泊まれる本屋の「BOOK AND BED TOKYO」、
WOWを創出する仕事場「LINE オフィス」、
衣食住を楽しめる「hotel koe tokyo」、
この夏に上映された映画「未来のミライ」のくんちゃんの家など
数々のユニークなコンセプトをもとに作られた建築を設計した建築設計事務所 SUPPOSE DESIGN OFFICE。
今回は SUPPOSE DESIGN OFFICE 東京オフィスのチーフディレクター、
濱谷明博(ハマタニ アキヒロ)さんに取材させていただきました!
*建築設計事務所 SUPPOSE DESIGN OFFICE(以下「SDO」と称する)
-本日はよろしくお願いします!SDOは広島のヘッドオフィス、そしてこの東京オフィスがありますが、各オフィス内の担当や役割を教えてください。
SDOは二代表制で谷尻誠(タニジリ マコト)と吉田愛(ヨシダ アイ)がその代表者です。その下にチーフディレクターがいて、東京は僕1人、そして広島に3人、合計4人のチーフがいます。基本は全員設計スタッフです。年齢は20代はじめから30代後半までで、経験によっては担当案件の数は変わりますが、チーフも含め仕事の流れなどやることは一緒です。
-映画の舞台となる家などもあるようですが、SDOではどのようなものを設計していますか?
最初の方は建築設計事務所ということもあって、住宅、商業ビル、公共施設など建築をメインで設計していましたが、最近はインテリアの案件も増え、飲食店、ファッション含め物販、ホテルの内装、オフィスなどにも携わっています。プロダクトデザインも行っていて、自社で作って販売している鋼材で作られた雑貨の「カタ」シリーズもあります。他にも映や漫画の背景や建物まで画設計していて、設計対象は非常に幅広いです。
-案件にもよると思いますが、設計するときは何から発想を得ていますか?
これも幅広くて、やっぱり絶対的なのは敷地条件、法的条件、ご予算、そして街との関わり方などが挙げられます。例えば住宅であれば家族構成や、敷地、要件、仕事、趣味などのご要望から考えたり。物販のインテリアであればブランドコンセプト、ターゲット層などから考えたり。
扱うものによって発想の元になるものが変わりますが、形から切り込む場合もあれば、言葉で抽出し、組み立ててデザインしていく時もあります。一言で言えば、「案件に合ったもの」からアイデアを出します。
-設計の際はどのようなことを大切にしていますか?
とにかく「いいもの」を作るようにしています。僕らSDOとしても自信を持ってご提案できるもの、ご依頼されたお客様に喜んでいただけるもの、そして周囲の方々にもプラスになるようなものでしょうか。
-SDOでのプロジェクトの進め方について教えてください。
1案件に対して担当が1、2人いて、基本はその人中心でプロジェクトを進めて、その過程で代表が「こういった方向性がいいんじゃない」とコメントしたりします。複数のスタッフでアイデアを出し合って、それをみんなで議論しながら決めていくことが多いですが、最終的に決めるのはやっぱり代表の2人ですね。
-クライアントへのプレゼンはどのように行われていますか。
プレゼンをするときは紙をベースにして行います。図面やパース図、模型を使って、プレゼンします。SDOではパースが多くて、CGパースをたくさんお見せすることで空間的なイメージを掴んでいただいています。
大きい会場でのプレゼンとなると代表者がスクリーンに接続されたiPadを使って、その場で、事前に作った資料に直接書き足したり、説明します。この方が、一般的なレーザーポインターを使うより効果的にクライアントに伝えることができるからです。
SUPPOSE DESIGN OFFICE のスタッフとして
-次は濱谷さん自身についての質問ですが、組織系設計事務所やゼネコンもある中、なぜアトリエ系設計事務所を選択したのですか?
アトリエ系設計事務所は組織設計事務所と比較して「作る」感覚が強いと感じたからです。職人さんともお話したりするし、デザインを重視していることもあって、モノづくりが好きな僕には合っている気がしてアトリエ系設計事務所を選びました。
-現在は東京オフィスのチーフディレクターとして働いていることからして、この業界での経験もいろいろ積んでこられたと思います。学生の頃の建築家のイメージと現実は一致していましたか?
学生の頃から建築設計事務所には出入りをしていたからなんとなくはどういうものか分かっていました。ただ想像と違っていたのが、お金を稼ぐのがすごい大変な仕事だということ。夢はあるけど、お金ができるかはわからない。経済とのバランスを取るのが難しい職業、ある意味「アーティスト」に近いんだなとは感じましたね。
-シビアですね。たしかに建築も突き詰めると膨大に時間や労力がかかりますよね。実際にはどんな苦労がありますか?
とにかく時間がないです。プライベートの時間がどうしても少なくなってしまうので、もう仕事とプライベートが一緒になってしまいます。一応好きでやってる仕事だから、無理やり納得しているけど体力的な問題もあるし、辛いときは辛いですね。やっぱりアトリエ系設計事務所ではそういう大変さはあると思います。
-では逆にSDOで働く魅力を教えてください。
デザイン、そして「作ること」に対してのこだわりがたくさんあるので、それをみんなで議論したり、実際に自分が思い描いたものが形として出来上がることはとても嬉しいですね。「作ってる」感覚がある。それが最大の魅力だと思います。
-今の大学生にもおすすめしたい、濱谷さんが学生の頃やってよかったことはありますか?
やってよかったのは、アトリエ系や組織系の設計事務所にアルバイト、インターン、そしてオープンデスクに行ったことです。なんとなくだけでも、現場がどういうものか見て、どういうことをやっているか知れます。
あと、旅に出てください。なぜかっていうと、考える力が鍛えられるからです。ひとつの目的地に行こうとしてもなかなか思い通りにたどり着かなかったりします。もちろんツアーとかは別ですよ(笑)。旅にはいろんな困難があります。わかりやすいのは、海外で言葉が通じなかったり、乗り物一つ乗るにも、どこで切符を買えばいいのか、どうやって乗ればいいのか分からなかったりします。旅をしているときは、常に先のことを考えないと生活ができないので、いろんなものに敏感になります。自分からそういう環境に身を置くことで考える力を鍛えるのは大事だと思いますね。
−学生の頃、最も影響を受けた、あるいは関心のあった建築や建築家はいますか?
結構幅広く、好きな建築家はたくさんいたんですけど、中でもルイス・カーンや、今も存命のピーター・ズントーは特に好きでした。ルイス・バラガンとかも。
−外国の方が多いんですね。
そうですね。でも建築への入り口は安藤さんだったかな。日本人では、安藤忠雄(アンドウ タダオ)さん、丹下健三(タンゲ ケンゾウ)さん、谷口吉生(タニグチ ヨシオ)さんは学生のときから好きでした。
−かっこいい大人とはどんな人だと思いますか?そうなるためになにか意識して行っていますか?
やりたいことをやっている人かな。人生をちゃんと楽しんでいる人とか。そういう人ってやっぱり、生き生きしていて表情に現れるんです。「こういうことやってる」って言って、それを人に楽しそうに話せる人は聞く側も楽しいです。
僕自身、学生の頃からずっと「人に影響を与えられる人間」になりたいと思っています。自分が話す一言、自分がやった仕事の内容とかで、周りの人にいい影響を与えたいです。それを意識して、「これは本当に人のためになっているのか、本当に喜んでくれるものなのか」と常にジャッジする思考になっていますね。
−とてもかっこいいですね!最後に建設業界を目指す大学生に向けてメッセージをお願いします。
僕らの仕事って、ライフスタイルを全部作るような仕事です。身近にあるテーブルもそうだし、お皿もそうだし、見えるもの全部が建築に関わります。だからそれ一個選ぶにしてもやっぱりよく考えないといけません。
例えばテーブルの厚み一つ決めるだけでも、すごいドラマがあるわけです。椅子の高さがどうだとか、全体見た時にこういう空間にしたいだとか、薄すぎると不安定になるとか…いろんな要素を考えながらものを一個一個作るので、結果にたどり着くまでの過程がすごく大事です。
でも他の人に裏のストーリーを伝えるためには「結果」という「入り口」がないといけません。最終的に出来上がった「結果」で、「こいつ何気とすごいことやってんな」「こいつなんでこういう風にしたのかなあ」みたいに相手が引っかからないってことはまだその相手の基準に達していない、言い換えれば土俵に乗っていないってことです。なのでプロジェクトなどでは過程と結果をどっちも大事にして取り組んでほしいですね。
−過程をみてもらうためにも、まずはいい結果を出さないといけないということですね。
そうです。常に結果を出し続けないといけないので、裏のストーリーを見てもらうところまでたどり着くまではなかなか大変ですが、頑張ってください。
−とても参考になります!ありがとうございました!
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