやすくまとめたものです。数字など、より詳細な情報を知りたい方は以下を参照してください。

 

 

参考

日本経済新聞(2019年1月16,17,18日)

外務省ホームページ(2019年1月19日閲覧)

NHKニュース(2019年1月19日閲覧)

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