「PLOTTER」とは、未来を計画する人や 変化を生み出す人を表す言葉。
そんな未来のPLOTTERを発掘、応援したい!という想いから、文房具を中心としたクリエイティブツールブランドのPLOTTERとガクセイ基地がコラボをして行っている「未来のPLOTTER応援プロジェクト」。
ガクセイ基地メンバーのすみ、たいき、タオニーの3人は、PLOTTERの「レザーバインダー」のリングを支えているパーツ「バックプレート」を作っている3人の職人さんのお仕事を、PLOTTERの斎藤さんと中村さんと一緒に見学させていただきました。今回はその時の様子をご紹介します!
職人さん見学に出発!
職人さんの見学の調整をしていただいたのは、金属のパーツの卸売業をしている「水谷商店」の社長 水谷さん。
1つの製品に使用されているパーツはものすごく細かい分業制で作られていることが多いです。PLOTTERのバインダーもこのバックプレートを作るだけで4社が関わっています。水谷商店は金属のパーツを扱っている会社なので、バックプレートに関してはその4社の職人さん達に依頼を出してそれぞれ制作してもらい、出来上がったものをまとめて、検品して、メーカーさんに納品するというのが仕事です。
1件目・金属の棒をバックプレートのサイズにカット
1件目は金属の棒をバックプレートのサイズにカットし、パーツを固定する用の溝を入れる職人 さん。
PLOTTERのバインダーは縦のサイズが220㎜、180㎜、140㎜、120㎜と様々なので、金属をカットする機械を調節して長さを変えています。
こちらは金属を削って溝を入れるための機械。
業界には全自動で削る機械もあるそうなのですが、全て手作業で削っています。
手作業でやっていると、何か不具合が起こった時に指先の感覚で「なにか変だ」とすぐに気がつくんです。その時に溝のサイズを測ってみるとやっぱり少しずれていたりします。いち早く気がつくことで、無駄にする素材を減らすことができます
2件目・刻印、パーツ作成
次に紹介するのは、先ほど切り出したバックプレートに「PLOTTER」のロゴの刻印をいれるのと、革に刺す部分のパーツを作っている職人さん。PLOTTERのバックプレートには端から約3㎜の所にブランドの刻印が入っています。機械にバックプレートをセットして足で踏むことで刻印が押されます。
何千個と入れる刻印の位置がずれないように気を使っているとのことでした…!
この職人さんはバックプレートを革に刺す部分のパーツも作っています。
フープ状になっている金属を機械にセットして、型抜きの要領で素材を作っていきます。
プレート状になった金属を別の機会にセットして、足で踏みぬくことで金属を1つひとつ曲げていききます。
無心に1日作業を続けて約5000個のパーツができるそうですが、この作業だけをやり続けると集中力が切れて怪我につながることもあるので、他の作業の合間を縫いながらパーツを制作されているとのことでした。
3件目・ロウ付け
そして最後に伺ったのは、ロウ付け職人さんの作業場。
ここでは前出のバックプレートに入れた溝に、作ったパーツをロウで固定していきます。
粉状になっているロウに霧吹きで水をかけて液体状にしていきます。水が足りなさ過ぎても、多すぎても製品の品質の影響が出てしまいます。その日の湿度なども考えながらロウを作っていきますが、どのくらい水を含ませるかは長年の経験によって培われたカンで決めているんだとか。
ここでロウを付けすぎると、この後のメッキがけの工程でムラができてしまうので多すぎず少なすぎない一定の量で付けていると伺ったのですが、ものすごいスピードで作業されていました。まさに職人技…!
そしてロウを付けたら、バーナーを当ててロウを溶かし金属を固定していきます。
製品の耐久度テストで、ロウが取れないか機械を使って両側から引っ張ったところ、金属が取れる前に革が破れてしまったほど頑丈に固定されています。
バーナーの温度は800℃を超えるそうで、そばで見ていても熱気を感じました。エアコンを付けると温度が下がってしまうため、真夏でもエアコンは付けずに作業されているそうです。なんて大変なんだ…!と思ったのですが、職人さんは「もう慣れちゃった」と笑っていました。
ちなみに職人さんが使っているバーナーがこちら。
2つ使うことで高い温度を保っているんだとか。私も持たせてもらったのですが、ずっと持っていると手がプルプルと震えてくるくらい重いんです…!これを片手で持って1日中作業しているのは本当にすごい…!
今回は伺うことができなかったのですが、職人さんがロウ付けをしたバックプレートにメッキをかけると、PLOTTERのバインダーの一部であるバックプレートが完成します。
バインダーの中のほんの一部分を作るためにこれだけの人が関わっているというのは驚きでした。今回は金属の部分でしたが、他にも革やリングの部分といったそれぞれのパーツが同じように分業で作られているとのことで、一つの商品が作られるのに本当に多くの人の技術が詰まっていると感じました。
ものづくりに関して水谷さんにインタビュー
今回お伺いした3人の職人さんはみなさん60年以上このお仕事を続けている大ベテラン。ですが、後継ぎが見つからなかったり、利益が出なかったりで廃業する職人さんも多く、ものづくりにおける職人の技術がどんどん失われていると水谷さんが教えてくれました。
職人さんから「単価を値上げしたい」と言われたら僕もできるだけこたえてあげたいとは思っているのですが、水谷商店も卸売業なのでメーカーさんに値上げを打診しないといけないんですよね。でも、日本では「製品をできるだけ安く提供するのが良い。高いものは売れない」という考えでものづくりが行われてきたのであまり値上げを了承してくれない場合が多いんです。
大学で経営のことを勉強していても、下請け会社に依頼する段階でいかにコスト削減をするかを考えろと教えられました。コスト削減のために、海外の単価の安い場所でパーツを作ることがもう一般的になってきていますよね。
そうですね。ただ、外国の工場に依頼をしてクオリティが担保できるかは難しい所なんですよね。今は、僕自身が職人さんと直接顔を合わせて「もっとこうして欲しい」などのコミュニケーションがとれているからこそ、高いクオリティのものが作れているという部分はあると思っています。
ヨーロッパでは職人さんをすごくリスペクトをしていて地位もすごく高いのに比べて、職人さんの地位が低いというのは日本の課題だと思います。SDGsの目標に「働きがいも経済成長も」というのがありますが、ちゃんと職人さんに適切な賃金を支払って、職人さんにも利益を出してあげなきゃいけないと思います。消費者としては、買い物をする時に「安いから」と買うのではなく、その製品がどのように作られているかを知り、その技術に相応する対価を支払わないといけないと思います。
今日職人さんを見学するまで、1つの製品にこれだけ多くの人の技術が詰まっているっていうは全然知らなかったです。普段生活していて「ものが作られている過程」がパッとイメージがつかないというか、多くの人が関わっているんだと知る接点がないのも課題ですね。
やっぱりものづくり業界のことや、職人さんたちみたいな働き方があるんだということを知ってもらうことが一番だと思います。また知ったからといって必ず職人になってほしいということでもなく、普通に就職するというのももちろんありです。ものをたくさん買って経済を回していくことは、職人さんを助けて職人の技術を守っていくことにつながります。
コロナで経済の流れがゆっくりになったと言われていますが、ものづくりの業界は影響を受けましたか?
デパートなどがお店を開けない期間が長く商品を売る機会が減ったり、バイトが減った学生さんなどコロナで収入が減った人が多かったので『ものを買う』という行為自体がされなくなったりしました。そのため、2020年は受注がものすごく減りました。高校生の修学旅行や、大学生、インバウンドなどの旅行客が減ったことのダメージも大きかったです。
経済を回すことで職人さんの助けになるのにその経済が回らない…。最悪だ…!技術を繋ぐために、自分が職人になるのは難しいですが、その分たくさんお金を使って経済を回そうと思います!
まとめ・参加してみて感じたこと
この日は1日かけて水谷さんと一緒に3人の職人さんのところに回りましたが、その過程で水谷さんと職人さんたちの間にある信頼関係が垣間見れた気がします。機械に頼っているとはいえ、それを使ってものをつくっているのは人であって、その人たち一人一人に当たり前ながらパーソナリティーがありました。PLOTTERのバックプレートの制作を総合的にまとめている水谷さんは仕事を依頼している職人さん一人一人を常に、世間話も含めて話し合っていました。職人さんとのコミュニケーションを大事にしている姿勢はとても勉強になりました。
PLOTTERの制作過程は私にとって驚きの連続でした。職人さんに小さな部品を発注し、それをまとめてバックプレートを作成する水谷商店さんの仕事。そして、爪よりも小さな部品を1つひとつ手作りする、職人さんのプロ意識の高さ。工夫と知恵が織りなす技術は、失ってはいけないものだと感じました。しかし、どの職人さんも後継者不足に悩まされており、遠くない将来にPLOTTER製品を作る職人さんがいなくなり、作れなくなる可能性があります。どうやったら、この技術を将来に繋げていくことができるのか、難しい問題です。この度はこのような機会をいただき、ありがとうございました。
「職人さん見学」ということで、熟練の技術を見ることができるんだろうなぁとは思っていたのですが、正直予想以上でした。レザーバインダーという製品の中のバックプレートという一部分だけをとっても、こんなにもたくさんの技術が詰め込まれているという驚き。ものすごく生活が豊かになった現代では「作る人」と「使う人」の間に距離が生まれてしまいました。身の回りにあるたくさんのものも同じように「誰か」が作っているにも関わらず、使う側の「安く買いたい」というニーズで職人さん達の生活と技術を圧迫しているのは、すこし無責任が過ぎると思いました。ミリ単位のずれも許さないほど正確なものを何千個、何万個と作り続ける職人さんたちへのリスペクトを忘れない消費者でありたいです。貴重な経験をさせていただきありがとうございました。
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