学生ならきっと何かのアルバイトをしている人が大半だと思いますが、コンビニバイトをやったことがある人はどのくらいいるでしょうか?
「誰でもできそう」「時給安いらしい」
そういった印象が広まっており、コンビニバイトは学生の間ではなかなかの不人気を誇っています。
「本当にそうか?」と思い、ぼく(久保)が実際にローソンでアルバイトしてみたところ、コンビニバイトは簡単なものではなく、死ぬほどキツいということが分かりました。
しかし同時に非常に多くのことを学ぶことができ、社会人になる前に、誰もが一度はコンビニバイトをするべきなのではないかというほど貴重な体験だったと思います。
仕事内容をはじめ、雇用側は従業員のどういうところを見ているか、従業員にどういう仕事をしてほしいと思っているかなど、ぼくが働かせてもらったとあるローソンのオーナー、濱田正義さんとの対談形式でお送りします!
濱田正義さん
目次
|お客さんの“当たり前”を守ることが仕事
久保 よろしくお願いします!
1ヶ月みっちり働かせてもらいましたが、こんなに仕事が多いなんて思いませんでしたよ……。もうボロボロになりました。
濱田 え、そう?普通じゃない?
久 だって、レジだけでいっても、商品のスキャンだけじゃなくて、宅配便の対応だったり、コーヒーメーカーの豆の補充とかやることめっちゃ多いじゃないですか。
ホットスナックだって、それぞれに製造時間と廃棄時間が決められてて、それらを全部記録しなくちゃいけないなんて想像もしてなかったです。
濱 そりゃあそうでしょ。お客さんに賞味期限切れたやつ売るわけにはいかないんだからさ。記録しないとどれが売れて次はどのくらい作らなきゃいけないとか分からないしね。
久 少し考えれば当たり前のことなんですよね……。
でもレジ内でもこんなに仕事があるのに、これでも全部の仕事の3割くらいなんですよね。
品出し(商品の補充)はお客さんが商品を買う度にしなくちゃいけないですし、冷蔵庫みたいに寒いリーチイン(冷たい飲み物を裏から補充するためのスペース)の中で、1時間も連続で作業するなんて死ぬかと思いました。
で、夜は業者から注文したダンボール30個分くらいの商品が来ててんやわんやだし……。
濱 なんでよ、楽しいじゃん(笑)
久 慣れたらそう思えるんですかね……。
とにかく、レジの外にいる時間の方が長いというのは驚きでした。
で、そうした仕事を全部やりながら、お客さんに「いらっしゃいませ」、「ありがとうございます」、さらに「からあげクン一個増量中です、いかがでしょうか?」という声を毎回しなきゃいけないって、もうどこに意識向けたらいいか分かんないですよ!
濱 だってそれ言わないとお客さんに失礼だろ?
でも確かに、コンビニは同時にいくつものことに目を向けていないとできない仕事ではあるよね。
久 ところで、売上げを良くする為に特に気をつけるポイントってどこでしょうか?
濱 色々あるけど、一番は品出しと前陳(※商品が売れた後、奥の商品を手前に引っ張り出すこと)かなぁ。だって、どんなにいい商品でも、なかったり、奥にあって見えなかったりしたらお客さん買ってくれないもん。
だから、そこがいいコンビニかどうかを見分ける大きな指標は、品物がきちんと品出し、前陳されているかだと思うな。
アルバイト店員でありがちなミスは、レジ内の仕事で手一杯になってしまって、品出しや前陳まで手が回らないことなんだよね。お客さんが見ているのは商品だけなんだから、レジ内の仕事がどれだけできてなかろうと、お客さんにとっては全然関係ないんだよね。お客さんの“当たり前”を守るのが俺たちの仕事だから。
久 お客さんの当たり前を守る……。
濱 そうそう。欲しいものが常に棚にあるのも、賞味期限内のものしか置いてないっていうのも、24時間絶えず回り続けているっていうのも、お客さんにとっては全部「当たり前」なんだよ。その「当たり前」を提供する為には実はすごくたくさんの苦労があるんだけど、そんなことお客さんは知らなくていいの。それが仕事っていうものだよ。
文句が言えるような仕事を
久 ふ、深いですね……。
ところで、ぼくは全然仕事できなかったのにクビにしないでくれましたが、どんな人に働いて欲しいとかはあるんですか?
濱 見ていないところできちんと働いている人だね。
久保みたいに全然仕事できなくても、店内にゴミが落ちているのを人知れず拾うのを見たりすると、「この人はちゃんと働いているな」って思う。でも逆に、ちょっとしたスキに寄りかかっていたり手をついていたりするのを見ると「こいつはそういうやつなんだな。時給泥棒だな」って思っちゃうよね。
時給分で働くというのはどういうことかと言うと、当たり前のことを当たり前のようにするっていうことだと思うんだよ。でも実はそれが一番難しいんだよね。当たり前のことができないから苦労するんだよ。
あと、もう少し高いレベルで言うと、文句が言えるような仕事をしてほしいね。
久 文句が言える仕事?
濱 考える仕事をして欲しいってこと。
ちゃんと真面目に働いていれば、「ここは違うんじゃないか」とか「ここはこうした方がいいんじゃないか」っていう疑問や意見が必ずある筈なんだよ。それを遠慮なく俺に言って欲しいね。ただ言われたことをちゃんと守るだけじゃなくて、従業員はオーナーと喧嘩するくらいがちょうどいいんだよ(笑)
お金のことばかり考えてほしくない
久 アルバイトを探していたり、今している学生に何かアドバイスはありますか?
濱 お金のことばかり考えて働いて欲しくないよね。
たまに、面接で「いつ時給が上がるんですか」とか言ってくる人がいるんだけど、「まだ働いてもないのにそういう話してくるんじゃないよ」って思うよ。働いている姿を見て「この人いいな」と思ったらこちら側が時給を上げるのであって、自分で「上げてください」っていう問題じゃないよね。金の話をしたら、俺だったら100%落とすね。他のところは知らないけど。俺は、まずは働けることに楽しさを覚えてもらいたいな。
久 なるほど!
では最後に、ガクセイへのメッセージをお願いします!
濱 働いて学費を払いつつ遊んで欲しいかな。
授業料も奨学金の返済もすごく高いじゃない?
そうやってお金を払ってでも勉強したいと思って学生をやっているわけだからあくまで学業を本業にして欲しいんだけど、学生のうちにきちんと払うべきだと思う。
ただもちろん何百万も払えるわけがないから、一部でいいんだよ。一部でも自分で働いて稼げば、学び方は変わってくるんじゃない?
もちろんそれは遊びにも言えることだよね。自分のキャパの中で遊ぶわけだから。
働きながら、勉強したり遊んだりする。そうやって自分の責任において学生生活を送ればいいんじゃないかな。
久 ありがとうございました!
(編集後記)
戦場のようなアルバイトでしたが、働いてみたおかげで、いつも利用しているコンビニは裏でとてつもない努力が支えているということを実感できました。
それにしても、オーナーは毎日休まず(一時期は5年間休みがなかったそうです!)、朝から晩まで働いているのですが、なぜかずーっと楽しそうなんですよね。
「楽しくなければ仕事じゃないよ」と笑いながら言った姿が印象的でした。
★好きなことを仕事にして、「楽しく」働いている大人をに取材してきました!
【好きをシゴトに】やりたいことが無い辛さを経験し、辿り着いた今。セカダイMasato Nakamura校長が伝えたいこと (gakusei-kichi.com)
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