食品業界

手打ちうどんの価値をアップデートする小野ウどん

 

小野ウどん
大学卒業後、人材・採用コンサルティング系の企業に就職するも、度の過ぎるブラック企業だったため半年で辞職する。
日本の歴史が好き・日本の麺類が好きという軽い理由でうどん職人への道を志すが、うどん作りの面白さに魅了される。「白麺士」を名乗り全国民に手打ちうどんを広げるために、様々な活動をしている

 

 

―小野さんはうどん作りのどこに魅力を感じたのですか?

(小野)うどん作りそのものの面白さです。

うどんを打つときには、最初に理想のうどん像を思い描きます。室温などの環境から生地の状態を分析して、こうしたら理想に近づくんじゃないかと微調整しながら完成を目指す。僕は6年くらいうどんを打っているんですけど、それでも自分が想像していた通りのうどんが作れたのは1回か2回くらいで。

 

―そんなに難しいのですか…!?

うどんって打っているときは全く先が見えないんです。こうなるんじゃないかなって予想はしているんだけど、その予想が正しかったのかは食べるまで分からない。だからこそ、完璧なうどんが作れた時の感動とか達成感はものすごいんです。僕はその感覚をもう一度味わいたいと思ってうどんを打ち続けています。

これは僕の人生観なん だけど、人生は一秒後に何が起こるか分からないから面白いと思っているんです。予定調和に全てが上手くいく、なんてつまらないでしょ。さっきも言ったけど、うどんを打つのは暗闇の中を歩いていくような感覚だから、僕にとってうどんの面白さは生きていく面白さそのもの なんです。

 

―「TEUCHI、それは速く、美しく、魅せた者が勝つ、次世代型手打ちうどんライブバトル。」をテーマにした世界初のうどん格闘技大会「TEUCHI-うどん総合格闘技-」を開催されたとお聞きしました。なぜこの大会を開こうと思ったのですか?

今まで食に関する大会で、どちらがおいしいかを競うものはあったのですが、それを作る「人」にフォーカスを当てたものは今までなかったので、うどんを打つプロセスを評価する大会を作りたいと思ったのがきっかけです。

知らない人に何かを知ってもらうためには、「ポップ化」が最重要です。「ポップ化」とは難しいことを簡単な言葉で届けること。これは井上ひさしさんの言葉の受け売りなんですけど、「難しいことを易しく、易しいことを面白く、面白いことを深く」っていうのが真理だと思っていて。

はじめてそれを見る人とかに、最終的に「深い話をする」という事実は同じだけど、ポップ化のプロセスを踏んでいるかどうかで伝わり方とか、伝わった後の反応とかが全く変わってくると思っています。

 

うどんは「うまい」だけが全てじゃないということを伝えるためのポップ化がTEUCHIです。

―TEUCHI第1回大会にはどんな人が参加していたのですか?

ずっと手打ちでやっていたうどん歴32年の元うどん職人のおじさんから、手打ちのラーメン屋(!?) でバイトをしていたうどん歴半年の大学生、など様々でした。

参加者をうどん職人に限定しなかったのは、職人じゃなくても優れた技術とか美しい打ち方を習得している人はいっぱいいると思ったので、そういう人たちが活躍できる場を作りたかったからです。それに、初心者と職人が競うことで見ている人が、職人技がいかにすごいかを実感することが、職人技を守っていくことにもつながるんじゃないかと思いました。

でも、職人VS初心者だったら、職人が勝つのはみんな予想していますよね。それは想像通りで面白くないし、これから大きく成長する芽を摘むことになっちゃう。だからTEUCHIは、評価基準などを考えていって熱意のある初心者が勝てるような大会にしたいと思っています。

 

―TEUCHIの第1回大会の優勝者は元うどん職人の方でしたよね?

うどんを作る際の評価基準は、味、技術、表現力と次元が高くなります。今はみんな味だけでうどんを評価しているけど、僕はみんながうどんを表現力で評価できる世界にしたい。

でも、いきなり価値観を全部変えることは難しいから、第一回大会はこの結果で良かったと思っているんです。職人が勝ったということは、うどん職人の技術をみんながちゃんとすごいって評価できた証。うどんの評価基準が味から技術にステップアップできたっていうことで、第一回の目的は達成できました。

なので、第二回大会は技術から表現力へと評価基準をアップデートする大会にしたいです。

―うどんを評価する際の「表現力」とはどのようなものですか?

表現力は言い換えれば「情熱」です。

うどんを打つことに限らず、ものすごい熱意がある初心者が経験者より優れていることはあると思っていて。音楽とかでもやっている歴が長いけど持っているのは技術「だけ」っていう人よりも「音楽が好き!楽しい!」っていう気持ちが爆発している人の方がいい演奏だと感じることありませんか。情熱って詳しくない人にも伝わると思うんです。

それに、情熱がすごい人は死ぬほど辛い練習とかも好きっていう気持ちで続けることが出来るから、結果的に圧倒的な技術を身につけている。

うどんを打つことに対する思いが一番熱い人がちゃんと評価されてほしい。

 

―これからTEUCHI以外にどんなことをやりたいですか?

僕は一度でもうどんを打ったことがある人を「手打ち人」と呼んでいるんですけど、今の目標は「全国民手打人化計画」を完遂させることです。

日本に住んでいる人全員に手打ちを経験して欲しいので、今はそのために「手打ちキット」を作っています。普通の手打ちキットや、食育用のものだと興味のない人たちには響かない。

うどんの生地は配合するものや熟成具合によって、いくらでもどんな風にでも変えることが可能なんです。その特徴を生かして、様々なシーンに合わせた「生地」を提供しようとしています。

例えば、エクササイズシーン。固めの生地でプロテインを配合した生地を提供することで、うどんを打つことも食べることもダイエットにつながるようにしたり。バレンタイン・ホワイトデーのプレゼントシーンだと、送りたい相手によって色や麺の形状が変わるようにしたり。

 

 

―色や形状が変わってしまったら「うどん」と呼べなくなってしまいませんか?うどんの定義とは?

「小麦粉・水・塩」を使っていたらうどんです。これが全て。

うどんの魅力はその適応力の高さ。どんな風にでも変われるから何にでも合う。でも、今はみんなそのすごさに気づいてないから、うどんの良さが全然生かされてない。

例えば、うどんを食べるのに最適な場所は、うどん屋じゃないかもと考えていて。うどんってゆでるのに20分かかるんだけど、うどん屋で20分も待たされたら嫌でしょ?だから、うどん屋では常に大量に麺をゆでていないといけない。そうすると予想外にお客さんが少ないと廃棄が大量に出るか、お客さんに少し質の悪くなった面を提供することになる。毎週火曜日にうどんバーを開いているんだけど、バーはその空間と時間を楽しむ場所だから、お客さんも待たされるのが嫌じゃない。廃棄もなく、最高の状態のうどんを提供できる。適応力の高いうどんは、バーの雰囲気にも合わせられるから、工夫次第で違和感もなくなる。

こんな風に、うどんの良さを存分に生かせる方法をもっともっと探して行きたいし、広めていきたいです。

 

―小野さんは「うどん」という自分の好きなことを仕事にされていますが、“好き”を仕事にするためには何が必要ですか?

本当に本気で好きならどんなことでも仕事にできるよ。

大切なのは、好きを仕事にできるかじゃなくて、仕事にしてそれで食える状態に持っていけるまで続けられるかどうか。吉田松陰が「諸君狂いたまえ」っていう言葉を残しているんだけど、この「狂う」の本当の意味は「純粋であること」なんです。周りから「あいつは狂っている」って言われるくらい、好きなものに対して真剣に、純粋に取り組めばいい。その好きなこと以外のものを全部捨てて熱中する覚悟があれば続けられるし、仕事になる。それを覚悟しないまま、好きなことを仕事にできないと言うのは甘いと思う。

 

―大学生に何かメッセージをお願いします。

自分の好きなこと・続けたいことがまだ見つかっていない人は、とにかくもっと行動して。たまに、「たくさん行動したけど見つけられなかった」って相談を受けるんだけど、それはまだ行動が足りていないだけ。1回行動すれば見つかる人もいるし、100回やっても見つからない人もいる。何回行動したら「好き」が見つかるかは人によって違う。そのゴールが見えないまま進み続けるのは大変だけど、どれだけ時間がかかっても絶対に見つかるから進み続けてください 。

 

―ありがとうございました。

 

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