−取材のためこの三鷹にある個人邸のお庭にお邪魔させていただいていますが、この現場について教えてください。
この案件はホームページからご相談を受けました。 お客様の主なご要望としては、車3台分くらいは入る広い駐車場の整備と、小さいお子様がいらっしゃ るので、子供が安心して走り回れるようなお庭、リビングに面している中庭の植栽をお願いしたいというものでした。
また、今回の庭作りをお子様にとっても良い思い出にしたいというお客様のご希望もあり、重機が必要な駐車場の整備や敷石意外は、DIYガーデンプロジェクトで行いました。
建替えによる新築のお住まいでしたが、昔から大切に育てられてきた大きな梅や杏(あんず)の木などが残されていました。 それらは、お庭のシンボルツリーというだけでなく、お客様のご家族の記憶を繋ぐものと捉え、これからも健全に生育する環境を整えることをまず第一に考えました。 そして、お客様の趣向やライフスタイルなども考慮したお庭の仕様をご提案させて頂きました。
特に駐車場に関しては、駐車場としての強度と、梅や杏の生育環境、費用の問題などのバランスをうまく保つ必要がありました。一般的によく見られるコンクリートで舗装する方法もありますが、それだと強度としては申し分ありま せんが、夏場の太陽光の照り返しや、土中の通気性や雨水の浸透性を妨げてしまうなどの点で、梅や杏の生育環境を悪くしてしまう恐れがありました。また、面積が広いので費用もかかってしまいます。 そこで、今回は砂利敷きという方法を取らせて頂き、それと合わせて通気浸透水脈工事を行うことで、 土中の空気や水の流れを妨げない工夫をしています。
芝張りや板塀、植栽の作業に関してはDIYガーデンプロジェクトで行いました。 お子様もご一緒に参加して、時にお母さんに怒られながらも、楽しく作業している姿が印象に残ってい ます。 庭作りはとても手間がかかることではありますが、少しでも自分で手を入れることで、愛着が持てるようになります。そしてそれが、梅や杏の木のように、次の世代にまで大切に引き継がれていくことにつ ながるのだと思います。 DIYガーデンプロジェクトが、そういったきっかけのひとつになれば、これほど嬉しいことはありませ ん。
−本当にいいお庭のために色んな面で試行錯誤しているのですね!プロジェクトに取り組む際、どんなことからアイデアを得ていますか?
基本的には最初に環境を調査し、お客様のご要望なども加味しながら、最適なものを選んでいきます。植栽に関して言えば、環境によっては育てられない植物もあるので、まず環境を見て考えることが多いです。 あと最近ではお客様の住まいだけでなく、その地域全体の地形や歴史の成り立ちなどを調べ、 それを庭作りのコンセプトやデザインに活かすということも行っています。
−1つのプロジェクトができるまでの過程を教えてください。
まずは実際にお客様のお宅にお伺いして、打ち合わせを行うところから始まります。 その後は、庭作りの方法や仕様に関して、お客様と協議し、アイデアを出し合いながら一緒に 作り上げていきます。 特にDIYガーデンプロジェクトの場合は、作業も一緒に行うので、作りながら当初のプランにはなかったアイデアなどが湧いたりして、良い意味でのイレギュラーがあり、庭作りの過程を楽しんでいます。
−ガーデニングで1番難しいのはやはりメンテナンスだと思いますがその辺はどうやってサポー トしているのですか?
施工前の打ち合わせ段階で、お客様とメンテナンスの相談をします。 その時に弊社にご依頼されるようであれば、メンテナンス契約を結んで頂き、年に数回手入れに入らせて頂くような形です。 お客様ご自身でできるくらいの小さいお庭だったら、育て方のマニュアルをお渡しして、お客様自身にメンテナンスをしてもらうこともあります。 もちろん困ったことがあったり、植物の調子が悪いということがあれば対応させて頂いていま す。 あとは、お客様のライフスタイルに合わせて、なるべく無理をしないで楽しめるようなお庭のプランを提案するよう心がけています。例えば、仕事が忙しく、庭木の手入れができないというお客様には、成長が遅い植物や、樹形がコンパクトに整うような植物を中心に植栽する計画 を提案しています。
−ガクセイ基地の読者が気軽にできるガーデニングはありますか?
まずはプランター栽培からでしょうか。ハーブやミニトマトでしたら料理に使えるので、育て甲斐もあります。まずトライする、やってみることが大事です。やってみたら意外と簡単だったりしますよ(笑)。もちろんガーデニングについて何か聞きたいことがあればいつでもウェルカムですのでお気軽ご相談ください!
−ガーデンデザインの魅力と苦労を教えてください。
弊社はお客様と共に庭作りを行うことが多いのですが、お庭が完成したときの喜びを共有できた時や、 「お庭ができたおかげで毎日外に出るのが楽しみです」というお言葉を頂いた時などは、この仕事をしていて良かったなと思います。 また、お庭は修景的な効果や癒しの効能以外にも、例えば土中の通気性を改善したり、ヒートアイランドを抑制したりという環境改善の効果もあります。 住環境や地域の自然環境をより良くするものという意味で、庭作りの仕事に携わっていることは、とても意義深いことだと感じています。
苦労は強いて言えば、肉体労働が多いところでしょうか・・・。
−今後の目標はありますか?
今の仕事をこれからも続けていきたいです。特に成功したいとか会社を大きくしたいとかそう いう事は思っていません。お庭は一部の裕福な人の贅沢品ではなく、一般の方たちでも普通に 楽しめるものだという認識を広めていければと思います。そして、私としては、そういう方た ちに寄り添うようなガーデナーでありたいと思います。 そして、お客様や自然も喜ぶような庭をたくさん作れたらなと思っています。
−かっこいい大人とはどんな人だと思いますか?
個人的にかっこいいなと思うのは、「ピーターパン症候群」と言われているような人でしょう か。 そこまでいかないまでも、自分より若い人に対しても、対等な付き合いができる人かなと思い ます。 そして彼らへ投資を惜しまず、誠意を持ってコミュニケーションができる人だと思います。
−最後にエクステリアやガーデン業界を目指している学生に向けてメッセージをお願いしま す。
これは建築系の学生にも言えることですが、良い食事を取るということが大切だと思います。 良い食事とは、なにも高級料亭や三ツ星フレンチということではなく、無農薬・無化学肥料栽培のものを食べるということです。 これは、もちろん自分の健康にとって良いものというのがありますが、自然環境を守ることに つながるとても大切なものになります。 慣行栽培のものより作り手が少ないこともあり、市場価格は割高ですが、徐々にでも需要が高 まることで、生産者を応援することができます。まさに三方良しです。 学生だとお金にも時間にも余裕がないかもしれませんが、住環境をデザインする仕事をする上でとても大切な視点が得られると思いますので、まずは週一からでも始めてみたら良いと思い ます。
−健康であることは確かに生活の原点ですね!色んな意味で学生に響くようなアドバイスあり がとうございます!
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