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【対談】ai STANDALONEデザイナー並木愛さんと考える、ファッションへの思いと洋服で自分らしさを表現する生き方

今回は、レディーススーツブランド、ai STANDALONEデザイナーの並木愛さんと筆者の真梨子による対談記事です。ファッションの悩みや洋服へのこだわりを一緒にお話しさせていただきました。

>「ai STANDALONE」並木愛さんのインタビュー記事はこちら

ai STANDARONE(アイスタンドアローン)
「かっこいい服がない。だから作る。」という想いから生まれた、スーツをメインとしたレディースアパレルブランド。>ai STANDALONEのHP:https://aistandalone.com

 

並木 愛さん(なみき あいさん)
株式会社タイニーバード 代表取締役。ai STANDALONEデザイナー。圧倒的に、この世にないもの、やる意味があるものを作りたいという思いから、(生物学的な)女性のためのスーツ専門ブランド、ai STANDALONE を立ち上げる。

 

 

目次

◯私は今、大学生だからということもあり、自分の好きな髪色やファッションを自由に楽しむことができます。しかし、今後就職活動をして社会に出ることになったとき、髪色もファッションも今より制限されて自由に選ぶことができないのではないかと思い、自分らしさを見失ってしまいそうで不安です。

並木さん:そう思っているんだったら、ファッションや髪型を制限されるようなところには就職するべきじゃないと思う。私は元々ファッションの道を志してたから、就活の時にそういうことを指定してくる企業はほとんどなかったけど、あったとしてもそんなところは受けないね。ましてや真梨子さんみたいにファッションは自分らしさだと思ってる人はそういう会社に入るべきじゃないし、入っても窮屈になるだけだから最初から行かない方がいい。あと、やっぱり学生はまだ社会を知らないからどうしても自分の世界が狭いじゃない。だから、「就活する時はリクルートスーツ着なきゃいけないのかな」「髪は黒じゃなきゃ駄目なのかな」と思ってしまっているでしょ。その気持ちはすごく分かるけど、それは社会の一部にすぎないし、会社に入ることだけが生きる道ではないから、嫌ならそういう規則に従う必要はない。それに私は今になって思うけど、企業側にリクルートスーツを着て来いとは言われるものの、みんな同じ黒いスーツで来いとは言われてないんだよね。なのに黒のスーツを着て行かなきゃいけないって、自分達側が思い込んでる節があるでしょう。そこが大きな勘違いだよ。もし私が面接官だったとして、みんな同じようなスーツを着てる中で、1人だけうちのブランドみたいなスーツを着て個性を出してくれる子がいたら、それだけで採用したくなっちゃう。ファッションは自分らしさだから、私はそれを洋服で表現して欲しいと思う。洋服を見ればその人がどういう人かも大体分かるからね。だからスーツや髪色に規則があるのって嫌だなぁ。

 

◯自分がなぜファッションにこだわるのか考えたとき、根底には大学や街に出た時に、大勢の人の中に埋もれたくない、周りと差別化したいという思いが強くありました。

並木さん:私もあるね。だからこそファッションをやっているし、こういうスーツを作ってる。むしろ私はそれの塊でしかないよ。真梨子さんはなんで周りと差別化したいって思うの?

真梨子:私は結構目立ちたがりなので、大学や街中で周りの人に振り向いて見て欲しいからっていう思いが強いです。

並木さん:そうなの?逆にちょっとシャイなのかなって思ったんだけど(笑)。でもだから美大行ってるしそういう髪色もしてるんだね。そう思ってなかったらなかなかやらない髪色だもん。

 

◯私は気に入った服があっても、今の自分の系統に合わないと感じ、買うのを断念してしまったことがありました。そこで自分が気に入った服や憧れる服と、自分に似合う服は違うのではないかと悩みました。並木さんは自分の服を選ぶ際、気に入ったものを選択しますか。それとも今の自分に似合って、格好よく見える服を選択しますか。

並木さん:私もつい最近、一緒にやっている仲間とこういう話をしたのよ。Instagramのストーリーの質問で、「自分に似合う服がわかりません。どうしたらいいですか」って聞いてくださった方がいて。でも自分に似合う服って何だろうと思って、どう答えていいか分からなかったから仲間に相談したんだ。逆に自分に似合う服って、自分で分かる?

真梨子:うーん、分からないです。

並木さん:私もこんなに洋服に関することをやってきて、色んな服を着てみたけど分からない。似合う似合わないは客観的な意見だから、主観しかない自分にはどうしたって分からないんだよ。じゃあどういう服を着るかって言ったら、自分の好きな服を着るべき。気に入ったものを選択したいご来店されるお客様の試着を手伝っていて、どんなにスタイルが良くて美人な子でも、自分の姿を鏡で見て心からかっこいいって思わないと服がその子に全然はまらないのよ。着られてるだけに見えてしまう。だから結果的に本人もしっくりきてないし、私から見ても似合ってないと感じる。逆に特別スタイルが良くなくても、服を着て自分のことをかっこいいって思える子はすごくかっこ良く見えますね。洋服が似合うか似合わないかって、マインドの問題じゃないかな。その服を自分がかっこよく着たいという意思があるかどうかが全てだと思います。気に入ったものをちゃんと着ていれば、それが似合ってくる。だって、人からこれがすごい似合うからって勧められたとしても、自分が全然好きじゃない服を着るなんて嫌でしょ。だから着たい服を着ればいい。でも現状、大きな問題なのが自分の気に入る服が世の中にないってことなんだよね。

真梨子:なかったから、自分で作ろうと思ったんですね。

並木さん:そうよ。逆にもう世の中にあったらやらないもん。ないものを作らないと意味がないからね。何かを作る時って、エネルギーは全て怒りなんだよ。私だったら「自分が欲しいものがない!」っていう怒りがあるじゃない。欲しいものがすでにあるならそもそも怒りなんて感情は湧いてこないし、現状で満足してしまうから新しいものは生まれない。「ないから作る」ということはものを作っていく上ですごく重要だし、それが根底にあれば作るものにも背景や奥行きが生まれてくるんじゃないかな。作り手がどういう思いで作ったのかをしっかり表現できれば、目にとまった人にも深く興味を持ってもらえるし、商品の付加価値も生まれると思う。

 

◯服を探していると、自分がいいなと思った素材やデザインは男性用のものが多く、サイズや形の関係でどうしても合わずに悲しい思いをしたことがたくさんあります。並木さんはそういった経験をされたことはありますか?

並木さん:私の洋服人生それしかない。洋服屋さんに行くと、同じデザインだけどレディース用とメンズ用で分けられてるTシャツとかパーカーとかよくあるじゃない。全く同じように作ってくれればいいのに、レディース用だけ襟の開きが大きかったり、素材が薄くてポケットがついてなかったりするんだよ。そのことにどれだけがっかりしたか。だから私のスーツには、そういった既存の女性服のイメージに対するアンチテーゼも含まれているんです。色もあまり女性用の服では見ないような色を使うことが多いし、形も女性の体に合わせながら今までになかったラインや雰囲気を表現しています。世の中を見ていると、「女性用=薄くて柔らかい素材、淡い色、体のラインを強調した形」といった既成概念ばかりでものが作られている印象があって、すごく腹が立つんだよ。それだけが女性じゃないんだと言いたい。硬い素材や濃くてはっきりした色が好きで、バストやウエストなどのラインを強調していないシルエットの服が着たい女性だっている。だから「女性ってこういうのが好きだよね」という勝手なイメージで一括りにされていることへの怒りもスーツを作る原動力に組み込まれています。ご来店されるお客様も緑色やカラシ色が好きな方が多いんだけど、アパレル業界では緑と黄色が一番売れない色とされているらしいんだよね。実際、そういう色の女性用の服ってほとんど見たことがないでしょ?大体淡いピンクやブルー、ベージュの服ばっかりで。

真梨子:確かに!

並木さん:作る側が何も分かってないよね。そうやって、女性の大多数を見てピンクが好きだろうとかこういうのが好きだろうという憶測で作っているから、誰にもはまらない商品ばかりなんだと思う。だから買い手側に迎合してはいけないんだよ。よく平均って言葉を聞くけどさ、平均に当てはまる人なんて1人もいないよね。それに近い話だと思う。仮に作り手側も本当は緑の服にしたいと思ってるのに、ピンクが売れるからっていう理由で服を作ったとするじゃない。作り手本人も愛していないような服を誰が買ってくれるんだろうね。当然、買ってくれる人はいないから、その服は誰からも愛されないものになってしまう。そんなのダメだよね。誰にも支持されなくても、せめて自分だけは愛してたら1人はいるわけだから。

真梨子:どうして男性用と女性用って服を分けてしまうのでしょうね。

並木さん:やっぱり売る側としてはその方が分かりやすいんじゃないかな。例えば、うちのブランドのスーツは女性用として作ってるけど、本当は女性用ってはっきり言いたくない。人間のためのスーツって言いたいけど、そう言ってしまったら女性用か男性用か分からないじゃない。世間の人は服を見て「これいいな」と思ったらまず女性用か男性用なのかを気にするから。買う側にとってはそれが共通認識なんだよ。あと、うちではユニクロさんのメンズ用の50色靴下をよくコーディネートに使わせて頂いてるんだけど、それに対して「なんで靴下なのにメンズとレディースを分ける必要があるんでしょうね」とコメントしてくださった人がいたのね。私も、サイズのバリエーションだけ増やしてわざわざ「男女」でカテゴライズする必要はないのでは、と思う。「男女」で分ける理由はやっぱり分かりやすさでしかないんじゃないかなというのが私の考え。お店に行くとレディースのフロアとメンズのフロアで分かれていて、それぞれにある靴下売り場をたどって欲しいものを探すだろうから。レディースとメンズで分けるとしても、その表現の仕方は今後変えていかなければいけないね。今ジェンダーに対して色んな捉え方があるから、女性用とか男性用って括るのはもう違うんじゃないかな。

真梨子:だから、ai STANDALONEは「生物学的な」女性のためのスーツなんですね。

並木さん:そうそう。マインドの性別は今いろいろな考え方があるから。でも、体型としての女性用であることに変わりはないから、そういう表現をしてる。私はそこがすごく重要なポイントだと思ってる。洋服のシルエットは着る人の体型にものすごく左右され、男性と女性とでは体型の特徴が真逆と言っても過言ではありません。だからジェンダーレスなシルエットっていうのは、ほぼありえない。ai STANDALONのスーツはメンズライクなシルエットだとよく言われるんだけど全然そんなことはありません。よくある女性用のスーツとは違う絞り方をして、女性の体をいかに綺麗に格好良く布で包むかをポイントにしているんです。

 

◯並木さんが洋服を選ぶときのポイントやこだわりがあれば教えてください!

並木さん:私はシンプルでベーシックなものが好きで、白いTシャツやデニム、チノパンを普段着ています。洋服がその人の持っているものを潰してはいけないと思っていて。だから洋服は足すのではなく、最大限まで引いた上でかっこよく見えるものを追求したいんです。食べ物で言うと、「塩」のような服を着たいと思っています。着る人=素材そのものの良さを、グッと引き出してくれるような。着る人のマインドで服の似合うか似合わないかが決まるのと同じように、シンプルな格好をしていてもその人の中身がしっかりしていればすごくかっこよく見えるんだよね。究極にシンプルなのに「この人すごいかっこいい」「なんかオーラあるね」って思われる人間になりたいと思っているので、そう見える服を選ぶことにはこだわりがあります。足したり盛ったりする服だと、服が歩いてるように見えてしまうじゃない。その人自身ではなくて、服が主張してくるようなものは良くないね。着る人が持っている素材を最大限に引き出してくれる手伝いをするのが洋服の役目だと思っているから。

 

◯並木さんにとってファッションとは?

並木さん自己表現の手段です。もっと高尚な言葉で言うと哲学だね。私は洋服とファッションは違うものだと考えています。お客様に「結婚式にai STANDALONEのスーツを着て行っても大丈夫ですか?」「結婚式でドクターマーチンを履いて行きたいけど駄目ですか?」と質問されたことがあるんだけど、私は着たいなら着ればいいし履きたいなら履けばいいと思うんだよね。そういうことを気にする必要はない。だから、ルールに従って着る服や、誰かにこれを着なさいと言われて着る服は、ファッションじゃなくてただの洋服だと思っています。自分の意思や考え、表現が宿ることで初めてファッションと呼べるようになるんじゃないかな。ファッションは思想ありきですね。

真梨子:対談は以上になります。並木さん、ありがとうございました!

 
編集後記
インタビューと対談を通し、並木さんは自分が思う「かっこいい」を追求してをスーツを作っていらっしゃることが伝わってきました。一貫した信念を持ってスーツに向き合う姿勢が本当にかっこよく、その想いがスーツにもすごく表れているなと感じました。並木さんの「自分の着たい服を着ればいい。自分が最高にかっこいいと思える服を着ていれば、それが似合う服になる」というお言葉が強く印象に残りました。私は今までに、自分に似合う服が分からなくなったり、人からどう思われるか気にしたりして自分が本当に着たいと思った服を着ることに躊躇してしまったことがありました。しかし、本当に大事なことは似合うか似合わないかではなく、自分がその服を最高に楽しんで着ることだと気付き、これからはもっとファッションを自由に楽しもうという前向きな気持ちになることができました。この記事が、ものを作ってお客様に買っていただくことがどういうことなのかを知るきっかけになり、また洋服について悩みを持っている方の気持ちに少しでも寄り添うことができましたら幸いです。今回はお忙しい中、取材をお引き受けいただきありがとうございました。ai STANDALONEさんのスーツに興味を持たれた方は、是非アトリエに足を運んでみてはいかがでしょうか。自分の知らなかった新しい自分に出会えるかもしれません!

 

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