NHK放送番組には大河ドラマや朝ドラ、報道番組など様々な番組がありますね。
みなさんは映像に映っているものを裏で支えている会社があることをご存じでしょうか?
ドラマやニュース、情報番組などで使われる
セットからコンピュータ・グラフィックや模型。
さらに出演者のメイクから衣装、風に舞う花びらまで。
実はこれら
「出演者自身以外の目に映るものすべて」の美術を裏で支えている会社が
本日ご紹介するNHKアートです。
目次
株式会社NHKアート
総合美術会社として
公共放送の美術業務全般を担うと共に、
番組制作で培ったノウハウを結集し
各種文化事業やホール運営事業を通して社会貢献を行っている企業。
事業内容
1. NHK放送番組の美術制作業務(デザイン・美術進行・道具類の調達他)
2. コンピュータ・グラフィックスソフトの企画・デザイン・制作業務
3. 催事、展示、装飾の企画・構成・デザイン・制作・施工および運営業務
4. 文化施設・博覧会等の企画・デザイン・設計・施工および運営業務
5. ホール・舞台の管理・運用業務
今回は、入社5年目のドラマ美術で美術進行を担当されている西村修司さんにガクセイ基地がお話を伺いました!
-美術進行の仕事はなんでしょうか?
「美術」を手配していくものです。
具体的には、まず演出(監督)の意向やデザイナーのイメージをくみ取り、時間と予算を管理します。そして、大道具、小道具、造園、電飾、そして演者のメイク・衣裳・持道具・履物、さらには食事から特殊効果といった、多岐にわたる専門パートの方たちに協力してもらいながら舞台をつくり、演者の皆さんをドラマの舞台にひきこんでいきます。
また、美術の現場責任者として、安全に収録を進められるようにするのも、私たちの大切な役割です。 大人数の美術スタッフをまとめる番組がある一方、小さい規模の収録では、自分ひとりでなんでもこなす、オールマイティプレーヤーとしても動いたりします。
-現在の仕事内容について教えてください。
私は現在、連続テレビ小説(以下略:朝ドラ)を担当しています。朝ドラは半年間の毎日の放送というものなので、3人の美術進行で連携を取りながら進めます。通常1週間の収録は3,4日で、前日のリハーサルを含め5日間を1人の美術進行が担当し、3人で毎週ローテーションして収録を進めていきます。
セットやメイクなど違和感なく繋がるように3人の連携はとても重要になります。 引き継ぎ後は、自分の担当がまわってくるまでの2週間を使って収録の準備等を行います。
-準備とは具体的にどのようなことを行うのですか?
最初に監督との打ち合わせを行い、台本を見ながら各シーンで必要なものを確認していきます。 次に必要なセットを図面を見ながら製作し、時にはロケに適した場所の選定、また時代考証なども行います。
-仕事をする上で心がけていることはどんなことですか?
いかにまわりの人を巻き込めるかということを意識して仕事をしています。 例えば造園であっても私の独断で全てを決めるのではなく、専門の方に話をもち掛けて、協力して進められるよう心掛けています。
またセンスが問われる仕事でもあるので、新しいことに常に貪欲でいるようにしています。 基本的にデザイナーさんからは色合い等の大まかなイメージの情報を与えられるので、あとは私たちのコーディネート次第になります。
オシャレなドラマでは特にセンスが問われますから、日々街を歩いているときにもアンテナを張るようにするなど努力するようにしています。
-西村さんの入社のきっかけは何だったのでしょうか?
小学生の頃、母親と行ったホールのコンサートで舞台の格好よさに魅了され、感動がずっと残っていたのがきっかけです。高校は建築系の学校に通っていて、大学生の時はテレビ局で大道具のアルバイトをしていました。 そうしているうちに、自然と将来もテレビ美術をやりたいと思ったのです。
中でも、NHKの番組は特に規模が大きく感じ「ここで働きたい」と感じるようになりました。
-入社して知った会社の魅力はありますか?
社員の方たちがみんな、新しいことに敏感であるということです。
テレビは最先端を走るものであるため、その中で働く人たちは常に、世の中に対してアンテナを張っています。 社内にいる年配の先輩方もみんな驚くほど感覚が鋭く、「このセットには、こんなのあったらどう?」と新鮮な意見をいただけます。常に周りからは刺激を受けています。
-印象に残っている仕事はありますか?
入社して半年ほどの頃に体験したNHK紅白歌合戦の仕事が一番印象に残っています。 日付の感覚がなかったですね。
当時は、NHKホールでは紅白歌合戦の本番である12月31日に向けて29日から夜遅くまで準備を行っていました。
そして本番終了後の1月1日からすぐにセットの撤去作業が始まるのです。毎年1月3日に「ニューイヤーオペラコンサート」を行っているので、すぐに新しいセットを立てなければいけません。
入社半年の頃、まだ仕事がよく分からない時期であり余計に厳しかったのですが、今では良い思い出です。
-仕事のやりがいはどんなことですか?
自分たちが造ったものが映像として多くの人に見てもらえることにやりがいを感じます。
この船の模型をご存じでしょうか?朝ドラ「花子とアン」を見て下さっていた方はご存じかと思いますが、これは花子の兄・吉太郎が船を大好きな歩にプレゼントしたものです。
昭和の設定だったので、手作り感が欲しいということから実際に自分で手作りしました。このように自分が手掛けたものが物語の中で生きてくることにとてもやりがいを感じています。
-身に付けたいスキルがあれば教えてください。
現在は料理のスキルをもっと身に付けたいと思っています。というのも撮影の中で料理を扱う機会が多く、盛りつけなどのセンスが問われるためです。料理はアップで撮影されることも多いので、もっと料理のセンスを磨けるように努力したいと思っています。
またセンスを磨くという点では、常に新しいことに敏感でいることも必要なのですが、他の番組を多く見ることも大切だと感じています。
他社の番組を見たり、社内で他の人が担当している番組を見に行ったり、美術館によく足を運ぶ方もいます。
-美術の専門学校を出ていないと働けないのでしょうか?
NHKアートの採用では学部学科不問なので、美術大学や専門学校を卒業していない方でも働けます。 例えばこの「花子とアン」で出てきた古い英和辞書の古びた質感も、美術的センスがあれば専門学校を出ていない人でも再現することが出来ます。
実際にNHKアートでは美術大学以外を卒業した方でも、美術的センスを生かして活躍している人は沢山います。 最近の新人は、ほぼ半分が美術大学以外の卒業生です。
-この仕事が向いている人はどんな人ですか?
美術進行は多岐にわたる美術パートの方たちをまとめる役割なので、あまり神経質過ぎず大らかな性格の人が向いていると思います。
また、監督の意向をくみ取りつつも、現実的に可能かどうかの判断ができるよう柔軟に対応する力も必要になってきます。
-最後に学生へメッセージをお願いします。
「~がしたいからこの会社に入りたい」ではなく、「~が出来るからこの会社に入りたい」という姿勢の方が私は大事だと思います。
私は学生時代から社会に出て、自分の能力を磨く努力をしていましたが、その時社会に足をのばして学んだことはいまに生かされていると感じています。
みなさんも自分の身に付けた能力で会社やその業界の文化に貢献するというような意気込みを持って色々なことにチャレンジしていってください。
-END-
こだわりが詰まった
セットの様子
~平成26年度放送・朝ドラ「花子とアン」より~
【村岡花子の生家・安東家のセット】 オープンセットとして、山梨県に建設されたそうです。 茅葺き屋根から草を生やすなど、築100年くらいに感じられるような工夫が至る所になされています。
【村岡花子の生家・安東家の内部セット】 土や藁の香りがするようなセットに仕上がっ ています。
ドラマの舞台となった明治中・後期から終戦後20年はまだまだ鉄不足という背景もあり、なるべく鉄を使わないように工夫されたそうです。
お鍋も鉄ではなく銅のものを使用するという徹底ぶり。
【「カフェタイム」の小道具】 花子の妹・かよの優しい人柄のような優しいマッチ。 こういった小道具もドラマのために作るそうです。
【「カフェドミンゴ」食事セットスタンバイの 様子】 かよが最初に働いていた「カフェドミンゴ」 で開かれるパーティー料理が準備されている 様子。 こういったドラマの料理は調理師免許を持ったスタッフ の皆さんが作るそうです。
【「修和女学校」図書館の本の様子】 美術の工夫により、見事に年代を感じさせる雰囲気に仕上がっています。
【「修和女学校」のシーンをロケで収録した際の様子】 桜の花や花びらも美術として作られているんだとか。 この花びらをすべて清掃するところまで美術の仕事だそうです!