航空・旅行/宇宙

JAXA古川宇宙飛行士 ガクセイ基地 独占インタビューで掘り出された自分の夢

2024年6月23日(日)東京大学安田講堂にて、「古川聡 宇宙飛行士 ミッション報告会~宇宙でしか見つけられない答えが、あるから~が開かれた。

ガクセイ基地から代表として、林桃萌(東京理科大学・二年)、前川太志(名古屋工業大学・四年)、そして私、高山乃綾(東京大学・二年)の三人が今回この講演会に参加し、さらに古川宇宙飛行士との対談に臨んだ。

講演会はゲストの方を交えながら、古川宇宙飛行士がISS(国際宇宙ステーション)で行った実験の概要や、現地会場・サテライト会場から寄せられた沢山の興味深い質疑応答、そしてクイズで終始大盛り上がりだった。古川宇宙飛行士が自分の眼前で動き話をしている、それだけで既に私たちの気持ちは喜びで跳ね上がっていた。

      ©JAXA 

 講演会のレポートはこちら (JAXA公式サイトに遷移します)
 

 

 

講演会での興奮が冷めやらぬまま、別室で待機する三人。そして古川宇宙飛行士が私たちの所にやってきた。壇上で見ていた姿が今目の前にある。地球を宇宙から丸ごと見てきたその目の奥に湛える優しさと冷静さに、思わず身が引き締まるのを感じながら、早速質問を古川宇宙飛行士に投げかける。

 

林―「私は将来、宇宙の視座から環境問題に取り組みたいと考えています。古川宇宙飛行士が取り組まれた『きぼうミッション』の水再生システムは、まさしくその知見が地球での人類の営みに活かせる素晴らしい実験の一例だと思います。古川宇宙飛行士は宇宙に行く魅力や意味をどうお考えですか?」

古川宇宙飛行士―「宇宙環境は大変過酷です。だからこそ、宇宙で行われた実験の成果は、地球での応用において大変に意義深いものになるはずです。宇宙でしか分からない・見つけられないことがある。それが宇宙に行く意味になると思います

 

前川―「集団活動では、少なからず『相性が合わない』と感じるメンバーとも協力する必要が出てくると思います。それでも全体としてミッションを成功させるために、古川宇宙飛行士が意識的に行っていることはありますか?」

古川宇宙飛行士―「私の場合、ミッションメンバーとは非常に仲が良かったですね。けれど宇宙飛行士に限らず仕事というものにおいて、いつも馬が合う人と組めるわけではないことは確かです。大切なのは相性の良し悪しにかかわらず、相手を理解しようとする歩み寄りだと思っています自分と他人が違うのは当たり前です。それでもまず相手に尊敬の念を払い、その上でチームとしての『落としどころ』、つまり最良を目指していくことが、ミッションを全体として成功させるために重要になってくると感じますね」

 

高山―「古川宇宙飛行士は、宇宙飛行士になる過程、そしてなった後で人と比べたり、夢を諦めようとしたりした経験はありますか?そういったとき、どのようにメンタルをコントロールされたのでしょうか?」

古川宇宙飛行士―「私は社会に出てから改めて宇宙への憧れを抱き、宇宙飛行士を目指しました。宇宙飛行士の選抜試験中だけでなく、宇宙飛行士になったあとでも、『この人はすごいな』と感じる人と沢山出会いましたね。しかし結局のところ、自分は自分以上の存在にはなれません。人と比較して自分を卑下する前に、冷静に自己内省をし、できることから堅実にやっていく。これを続けることで、始める前は想像もできなかった高みまで行けると信じています。宇宙飛行士の試験はよくお見合いに例えられます。つまり、時機と相性があるということです。チャンスを逃さないようそれまで腐らずに謙虚に頑張る、これが重要だと思います」

 

林―「宇宙から地球を初めて見た時、また二回目に見た時それぞれどう感じましたか?また、住み続けるとしたら宇宙と地球どちらに住みたいですか?」

古川宇宙飛行士―「講演会でも話したことなのですが、宇宙に行く前は自分の故郷は日本、もしくは訓練をこなしたヒューストンだと感じていました。けれど宇宙に行ってそこから地球を見たとき、地球が一つの大きな生き物、システムだという感覚が身体に染み込みました。僕たち生き物も、このシステムの存在に『生かされている』、だからこそこの地球を守っていかなくては、と強く思ったのを覚えています。それ以来、僕の故郷は地球です。あと、ずっと住むのなら地球ですかね。宇宙にいるとどんどん身体が硬くなっていくので。あ、でもずっと宇宙に住めば、いずれは宇宙環境に適した身体に進化していくかもしれないから宇宙に住むのも悪くないのかな(笑)それでも僕はこれからも、地球の豊かな緑を見ながら命芽吹く大地を一歩一歩踏みしめたいです」

 

前川―「宇宙飛行士に求められるスキルについて、コミュニケーション力といったソフトの観点と、具体的知識といったハードの観点からそれぞれ伺いたいです」

古川宇宙飛行士―ソフトに関しては、先述したように仲間と仲良くなることが大切ですね『配慮はするけれど遠慮は要らない』そんな関係を築くことは、ミッション成功に大きく貢献すると思います。ハードに関しては何か一つ尖ったスキルをもっておくことでしょうか。それは『この分野では誰にも負けない』といった競争的な動機によるものではなく、『この分野では仲間を誰よりも支援できる』といった協調的な動機に基づくものであって欲しいですね。実際、宇宙飛行士は教師、医者、技術者、科学者といった多種多様なバックグラウンドをもっています。そうした多様性があるからこそ、ソフトの能力が一層重要になってくると感じます」

 

高山―「古川宇宙飛行士が自分を鼓舞するときに大切にしている言葉が何かあれば、是非伺いたいです」 

古川宇宙飛行士―「有り体かもしれませんが、『継続は力なり』という言葉ですね。その瞬間の誘惑に負けずやるべきことをこなす。やらなければならないとは分かっていながらも、二の足を踏むことって人間だれしもあるかと思います。けれどそんなときは『一度始めたらもう半分終わらせたようなもの』と思いながら、タスクに着手するようにしています」

 


濃密だがあっという間のインタビューだった。古川宇宙飛行士と目を合わせて直接質問するという、この上ない貴重な体験に胸を熱くさせながら、私たちインタビュアーは最後に古川宇宙飛行士と固い握手を交わした。

本講演会、そして古川宇宙飛行士との対談の中で、私自身の夢を改めて強く思い出させられた。小学生の頃、ビックバンや相対性理論についての本を訳も分からずに読んでは、まだ見ぬ宇宙人や宇宙の端について思いを馳せていた。しかし、年齢を重ねていくうちに、いつしかその夢と自分に言い訳をするようになっていった。「私は数学や物理が苦手だから」「宇宙を研究する道は険しいから」「無邪気だった幼い頃とは違って、もっと将来のことを現実的に考えないといけないから」

今回の講演中、司会の方が「宇宙に行ってみたい人は手を挙げてください」と言ったとき、私の両隣に座っていたインタビュアーの二人は臆することなく、前の席の子供と同じように手を高々と挙げた。勿論私も手を挙げたのだが、二人よりコンマ数秒遅れて左手を動かした自分に気が付いた。「司会の方は子供に聞いているのであって、私のような『大人』は手を挙げるところではない」そう感じた自分がいたことに気づいた。

 これまで、自分の環境や属性を理由に宇宙への憧れを消そうとしていた。しかし、一番その憧憬をないがしろにしていたのは、他でもない自分の思考であった。古川宇宙飛行士が壇上で話していた「次の宇宙でのプレーヤーを育てる」という言葉。そのバトンを引き継ぎたいという気持ちが、強く私の胸に沸き上がってきた。

10分間の対談の最後に古川宇宙飛行士がしてくれた握手。右手に感じたほとばしる宇宙への熱は、私にも克明に宿った。

 ©JAXA 

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