始動ライブはYUMEGIWA GIRL FRIEND、フルー、Haikiを迎え行われた。Cynical Animal Youthのメンバーはインタビューでまだ何者でもないと言っていた。ある種、そうとも言える。失礼な話だけども。しかしあの夜、僕は彼らが何者になるかというのは時間の問題であるように感じた。いや、もしかするともうなっているのかもしれない。それくらい熱いライブだった。彼らには以前在籍していたバンドがあって、脱退・解散をして今に至っている。だから元〇〇の人だとかex)〇〇だとかいう自己紹介表記になってしまっているがそれが消えるのも時間の問題だろう。シニカルは“今”進行しているバンドだ。だから過去のレッテルを超えた時、彼らは何者かになれるに違いない。
もちろんこの文章を書いている僕自身も、何もない人間なわけだが。
これはインタビューを受けるにはいささか早すぎたバンドとインタビューをするにはいささか早すぎた僕との記録。
(企画・構成・文)オヤマダ(45)
(サポート)すみ
目次
結成について
─まず、バンドができた経緯が知りたいです。
イトウ:最初に善弥とバンドを組んで新宿JAM(現西永福JAM)に出てて、そのあとTeenager Kick Assに入って大森君と一緒にやって、脱退したタイミングで善弥となんかやろうってなったの。で、大森君にそのバンドのドラムをやってもらうことになった。そしたら、善弥が「いいギタリストがいる」って理久を連れてきたんだよね。元々、1回きりのライブをやろうと思ったのが今のバンドの原型。
大森:1回ぽっきりのつもりだったね。
大野善弥(Gt/Vo)、佐々木理久(Gt)、イトウジュン(Ba)、大森チヒロ(Dr)によるロックバンド。2019年結成。4.9を皮切りに続々ライブが発表されているので、“生”で体感しに行ってください。今なら1stデモもあるみたいなので。
理久:それは知らなかったなあ、そうだったの!?
大森:バンドの話が動き出したのも、年明けで。
善弥:最初は一回限りのつもりだったんだけど、気づいたらガチで上に行こうみたいな感じになってた。
一同:(笑)
理久:二人が Teenagerをやめた時期と、俺のバンドが解散した時期が同じくらいだったからタイミングがよかったって感じかな。
─そんな経緯が(笑)最初からがっつりやっていこうというより、気づいたらがっつりと始まっていたんですね。
バンド名について
─これは僕の推論なんですけど、 Cynical Animal Youth(以下:シニカル)は直訳すると「皮肉で獣的な本能を持った若さ」。ちょっと強引ですけど。つまりメインカルチャーに反抗するカウンターカルチャー的音楽をやっていくという決意表明だと感じました。
大森:すごい深読みしてもらって申し訳ないんだけど、特に意味はない(笑)Cynical Animal って語感いいよね、Cynical Youth も語感いいよねってなって、くっつけただけ。
一同:(笑)
イトウ:意味は通るけど、意味はない。意味は後からついていけばいいかなって。
大森:バンド名と自分たちがやりたい音楽が謎にかみ合っていた。
コンセプトについて
─現在、音楽シーンが雑多になっている中で、シニカルはどういう存在になっていきたいですか?
善弥:変なことをしたいっていうことは共通で思っている。
理久:そうね。あいつら変わってんなって思われたい。
イトウ:最近は熱い歌詞を、コード掻きならしながら歌っているバンドが多い。だけど、自分たちが聴いてきたのはそうじゃない音楽で。それらに影響を受けて自分もバンドをやりたいって思ったから、そういうことをしたいな。
─具体的にどういう音楽ですか?
善弥:複雑だし、サビまでめっちゃ長いし、なんかよくわかんない拍子とか複雑な展開をするけど、そのとっつきにくさが心地いい。それが俺らのやりたい音楽かな。
─なるほど。ほかに共通して持っておきたいことはありますか?
大森:やる前から否定しないってことは共通して持っておきたい。メンバーが各々持っている個性をうまく組み合わせながらやっていきたい。
善弥:確かにね。
─個人的な直観なんですけど、シニカルはそんなに長く続けないで、短期間やるバンドなのかなって音源を聴いて感じました。ほんと、直観ですけど。
大森:特にそこらへんは考えていない。バンドは期限を決めてやるものでもないしねぇ。
善弥:楽しいと思う限り続ける、飽きたらやめる。
─皆さんにとって楽しい音楽とはどんなものですか?
理久:俺、ここ(善弥)との掛け合い超好き、ベースとの掛け合いも。3人じゃなく、4人でやる意味は持っておきたいかな。
イトウ:俺もギターとベースの三本の絡みは一番意識している。
善弥:各々の立ち位置みたいなのは、決めなくても必然的に分かってるよね。
一同:(うなずく)
大森:俺にとっては、自分たちが作った音楽に単純に感動しているのが楽しい音楽かな。
─最近のバンド、例えばSuchmosとか CHAI とか、セルフプロデュースに力を入れてるバンドが増えてきました。セルフプロデュースについては何か考えていますか?
イトウ:シニカルは歌と演奏の割合をフィフティフィフティにしたくて。歌とか出すぎたら、善弥にメロを変えてもらってる。
理久:今日も本番前最後の練習のラスト30分で変えたし、このバンドはそういうこと(曲の構成を変える)が多々ある。
イトウ:なんとなく俺がやりたいバンド像はあるから。それがセルフプロデュースにつながるのかな。
─その目指してるバンド像というのは?
イトウ:クサイことはしたくないね!
善弥:それは分かる。「俺らはぁ~」とか「お前らがなんとかでぇ!」とかいうより、演奏で熱いところを見せたい。
理久:俺はお客さんが口を開けて観るようなライブにしたい。とにかく衝撃!みたいな。
曲作りについて
─作曲はどのようにしてますか?
イトウ:誰かが作ってきたちょっとしたフレーズをスタジオでまとめる。
大森:できるときはだいたい 15分くらいで出来るね。
─作詞は?
大森:善弥に丸投げです。
善弥:僕は完全に曲から詞を書いています。曲を聴いてから、この曲で言いたいことって何かなって考えて歌詞を入れていますね。デモに入っている1曲目の「after」は4人で初めて作った曲なんですけど、新しく始まるこのバンドのワクワク感を歌詞にしました。
音源とライブについて
─従来の若手バンドシーンでのリスナーはライブに行って、良いと思ったバンドの音源を手にするのが主流でしたが、音楽ストリーミングサービスが充実した現在は音源を聴いて気に入ったバンドのライブに行くという逆の手順が主流になりつつあります。つまり、ライブの敷居が高くなったということです。それに伴い、音源制作に力を入れるバンドがかなり増えてきたように感じます。シニカルは音源とライブの比率をどうしていくか考えていますか?
大森:いやー、100:100じゃない?別物というか。どっちも全力でやっていきたいな、俺は。
イトウ:音源はずっと聴いてもらえるものであってほしい。
理久:ライブはその場限りでね。
─気持ちの入れようは同じですか?
大森:僕は全然別物かなやっぱり。
善弥:全然違う楽しみがあるというか。ライブはばぁーと勢いよくやって楽しいし、レコーディングは積み木を組み立てていくような楽しさがあるかな。
─いわゆる「音源バンド」か「ライブバンド」どちらになっていきたいですか?
大森:俺、その区別あんまわかんないんだよね。
─それって意図して、バンドの方が「音源バンド」か「ライブバンド」のどちらかを選択して活動していくのか、それともリスナー側の方が枠組みを作っていくのかどっちなんですかね。
イトウ:それはたぶん音源と比較して、ライブがよくなかったら音源バンド。ライブの方がよかったらライブバンドになるんじゃないかな。だからライブと音源どっちも聴いて、リスナーが判断するんじゃない?
大森:Teenagerの時は意図してライブに力をいれてやってたけどね。まあ、俺達としては(音源とライブ)どちらも恥ないものを作っているつもり。
善弥:ライブかっこいいねって言われたらやっぱりうれしいけどね。
理久:俺はそれが一番うれしい。
イトウ:今はライブやるために曲を作っている感じがある。まあ、バンドマンでいる限りはライブ優先にはなると思う。
大森:そうだねえ。
─確かに。音源に凝るのはバンドマンというより音楽家っていう感じがしますね。では、バンドマンにとってライブとは?
善弥:1つ言えるのは自己表現かな。俺は歌詞を書いてるっていうのもあるけど。自分がか っこいいと思うライブをすることによって自己表現ができている感じがする。
理久:もし、自分達からライブを奪われたら、バンドをやっていく意味はないくらい自分にとって大事な事かなあ。
大森:俺は前のバンド(Teenager)がライブに振り切ってたから、ライブがないなんて考えられないけどね(笑)1年間で(ライブを)120本とかだもん。
一同:へぇ~!!
賞レースについて
─未確認ロックフェスティバルをはじめ、数多くの賞レースがあります。バンドの中には、とりあえず入賞を目標に掲げるバンドもいるくらいです。皆さんは賞レースについて考えてますか?
イトウ:シニカルは賞レースではあがれなさそうなバンドだからなあ。出すには出すけど。
─賞レースで上がれるのはどんなバンドですか?
イトウ:わかりやすいとかリスナーの共感を呼ぶとかじゃないかな。
─先ほども、共通で変なことをしたいって言ってましたもんね。
イトウ:俺らがやりたい音楽は今のコンテストとかでは受けないなって思う。
善弥:だから受けないって思うんじゃなくて。俺らがかっこいいと思ってるものをわかっ てくれる人はいるはずだから。
大森:俺は圧倒的に売れたい。
理久:でかいとこに行きたい。なんか、俺はシニカルが売れることでこんな変なことしていても売れるってことを下のやつらに伝えたくて。
SNS について
─今、バンド活動をしていく中で、避けて通るのは不可能だと言っていいほど、TwitterをはじめとするSNSは重要だと感じています。皆さんの Twitter の向き合い方・こだわりを教えて下さい。
理久:僕は(こだわり)ないです!!
一同: (笑)
イトウ:前のバンド(Teenager) 脱退する最後のライブの後、対バンのファンから結構フォローされたんだよね。 Teenager やめたのに。だから興味持ってくれたからには新しいバンドも気に入ってもらえるように考えながらツイートはしてた。
善弥:個人的にあんま考えてないんだけど、面白そうなものはツイートしてるかな。みんなが面白がりそうなもの。
イトウ:みんなって友達?ファン?
善弥:うーん、そこまで考えてない(笑)
イトウ:でも、曲がかっこいいバンドマンのツイートがクソダサさかったら残念だよね。
─いわゆるエゴサみたいなのはしてましたか?
大森:してたね。前のバンド(Teenager)の時は。
─そこでのリスナーの反応に影響を受けますか?
イトウ:前にサブスクやろうかなっていうツイートをしたときに「してください!」っていうリプがきたから、なるほどな!ってなった。
理久:単純にお客さんの反応は見たい。
─話は少しずれますけど、リスナーにこの企画のテーマである「音楽の言語化」は必要だと思いますか。僕が思うに、インスタのストーリーで自分のおすすめの曲を張り付けている人が増えてきて、もっと言語的に音楽を紹介すれば、より豊かな音楽シーンになると思うんですけど。
大森:うーん、俺はリスナーにそこまではして欲しくなくって。確かに、「言語化」は音楽をやるうえでは必要不可欠だけど。聴く側までそうなったら、音楽という文化そのものが衰退すると思う。こういう風景の時にこういう曲聴いたらいいなっていう抽象的なものでいいと思う。
善弥:それは聴く人が好きにすればいいんじゃない?その人が聴きたいように聴けばいいと思う。
大森:おお、いい感じにまとまった(笑)
今のバンドシーンについて
─ここまでシニカルというバンドの結成から今までの道のりについて聞いてきたんですけど、ここからは先ほども言った「音楽の言語化」、今の音楽シーンについて皆さんと話してみたいなと思っています。個人的にこの企画を始めたのも日本の音楽シーン、特にバンドシーンが新たなフェーズに入っているような感じがしたからなんですよね。
大森:それこそ King Gnu とかね。
イトウ:King Gnuが売れてる、今のバンドシーンって面白いよなあ。
─そうです。彼らが売れているんだったら、難しいことをしていてもファンはついてくるように なっている感じがします。それは周りが好きだったら好きになるという風潮のせいであることも否定できませんけど。ではバンドをやっている皆さんからして、今バンドシーンは新しいフェーズに入っていると感じますか?と同時に、その前線にいたいと思いますか?
理久:うん。それ(今のバンドシーン)に一石を投じたい。
大森:今がチャンスだと思う。
─今がチャンスだと思ったきっかけとかありますか?
大森:単純にいろんな音楽が聴きやすくなったからかな。それこそ Age Factory とか。KANAーBOON の時代にはそんなに注目されなかったと思う。さっき出た、King Gnu とAge Factory が 同時に出てるからごちゃごちゃしている感覚があるのかな。
イトウ:ちょっと前まで、KANA─BOON とかの四つ打ちが流行ってて、その二番煎じみたいなのが出て、Suchmos が出てきたことでシティポップが流行り出して、今度マイヘア(My Hair is Bad)が出てきて。で、今マイヘアの次がいないから。確かにKing Gnu が出てきたけど、あれはオリジナルすぎて派生が出なさそう。そういう意味で、今は“これ”っていうのがいない。ここでドカンと行ったやつらが上に行けんじゃないかなって思う。
理久:だから、今が転換期だなって。一発ココでバチンってやれば“その”時代になるから。俺らがそうなれるように頑張ります!!
─なるほど。本日は長いお時間ありがとうございました!
[Cynical Animal Youth リンク]
Twitter:https://twitter.com/CAYband
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