「いつか建築家として独立したい!」
と思いつつも実際どうすればいいかも分からず、
ただ漠然と大学の設計課題をこなしている建築学生は少なくありません。
今回は多くの建築学生の憧れである、妹島和世(セジマカズヨ)さんと西沢立衛(ニシザワリュウエ)さん率いるSANAAに6年間の勤務を得て2017年の10月に独立を果たした工藤浩平(クドウコウヘイ)さんに取材させていただきました!
独立までに考えていたこと、
事務所を設立しておよそ2年経って感じたこと、
そして今後について迷っている建築学生へのアドバイスも聞いてきました。
ぜひ工藤さんの意見を参考にしてみてください!
2011年 東京藝術大学大学院 修了
2012年 S A N A A(妹島和世+西沢立衛)入所
2017年 工藤浩平建築設計事務所 設立
−本日はよろしくお願いします!まず藤浩平建築設計事務所のスタッフについて教えてください。
実はスタッフは1人で僕を含めて2人しかいません。
−そうなんですね!スタッフは増やさないんですか?
忙しくなるときはバイトにお願いをして来ていただきますが、基本的には自分たちでやります。スタートしてまだ2年も経っていないので最初はある程度自分たちでできるようにしないといけないと思って、今は大変だけどまだ2人で回せています。
なんと言っても正直なところ、まだ人を雇えるほど仕事もないんです。
雇うことについて、少し具体的に話すと、
1人を雇うのに初任給で20万とすると、それを12ヶ月分で240万。
交通費や経費などを入れると年間400万〜500万ないと雇えません。
そして例えば住宅1軒3000万とします。
そのうち設計料を約10%とすると1軒あたり300万の売り上げができます。
大きい建物になっていくと500万とか、5000万とかになるかもしれません。
ですが住宅しかやっていない場合だと、
年間どれぐらい回さないといけないかを考えると、
簡単にスタッフ3人いるとすると1350万(1人450万とする)かかるから
300万の売り上げを積み上げると年間5件は確実に設計しないといけません。
その上、事務所の利益の為に+2軒できたとして、合計7軒。
これでやっとスタッフ3人雇えるんです。
こうなってくると維持するだけの仕事をもってこないといけない。
事務所で人を雇うというのは、雇う方も雇われる方も、難しい決断なのがわかると思います。
その元になる設計料に対しても、設計をすること、建築をつくること、というのはお金がかかるんだな、たくさんのいろんな人たちが動いているんだな、というのがもう少し一般の人や、建築を学んでいる学生に伝わっていくと、いいかなと思います。
−恐ろしいですね…工藤浩平建築設計事務所では2人でどんな仕事をしていますか?
当然ながら住宅や店舗などの建築設計もしていますが、グラフィックデザインをしたり、家具を考えたり、文章を書いたりすることもあります。
建築設計事務所だからといってハードなことばかりでなくてソフトなこともしていて、企業の相談もしたりしています。ちゃんと相談料ももらって。
−コンサルティングのような感じですか?
そうです。どういうふうにしたら実現できるか、とか、
売れるかを考えて、アドバイスさせて頂いてます。
−そのような仕事の中でも自信を持って紹介できるものはありますか?
条件が与えられたときに明確な「関係性」を持って設計できると「ああ、ちゃんとできたな」って思います。
例えば僕が設計した最初の住宅の敷地ではもともとクライアントの親世代の建物と今のクライアントの建物がありました。「ここは思いやりがあるから残して欲しい」とかいろんな事をヒアリングしていって、「じゃあこういう関係を持ってこう作っていこう」と提案します。中庭が見えるように建物を振ったり、プライバシーを保ちたいからこうやって外部空間を作ったり…と条件をクリアしながら、最終的に心地よい良い空間に導くことができました。
今は薬局の設計をしているんですけど、クライアントはこの薬局を「処方箋をもらわなくても行ける場所にしたい」って条件を出したんです。この敷地の周りにはこども園や学童センターがあるから子供たちが遊んだり、宿題ができたりするようなスペースを作れば処方箋がなくても遊びに来るきっかけが作れるかもしれない。こうやって周辺の状況を見て新しいプログラムを考えるのも「関係性」につながると思っています。
−このようなプロジェクトのコンセプトはどうやって決めていますか?
「コンセプトはこれだ!」ってわかりやすく簡潔に言えるのが理想なんだけど、やってる最中は僕もまだ全部整理できてないし、それは進めていって最後、できた後にまとめることが多いです。僕のやり方は、正しいやり方ではないと思いますが、コンセプトを明確にする=共有されると言うことだと思っているので、それができさえすれば、コンセプト含めてすべてを言葉することに対して執着していません。
今やっている薬局プロジェクトのコンセプトも「みんなのたまり場プロジェクト」と言っていますが今後変わるかもしれません。
−共通してどの案件でも設計の時に大事にしていることはありますか?
作ったものが愛されることかな。愛着を持ったり、「こうしたい!」って欲求に駆られたり、自分のいる場所がただの「生活の道具」じゃなくて一緒に生きてる「共同体」と感じられるような空間をいつも目指しています。
−クライアントへのプレゼンテーションはどのように行われていますか?
とにかく分かりやすい言葉を使うようにしています。よく何かと難しくしゃべる人とかいますがそれは自己満足にしか過ぎないし、伝わらないと意味がありません。わかりやすく伝えたいことを伝えて、言葉に言い表せないことを模型やパースなどのツールで補ってアイデアを共有しています。
−模型、パース、CGやアニメーションなどツールはいろいろあると思いますが、比較的伝わりやすいツールはありますか?
僕は模型とラフスケッチをメインに使っています。もちろんパースとかも描けますが、最近のCGは必要以上に具体的でリアルになってるから「これが出来上がるんだ!」って思わせたくないんです。ちょっとあやふやにしたいんですよね(笑)。ズルいことだと思います。ただ、具体的な完成予想図を見せて出来上がった時に最初のイメージと違うって言われるのは嫌ですし、余白を残すことで、クライアントと一緒に徐々にイメージをにすり合わせながら具体的にしていく方が僕はいいと思っています。
次は工藤さんの学生時代について聞いてみました!
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