大学生から身に付ける!クリエイティブ思考 第2弾!!
これからの時代に必要な力とは?!でもお伝えしましたシリーズの第2弾!(まだ読んでいない方はぜひ読んでみてください!)
実際にクリエイティブな仕事をしている方からヒントを得るために、インタビューを行いました!第1弾では、日清食品株式会社の方に取材しました(→期待を超えるアイデアを生み出し続ける!/日清食品)
今回は、デザイン思考を用いてビジネスを行っている株式会社ドングリのCEO&FOUNDERのミナベ トモミさんにお話を伺いました!
―よろしくお願いします。まず、どのようなビジネスを行っているのか教えてください。
企業の様々な要望に対応しています。商品開発、企業ブランディング、販売促進、集客など、モノを作るところから売るところまでのコンサルティングをやっています。ジャンルは特に絞っておらず、お客さまからご相談いただいたことを、お互いにアイデアを出し合いながらおこなっています。
―実際のビジネス事例を教えてください。
例えば子供用の足袋を作ったことがあります。妊娠中の女性のサプリメントを作っている企業で、母親をターゲットにした違うジャンルの商品を作りたいというご相談をいただいたことがきっかけです。一緒にアイデア出しをして、商品の構想から、製造、販売までを行いました。足袋は日本では技術があまり継承されておらず、日本での生産が難しかったため、海外の工場で生産しました。
食品では、歌舞伎座のお土産のお菓子「歌舞伎隈取りづくし」のパッケージのデザインとイラストを手がけました。日本的なデザインがお土産として好評です。
こちらは健康器具の商品なのですが、店頭にこの商品が置いてあるとき、パッと見てどのように使うものかわかるように、パッケージのデザインを工夫しました。
この他にも、フェイスパックやウィッグなど、手掛けた商品は様々なものがあります。
―なぜそんなにもいろいろなジャンルのビジネスを手掛けることができるのですか?
だいたい、どの商品も作り上げるプロセスは一緒なので、ジャンルを絞る必要はありません。私たちの会社では、「デザイン思考」を用いることで、様々なジャンルでビジネスをおこなっています。
―すごいですね!デザイン思考について教えてください。
「デザイン思考」とは、アメリカの有名なコンサルティングファーム「IDEO」が開発し、全世界に広めたものです。世の中の問題を解決するようなアイデアを次々と生み出す天才的なデザイナーの考え方を、一般の人も使えるように編み出された思考方法です。
具体的な方法をお伝えすると、まずはユーザー調査から入ります。ターゲットとなる人にインタビューをし、細かい要望から不満やストレスまですべてを聞き出します。多くの場合、不満やストレスにヒントがあるので、そこをもとにブレストをして、アイデアをとにかく出します。そのアイデアをもとに、完成品を決める前にいくつかプロトタイプを作ります。そして再度、そのプロトタイプについてのユーザー調査を再度行い、今までのプロセスを何度も高速で回していきます。
デザイン思考の反対の考え方にビジネスの基本的なスキルと言われている「論理思考」があります。一般的には論理思考で物事を進める会社が多いです。デザイン思考とは異なり、「AだからB、BだからC、CだからD」という順番で考えを進める思考方法です。
ビジネス思考では、最初に問題Aがあり、それが原因でビジネス課題が引き起こされている。その課題を解決するための企画をたて、それをもとにデザインし、ユーザーのもとに届けるという進め方です。この考え方はユーザーが出発点のデザイン思考とは逆の進み方をしていることがわかると思います。
私たちの会社はデザインコンサルティングファームなので基本デザイン思考を大切にしています。ですが、お客さまである日本の企業のほとんどは論理思考を使っているので、デザイン思考で考えた案を論理思考で企画提案しています。デザイン思考と論理思考、両方の考え方をできるようになるのが理想です。
―実際にデザイン思考を使った具体的な事例を教えてください。
過去に、新しいアイラインを作るという事案がありました。はじめにユーザー調査をしたところ、通常のアイラインだと引くときに持ち手のところが滑ってしまうという不満が多くあったんです。その意見をもとに、ブレストをした結果、持つところを8角形にして握りやすくするというアイデアがでました。このアイデアをもとにプロトタイプを作り、もう一度ユーザーに試してもらって、ブラッシュアップを繰り返し、商品を開発しました。
―アイデアをすぐ形にして試行錯誤を繰り返すのですね。「デザイン思考」では、たくさんのアイデアを出すことが大切だということですが、そのためのコツは何かありますか?
“質より量”を徹底することです。思いついたことを、「周りにダメ出しされるかもしれない」「くだらないアイデアだから出すのは恥ずかしい」といった理由で出そうとしないのはもったいないことです。ですので、とにかく量を出すためには、アイデアを言いやすい環境が整っていることが大切です。例えば、どんなアイデアでも「いいね!」とほめ合う、一人が話しすぎて周りが黙ってしまうことがないようにする、討論はしないなど気を付けています。
―たくさんアイデアを出すと、それを絞る時に意見が対立しませんか?
何も決めないで、突然アイデア出しから始めると対立します。なので最初に、出たアイデアを選ぶときの基準を明確にしておくことが大切です。アイデアを出す段階ではこの基準は気にせずにガンガン出して、後で見てみると、大抵の場合、基準に当てはまるものがあります。
―「デザイン思考」を身に付けるためには具体的に何をすればいいですか?
デザイン思考は実際に使っている人から学ぶのが一番なので、そういうワークショップやインターンに行くのが早いと思います。ただ、デザイン思考を普段から使うことでも鍛えることができます。
私が学生の頃は、レポートを書くときなどに使っていました。最初から順番に書いていくのではなく、最初に含めるアイデアをメモしておき、それらの順番を組み替えて書いていくとかかる時間が3分の1くらいになるんですよ。
―海外では「デザイン思考」は使われていますか?
はい。海外のほうが断然デザインの地位が高いです。日本だとデザインはデザイナーが関わることという認識が強いと思いますが、アメリカではIDEOというデザイン会社が、日本でも有名な「ボストンコンサルティング」や「マッキンゼー」の競合となるほどです。
デザイン思考は様々なことに使える有効な思考方法なので、もっといろいろな人に知ってもらいたいと思っています。ですので、会社の大きなビジョンとして「社会でデザインの地位を上げたい」「デザイン思考やクリエイティブ思考を世の中にもっと普及させていきたい」を掲げています。今はデザイン思考を学ぶ機会も少ないので、いつでも学べる環境を作り、デザインがビジネスにおいて有効な思考方法だということをもっと世の中に認知させたいです。
―最後に、学生に対して何かメッセージはありますか?
「考え込むよりもやってみよう」という気持ちを持ってほしいです。優れたデザイナーほど、「難しいことは考えずにとりあえず消費者の話を聞いてみよう」「プロトタイプを作ってみよう」などフットワークが軽い人が多いです。
ただ、「やってみよう」と思って何かに挑戦するとき、多くの人は失敗を恐れてしまうと思います。それを乗り越えるためには「自分のビジョンを大切にすること」が重要です。目の前の”to do”を目的としてしまうと失敗をしたときに心が折れてしまいます。しかし、「自分が何のためにそれをしているのか」というビジョンを持っていると、失敗してもそこから学んで次に進むことができます。ビジョンを達成するための方法は1つではないので、失敗しても違う方法で、またチャレンジできるんですよね。
―ミナベさん、ありがとうございました!
(編集後記)
今までぼんやりとしていた「デザイン思考」の思考方法や、なぜそのようなものが生まれたかについて知ることができました。また、会社自体も「デザイン思考を日本に広める」という大きなビジョンがあり、実はミナベさん自身も「いつかデザイン思考についての論文を書きたい」という目標があるそうです。なんのために自分はこれをやっているのか、という大きなビジョンや目標を持つことが大切なのだとわかりました。
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