食品業界

長年愛され続けるチロルチョコの秘密とは?

スーパーやコンビニなど、どこへ行ってもお手軽な価格で購入できるチロルチョコ。

 

実はチロルチョコが誕生した当時、チョコレートは高価なお菓子でした。しかし、それを10円で販売することで子供たちに人気の商品となったそうです。

 

販売開始から60年近く経っていますが、多くの人に愛され続けています。その秘密を探るべく、株式会社チロルチョコの代表取締役社長である松尾様にお話をお伺いしました!

 

コンテンツ
・チロルチョコ誕生の歴史
・商品へのこだわり
・今後のチロルチョコ

 

 

 

チロルチョコの歴史

―本日はよろしくお願いします。早速ですが、チロルチョコ誕生のきっかけを教えてください。

チロルチョコ発祥の地は福岡県田川市です。田川市は元々炭鉱の町として栄えました。そこでは肉体労働が多かったため、労働者は疲れた時に甘いものを欲していました。なので、初代社長が金平糖やヌガーなどの砂糖菓子を生業に本事業を始めました。

2代目社長の時に海外からチョコレートの文化が伝えられ、日本でも広まりました。しかし、チョコレートは高価なお菓子だったため、気軽に楽しめるものではありませんでした。

商品名は、2代目社長がオーストリアのチロル地方に行った際、その風景が気に入り、鮮明に覚えていることから『チロルチョコ』が誕生しました。

 

―当時高価だったチョコレートをなぜ10円で販売することに成功したのでしょうか。

チョコレートの原料のほとんどは輸入品で、どうしてもコストがかかってしまいます。

しかし、チロルチョコはもともとチョコレートではない砂糖菓子作りから始まった会社です。100%チョコレートだとどうしても価格が高くなってしまうため、ヌガーの製法ノウハウを生かして、チョコレートの分量を減らし、手ごろな価格で販売することを実現しました。

チロルヌガー

商品へのこだわり

―新商品開発の工夫についてお伺いします。ご当地限定や店舗限定等多くのフレーバーがありますが、新商品はどのくらいのペースで開発・販売されているのでしょうか。

新商品の販売は月に1回以上のペースで行われています。というのも、チロルチョコはどこへ行っても見かけるような身近な商品なので、コンビニ限定、スーパーで取り扱うもの、クリスマスやハロウィンなどの催事用等、多くの販売形態を持っているからです。新商品を毎月出しているといっても、毎月同じ会社に向けて販売するのではありません。例えばコンビニに2か月に1回と新商品をだし、スーパーにも2カ月に1回…という風に、新商品を異なる場所で次々に販売することで、月1のペースで行われているということです。そう考えると、年間20品くらい開発を行っていますね。

―これほど多くのペースで開発を行うとなると、一つの商品にかける時間も短いのでしょうか。

最短でも3~4か月、長いものだと1年以上かかります。長期間かかるものに関しては、フレーバーというよりかは、新しい食感や今までにない形態のパッケージなどを取り入れる際の設備投資が必要になるためです。この際、製造における人員の配置や、出来高、一定の期間内にどれほどの売り上げがあるかを考えた上で導入します。そこから、試作をし、商品として実現するので、とても時間がかかるのです。ずっと同じ形態のチロルチョコだけではなく、新たな商品価値を提供することも大切だと考えます。

 

―新商品のアイディアはどこから生まれるのでしょうか。

社員が普段食べている物からヒントをもらったり、トレンドを見ながらメンバーが作ってみたいというものを形にすることが多いですね。

また、最近は企業間のコラボレーション商品も生まれています。例えば、生チョコレートが看板商品になっているロイズさん。生チョコの食感を再現できた、クオリティの高い商品が完成したことで、商品のヒットにもつながりました。

商品を開発する際は、チロルチョコの味だけではなく、いかに食感も寄せることができるかというのも大切にしています。

 

―今までに300種類以上のフレーバーを出したということに驚きました。57年間販売し続けているフレーバーはあるのでしょうか。

ミルクヌガーは販売当初から愛されていますね。チョコレートを始めてからしばらくは駄菓子屋さんを中心に販売しており、コンビニが普及するまでは西日本や九州での販売がほとんどでした。九州に行くと、ミルクヌガーはどこに行っても目にするもので、なじみのある商品になっています。

コンビニが全国に拡大すると、コーヒーヌガーや牛柄のパッケージのミルク味が人気になりました。最近はおもちの食感から、きなこもちも人気を集めています。

―なぜチロルチョコは長年愛される商品となっているとお考えですか。

私の意見ですが、主に2点考えられます。

1点目は、なじみのあるお菓子だからです。小さいころに食べていたお菓子であるため、親世代になった方はお子様におやつとして購入するケースもあるのでしょう。

 

2点目は、先ほども言ったように企業様とのコラボ商品など、多くのフレーバーがある点です。スーパーやコンビニの販売コーナーはもちろん、レジ前に置いていることから、接触回数が多いということも誰もが知っているお菓子として広がっているのだと思います。

 

―となると、ターゲット層は子供世代なのでしょうか?

私たちはどの世代にも愛される商品を製造しています。カテゴリー的に駄菓子と思われているため、お子様向けの商品と思われるのかもしれませんが、あらゆる世代にも受け入れられる商品となるよう、パッケージの工夫やプレミア感のある商品を提供しています。

―種類がたくさんありますが、各フレーバーに共通している商品へのこだわりはあるのでしょうか。

心から販売したいという商品を販売しているという点です。一般的なマーケティングの手法である、ペルソナを作って、その人がどんなチョコレートを食べたいのかと言うのを考えるのではなく、開発メンバーが自分のインプット情報をもとにアイディア会議をして、味やデザインを考えています。そして一番の特徴は、流行などを考慮したうえで自分がやりたいことが商品として形となることです。そのため、商品一つ一つに対して「販売したい」という気持ちが強いのが特徴です。

 

―チョコを扱う会社は他にもたくさんありますが、他社との差別化を図るためにどのような取り組みを行っているのでしょうか。

チロルチョコにしかできないようなエッジの効いた商品開発を心がけています。「また面白い商品が出てきたな」と思われるような商品は今までにいくつもあります。例えば、カレーパン味や夏野菜味(トマトとトウモロコシと枝豆の3種類)です。これは売れないだろうと思いながらも他社では絶対に実現できないだろうと考え販売していますが、これがチロルチョコならではだと思っています。組織で考えた時に、中小企業だからこそ社員の間の距離が近く、このような商品の販売実現につながっています。

また、チロルチョコは「楽しいお菓子で世の中を明るく」という社是があります。チョコレートは嗜好品で別に生きていくために必要な商品ではありません。だからこそ、ただおいしいだけではなく、遊びなどの面白い感覚を生み出すことも大切な要素だと考えています。

 

今後のチロルチョコ

―今後チロルチョコはどのように発展していくのでしょうか。

国内と海外への販売の大きく2つの軸があります。

国内では、少子高齢化が進み、今後の売り上げが懸念されています。その中で継続的に販売するために、「楽しい」商品を生み出すように工夫していく必要があると感じています。

海外への販売では、アジアを中心とした販路の拡大を狙っています。実際、中国、香港、台湾、ベトナム、フィリピンなどのコンビニでもすでに販売を行っています。また、現在、ベトナムに第二工場を建設中でチロルチョコの販売拡大は期待されています。今後は、アジアの中でみんなが知っているチョコレートブランドとして確立したいです。

 

―アジアでも販売を行っているのですね。やはり、日本と海外だと好みに違いがあるのでしょうか。

そうですね。中国を例に挙げて説明します。

私はよく出張で中国へ行くのですが、季節問わず皆さんスイカを食べているのです。このことを知ったとき、中国でスイカ味のチロルチョコを販売しようと決めました。以前日本でスイカ味を販売していたこともあり、そのノウハウを生かして試食アンケート調査を行うと、中国人には甘すぎるという結果が出ました。中国では、日本のスイカと比べてみずみずしいため、従来のものよりも薄味で作ったところ、彼らに受け入れられる商品となりました。今では中国に販売している当社商品の中で2番目に売れている商品となっています。

 

また、味覚以外にもベトナムなどは、まだチョコレートを日常的に食べないという場所もあります。日本と比べ、収入に差がある現地では、お菓子にお金が回りにくいため、一粒の単価を安く仕上げて販売しています。

 

―最後にメーカー志望の学生に一言お願いします。

メーカーの良さは、自分たちが携わった商品が目に見えることです。販売店に足を運ぶと商品を手に取っている人が見られることから喜びを感じたり、モノづくりが好きな人などは、やりがいを感じやすい仕事だと思います。しかし、その裏ではたくさんの努力があり、仕事をする上での覚悟も必要です。

また、就職活動中の学生も多いと思いますが、社会人としての1社目はとても重要です。これによってキャリアが決められるからです。その企業で何を学んで誰と働いてどんなキャリアを積んでいくのか、を考えることが大切です。「なんとなく」だと後悔することもあるでしょう。

就職活動中の人は、この1年間は大変だと思いますが、今後長い人生のスタートを決める1年とも言えます。それをぜひ考えて後悔のしない就職活動を行ってほしいです。

編集後記
私たちの身近な存在であるチロルチョコ。なじみのあるものだからこそどのようにして販売まで至るのか考えることがなかった。一つ一つの商品の裏には、社員の方々のアツい思いが込められていると感じた。取材を終えて改めてチロルチョコを食べたが、普段よりも格段に美味しかった。

 

 

 

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gakuseikichi

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