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私の居場所
卒業後もポーランドに住み続けたい?
―面白いことに、ポーランドに住み始めた当初は卒業したら住み続けないだろうなと思っていたの。
だけど、ここで過ごせば過ごすほど、より自分に合っている所だと思えてきて・・・。
ワルシャワが大好きになったし、ここが自分の居場所って思ってきてるわ。
きっと文化や言語に慣れてきたからじゃない?
―それもあると思う!ウクライナとポーランドで大きな違いはないから、私にとっては適応するのがそんなに難しい場所ではないのだと思う。
ただ、まだ自分に一番合う場所っていうのは分かっていないから、ヨーロッパ内の国やカナダや、最近だと中国も一応考えてる。
卒業後すぐに他国に住むってわけにはいかないだろうから、まずはポーランドでお金を貯めることに専念するかもね。親に頼らず、なるべく早く金銭的に自立したいな。
だから今一生懸命働いているのもそれが理由だし、普段の生活では節約を意識してる。
今頑張って貯めれば、将来より良い場所でより良い機会に恵まれてよりよい生活を送ることができるはないかなって思ってる。
私だけではなくて他の生徒も、ポーランドには結構ウクライナからの生徒が多いと感じているらしいの。ウクライナからポーランドへ進学することは割と普通のことなの?
―そうね、普通ね。
まず、さっきと話が被るけど、ウクライナの状況があまり良くないっていう理由があると思う。
第二に、地理的に近いからね。まだ、学校卒業したばかりの17歳頃だと遠く離れた、文化や言語も全く異なる所にいきなり行くのは怖気づいてしまうでしょ?その点、ポーランドはウクライナ人にとって過ごしやすいと言えるの。
違いといえば、少し街が大きいくらい?
―いや、街の大きさはウクライナとそこまで変わらないけど、建物はポーランドの方が大きいかな。ウクライナよりは都会的だと言えるけど。
これらがポーランドに来る理由ね。
ウクライナは若者に厳しい国!?
どういったことがウクライナの状況の悪化につながっているの?なぜ特に若者にとって良くない状況なの?
―わ~お、この話なら4時間くらい余裕で話し続けられるわ(苦笑) 本当に沢山の理由があるの。
頑張って要約できる?日本人に分かりやすいようにね!
日本で暮らしてると、メディアの影響で、ウクライナ=クリミア半島問題、みたいな構造が頭の中にできあがってしまうことが多いの。
でも、ダシャからするときっとその問題ばかりってことではないんでしょ?
―ウクライナの歴史から振り返ると、ソビエト社会主義共和国連邦(USSR)に長い間属していたの。
1993年に独立を果たしたのだけど、独立してから最初の6、7年間くらいは国民が豊かとは言えない状況が続いたの。
私が生まれた1996年当時は、私の両親は物を売ることでなんとか収入を得ていたの。
二人とも教員免許を持っていたのに?
―うん。でも、国自体が財政難だったから。
私の家族は砂糖や花を中心に売っていたわ。
私のおばあちゃんなんかは、1年働いても、その報酬は冷蔵庫1台がやっと買えたほどの収入だったの。だから、どれほど状況が悪かったか想像できるでしょ?
ウクライナは貧乏だったし、民主主義が働いていなかったの。追い打ちをかけるように、政治体制の崩壊もあった。
2004年、2005年にオレンジ革命といってウクライナの選挙結果に対する抗議運動が起こって、小さな希望が見えてきて、人々は「ウクライナはこれからこれから変わるんだ!」って思ったのだけど・・・。
残念ながら、結局何も変わらなかったわ。
経済状況、政治状況は今でも良いとは言えないし・・・。
もちろん私は今、ネガティブな側面についてのみ話しているから、状況が一向に変わらないとは言わないけど、変化・成長のスピードがかなり遅いのが現実ね。
革命はもう一度、2013年から2014年にかけて起こったわ。「ウクライナ騒乱」と呼ばれているわ。それは本当に大きな騒動だったわ。
当時の大統領だった人物がウクライナの資金を全て盗んでロシアに逃げたからね。
私が一時期滞在していた南アフリカでも似たような話を聞いたわ。
―そうなのね。
この騒乱は本当に大きな事件で、民衆が殺されたりしたの。スナイパーが人々を殺したりしたの。
政府がスナイパーを雇って殺させたの?
―うん、そうなの。政府がね・・・。あくまでも一説に過ぎないけど、ロシアがスナイパーを送った、またはスナイパーに指示を出したとも言われてる。
あと、警察が学生や運動に参加している人を攻撃したりもした。本当に酷いことで、大勢の人が命を落としたわ。
政府は結局、大統領を変えることには成功して、人々は「これでやっと変わる」と思ったのだけど、そこで、ロシアが介入し始めたのよね。
ロシアはクリミア半島に大きな興味を示して、2014年辺りから紛争がウクライナの東側で始まったの。現在もその紛争は続いているわ。
これがなぜウクライナの経済成長が進まないかの1つめの大きな理由ね。紛争が続いてるままだから、政治資金の多くを軍事費に充てていて・・・。ウクライナの他の地域を守るためだけにね。
2つ目の問題は「崩壊」ね。どれほどウクライナが頑張って変えようとしても、最終的にお金の問題になってくるでしょ?人々の意識の問題ともいえるけど・・・。
歴史を振り返った時に、2回も大きな運動が起こったのに、結局何も変わらなかったでしょ?だから将来にあまり希望が持てなくなっていると思うわ。
状況を変えたければ、ある程度のお金を投資しなければならない。残念ながらこればかりはすぐに変わると思わないわ。
3つ目の問題は、公平さね。ウクライナでは不公平なことがまかり通ってしまうの。
裁判で、自分が正しくても負けてしまうことがあるってこと。
この原因は崩壊に起因していると言えるのだけど、体制が壊れていれば、裁判も上手く機能しないんだよね。
お金を裁判官に払って勝たせてもらうことができてしまうってわけ。だから人々は裁判制度もあまり信用していないわ。
他にもたくさん問題はあるけど、もう1つだけ付け加えるね。
ウクライナでは大学を卒業しても、仕事を見つけにくいの。良い仕事を得るためには経験が必要だと考えられているのだけど、卒業したばかりだと経験は少ないか、ないに等しいわ。
本当に幸運な場合は、たまたま見つかることもあり得なくはないけど、私たちのほとんどがすぐには適当な仕事は得られないわ。
見つかったとしても給料が低いわ。ウクライナ内で生活する分には困らないけど、旅行をしたり、自分の子どもを他国の学校へ行かせたりする分には十分と言えないな。
すごく分かりやすく説明してくれてありがとう!本当に興味深い話で、日本のテレビではここまで深い解説をしないことが多いから、クリミア半島以外のウクライナの状況を掴むことができて良かったわ。
ここまでずっと分かりやすく、ウクライナについてはもちろんのこと、人生設計に関わる自身の話もしてくれたダシャに感謝の気持ちでいっぱいです!
皆さんは自分の住んでいる国や生まれ育った国のことを、理解した上で、他者に上手く説明することができるでしょうか?
第二弾でも引き続きダシャに語ってもらいます。お楽しみに!
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