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商社マンから転職、対極の世界から見える真理とは!?(江戸鼈甲屋/石川浩太郎様)

 

 

—学生に向けてのお言葉をお願いします

 僕が最近見てて思うのは、すごく危機感がないのではないかということです。僕らの時代は就職率が非常に低かったため、みんな喰うか喰われるかって状況の中で過ごしていました。だから、僕らの世代は欲求の塊なんです。お金をある程度稼いでいたとしてもまだ不安なんですよ、いずれ無くなるんじゃないかって。いい大学行っていい企業に就職すればそれなりに将来が安定しているってことを神話として生きてきたのに、僕らが就職する過程になって親がリストラくらったりして、その神話が思いっきり否定されました。親がそうなる様子を見てきているから、恐怖心が植え付けられているのでしょう。

 少子化になって人も足りない今、そんなに仕事に困ることはないんじゃないかと考えてる人もいるように思います。僕は海外にいたので今の日本の変革をよく感じているのですが、おそらくそんな簡単な未来にはならないと思っています。今後日本はおそらく、移民が増えるでしょう。そうしないと労働力が確保できません。20年後くらいには1億人程の人口になってしまうだろうから、納税と労働力が圧倒的に足りなくなります。そうすると、ある程度基準を緩くして、海外から労働力を入れなければならなくなります。今も結構きているけれど、東南アジアの人たちはすごく能力が高いです。その人たちと今の学生は勝負していかければならないでしょう。それを感じていないように思えます。危機感を持ちなさいとまでは言いません。ただ、よく「ある程度の水準で生きていければいい」という言葉を耳にしますが、僕から言わせれば、ある程度の基準を維持できるのって並大抵の努力じゃないですよ。日本はアメリカの真似をしているので今後は競争が増えて行くでしょう。そうなるとある程度の基準をキープできるのは20代30代まで、40代は新たな20代が生まれてきて上の世代は必要なければ切られてしまいます。「ある程度の水準で生きていければいい」はよっぽどの努力と自信がなければできないでしょう。

 もちろんすごいイメージと向上心を持って努力されている方はいらっしゃるでしょう。しかし、そうした方とそうでない方との格差はとても大きいのではないでしょうか。もちろん僕らの時も危機感のない人はいました。しかし、危機感を感じてないのはわずか10%程でした。とはいっても、世の中は面白いことに危機感を感じてない人が逆に成功したりもしてしまうのですがね。

 その危機感が欲にも繋がります。車はいらないという若い人の考え方は、確かに合理的です。しかし僕らの時代、車はある種のステータスなのでそれを目指さなかったら、何を基準に仕事していいかよくわからなかったのです。今の人たちのほうがよっぽど合理的で、金が全てではないという部分にもう行き着いています。

 ここも、陰と陽なんですよね。暮らしが豊かになって恵まれた環境で育っているからお金じゃないと考える。僕らは嫌いとか好きとかどうでもよくて、基準はお金にありお金をいくら稼げればという価値観がありました。だから、いい車やいい家が成功者の証になるのです。でも何が成功の基準なんてはっきり言ってわからないし、それは人それぞれです。釣りバカ日誌みたいに、釣りだけやって生きている人もいるし、それが楽しいと思えばそれがその人にとっての成功なのだけど、僕らの世代はそうゆうのがありませんでした。お金は稼ぐものだと思っていました。

 

—欲が原動力になるのですね。では、最後に一言お願いします

 誰にでも自分の見えていない部分というものが必ずあります。自分たちが思っている常識や未来が全てではありません。今、学生の時代に興味があろうがなかろうが知ることこそが大切です。いろいろ見てほしいですね。僕も家元が伝統工芸でなければここにはいなかったでしょう。でもこの業界に入ると家は関係なくいろんな部分が見えるようになりました。だから、もっと早く気づけばよかったなという思いがあります。学生の時って、自分の目標や夢は自分の知りうる知識でしかないんです。自分の理想の人がいるとしても、その人はすでに現実にいて、その人しかありえない姿なのです。僕はそうゆう見方しかしてこなかったので、とてももったいないことをしたと後悔しています。

 全然違う部分に位置しているものも見てほしいです。最新のアプリが出たら最も旧式のアプリも見てください。古いアプリも誰かに何かしらの価値を見出されているから、ここに存在し続けているのですから。そうやって対局にあるものを感じてみてください。いくら世の中が変わろうと、自分の両親や祖父母世代が必要とするものが存在します。今の学生さんが40代になった時には、さらにその世代にも必要なものがあるのです。そうゆう見方をすると、世の中は何が必要で何を求めているのか、実は何が足りないのかが分かってきて、世の中は全て変わります。新しいものは世代的にはついていけないしいらない、別に便利にならなくていいと考える人もいます。では、その世代に何が訴えられて、その世代になにが一番必要なのかって考える。それができていれば、新しいビジネスを考えられたのかなとか、何か新しいビジョンを見られたのかなって大人になって気づきました。それを学生のうちから感じられたら、世の中の見方が変わると思います。どっちがあっている間違えているはないけれど、その世代の目線や見方をお互いがすることこそがコミュニケーションです。理解しようという気持ちがお互いに必要です。それが世の中のベースですから。

 新しいものは僕らでなくても勝手に生まれるんですよ。世の中の人間が100%だとして、5%くらいの天才が世の中を動かしています。この5%の人が世の中の行く末を決めて、80%が付随します。つまり80%は勝手に引っ張られているのです。残りの15%は置いていかれる、もしくは流れには乗らない人たちです。5%の天才がアップルを作り引っ張って、80%はそれを持たざるを得なくなったけれど、残りの15%はアイフォンなんかいらないのです。いくら新しいものが出てきても、必要ないし覚えたくないという15%が必ずどの時代にもいます。そこが僕の仕事場です。だからこそ対峙することを大切にしています。対峙してコミュニケーションをとって、お宅にこの商品頼みたいと言ってもらえるようなアナログを15%の人たちは期待しています。

 80%の人は自分からあえて先導しに行かなくても、いいかなと思います。勝手に天才が世の中を決めているのですから。そういう見方でアメリカにいたかったですね。よく言う話ですが、海外に行き比べるものができて初めて、日本の常識が見えてきます。他の国は大陸続きなので、国のアイデンティティも感じやすいですが、日本はそれがありません。独自の発展、マナー、道徳、宗教など、いい意味もあります。しかしだからこそ日本人は、世の中こうだからこう、と型にハマりやすく、型にはまらざるを得ないのです。もちろん型にハマることは構わないけれど、ハマらない人もいること、15%の人を意識してみてください。

 

—ありがとうございました!

 

 

 

<編集後記>

今回は工芸品を取り扱うお仕事に興味を抱き、取材依頼をさせていただきました。石川様のお話を通して、もの作りの面白さはもちろんのこと、石川様の人柄に大変魅力を感じました。取材後、陰と陽の考え方や15%の存在を意識して生活をするようになり、その存在が少し垣間見得るようになった気がします。興味深いお話をたくさんお聞かせいただき、本当にありがとうございました。

 

 

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