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「ラジカル反応」を起こす対話を。学生団体ラジリアさんインタビュー【後編】

今回の記事は学生団体ラジリアさんのインタビュー記事です。この記事は後編でありますので、前編を読んだ上でこちらの記事をお読み頂ければと思います。前半のリンクはこちらです。 前半に引き続いて、さらに深く、対話と学びについて、学生団体ラジリアさんのこれからのお話をお聞きしています。

さらに深く、対話と学びについて

―活動のやりがいはなんですか?

いろいろあるんですけど、楽しいって思える瞬間もそうですし、仲間が増えて「よかった!」と思える瞬間もそうですね。僕には大学生って自分の専門に閉じこもってしまう印象があるんですけど、それがすごく勿体ないなと思っていたことがあって。一回でも他のものに触れてみたりとか、普段は出来ないような真面目な話を同年代の人とタブーなしで話せる場を作れているというのがやりがいですね。また、僕自身が元々そういう状況に救われた過去を持つので、それを今、周りの人に広げていけているというのは本当にモチベーションになっていると思います。
僕は元々理系で、大学では物を作っていればいいやと思っていたんです。周囲は工学部男子で、アニメの話が分からないと話についていけないという雰囲気のコミュニティだったんですよね。それもそれで楽しくて貴重なんですけど、四年間それだけっていうのは勿体ないなあと。そこで、違う専門の人や価値観の人との交流とかが主目的としたコミュニティがあってもいいかなと思っていたんです。

―あえて、そのようなコミュニティの手段として「学び」を持ってきたのはなぜなんでしょうか?

既存にあまりなかったからです。当時、他の分野の講義って誰かに背中を押されないと聞けなかったり、あんまり組織としてやっているところや、誰でも来れる講演会が見当たらなかったで、やってみようかなと。万人に対して機会を開くことに貢献出来たらいいなと思いましたね。

―「学び」ということに対して大事にしていることは何ですか?

僕自身が元々リベラルアーツを学んでいて、学びの核としています。リベラルアーツとは多様な視座から自分、社会、世界の多くの視点を見つめ、出来るだけ自由に問い、応え、行動する営みと僕は説明しています。歴史的には古代ギリシャやローマの時代に起源を持ち、現代的には「自由になるための学び」と形容されることもありますね。そして、そのリベラルアーツには自分と異なる他者が必要です。いろんな人がいるってことはいろんな答えがあるということです。何か考えていることに対して、自分ひとりなら納得いくまで考えたのなら、そこで思考はストップします。しかし、そこに自分とは全く異なるバックグラウンドや価値観をもつ他者がいることで、自分の思考を相手に説明し、どう思うかを聞くことによって思考が進みます。

その多様な答えを知るための手段として「学ぶ」ということがあると思います。また「学ぶ」ことは「問う」とも言い換えられますね。むしろラジリアで大切にしているのは「学ぶ」ことよりも「問う」ことです。「学問」の「問」ですね。「貴方はどうしてそういう答えを出したんですか」と問うこと、そこから始まっているのかなと思います。これは一人では出来なくて、仲間が必要になります。その問いに対する反応を通して、最終的に学びがあるというか。学びの前には問いがあり、問いを起こすためには自分とは違う「異質」なものの存在が必要で、そういったものに出会える環境を作れることが出来ればと思っています。
今の社会で陥っていることとして、自分とは違う価値観に出会った時に「あいつはおかしい奴だ」とか「間違ってる」とか、レッテルを勝手に貼って、いわば自分の認知的整合化みたいなものを図ってしまう時もあると思うんです。でも、そこで思考停止するのではなく「どうして」とか「なんで」と聞いてみたり、自分なりに想像してみようとしたりすることが広義での「対話」のありかた、あるいは「反応」であるのかな、と思います。まあ、ラジリア内ではそういう真面目な事ばかりじゃなくて、普段は楽しく話し合っているのですが、根本にはそういうものがありますね。このことを人によって異なる色に見えるドレスを例に記事を書いたものがあるので是非ご覧ください。

【インタビュー内で触れられている「人によって異なる色に見えるドレス」を例にされた記事はこちらから。ラジリアさんの記事です。】

―「問う」ということが対話の中で大事にされていることだとお聞きしましたが、具体的に「問うた・問われた」エピソードはありますか?

すごく最近の話なのですが、対話カフェの50回目の時に「これからどういうものを作っていこうか」という話をしたんです。僕はその中で「コミュニケーションって何かを深めるコミュニケーションと『私と貴方は友達ですよね』みたいなことを確認するような2種類のものに分かれると思っています。だから、人の居場所となるようなところと、何かを分かろう、知ろうとする対話は僕の中で無意識で分けていてしまっているし、前提として今後を見据えている」という事を話しました。でも、参加してくださった方に「いや、それ分ける必要あるんですか」と言われたんですね。つまり、コミュニケーションはいきなり難しい話をするわけではなく、だんだんお互いのことを知っていって心理的安全を保った上で徐々に物事を深めたり、お互いの価値観の相違の核心に触れるものかもしれないと。、確かにと納得したんです。二分法になっていた自分に毎回参加してくださってる方からの問いかけにより気づきました。場づくりとして、もっと考えなくちゃいけないなあとその問いにはっとさせられましたね。活動ではなく、運営の中でも、自分が思っていたことと真逆のことを言われた時にはっとしたこともあります。

他の例で言うと、ある時「平和を実現したい」と言う方にあの手この手の質問をした際は、清々しい気持ちになりました。結構、僕は偽善的な人が好きではないというかが疑ってしまうんですよね。何か行動を起こしたり努力する理由って大きくて、偉そうな理由よりも、たとえ小さくても自分や近いし大切な人のためや幸せを願っていることが多いのではないかなと?そしてそれは恥ずかしいことでもなんでもなく、とても大切で素敵な理由なんだと思っていてそれを聞くことが好きです。
例えば、ある人が「自分は世界の平和のためにこの活動をしてます」って言ってても「それ、本当?」って思っちゃうんです。だから、わざと変わった問いかけ、つまり普段しないような別方向からの問いかけをしてみるってことをしています。大抵、ずっと問うていくと、そこには違う答えがあってそれを見れた時に「しめしめ」って思うことがよくあります。でも、ある時、いつものように問い続けていったんですけど、問を投げれば投げる程、自分が思っていた答えがずっと返ってこなかったんです。この人は本当に平和のためにやっているんだって思わされて、本当に驚かされたし、尊敬してしまいましたね。「この人100%人のために動いているんだ」って納得させられました。すごくあったかい気持ちになりました。意外な答えが返ってきたときはそれはもちろん印象に残りますが、このようにどんな問いに対しても揺るがない信念や想いに触れる時も問いかけることの面白さに気づかされます。そう思うからこそ、もっと問いの修行をしないとですね(笑)

これからの活動について

―コロナ感染症が収束された後もオンラインは続けたいですか?

オンラインは続けていくと思います。
でも、僕も代表である前にいち参加者のつもりですし、やっぱり会えるものなら対面で会いたいなとも思っています。メンバーが各地にいるので、それぞれが対面で会う事を発起してくれたらいいのかなと思いますし。ただ、ラジリアの魅力は遠くの人、他の大学の人と話せることだと思っていますので、オンラインでの活動をやめることはないと思います。

―今後の目標、予定を教えて下さい。

僕が今修士1年で、副代表が立候補してくれているので、引き継いでいきたいと思っています。ぜひ僕の思想だけではなくて、自分で考えた物も大切にしてで周りの人と一緒にやっていってもらえたらと思いますね。僕自身はそのサポートをしていきたいです。ラジリア自体がかなり自由な団体ですし、時期によっても大切にしている物が変わっていくので、これからも変わり続けることによって、「反応」とか、人と人とのつながりが大切に出来るのではないかと思います。
たくさん失敗しながらも続けていくうちに、情報的な視野の狭さによって、選択を誤ったり、誰かを傷つけたりということも減らせていくのかなと思っています。

―じゃあ、今は代替わりしていこうという時期なんですね。

気が向いたら、というところもあるんですが(笑)
変化をしていく、新陳代謝みたいなことをして、その都度、良いものになっていけばいいなと思います。僕も好きなことをやっていくつもりなんですけど、仲間に伝えていくためにはもっときちんとしなくてはならないと思いますね。背中で語るみたいな形で。

―元々、何代も続けていきたいと思っていたんですか?それとも活動をしていて、そういう風になっていったんでしょうか?

「続けなくちゃならない」みたいに思ったことはないけれど、続いていくことはいい事だと思うし、どこかで心の中にもありましたね。
ラジカル反応の性質上「広がる」ってことは大事なので、それ(反応)がつながっていくのは本当に嬉しいです。自分達が好きな事をやった結果、自然と広がっていくし、つながっていく。続けていくことが目的になってはいけないと思うんですけど、続けていくことがあってもいいかな、と思います。それと同時に僕自身が何代も続くような可能性のあるものを生み出せたのならば、やっぱり素直に嬉しいなと思いますね。

大学生に対するメッセージ

―最後に大学生に対するメッセージをお願いします。

大学生にも様々な人がいるから、ひとくくりにしていうのは、なんか違うような気もするんですけど…。僕自身がリベラルアーツを大切にしているから思う事でもあるんですが、自分の専門とかできることだけやるのは尊いし、大事な事だとは思うんですけど、時にはそこから一歩踏み出してみるととっても面白かったりするんじゃないかなと思います。それに、もし自分のやっていることを面白くないと思っているなら、そこに居続けても何も変わらないと思うんです。専門ってなかなか仕事にならないこともあるし、やっぱり自分だけで解決には持ち込めない。そういう時、自分が持っているものを他の物事に適応してみたり、他の人に話してみたりする勇気をもってほしいです。そうすることによって、自身の専門や能力もより生きてきます。そしてそれは一人では出来なくて、仲間が要りますよね。だから、いろんなことや興味があることに挑戦してみるのは大事だと思います。そこにラジリアがあれば嬉しいです。

ラジリアだけではなく、世の中には素敵な人がたくさんいて、その中にもたくさんの支援があると思いますので、そういうものから始めてみてほしいです。死なない程度に好きに生きてもらえたらなと思います。ひと昔前なら学生運動とかがあって、歴史を変えたりとかも大学生はしていますよね。大学生って時間があり、いろんなやりかたでいろんな行動が出来ると思います。すると回り回って、巡り巡って世の中ももっと楽しく、より多くの人にとって暮らしやすく、弱い人に寄り添える社会や世界になり、個人は自分の唯一性を見失わずに時間を過ごせることに繋がるのではないか?と思っています。だからこそ、僕自身も多くの人にそれを還元したいと思っていますしラジリアの活動をより頑張れるわけです。

編集後記
 この度、学生団体ラジリア代表の船岡佳生さんにインタビューさせて頂きました。お話をお聞きすることが出来、とても光栄でした。私自身2020年度入学で、何もわからないまま入学してすぐ、オンライン授業が始まった学年でした。コロナウイルス感染症の流行によって、人と人のつながりが薄くなっていると思います。しかしながら、学生団体ラジリアさんのようにオンラインというツールやあり方を使う事で、以前とは違う関係のあり方がこのオンライン化の中でも築けるのだと改めて考えさせられました。「対話」についてのラジリアさんの方針も非常に興味深く、自分ではたどり着く事の出来ない領域に対して、問いかけてくれる人がいることはとても大切なことだと私自身とても感じます。そのような場所を作り上げて、また今も構築している、ラジリアさんは、今の時代の大学生にとって素敵なあり方を模索できる団体なのではないかと思いました。このインタビューから少しでもラジリアさん、またインタビューを受けてくださった船岡さんの魅力が伝われば幸いです。

 

今回取材させて頂いた学生団体ラジリアさんに関するリンクはこちらから。インタビューの中で語られていたイベントにもぜひ参加してみてください。

【学生団体ラジリアさんの関連リンク】

ガクセイ基地では他にも学生団体のインタビュー記事がありますので、よかったらそちらもご覧ください。
【【1】世界で活躍されるメイクアップアーティストの西村宏堂さんにとってメイクとは?】【Z世代が切り開くサスティナブルな社会〜環境・社会問題の解決に向け〜/団体【NAMIMATI】】

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