こんにちは、そして初めまして。
今月から記事を執筆させてもらいます松尾力と申します。今は東京・新宿にある水上印刷という会社で働いており、そこで新卒採用と経営戦略立案を担当しています。
この連載では、僕が採用活動やこれまでの仕事を通じて感じたことを主に大学生の皆さんにメッセージとしてお伝えしたいと思っています。
最初に少し自己紹介をさせていただきます。
自分でもちょっと変わったキャリアだと思っているのですが、実は今の会社に入るまで3年間ほど経済産業省というところで働いていました。そう、いわゆる官僚です。そこでは色んな経験をさせてもらい、仕事自体もそれなりに充実していたのですが、このまま働き続けても自分にとって満足できる人生を送れないと感じ、昨年末に退職しました。そして、現在の勤務先に転職し今に至っています。この辺りの話は今後お話していきたいと思います。
今の勤務先である水上印刷はいわゆる「中小企業」です。経済産業省を辞める人は実は結構いるのですが、政治家になったり国内外の大企業に転職したりするというパターンが多く、中小企業に行ったという話はあまり聞いたことがありません。なので、辞める時には相当色んな人から驚かれ心配もされました。まあ当然ですよね。安定していてそれなりに社会的地位もある所から、名もなき中小企業へ。しかも印刷業ときた(笑)。印刷業自体は決して小さな業界ではありませんが、少なくとも一般的にはあまり将来性がないと思われている業界です。
しかし不思議なことに、自分自身には不安はなく、むしろワクワクしていました。言い換えれば、やっと人生楽しくなってきた!という感じです。誰も考えてみなかったことや、誰もしてこなかったことをするって素敵だと思いませんか?そして、単に誰も注目していないからという理由だけではなく、僕は「中小企業」にも「印刷業」にも非常に可能性と魅力を感じています。この辺りも是非どこかでお話できればと思っています(色々話したいことがあってすみません)。
さて、前置きはこの辺りにしておきますね。最近、採用活動をしていて面白いと感じたことがあったので今日はそれをお話します。
採用活動をしていると色んな学生に会うのですが、先日会った学生は頭の回転が非常に早く、物事をきちんと整理して話すことの出来るタイプの男の子でした。興味分野も広く、大企業・中小企業問わず色んな業界の会社を見ているとのこと。確かに口から出てくる会社は規模も業種も全くバラバラなのですが(幸い水上印刷も入っていました!)、会社を選ぶ「切り口」や「軸」はしっかりしており、思わず感心してしまいました。自分の考え方や性格、好き嫌いも分かっていて、その上で研究熱心。自分に一番合った会社で働きたいということで、興味のある会社を片っ端から調べているという印象でした。
しかし話を聞けば聞くほど出てきたのが、この人は最終的に会社を選ぶことができるのだろうかという疑問。実際、その学生も自分で会社を決めきれないと言うのです。
自分に一番合う会社はどこかを追求したいという気持ちはすごく良く分かります。だから就職活動ではそこにまず力を注ぐべきです。
でも今存在している会社は所詮他の誰かが作ったもの。事業内容も企業理念も会社の方向性も全部他人が決めたものです。そして、他人の作ったものに自分を合わせている限り、いつかは自分に合わなくなる。
つまり、自分に合った会社で本当に働きたいのであれば、自分がどういう会社で働きたいのかではなく、どういう会社にしていきたいかを考え、それはどこの会社でなら実現できるのかという視点で考える必要があると思うのです。言い換えれば、他人の作ってきた過去や現在ではなく、自分が叶えたい未来を形にすることができる場所かどうか、ということ。そして、その時に見定めるべきポイントは、「この人たちとなら一緒に会社を作っていけるか」、「常に新しいことにチャレンジする習慣や環境があるか」、「メンバー全員が仕事に対して情熱を持っているか」といった「人」や「環境」、「スピリット」といったものに収斂してくると思います。なぜならそういったものこそが、「将来」という今ないものを作り出す原動力になるからです。
その学生は、どこの会社で働くのが一番自分に合うのかは考えていたけれど、どういう会社にしたいかという視点が全くなかった。だから興味のある会社はいっぱい見つかったけども、いざどこで働くかを決める時に、それらの会社の中で区別をつけることが出来なかったのだと思います。だってどの会社も今の時点では自分に合いそうだと感じるから。
さらに言えば、残念ながら事前に全てを把握した上で、会社を決めるということはかなり難しい。そうすると入社した後にどうしても自分に合わない部分が出てくる。ではどうするか。ここでもやはり、会社に自分を合わせるのではなく、自分に会社を合わせていくことが大切だと僕は思っています。そういう意味でも、やはりどういう会社にしたいかを考え続けることは、非常に重要です。
就職活動というと「自分に合う会社かどうか」を考えることが多いと思いますが、もう一歩進んで「自分はどういう会社にしたいか、そしてそれはどこで実現できるか」ということを就職活動中の皆さんには考えてほしいと思います。
今月はここまでにしたいと思います。
ご意見・ご質問あればコメント欄にどしどし書いてください。
ではまた来月!