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皮を革にする職人「タンナ―」の仕事とは?「未来のPLOTTER応援プロジェクト#4」

「PLOTTER」とは、未来を計画する人や 変化を生み出す人を表す言葉。

そんな未来のPLOTTERを発掘、応援したい!という想いから、文房具を中心としたクリエイティブツールブランドのPLOTTERとガクセイ基地でコラボを行っている「未来のPLOTTER応援プロジェクト」。

このプロジェクトを通して、KOKOROISHIさんがソファを作る過程でやむなく捨ててしまっていた革をアップサイクルして作ったペンケースを発売することになりました。このペンケースをはじめとしてPLOTTER製品に欠かせない「革」。それがどのように作られているのかを知るために、ガクセイ基地メンバーのすみ、たいき、タオニーの3人は、タンナ―の見学に行ってきました!

タンナ―とは?

そもそも「かわ」という漢字には「革」と「皮」の2種類がありますが、その使い分け方はご存じでしょうか?
「革」は加工されて製品となったものを指す漢字で、「皮」は動物からはがされた状態~加工されている最中の状態を指す漢字です。つまり、皮に「なめし」と呼ばれる加工を施すことで、製品としての革になるということ。
この皮をなめす作業を行っているのがタンナ―(tanner)です。

今回の記事では、皮が革になるまでの過程をだいぶ端折りながらではありますが紹介していきます!

タンナ―に皮が届く

タンナ―に届いた状態の皮は、食肉加工用の動物から副産物としてはがされただけなので、まだ耳や毛、血がついているだけでなく、腐敗防止のために塩漬けにされています。

 

 

皮を洗う、半分に裁断する

 

回転桶の中に皮と水、薬剤を入れて皮を洗っていきます。

この過程が終わると、付着している汚物や塩が取れて綺麗な状態になります。


タンナ―に届くのは、一頭分が一枚の皮になっている状態ですが、このままでは大きすぎてこの後の加工が大変とのことで、半分に裁断します。

表側の毛、裏側の脂肪の処理

別の回転桶に皮と薬剤を入れて回すことで、表面の毛を処理していきます。処理後の写真がこちら。

 


(濡れた状態の皮は水を吸っているので、女子大生が一人で持ち上げるのに苦労するくらい重い!)

毛が無くなって表面は綺麗になりましたが裏には脂肪がついているのが分かります。

薄茶色の部分が脂肪

次は、裏の脂肪をこそぎ取るのと皮の厚みを均等にするための機械にかけます。


後ろに見えているのが皮から取った脂肪。

山盛りです。

見た目も触り心地もソフトさきイカにそっくりでした。

タンニンでなめす

タンニンを皮にしみこませるとその成分が革の中のタンパク質と結合して、腐りにくくなる、裂けにくくなるなど皮の耐久度が上がります。

ちなみに皮をなめすのは主に「クロム」と「タンニン」の2種類があり、クロムとタンニンではタンパク質との結合の仕方が異なります。植物由来のタンニンは繊維を締めるように結合するので、靴底のようなしっかりとした革を作るのに向いていて、金属由来のクロムは革が柔らかく仕上がるので、レザージャケットのように革が伸びたほうがいい場合に用いられます。

こちらも、回転桶に皮と薬剤を入れて回転させながら、皮に薬剤をしみこませていきます。

 

洗浄、乾燥、皮をほぐす

ここまでの工程で様々な薬剤などを使ってきたので、皮をしっかりと洗った後に乾燥させます。
その後、回転桶で回す、振動を与える、洗濯物を干す時の要領で皮を機械で振るなど、タンナ―によって方法は様々ですが、皮を乾燥させたり、柔らかくするための加工が施されます。

一旦完成

端折った部分もありますが、ここまででこのタンナ―さんでの皮の加工は終了です。

写真は実際にペンケースに使用する皮ですが、柔らかく、表裏ともに綺麗な状態になりました。
最初に毛がついていた状態の皮と同じものとは思えない…!まさに、皮が革になる瞬間を目撃しました。

この後、この皮は別の職人さんの所に運ばれ染色されることで、商品を作るための素材として完成した状態になります。

 

日本における革産業の現状

今回、タンナ―見学をコーディネートしていただいたPLOTTERの斎藤さんと、KOKOROISHIの心石さんに革製品に関わる色々なお話をお聞きしました。

PLOTTER 斎藤さん
PLOTTER 斎藤さん
PLOTTERでは革手帳などの革小物や文房具を扱っているのですが、ここ数年で若い人の中で革製品の人気が戻ってきていると感じています。すごくコアなジャンルですが、革製品が非常によく売れているんですよ。。ただ、革製品の人気が高まっている一方で、革産業は衰退していっているという現状もあります。
心石さん
心石さん
日本のものづくりは分業制を取っているところが多く、革もそうですが、一つひとつの会社や工業の規模が大きくないので、今の革業界のように業界全体が縮小すると廃業してしまうところが多いんです。分業で作っているところの一つができなくなってしまうと、サプライチェーンが切れて製品そのものが作れなくなる。そうすると、体力のある大手の会社以外の会社はものづくりができなくなってしまいます。革産業もいずれそうなってしまう危機感があります。

国内で革産業が廃れていくと機械の整備なども海外に頼ることになり、さらにコストと時間がかかるためますます産業として存続させるのが難しくなる…という負のループが生まれつつあります。
また、日本において「ものづくり」は産業全体として縮小しつつあるという状況。そのため「いつなくなるか分からないので自分の子どもには継がせられない」と考える職人さんも多く、後継者不足が深刻な問題となっているそうです。

心石さん
心石さん
日本では、僕らメーカーが「こういうものが欲しい」と言うと作ってくれる職人さんがいて作るための技術があるので、イメージ通りのものが手に入るんですけど、これは世界的に見るとものすごく恵まれていて。でも、今の日本ではものづくりができる環境を大事にしようという風潮にはなっていないので、どうしても小さなところは廃業するしかないし、後継者も育たない。なので、日本のものづくりの文化が日に日に失われていると感じています。こうなってくると、製品の値段も抑えられないので、さらに人が離れていってしまうんですよね。

PLOTTER 斎藤さん
PLOTTER 斎藤さん
消費者がものを買うときに「その産業を存続させる」ということを考えるのはほとんどないと思うんですけど、ものの価値をちゃんと感じてそれに見合った対価を支払うという意識を持つことが産業の存続には不可欠です。
これからは、私たち作っている側も製品のことだけでなく、それが作られている背景こそしっかり伝えていかないとなと思っています

日本の革産業を盛り上げていくために

 

ガクセイ基地 すみ
ガクセイ基地 すみ
日本のものづくりや革産業を存続させるために、私たち消費者にできることはありますか?

PLOTTER 斎藤さん
PLOTTER 斎藤さん
一番は革製品の特徴を知ってもらって、その素材の優れた点を感じて実際に使って貰うことです。特に日本の消費者は変化しない綺麗なものが好きな方も多いので、革製品に対して「傷がついた」「気に入った色で買ったのに色が変わってしまった」というクレームをいただくことがあるのですが、私はそのように変化していくことこそが本物の革製品の良さだと思うんです。

心石さん
心石さん
すごく分かります。変化しないような加工をした革が良いと要望をいただくことが多いんですけど、全く変化しない綺麗な革は「革らしさ」が何もないような気がして。革は自然の素材なので、その自然さを楽しむことが良さだと。


(使っている内に味が出てくるのが革製品の良さ)

PLOTTER 斎藤さん
PLOTTER 斎藤さん
今は幸いなことにインターネットが発達して、私たち作り手が「自然の素材だから、傷がつくかもしれない、シワもある、変化していく。でも1点もので、これが革の良さだ」と、消費者に直接情報を発信ができる時代になりました。こうしたことをここ数年で地道に言い続けてきたのですが、その甲斐もあってか革製品のことを理解してくださるお客様が増えてきたと感じているので、私たち作り手が「人間と革製品の相性の良さ」や「革素材の道具は耐久性に優れるため環境負荷も少ない」などについて発信し続けることには大きな意味があります。
心石さん
心石さん
KOKOROISHIでヌメ革のソファを作りたいと言った時にも、買ったときの状態から変化する革はお客さんに受け入れてもらえないですよと反対されたことがあって。なので、うちは販路を絞ってちゃんと説明して売るところにしか卸さないという戦略を取りました。斎藤さんがおっしゃっていたように、ずっと説明し続けることで革製品本来の良さを理解していただけるお客様が増えてきていると感じています。
PLOTTER 斎藤さん
PLOTTER 斎藤さん
今回販売するロールペンケースで使用している革はエイジングを味わえる極みのような革です。さらに作られたときから個性があるのと、使えば使うほど味が出てくるので、1つとして同じ製品はありません。1点ものという事を楽しんで使っていただければと思います。

革製品の良さについてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。
革製品の魅力が存分に詰まったアップサイクルのペンケース【未来のPLOTTER応援プロジェクト#2】

 

まとめ・参加してみて感じたこと

たいき
たいき
皮から革になるプロセスをインターネット上の情報を見てなんとなく理解するのとは違い、実際に工場を見学して五感で感じた経験は「衝撃的」の一言に尽きると思います。食肉加工のと殺場からから届いた皮、なんとも言えないその匂いは生き物から作られてるんだなと、リアルでした。だからこそ、革製品を手入れして味わって大事に長く使っていこうと思いました。貴重な機会をいただき、ありがとうございました!
タオニー
タオニー
「ものづくりってすごいな…」って率直に思えた経験でした。もちろん知識としては知っていたけど食肉用の動物から副産物として剥がされた「皮」から「革」になるプロセスを加工順通り見て、初めて、革が本当に生きていた動物からのものだということを実感しました。今後自分がデザイナーとして活躍していく上でもクライアントだけでなく、作り手、使われる素材のことなども考えることを意識したいと思いました。

すみ
すみ
牛革などの言葉で革が生き物から作られているのは知っていましたが、普段は既に加工された牛の姿からはほど遠い革製品ばかりを見ていたので「革って生き物から作られているんだ…!」という、当たり前のことを忘れてしまっていたことに気がつきました。そんな天然の素材だからこそ、その革ごとの違いや、変化していくことなどを楽しめる消費者でありたいと思います。

おまけ

今回伺ったタンナ―さんでは太鼓用の革や豚革の加工もされていました。


これら↑は太鼓用の革。


こちらは豚革。日本の豚革は世界一とも言われるほど高品質でそれを作る技術があるにも関わらず、豚革特有の大きな毛穴が好かれないため、ほとんどが日本で加工されず海外に輸出されてしまうそうです。
確かに豚革の毛穴は目視できるほどに大きいですが、その分通気性が抜群なんだとか。靴の中敷きなどに使うと最高だそうです。

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