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【海外で活躍する日本人特集】建築設計事務所Sanuki Daisuke Architects

グローバル化が進んでいる中、海外を拠点として活動している日本人も年々増えています。

今回はベトナム・ホーチミンで建築設計事務所を運営している日本人建築家の佐貫大輔(サヌキダイスケ)さんにお話を伺いました!

佐貫大輔(サヌキダイスケ)
1975年 富山県生まれ
2004年 東京理科大学博士課程単位取得退学
同大学理工学部建築学科小嶋一浩研究室助教
2009年 Vo Trong Nghia Architectsパートナーとして渡越
2011年 ベトナムに建築設計事務所 S+Na. を設立
2015年 Sanuki Daisuke architect に改称し今に至る

 

−本日はよろしくお願いします。佐貫さんが代表を務めるsdaはベトナムを拠点にしている建築設計事務所ですが、スタッフはみんな日本人の方なのでしょうか?

いえ、僕以外はみんなベトナム人で、事務所は僕を含めて8人います。

 

−みんなベトナム人なんですね!スタッフとのコミュニケーションはどのように行われていますか?

英語です。でも正直、100%理解し合えているかというと、なんとも言えないですね。なぜかというと僕はベトナム語が話せないし、彼らは日本語が話せない、両方とも片言の英語を喋るしかないので。なんとなくのニュアンスで話していくしかないとういう感じかな。あまりよろしくはないけどね(笑)。

 

−日本人スタッフを雇おうとは思わないのですか?

たしかにコミュニケーションは難しいけど、実際の実務となると、ベトナム人スタッフの方が日本人スタッフより有利なこともあります。彼らはベトナム語を使って、クライアント、サプライヤー、コンストラクションカンパニーなど様々なステークホルダーと話せるから、英語が話せる日本人スタッフより実務に関しては圧倒的に人材としていい。英語が通じないクライアントとの打ち合わせや現場では、スタッフに通訳してもらっているしね。

 

−どのようなものを設計していますか?

個人住宅が基本的に多いですが、ホテル、オフィス、小規模アパート、内装(インテリア)、リノベーション等の案件もあります。

AN PHU HOUSE
HEM HOUSE 外観
APARTMENT IN BINH THANH

写真:大木宏之

 

−家具のデザインなどはしないのですか?

家具の仕事はインテリアに含まれます。新築と共に内装設計をする際、家具のデザインもしますが、内装や家具デザインだけの案件は比較的少ないですね。

HEM HOUSE 内装

写真:大木宏之

 

−案件にもよると思いますが、設計する際は何から発想を得ていますか?

やはり与条件です。中でも、僕が最も気にしているのはどれぐらいの建物を作らなきゃいけないのか、作らなくてもいいのかという、専門的な言葉で言うとヴォイドやマスです。いかにヴォイドとして外部空間を作りうるかということを依頼者は期待していると考えていて、それは重要視しています。具体的な例えだと100平米の敷地の住宅にベッドルーム5部屋依頼されるのと、2部屋依頼されるのではできることが変わってきます。2部屋依頼された方が緩やかに外部空間を作れますが、5部屋の場合は必然的にタイトになるので設計アイデアも全く変わります。

あとは、敷地の周辺から得られる情報からも着想を得ていますね。コンテクストという言葉をよく使いますが、その敷地で培われた文脈、つまりそこの歴史的背景だったり、その敷地がどんなものに面しているのか、どのような状態であるのかのことを表します。これらのコンテクストを一つ一つ読み取って設計にフィードバックしています。

NGA HOUSE 敷地
直接日光を当てず(暑くなってしまうため)に内部を明るくする設計/NGA HOUSE
外からは予想もできない室内の解放感/NGA HOUSE

写真:大木宏之

 

−クライアントへのプレゼンテーションはどのように行われていますか?

手順としては、プレゼン資料を前日にお送りして、当日はスライド、模型、そして印刷した資料でプレゼンします。

 

−パソコンを使ったCGパースなどは使いますか?

僕たちアーキテクトチームのスタディツールとしては常にCGを使うけど、プレゼンテーションに使用するのは少ないかな。個人的に100%視覚化する必要はないんじゃないかと思うんだ。クライアントは専門家じゃないので図面やCGで具体的のものを見せられてもピンと来ない、だからこそ僕たちに依頼しているんです。

アーキテクトが作った空間が最終的に「素晴らしい空間だ」って認識できればいいので、むしろ情報が程よくカットされた手書きスケッチの方が1番伝えたいアイデアやコンセプトが伝わりやすかったりします。あと模型も最初のプレゼンテーションからよく使うんだけど、それもやっぱり立ち上がっているモノを見た方が、クライアントも「あ、建つんだ」っていう認識がしやすいと思うからです。

PN HOUSE
PN HOUSE 内装
PN HOUSE 外観

写真:大木宏之

−建築家とはある意味サービス業でもあるのですね。提案したアイデアを打ち合わせで変更されることはあるのですか?

プレゼンには3つほどオプションを用意しているので、だいたい「A案よりC案がいいよね〜」という具合に話は進みます。

 

−なるほど。オプションを与えることでクライアントにより幅広い選択肢を与えているんですね。

なぜ建築家はオプションを作るかっていう話です。3つのオプションを用意するといずれかが選ばれる、ただし一つしかオプションを作っていないと、断られやすい、というか、変更されやすい。変更するっていうのは両者にとってストレスを生むので、最初からオプションを与えた方がいいっていうこと。

ただアーキテクトは3つのオプションを用意する中でAが1番いいって決めている。でないと、プレゼンが明確にならない。「A案か、B案かな〜」ぐらいの迷いはあるかもしれないけど3つともパラレルにいいオプションっていうのは絶対にないね。

 

−自分のためだけでなく、クライアントのためにもオプションを作っているのですね。そもそも、なぜベトナムで設計の仕事をしようと思ったんですか?

2008年のリーマンショック直後、当時34歳の僕には4つの選択肢があったんだ。1つ目は日本で独立する、2つ目は日本のアカデミックコース、つまり研究職に務める、3つ目は12年間大学の研究室でお世話になった小嶋一浩さんの事務所に入る。4つ目は研究室時代に知り合った友人ヴォチョンギアの事務所にパートナーとして入る。

そもそも日本で独立して事務所持つことにリアリティを持てなかったんだ。2009年の日本は不況真っ只中で事務所を構えても、仕事なんて簡単には取れない。大学は15年間もいたしそろそろいいだろうと。小嶋さんには10年以上お世話になっていて、別の道に進んでみたいと思って、4つの選択肢のうち1番面白そうで、誰もやらなさそうなものを選んだ。

普通じゃない人生の方が、例えば、僕はアトリエ系設計事務所に勤めたことがないっていうのは自分にとって強みになってると思う。他人からしたら「経験値がない」っていうネガティヴなことに見えるかもしれないけど、僕は小嶋さんの下で修行したという認識があるし、研究室でのプロジェクトもたくさんやっていたし、一級建築士も持っているし、ベトナムでちゃんと建築の仕事ができているし、ネガティヴな要素であっても、ポジティブに捉えられて「別に(アトリエ系設計事務所での経験値が)なくてもいいじゃん」って言い返せる。

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