食品業界

CSRが「当たり前」の時代が来ている!/ びっくりドンキー運営会社アレフ 

 

ファミリーレストランといえば沢山ありますが、実はその多くの運営会社がSDGsに取り組んでいることをご存知ですか?

その企業のうちの一つである「びっくりドンキー」を運営する株式会社アレフは、環境問題、社会問題に積極的に取り組んでいます。

今回は株式会社アレフのエコチームに所属されている渡邊大介さんにSDGsの取り組みとその背景についてお話をお伺いしました!

 

渡邊・大介(ワタナベ・ダイスケ)
職業:株式会社アレフ
所属と役職:エコチームリーダー
経歴:びっくりドンキーなどから出る廃棄物やエネルギーを低減する業務に従事。農業・環境をテーマとしたエコロジーテーマガーデン「えこりん村」(北海道恵庭市)において、食品廃棄物から電気と肥料を作るバイオガスプラントを稼働しSDGs目標7・12・13を実践中。

 

 

ーーエコチームでは環境に対してどのような取り組みをされているのでしょうか。

渡邊さん:私たちは環境問題を大きく4つの課題に分けて取り組んでいます。4つの課題というのが気候変動、食品廃棄物の削減とリサイクル、水使用量と排水対策、そして生物多様性の保全です。この4つの課題解決のための重要なポイントとして、世界共通の課題である温室効果ガスの削減を掲げています。具体的には2015年のパリ協定で日本が約束した、2013年度比で2030年までに26%、2050年までに80%以上の削減を目標にしています。

実際には、店や工場で大量に使うエネルギーの削減方法、生ごみに加えてプラスチックごみのリサイクル方法、水使用量の削減と店舗から出る排水の油脂分の低減、生態系に悪影響を及ぼす外来種の駆除活動などを行います。さらに自分たちの行なった活動を報告書にまとめるべく結果の数値化、分析を行います。環境に対する取り組みの多くは、企画の立案から実行まで全ての過程に携わっています。また、自分たちの活動をシンポジウムなどを通して学生や若い世代の方々に発信する活動も行なっています。

(エコプロ2019出展の様子)

詳しく知りたい方はこちらをご覧ください→https://www.aleph-inc.co.jp/csr/

 

ーーアレフが環境問題に取り組むようになった経緯を教えてください。

渡邊さん:1998年に生ごみのリサイクルを始めたのが最初でした。全国に店舗を構えているレストランなので、一つの店舗から毎日およそ50kgの生ゴミが出ていました。せっかくお客様に食べてもらうためにできるだけ農薬を使わないなど安全・安心にこだわった食材が、生ごみとして大量に廃棄されてしまうことに対して何かできないかと考え、肥料のリサイクルを始めました。2003年に「環境行動計画」というものを作り、環境問題への取り組みをより多角的に、本格的に始めました。

 

ーー環境問題が注目されていない時代から取り組まれていたんですね。

そうですね。2015年のパリ協定で温室効果ガス削減に関する国際的な取り決め(今世紀後半に人為的な温室効果ガスの排出と吸収源による除去の均衡を達成する)が合意されてから社会全体が環境問題に注目されるようになりましたが、その前から活動はしていました。また環境問題が注目を浴びる時代が来たことで、私たちもより一層活動に力を入れてきました。

ーー取り組みの中でも特に独自性に優れているものはなんですか。

渡邊さん:やはり取り組みのきっかけとなった生ごみのリサイクルですね。私たちは生ごみをゼロワンダーという専門の機械を用いて処理しています。機械の中に入れた生ごみは粉砕、乾燥、発酵し生ごみ資材として、全国の協力農場で堆肥として使用されます。そしてその肥料で作ったものを一部びっくりドンキーのメニューにあるサラダやライスとして提供するという仕組みです。全国に88台ほど店舗に置いています。生ごみを再利用する循環型のシステムは会社の中でもとても特徴的です。おかげで食品リサイクル率も93.5%と高いです(昨年)。そういった意味で、生ごみリサイクルはこれからもアレフの環境活動を代表するような取り組みの一つであると思います。

 

ーー大変なことはありますか。

環境問題のことを考えて事業活動を行わなければならないということを社員一人一人に認識してもらうことは非常に重要でありながら、難しい課題であると感じています。なぜ難しいかというと、環境に配慮した取り組みは経費や手間がかかり、利益に繋がりにくいからです。身近な例で言えば、お店でテイクアウト商品を提供する際のビニール袋です。各店舗ではテイクアウト商品をビニール袋で包む場合は袋を1円で提供しており、要らない場合は包まずそのままお渡ししています。テイクアウト商品を購入されるお客様のうちの約3割はビニール袋ではなくマイバッグを持っているので、店のスタッフはその方達にはビニール袋に入れず商品のまま、お客様にお渡しします。しかし、会社の中では今のやり方だと作業効率が落ちるという意見があります。このように一つの作業だけでも社内で意見が割れてしまうことがよくあります。しかし環境問題は一人でやるのではなく、みんなでやって意味があるものだと思っています。そのため、一つの作業に対して何が大事で何を優先していくかという考えを議論し共通の考えをもつことは大切だと考えています。そのために毎年エコチームで、1年間に企画・実行したことをまとめた報告書を作り、社内全体で共有しています。

 

ーー2018年度の環境報告書を拝見させていただきました。どの項目も詳しく数値化されてあってとても驚きました…!

渡邊さん:報告書では自分たちが計画した案に対してどれくらいの成果が出たのかを明確にするために、消費量などを全て数値化し、目標値とどれくらい差があるのかをグラフ上で推測します。

環境問題は一言で括ることはできますが取り扱う範囲は本当に広いですよね。なので、私たちが環境問題のどういった点においてどれくらいの成果を出したのかを数字やグラフを通して可視化することは私たちにとって非常に重要です。

 

ーー取り組みを企画する際に、何を判断基準にしていますか。

渡邊さん:アレフの経営理念「損得よりも善悪が先」ですね。環境問題は売上・利益に結びつけることが難しいですが、地球の存続は企業の存続を意味します。環境というのは常に私たちの生活に結びついているので、崩れてしまうと私たちの生活にも経済的、環境的に大きな影響を及ぼします。そのため利益だけを追い求めて企業活動をしていると企業としての存続が危うくなります。企業として利益を出すのは当然ですが、それ以前に活動が善いか悪いか、損得が目的になっていないかというのを常に念頭に置いています。

 

ーー今後の課題はなんでしょうか。

渡邊さん:たくさんありますが、生ごみを出さない食品ロスの削減は、お客様と生産者を結ぶ外食業の私たちにとってもっとも重要な課題です。食品ロスへの取り組みを始めてから、一日一店舗で50kgの生ごみが出ていたのを現在は25kgに抑えることができていますが、もっと改善できると思っています。

もう一つは環境に対する取り組みを全ての店舗で行うことです。びっくりドンキーは全国に332店舗(9月1日現在)あり、アレフが運営している直営店舗が127で残りの205店舗はフランチャイズ経営です。直営店舗は環境への取り組みが進んでいますが、フランチャイズ店舗ではコストがかかってしまうので内容にもよりますが、あまり取り組みが進んでいないのが現状です。例えば先ほど話したリサイクルを例えると、ゼロワンダーの設置数はアレフ運営の店舗で88店舗設置しているのに対し、フランチャイズ店舗では205店舗のうち29店舗にしか設置できていませんお客様がアレフの店舗かフランチャイズかを気にされることはほとんどないので、びっくりドンキー全体で同じ進度で取り組みを行っていかなければいけないと感じています。

また、畜産業からでるCO2の量の削減も考えていかねばなりません。より環境負荷が少ない牛肉の調達方法を調べるべく、契約している農場と協力して環境負荷量を算出しました。そのデータから、私たちの契約農場のように牧草などをえさに放牧して育てる方法の方が、穀物を食べさせて育てる一般的な方法よりもCO2の排出量が少ないことはわかりました。しかし、私たちが調達するハンバーグに使用するビーフを生産する際の環境負荷の割合、すなわちCO2の排出量はアレフ全体で出しているCO2の量の約26000トン(昨年)を超える量になりました。一般の牛よりCO2の排出量は少ないとは言え、環境に負荷を与えているのは事実なのでこれをどう改善していくかは今後の大きな課題となると思います。実際ファースト・キッチンなど多くのファストフード店が大豆ミートや植物ベースのお肉を使った商品を提供していることから、お客様の中でも「エシカル消費」が強まっていると感じます。自分たちが提供する商品の方向性を守りながらお客様のニーズに沿い、環境に配慮した商品の開発も必要になってくるのではないでしょうか。

 

ーー渡邊さんの持続可能な社会の構築に対する見解を教えてください。

渡邊さん:持続可能な企業活動とは、従来の利益を追い求めていくという側面を持ちながら、「社会にどれだけ貢献するか」「どれだけ環境負荷を減らすか」ということを考える側面も同時にもつことだと思っています。そして、そのように持続可能な活動を行なっている企業を消費者の方が選んでいく時代が徐々に訪れているので、お金ばかりかかるCSRは企業活動に不利だという考えはどんどん古くなっていくと思うし、そういう企業は持続可能でなくなるでしょう。そしてCSRに取り組むことが「すごいこと、立派なこと」ではなく世界共通の社会課題、環境課題だから「当たり前」になっていくのだろうと私は思います。

渡邊さん、貴重なお話をありがとうございました!株式会社アレフの環境への取り組みについてもっと知りたい方はぜひこちらもチェックしてみてください。→https://www.bikkuri-donkey.com/approach/environment.html

 

 

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