小学校、中学校で使っていたドリル、高校で使っていた参考書、そして現在大学生になって使っている英会話参考書など、学生の私たちにとって身近な「参考書」
今回は、学習参考書の小中部門でのシェアナンバーワンを誇る学研プラスに取材にやってきました!
高校教育コンテンツ事業部教材編集室で編集長としてご活躍されている細川さんに、参考書の制作過程やこだわっていることなどをお伺いしました。
―よろしくお願いいたします!はじめに細川さんのお仕事について教えていただけますか?
私は高校生向け参考書の部署で働いています。主に学校の勉強に合わせた日常向け学習参考書や大学受験用の参考書を制作しています。
その他にも英検やTOEIC、英会話、語学書、色彩検定などの検定学習書など幅広く「学び」にかかわるカテゴリーを担当しています。そのほかには、TOEIC対策書や、ディズニーとのコラボ参考書などを制作してる担当もいますよ。
―それでは参考書の制作過程について教えてください。
初めに企画を考えます。編集者が発案する場合もあれば、著者の方のご提案から企画を生み出す場合もあります。
企画書が完成したら、編集部の会議に提出。そこで承認が得られたら販売部との企画会議で企画をより細かく練っていきます。
そしてようやく構成や目次などの骨組みづくりに入ることができます。
―企画書の段階で、2回の会議において審査されるんですね!どういうところが承認のポイントになるのでしょうか?
学習参考書の場合は、すでに定番といえる多くの人が使っている参考書が存在しています。定番を切り崩すのはとても難しいことですが、常に新しい切り口があるかどうかを模索しています。
またいろいろな参考書のメリットをいいとこどりして制作する場合には、そのメリットをさらに改善ができるどうか、オリジナリティーが入っているかがポイントになります。
―学研のオリジナリティーとはなんでしょうか。
学研の特徴は「親切さ」です。
最近、英検の参考書をよく手に取っていただいていますが、付属CDにはリスニングだけでなく、2次試験の音声までついているんです。
どうしたらより読者に親切になるかを常に考えています。
―ターゲットの選定なども企画の段階で行われるのですか?
もちろんです。ターゲットを選定したうえで骨組みづくりに入ります。ターゲットに合わせて、解説の詳しさやボリュームなどを決定します。
骨組みが完成したら、次は中身のデザインを考えていきます。ブックデザイナーの方に依頼をして見た目を考えたり、イラストレーターの方に依頼をして参考書に登場するキャラクターを生み出したりします。
―てっきり参考書の制作は出版社内で完結すると思っていました。
出版社の人間以外に著者、デザイナーやイラストレーター、校正者、印刷会社、語学書であればその言語のネイティブの方など外部とのつながりはかなり多いです。1冊の本に10人以上が携わっているんです。
編集者の一番の仕事は、いかにプロを招集しマネジメントするか、なんです。
―中身のデザインが完成したら次は何をするのですか?
著者の方から原稿をいただき、それをデザインに流し込む、通称DTPと呼ばれる作業を行います。
そのあと、内容が正しいか、見やすいか、分かりやすいか、など様々な視点から校正者がチェックをしていきます。
―中身の構成で重要なことはなんでしょうか。
文字量やイラストの多さはとても重要です。
詳しい解説が多いほどいい参考書、とは必ずしも思いません。勉強が苦手な子にとっては、文字量が多ければ多いほど敬遠してしまう傾向にあります。本の厚さも同様に、あまりにも分厚すぎると、「やり切れるだろうか」と不安になり、やる気をそいでしまう可能性もあります。
一方で勉強が好きな子はイラストばかりの参考書だと満足ができなかったり、解説が少ないとやりごたえを感じなかったりします。
―ターゲットにあったちょうどいいバランスを生み出すのはとても大変そうですね。
私たち、参考書を買う側はどのようにして選ぶのがおすすめですか?
実際に手に取ってみて、できそうかどうかを判断するのがいいと思います。
その点では本のカバーも選び方のポイントになってきます。
中身のデザインが完成した後に、デザイナーの方に依頼をしてデザインやキャッチコピー、イラストのカバーイメージを作り上げていくので、カバーと中身とでギャップがある参考書は少ないんです。
カバーの見た目がとっつきやすい感じならば、中身も比較的取り組みやすいですし、堅い感じのカバーはやりがいのある内容、ボリュームになっていることが多いです。特にタイトルやカバーデザイン、キャッチコピーは、どのターゲット層が買うのかを明確に意識しながら作るので、たとえばやさしい内容の参考書はそのような見た目やタイトルになっているはずです。
―参考書の完成までにかなり多くの過程があるんですね!
1冊の参考書を作るのにどれくらいかかるのでしょうか。
高校生向けの参考書は、内容が難しく文字量も多いので、完成までに1年から1年半ほどかかります。そのため複数の参考書を並行して制作していくことになります。私の場合は、通常10冊くらいを並行して作っています。
校正は短くて3か月、長くて半年くらいですね。またデザインも一度作ったら完成ではなく何度も何度も作り直してより良いものを生み出そうとしているので多くの時間を要します。
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