建設/不動産/国家公務員

3つの視点からアトリエ系設計事務所を紹介!/高松伸建築設計事務所

(写真左から)

小川昂人
入社11年目
設計スタッフ

水津明彦
入社3年目
設計スタッフ

篠﨑潤一
入社5年目
CG制作スタッフ

みなさんは『ブラック・レイン』(1989)を観たことがありますか?

大阪の街を舞台に、豪華な日本人キャストも出演して話題になったアメリカの刑事映画です。その中で大々的に使われたのが建築家の高松伸さんが設計した「KPOキリンプラザ大阪」。高さ約20mにも及ぶ4つの塔が光る特徴的なデザインが評価されました。

京都オフィスにディスプレイされている模型 「KPOキリンプラザ大阪」は左下

今回はその高松伸さんが代表取締役を務めている高松伸建築設計事務所の方々に取材させていただきました!

*高松伸建築設計事務所 (以下「TS 」と称する)

-本日はよろしくお願いします!ではまずTSではどのような担当や役割があるか教えてください。

小川: 弊社は設計事務所ですので、設計業務が主になります。より効果的なプレゼンテーションのため、篠崎のような(コンピューターでパースを描く)専門に近いスタッフもいますが、全員がすべての業務をしっかりできることを目指しています。設計業務をはじめ、工事の監理業務、申請業務なども固定された担当はいません。人数は事務も含め20名ほどです。台湾にも出先があるのでそちらにも数名スタッフがいますが、時期によって人数が変動します。

-台湾にも事務所があるのですね!そちらでの設計はどのように行われているのでしょうか?

小川: 台湾はマンションがメインです。マンションのデベロッパーさんが、ボリュームや部屋数などの大まかなプランニングを行ないます。それに対して、高松が外観やロビー空間のデザインなどをする感じです。基本的にデザイン業務は日本で行ない、詳細図制作を台湾のスタッフにお願いしています。行政との協議や法規チェックは現地のスタッフに任せています。

デベロッパー
土地開発業者。商業施設、オフィスビルやマンションなどの建物をどのように建てて土地を活性化させていくかを企画します。建物が出来上がった後も、コミュニティを含めた「街づくり」に携わります。
ボリューム
建物の大きさ規模のこと。敷地に対して建蔽率(けんぺいりつ)、容積率、高さや斜線制限などの規制があり、更に家族構成、生活スタイルを加味することによって、建物の大きさが大まかに決まります
プランニング
設計の枠組み。建物を何のために使い、どのくらいの大きさにするか計画を立てること。

 

-ということは、常に日本の事務所と連携しているっていうことですね?

小川: そうです。会社自体は高松がトップにいて、国内外のプロジェクトに関わらず、常に高松がデザインし、チェックを行っています。

-TSではどのようなものを設計していますか?公共建築のイメージが強いですが住宅などは設計しますか?

小川: 住宅も作ります。インテリア、家具などもデザインします。基本的にデザイン業務であればなんでもしますね。日本では学校やオフィスなどの公共建築、最近はホテルが多いです。時代によってニーズが変わっていくので、これはやらないっていうのはないです。

高松伸さんがデザインした刀モチーフのオブジェ

−クライアントの依頼の傾向などはあるのですか?

篠﨑: 弊社への依頼は過激なデザインを求める人が多いです。これといった特別なイメージを持たれるというよりは「高松先生にお願いしたいです」と来られて、TSが数パターンの提案をし、そこから選んで頂くということが多いです。

−TSでのプロジェクトの進め方を教えてください。

小川: 我々スタッフが与件整理し、大きさ、面積などの情報整理をして、それに対して高松が手でスケッチを描き、図面を引きます。それを元に我々がコンピューターを用いて、プレゼンテーション用の資料を作成します。

−クライアントへのプレゼンテーションはどう行っていますか?

小川: うちはちょっとアナログで、CGパースをA1のパネルにして、プレゼンしています。とにかくイメージを把握してもらうことを一番大事にしています。プラン等はA3サイズの図面で説明します。あと最近はムービーとかも自前で作っています。

−模型は使われていないのですか?
小川: 模型でのプレゼンは減ってきています。TSは模型でのスタディは少ないと思います。

スタディ:
設計を行う際に設計内容を確認するために行われるもの。模型をはじめ、3Dモデルや手書きのパースなどスタディ方法は様々である。

 

−そうなんですか!?珍しい!
小川: 基本的に、クライアントに対してラフな模型はお見せしません。そのため模型1つを作るのにとても時間がかかるので、プレゼンを数回して「模型が欲しいな」と言われて作ること、最後に完成模型としてプレゼントしたりすることはありますが、だいたいパースをコンピューターや手で描くことが多いですね。

高松伸建築設計事務所スタッフの一員として

−みなさんはどうしてアトリエ系、そして高松伸建築設計事務所を選択したのですか?

水津: 僕はゼネコンに勤めていたんですけど、デザインをもっとしたかったからアトリエ系に転職しました。出身が高松と同じく島根県で、高松本人よりも前に、高松が作った建物を知っていました。もうこれが原風景で、一番僕にとって身近な建築家だったということもあり、ここに入りました。

篠﨑: 私は前職がマンション広告のCGを作る仕事で、もうちょっと造形的にチャレンジングなことをしたいと思って、ここに来ました。もともと学生時代からよく高松の建築を見に行ったり、著書を読んだりしていて、転職のタイミングでたまたま高松と繋がり、ここに入りました。

小川: 高松は私の学生時代の先生で、その時に事務所に誘われました。組織系やゼネコンでは設計は設計だけ、営業は営業だけ、あと事務は事務だけ、という感じですごく狭いというか、一つのラインに乗って進んでしまう気がします。アトリエ系といった小規模の集団では、一人一人が営業的な部分もやらないといけないし、デザインもやらないといけないから、総合的にいろんな能力が学べる場だと思う。全てが誰かに任せっきりっていうわけではなくて、次の仕事に向けて、自分から動かないといけない。

−学生の頃の「建築家」のイメージと実際は一致していますか?

水津、篠﨑: 一致していますね。

水津: 僕は「建築家」といえば、高松伸というイメージだったので。

−デザインだけでなく、お金や時間に縛られているとは感じますか?

篠﨑:そういう制限はもちろんあると思います。けれどここに来て、プロとして造形を徹底的に追求する、というか、していいんだっていうことはよく分かりました。

小川: 高松はこの業界の第一線でやってきた人間なので、そこはもちろんイメージしていた「建築家」の姿ではあります。その一方で、一般の人から見た「建築家」のイメージは、自分が思い描いていたものとは違うことに気づきました。特に海外と日本は全然違う。海外では、建築家は、人によりますが、伯爵号を与えられるほど、社会的な地位が高い。それに比べると、日本では、資格とかの成り立ちからだと思うんですけども、社会的な立場が必ずしも高い職業ではないと感じます。

−そのような悩みもあるのですね…アトリエ系建築設計事務所で働く苦労は他にありますか?

小川: 公共建築とか昔は個人の建築家がたくさんやっていたんですけど、今はコンペでも組織系が選ばれることが多いです。この時代、公共が何を求めるかっていうと今までの実績の積み重ねだったり、社会的に認められた賞だったり、デザインだけではなくなっていると思います。デザインだけでは行政の方が市民や町民に説明することができないので、それを支えるものがないと厳しいと感じます。

水津: あとは、アトリエ系だと2日先が読めない。

−え?どういうことですか?

水津: 高松がトップで動いてるので、よりよい提案をするアイデアが浮かんだ時など、突然予定が変わることがあります。でも逆にそこでいろんなこと考えさせられて、新しいチャレンジをしていけるので、ある意味これは魅力でもあります。

−学生のころやってよかった、やればよかったってことはありますか?
水津、小川、篠崎: 海外旅行ですね。

篠崎: お金は後からどうにでもなると思うので、時間があるうちに行った方がいいです。

水津: あといろんな大人との縁を作っておいた方がいいと思います。僕はここには半分それで入ったようなものなので。学生同士の関係も大事だけど、縦との繋がりというか、外界ともたくさん触れて、そこでちゃんと繋がりを持つことも大事だと思います。

−学生のころ高松伸さん以外にも関心のある建築家はいましたか?

小川: 私はスティーブン・ホールが好きで、一時期はアメリカに行こうかとも思いましたけど最終的には日本で活動したいと思って残りました。

水津: 僕は大学の教授が小川晋一っていう建築家なんですけど、その人の考え方に影響はされましたね。

−かっこいい大人とはどんな人だと思いますか?

小川: やりたいことがちゃんとある人。ずっとルーティーンに乗って流れで何かをやるのではなく、常に何かやりたいことがって、前を向いて、動いてる人。「目標がある人」とはちょっと違って、「ココ」を目指すというよりは常に目の前の新しいものに食らいついて行ってるような人

水津: 芯、筋が通ってる人。けれど、それを人に押し付けることはなくて、程よく力が抜けてる人。

篠崎: 水津のにちょっと似てるかもしれないですが、自分の中に哲学みたいなものを持って、行動、判断しているような人

−最後に建築系大学生向けにメッセージがあればお願いします。

水津: なんでも好きなことをやったらいいと思います。音楽を聴くことや、映画を観ることなど、自分の好きなことをやって、それを最後に建築に繋げて欲しいです。

篠崎: すごく大まかなんですけど、綺麗なもの、クオリティの高いものを意識して、研究して欲しいなと思います。

小川: なんとなくの印象ですけど、今の学生さんは自分にしか興味がない気がする。だから全てのものに興味を持って欲しい。水津とも被りますが、全てのものが建築に繋がるから。あと、死にはしないので、死にものぐるいで色々やった方がいいと思います。

−ありがとうございました!

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gakuseikichi

2 Comments

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    • コメントしていただきありがとうございます。1年ほどこうして記事を書かせていただいているのですが、そのようなコメントをいただいたのは初めてなので、とても嬉しく思います。ご期待に沿うよう努めますので引き続きご愛読よろしくお願いいたします。

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