「オールナイトニッポン」特集!
ラジオ業界の裏側を大公開するこの企画では、その仕事について詳しくお伝えするためにニッポン放送「三四郎のオールナイトニッポン」ディレクター・アシスタントディレクター・放送作家の方にインタビューさせていただきました。
この記事では、アシスタントディレクター(以下、AD)の荒木優太郎さんのインタビューをお届けします!
ニッポン放送「三代目J SOUL BROTHERS山下健二郎のZERO BASE」をはじめとする様々な番組でディレクターをしている。「三四郎のオールナイトニッポン」ではADを担当する。
―早速ですがディレクターとADの違いを教えてください。
ディレクターもアシスタントディレクターも経験したうえでの話ですが、ディレクターは番組全体の統括をしています。ADはその補佐。ポジション的にはディレクターの方が上だけど、ADがいない と番組ができないなとは思います。
効果音やBGM・CM明けの音楽など音を作るADがいないと番組は完成しません。ポジション的な上下はあるけど、ADから演出を提案して通ることもよくあるから、そういう意味ではフラットな関係です。
―入社前に思っていたディレクター・ADの仕事と実際の仕事に違いはありましたか?
自分で番組を作れるということは一致していましたね。逆に一致しなかったのは、働いている人たちの印象。ラジオディレクターはみんな神様みたいに完璧な人達だと思っていたんですけど、みんな意外と普通の人間なんだって実際に仕事をしてみて思いました(笑)みんな強みになる部分だけじゃなくて、弱い部分もちゃんと持っている。弱い部分があるからダメとかではないんですけど、そういう部分がある以上は完璧な番組はないんだなと思うようになりました。
―その違いを意識して仕事をしていることはありますか?
メディア業界の仕事は年功序列みたいな部分があると思っていたんですよ。でも今は、仕事の役割は違えどADもディレクターも思いついたアイデアなどを口にしないといけないという部分は同じだと感じているので、入りたてだから大人しく…とかではなくガンガン行きたいです。
先輩後輩とはいえライバルでもあるから。もちろん経験や実績が違うから同じ土俵に立っているわけでもないんだけど。でも、ここもっとこうしたらいいのにとか、何かしらを考えていかないと、自分の色が出てこなくなっちゃうから。
―入社してからはどんなお仕事を?
最初はADですね。先輩方にアドバイスを貰ったり、打ち合わせに参加して番組の雰囲気をつかんだりしていました。ある程度仕事ができるようになったら、少しずつ企画を自分で考えるようになって、色々なタイミングが重なってディレクターになったって感じかな。
―タイミング、ですか ?
僕は、入社2年目からディレクターを任されていたのですが、深夜帯のディレクターが足りていないからっていう理由もあって…(笑)。一般的にも、色々な経験をしたスタッフがディレクターになるというイメージじゃないですか。なので、自分でも「俺がディレクターでいいの?まだ2年目だよ」って思っていました。でも、実はこういうチャンスが一番重要だと思っていて、誰かに任せなきゃいけないタイミングで、自分がある程度できるようになっていなきゃいけないしね。結局タイミングが重要なのかなって。
―ラジオ業界に入ったきっかけは?
元々ラジオが好きだったので、何とかしてラジオに関わる仕事につきたいと思っていました。専門学校にいたときにエルファクトリー(ミックスゾーンの前身会社) からインターンの募集が来ていたので、迷わず応募しました。運よく合格してインターンを始めたのですが、担当していた番組が3か月で終わっちゃったんですよ。ディレクターさんに「できるならインターンを続けたい」って言ったら、ディレクターさんが担当している別の番組でもお手伝いをさせてもらえることになりました。そうしてインターンを続けているうちに、別の番組も手伝ってくれない?って言われるようになっていきました。業界に飛び込んだことで生まれた、人とのつながりとかめぐりあわせが仕事につながるんだなと感じました。
―荒木さんはいつからラジオ業界に入ろうと思っていましたか?
高校生の時とかかなぁ。もともと親父がラジオをよく聴く人だったので、小中学生の時から何となくラジオは聴いていました。ちゃんと聴き始めたきっかけが何かは覚えていないけど、聴き始めてからすぐ「面白いじゃん!」と気づいたので、ラジオにはまるのに時間はかからなかったな。高3で進路を考えなきゃいけない時期になって、自分に何ができるかを考えても特に思いつかなくて。それなら好きなことを仕事にしたいなと思ったので、ラジオかなぁと。色々とあって大学には行けなかったので、ラジオの専門学校に行くことを決めました。
―「三四郎のオールナイトニッポン」ディレクターの石井玄さんも大学卒業後、専門学校に入りなおしたとお聞きしたのですが、ラジオ業界に入るためには専門学校に行かないと難しいのですか?
そんなことはないですよ。専門学校に行っていても、最初からなんでもできるっていうことではないです。経験値は現場に行かないとつかないので、その点では専門学校に行って知識をつけるのも大卒で入社するのも同じです。なので、ラジオに関わる仕事がしたいと思ったら、とりあえず業界に入ってしまうのが何より重要なのかなと思います。
―ラジオ業界に向いているのはどんな人ですか?
何かにマニアックな人ですね。あと、好きなことをちゃんと人に伝えることのできるコミュニケーション能力がある人。
「好きなことについてならいくらでも話せる!」というのは普通だから、その“好き”が多ければ多いほど、この業界では戦いやすいと思います。野球選手に例えると、投げられる変化球は多ければ多いほどいい、みたいな。
―自分の武器になる“好きなこと”を見つけるためのアドバイスなどはありますか?
自分の日常をゆっくり振り返る時間を作るといいかもしれません。気づいていないだけで、今これハマっているなとか、自分このことについて詳しいな。っていうことが見つかるはず。そういう物からは絶対に何かを貰っていると思うんです。教訓とか、こんな風になりたいなみたいな感じで。だから、自分の日常を振り返る作業は、自分の好きを見つけることにつながるんじゃないでしょうか。
―ラジオはこれからどのようになっていくと思いますか ?
最近はYouTubeの人気がどんどん上がってきていますよね。多分、3分とか5分とかの短いコンテンツが多くて、忙しい中でもパッと見れるのが人気の理由だと思っています。だから、1時間のラジオもパートが細かく分かれるんじゃないかな。例えば、「オールナイトニッポン」みたいな長い番組の中で、話の一部だけを切り取って何かで配信とかね。「オールナイトニッポン」とかは、そのパーソナリティのファンが聴いているから、長く話していても聴いてもらえる。だけど、ファンじゃなかったら長時間のラジオを聴くのってものすごく大変だと思う。だから、ラジオのファンを増やすことためにもコンパクトな番組は必要だとなんじゃないかなと。
―荒木さんはどんなディレクターになりたいですか?
ニコニコ生放送の番組とかTokyo Game Showのイベントのディレクター担当したりもしたことがあるんですけど、ラジオだけじゃなくて色々なコンテンツで活躍できるディレクターになりたいです。それが実現できたら、相当面白いことが出来るっていうことだし、人をまとめる力があるっていう証拠になると思うんです。
―仕事をする際に意識していることはありますか?
ビビらないで強気で行くことです(笑)。僕はまだ5年目っていうこともあって周りのスタッフがみんな年上なんですよ。だから、びびってたら仕事にならないんです。
―リスナーのことを意識して番組制作はされていますか?
してます。でも、100%リスナーの求めていることを叶えるのが、100%番組のためになるとは限らないと思うんです。リスナーはパーソナリティの話が聴きたかったりと、「パーソナリティの何か」を求めてラジオを聴いているはずなので、ただリスナーの反応だけを気にしていたら、中身が狭まっちゃうと思うんです。
例えば、僕は3月まで放送されていた「山下健二郎のオールナイトニッポン」のディレクターをしていたんですけど、聴いてくれたリスナーのほとんどはファンのみなさんだと思うんです。でもだからって、三代目の曲だけをかけるのは番組の役割じゃないと思うので、トークの中で話題になった曲や、山下さんが直近でハマっている曲をかけることで、パーソナリティとリスナー(ファン)の距離をさらに近づけるようにすることが番組のためにもなると思っていました。
―ラジオ業界の魅力とは?
一つの番組に関わるチームの人数がものすごく少ないことです。文化祭の出し物とかをしている気分なんです。予算も人数も限られているなかで、いかに面白いものを作るかの挑戦。ものすごく大変だけど、大変なことが楽しいっていうのも文化祭の準備と一緒(笑)。
―ラジオ業界を目指す学生に何かメッセージをお願いします。
ラジオ業界を目指しているなら、とにかく業界に入ること。何かしらで業界に入れば、人とのつながりや、縁・タイミングが生まれるから。こういうのは入らなければ生まれないから、知識とかスキルとかは気にせずとりあえず業界に入ってしまうこと。入ることが一番のチャンスだと思います。
―ありがとうございました。
今回「オールナイトニッポン」特集でインタビューさせていただいたお三方。
左から、AD・荒木さん。ディレクター・石井さん。放送作家・福田さん。
今まで様々な業界の方に取材をしてきたのですが、こんなに仕事対象が「好き」という方々はいなかったと思います。
面白いものを作りたい!と思っている方々が本気で作っているものだから、自分は「ラジオ」の魅力に惹かれたのかもしれないと思いました。今回取材をさせていただいて、ますますラジオが好きになりました!
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