(第4回)食卓のカレーの定番
ハウス食品「バーモントカレー」
ロングセラー商品の現担当者に「どんなやりがいや苦労があるのか?」を伺い、学生へメッセージも頂く、ガクセイ基地インタビュー企画。
1963年の発売から55年間、カレーシェアトップをとり続けるブランド「バーモントカレー」の現担当者である萩原祐樹さんにお話を伺いました!
※社名、インタビュー内容等は、2018年4月時点の取材内容に基づきます。
スパイスコーディネーターやカレーマイスターの資格を持つ
・趣味やマイブーム
テレビゲームとタワレコ巡り
・学生時代に一番打ち込んだこと
アルバイト(接客業掛け持ち)
【目次】
1.ブランド商品に携わる仕事とは?
2.バーモントカレーが親しまれるために
3.ハウス食品で働くこととは?
4.学生へのメッセージ
ブランド商品に携わる仕事とは?
―まずは、萩原さんが現在担当されているお仕事から教えてください。
「バーモントカレー」など、当社の家庭用カレールーの商品開発や販売のプロモーションを考える仕事をしています。
例えばお客様の反応を見て、どういう味のカレーが求められ、喜んでいただけるのかという視点で会社の関係部署に提案して、形にします。
アイデアの種を考えて、社内で実際に反映させるための第一歩を担うところですね。
―今までにはどんな仕事をされたのでしょうか?
最初に札幌で営業を4年間、そこから営業企画推進室という全国の営業を本社で統括する部署を5年経験し、全社での取り組みや営業戦略を考える仕事にも5年携わりました。
終盤は大手小売店スーパー様に商談に出かけて、市場の分析や企画などをプレゼンする仕事もしていました。そこから今の開発部署に来て9年目になりますね。
―普段、どんな仕事をされているのでしょうか?
社外に出てお客様の動向を見たり、消費者団体などのセミナーで商品づくりのヒントを探したりしています。
面白そうなアイデアが見つかったら、形にするための資料作りを行います。
求められているニーズをカレーで解決するにはどうすればいいのか、どういう人に喜んでもらえるのか、アイデアをまとめるために社内で考えている時間も多いですね。
一方で、週三回は社内の調理室でカレーを野菜を切るところから、全部自分で作っています。
お客様相談センターに送られた意見などを基に「こういうカレーを作りたい!」というコンセプトを開発研究所に依頼し、試作品の味を家庭と同じ作り方で確認します。
一回に5鍋くらい作って、味の違いなど、担当者何人かで議論していますね。ほかにも、試作品が工場の大量生産でもちゃんと製造できているのか、味を再現できるのかという確認をしています。
―ずっとカレーについて考えていらっしゃるのですね!それでは、現在のバーモントカレーは以前と比べてどんな改良があるのでしょうか?
代表的な例では、斜めがけの商品名がトレードマークで、一度これをなくしたときにはかなりの苦情がきたそうです。
このように変えてはいけない部分もありますが、変えないと古っぽさが出てくるので、定期的に見直します。リンゴとハチミツのイラストやカレーの写真、コピーなど、大体3~4年に一回は見直しています。
もちろん、味も少しずつ変わっています。洋食の普及でデミグラスやブイヨンなど味の濃いものが浸透したので、少しずつ改良のたびにルーの色とともに濃くなっています。
具材の量やとろみの見直し等、食べ続けているお客様ぐらいにしかわからない違いですが、少しでも良くしようという思いから改良を重ねています。
もう一つ、今年の1月まで特定アレルギー品目である「ごま」が入っていましたが、2018年2月生産分から抜くことに成功したんです。
ごまアレルギーを持った小さなお子様のために、ごま抜きでおいしいカレーを作るのに1年半前から取り組んでいました。価格が変わらないよう、試行錯誤の連続でしたね。
発売後、自己満足で終わるのではないかと心配でしたが、さっそくお客さまからの反響をいただき、とても嬉しかったです。
バーモントカレーが親しまれるために
―製品やプロモーションの面で販売を増加させるための方法を教えてください。
「バーモントカレー」は他社が絶対につくれない味だと思っています。
子どもも大人も家族みんなで食べたときに満足する味、まろやかさとカレーのスパイス感の両立という技術的な差別化はあると思いますね。
プロモーションという面では、カレーは人生の早い段階で食べる味だと考えているので、幼稚園などで「はじめてクッキング」というイベントを行っています。
応募していただいたところにルーや作り方の冊子、お土産をお送りして、みんなでカレーを作る体験をしてもらっています。「初めて料理を作った思い出を提供する。」というコンセプトで、そのデビューはバーモントカレーにしてもらう狙いです。
代表的なプロモーションのテレビCMでは、定期的にタレントを変えています。お兄さんという雰囲気を持った、子どもたちが「かっこいい!」と憧れるような方を起用しています。
-1番のターゲットは食べ盛りの子どもたちなのですね!
そうなんです。育ち盛りの子どもたちにはたくさん食べてもらい、家族も一緒に食べて満足してもらえるような味をお届けすることを重視しています。
-カレーというカテゴリーで、これから新しい試みはあるのでしょうか?
カレーが「ごちそう」になって、ワクワクしてもらえる味を目指します。
食卓や家族を盛り上げるような商品にして、もっとカレーを好きになってもらえるような工夫を凝らしていきます。
人口が減ると苦しいカテゴリーですが、カレーをもっと普及させたいと思っています。カレーを好きになってもらい、目標としては晩御飯がカレーだと飲み会を断るくらいですかね(笑)
―萩原さんのカレー愛が伝わってきます!それでは、これからの社会変化にはどう対処していくのでしょうか。
日本の市場だけで考えないことですね。これからは人口が増えている地域で、どのようにハウス食品のカレーを広めていくかが重要だと思っています。
日本では縮小していますが、まだまだ世界には無限の可能性があって、どこへ行ってもその地域の子どもが好きな味にするという基本は守っていきたいです。
一方、国内では高齢化した方々にどう食べてもらうかが重要で、量が少なくなるならば頻度を上げてもらうしかありません。求めるニーズが変わっていく中で、適した商品を出す必要があると感じています。
―萩原さんが思う、現在の仕事のやりがいを教えてください。
日々、お客様の声をいただくのですが、その課題に対応してすぐ良い反応をいただいたときはうれしいですね。
例えば、アレルギー品目に対応したカレーは幼児向けが多く、成長すると使用することに抵抗感があることがわかったので、大人も子どもも一緒に食べられるような味・デザインのカレーを作りました。
構想から10年、試作開始から4年かけて作ったのですが、お客さまから泣きながら「楽しい家族の食事の時間をありがとうございます」と電話で言われたことは印象深いです。
お客様から直接感謝していただけると、食品メーカーで働いてよかったと強く感じます。
これからも「ハウス食品」という社名通り、食卓に役立つ会社でありたいです。
―苦労したり、大変だと感じたりする部分はありますか?
納得できるものを作る過程が大変ですね。私ひとりで完結する仕事はほとんどなく、手を動かすのは別の部署の方。彼もまた別の方とやりとりや交渉をしています。
「こうしたい!」という強い思いを、関わっている方全員と共有していくことに一番苦労しますね。
でも、お客様にどう喜んでもらうかというイメージのゴールを共有できれば、あとは自発的によりよいものが出来ていくと思っています。
―萩原さんが、仕事で心掛けている事はありますか?
一緒に仕事する人に敬意をもつことは心掛けていますね。
やはり、自分にできない仕事をしている人をないがしろにはできません。同じ目的をもって仕事をすることを心掛けています。
もうひとつ、個人的には学生時代から「毎日ワクワクしていよう!」と心掛けて、一緒に仕事する人にもワクワクしてもらおうと意識しています。学生みたいだねと言われることもありますが(笑)
次ページ:ハウス食品の社風や学生へアドバイス!
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