タイのプロモーションを日本で行っている、タイ国政府観光庁の藤村さんとの取材内容を対談形式でお伝えします。
左:筆者 右:タイ国政府観光庁 藤村さん
―多くの地域をPRしていらっしゃると思うのですが、地域の見どころをどのように見つけてPRしているのですか?
まず、バンコクは首都であるため多くの観光客が訪れます。その他の地域に関しては、タイの本部からどういう場所をアピールすべきかフィードバックが来ます。そういった現地の情報や、観光施設からのご要望にこたえる形でウェブサイト・ガイドブックを作成しています。
私たちがアピールする地域を選ぶ、というよりはお客様が訪れる場所を調査し、声を聞きながらPRをしています。少し前までは基本的に、旅行会社さんからの要望が多かったのですが、最近ではお客様主動の旅行が増えてきています。その為、お客様個人の希望にいかにフィードバックして、見どころをアピールするかが重要です。
政府観光庁としては、タイ全体を見ながらどこが良いかを決めています。最近はデスティネーションというよりは「テーマ」という観点から地域を見ており、例えば「長期滞在」というテーマであれば、チェンマイやバンコクをおすすめします。他にも様々なテーマを想定しており、「マッサージ(スパ)」であればその目的に合った地域をPRしています。
地域の見どころを出すという点では、タイには77つ都道府県がある為、いかにそれぞれの魅力を広めていくかが課題になっています。日本でも地域創生という面で、各都道府県が競争していますよね。
そこで重要になるのが航空路線です。日本からはバンコクへしか航空路線がなく、どうしてもバンコクに観光客が集中してしまいます。なので、地方への直行便があればタイの魅力をより多く伝えられるのではないかと思います。移動手段がどうしても一極集中になってしまうので、地域に焦点を当てる際には弱点になっていると思います。
昔は日本からプーケットへの直行便があり、そういったビーチリゾートへの路線があるのは利点だと思っています。
―地域において、「ここといったらこれ!」といった特定のイメージを定着させる取り組みは行っていますか?
タイは色々なものがあり、色々なイメージがあるので特定のイメージをつけてしまうと、それしか見えなくなってしまうと思っています。なので、多様性を大きな観光資源としたプロモーションを行うように心がけています。
―観光客は何を目的にタイを訪れるのですか?
そうですね…。食・アクティビティー・リラクゼーション・ショッピングが挙げられますが、やはり食が中心です。先ほどの多様性と絡めますと、タイの焼きそば1つとっても地域性が見られます。南部だとシーフードが具材で、北部だと肉類を入れることが多いなど、食から地域の色合いが分かります。
↑パッタイ
―地域を知ってもらうためにどのような事を行っているのですか?
メディアを通じてキャンペーンを行ったり、ブロガーさんに依頼してタイに赴いていただいたりしています。一方で、日本の旅行業者さんが地方のツアーをあまり作られていないので、お客様が自身で見つけて行くという状況です。本当にその地域に行きたい方が、生き方を調べて自分で行くというスタイルですね。選択肢はたくさんありますから、特に学生さんは自分に合った場所に行かれることが多いのではないかと思います。
私共でも情報を提供していますが、移動がLCCであれば個人で行かれる方が多いので、ウェブで現地のツアーを予約して観光されるパターンが結構多いです。私たちはパンフレットを配るなどして情報を提供し、必要であれば皆さんにお知らせしています。
―個人で観光するには言語が問題になってくると思います。現地でツアー情報を集めるのは大変ではないですか?
タイには日本語の新聞・雑誌があるので、ツアーに関する情報源としては問題ないです。そこから得たツアー情報をもとに観光される方もいらっしゃれば、事前にネットで調べて行かれる方も多いと思います。
↑タイ象保護センター(ランパーン)
―集客を安定させるために行っていることはありますか?
日本からタイへの観光客は4月から6月が一番少なく、その時期は旅行会社さんがグループツアーや社員旅行を企画しているので、その方針をサポートしています。あとは、現地でイベントを仕掛けることもしています。タイではゴルフが盛んなのでゴルフのトーナメントをタイで実施し、人の少ない時期にゴルフ場へ行ってもらう取り組みをしています。
―現地の方と日本人が交流する機会は作っていらっしゃるのですか?
はい。交流を作るという点では、私たちはインターンシップを行っています。日本人学生をタイへ送り、アユタヤ・プーケット・チェンマイのタイ国政府観光庁オフィスで、どのような日本人向けPRをするかを考えてもらいます。インターンシップ期間内にはフィールドワークをしてもらい、最終日にはオフィスで英語を使ってプレゼンをして頂きます。比較的アカデミックな要素を含めた体験ですね。それがツアーとして成立している交流となります。
現地での自然な交流としては、タイのゴルフの場合だとキャディーが各人につき1人付きます。キャディーはタイ人なので、その場でコミュニケーションをとれます。あとは、マーケットで値引きに挑戦してコミュニケーションがとれると思います。アクティビティーでも現地の文化を知りながら、タイ人の先生と交流できますね。
―藤村さんはタイで文化を発見する体験をされましたか?
唐辛子はどの色が一番辛いかをタイ人の料理の先生に教わりました。赤・緑・オレンジでどの色が一番辛そうなイメージですか?
―辛そうな色といえば…赤だと思います。
私もそう思いました。しかし一番辛いのはオレンジなのだそうです。こういった現地の人からの情報や、町歩きでの発見が、タイ文化を見つけられるポイントだと思います。
このバンコクウォーキングマップ(以下写真)はタイの現地の人が実際に歩くルートを記したもので、車で観光地を回るのではなく、歩くことでより踏み込んだ文化を発見することができます。
先ほどの料理体験の話に戻りますが、タイ料理はおいしいですし、フォトジェニックなので、自分で作った料理をきれいに撮れるのも文化を理解するうえで魅力だと思いますね。
タイへの観光客の傾向として、ファーストビジターとリピーターの割合が2対8なので、何度も訪れる人が多いです。ですからタイ国政府観光庁としては、初めて訪れる方を増やしたいと思ってPRをしています。また、男性と女性の比率を考えると、7対3ほどです。そのため、大学生を含めた女性をターゲットにして乃木坂46さんをPRモデルに起用するなど工夫をしています。
―SNSを利用して情報を発信する際に気を付けていることはありますか?
情報をいかに分かりやすく伝えるかに気を付けています。それから、ファーストビジター向け・リピーター向けの情報を区別してバランスをとって発信しています。ホテル情報、アトラクション情報、イベント情報が中心なので、それらをSNSでどのように発信して周知するのかに気を付けていますね。
―タイでおすすめの場所はありますか?
初めての方はバンコクをおすすめします。リピーターの方にはタイで2番目に大きな島であるチャーン島など、あまり知られていないところを訪れてほしいと思います。
↑ トラート チャーン島
また、クラビはレオナルド・ディカプリオ主演の映画『ザ・ビーチ』の舞台にもなっているヒピ島があり、アイランドホッピングやシーカヌー、ロッククライミングが出来ます。
―タイへの観光や観光庁でのお仕事を詳しく教えていただき、大変勉強になりました!お話し頂きありがとうございました。
タイ国政府観光庁HPはこちら!
写真提供 : タイ国政府観光庁
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