「総合商社」という言葉は聞くけど、実際に何をやっているのか見えづらいですよね。流通業における代表的な業界です。
年収は業界によって大きく異なりますが、40歳時点の平均年収を見ると、総合商社は第2位。上場企業の平均年収ランキングBest50に7社もがランクインしているそうですよ。
今回は総合商社について、その特徴と役割を整理していきましょう。
総合商社の役割と、特徴について知りましょう
〈2〉企業の構成
総合商社にはどのような企業が含まれるのか、各社の特徴とともに見てみましょう。
〈3〉現状と将来性
現在どのような立場にあるか、今後どのように発展していく可能性があるか、考えましょう。
目次
業界規模と特性
業界規模
業界規模のデータは以下の通りです。
業界規模ランキング 10位 29兆7,376億円(平成27-28年)
国内 輸出:69兆1,050億円 輸入:65兆4,110億円
(貿易収支、2016年度見込み、日本貿易会)
総合商社の事業モデル
商社の役割は、海外とのつながりを生かしながら、物を仕入れて売る、という商品の流れのすべての局面に関わることです。
総合商社の収益構造は、
①トレーディング(仲介手数料、マージン収入)
②事業投資(持分利益取り込みや配当や金利収入)、の2つに大別されます。
従来は①のトレーディングが主体であり「卸売業」とみなされてきましたが、近年は②の事業投資がメインになっています。
具体的に、トレーディングは、ものを右から左に流すことです。ベースは、海外との貿易を主とするトレーディングとなります。
ビジネスと密接に関連した金融・保険機能を活かして取引の流れを構築し、その結果、生産者の販売機会の拡大、及び需要の競争力ある調達に貢献します。そして、収益を得ます。
事業投資は、トレードの拡大や関連ビジネスからの収益拡大が実現可能かについても判断基準に置きながら、投資決定を行うことです。
国内外の企業に対して出資を行い、人を送り込んで経営にも加わります。企業の成長に伴う企業価値の増大へ貢献し、配当金などを通して収益を上げます。事業投資をきっかけにビジネスニーズを発見し、新たなトレードへ発展することもあります。
この二つのアプローチの相乗効果を活かして、ビジネスを拡大しています。
商社の特徴
商社の強みと弱みについて見てみましょう。
(1) 強み
- 規模の大きいビジネスができる
何兆円にもなる規模のビジネスが可能な圧倒的な力を持っている。
- ビジネスの幅広さ
食品から資源まで、コンビニやレストラン経営から不動産投資まで、制約なく、自由にビジネスチャンスを捉えることができる。その時々で最も成長が期待できる分野に軸足を移しながら、新たな市場を作り出していく。
- カバー力がある
扱い品目や業態が多様なため、一つのものがダメでも、他のものでカバーすることができる。世界的な天候不順で食品がダメであっても、機械や資源で稼ぐことが可能、といった感じ。
(2) 弱み
スケールの大きさゆえに起こる問題があるようです。
1. 「隙間市場」にある商品が扱えない
大型案件が通常業務になっているために、細々とした商品や、ニッチ商品が逆に扱えなくなってしまっている。そういった部分を扱う会社は顧客にならない、とも言える。
- 先読みが外れると損失も大きい
利益損失も大きくなりがち。先を読み切れないと、大きく失敗してしまう。
企業の構成
総合商社
構成は、以下のようになっています。
5大総合商社
三菱商事 伊藤忠商事 三井物産 住友商事 丸紅
その他の大手商社
豊田通商 双日 兼松
三菱商事 石炭、LNGなどの資源ビジネスを始め、子会社化したローソンなどの食料や機械など非資源事業の基盤が厚い。
伊藤忠商事 繊維や食品、機械情報など実力抜群の非資源事業が牽引し躍進。中国国有企業のCITICに巨額投資、提携。
三井物産 金属3大メジャーに次ぐ規模の鉄鉱石を筆頭に、原油、天然ガスなど資源分野は商社首位。機械、化学、海外発電も強い。
住友商事 CATV、TV通販などのメディア事業、油井管で商社首位。資源は非鉄が柱。
丸紅 発電事業は商社で首位級。穀物やパルプ、農業化学品も強い。伊藤忠とは発祥が同根。
現状と将来性
総合商社の業界は、今もなお激動が続いています。
2015年度は原油、鉄鉱石、銅などの価格下落により、資源事業での巨額減損が相次ぎ、大手総合商社らが大赤字に沈みました。業界内での企業の下剋上が起きました。
2016年度は後半に資源価格が急反発し、前年度赤字となった企業らは資源事業がV字回復しました。非資源事業の安定成長と合わせて、総合商社は軒並み業績を伸ばしました。
しかしまだ、商社には危機感があります。まず11年までのような資源バブルの再現は難しいです。実際に17年度に入り、資源価格は再び足踏みの様相です。資源バブル期の収益を超えるには、上位5社合計ですでに1兆円に達する日資源事業を伸ばすしかありませんが、果たして従来の事業投資モデルの延長で可能なのか、商社各社はその機能向上と刷新に努めています。商社の機能は、時代のニーズに合わせて日々進化しているのです。
具体的に今、三菱商事は事業投資モデルを推進しています。経営人材を惜しみなく出資先などに投入し、経営への関与を深め、出資先と一緒に利益を拡大する戦略です。伊藤忠は首位奪還に向け、巨額投資した中国CITICとの提携加速、実の刈り取りを急いでいます。また、部門の壁を超えた横断取り組みで自動車、医療健康など成長分野の育成に挑むのは各社共通です。
また、近年では、世界各地でニーズを探求し、その国とその国の人々のために、そして地球環境改善に対応した事業にも積極的に取り組んでいます。例えば、水ビジネス、資源ビジネス、グリーン・エネルギー発電事業、食料事業、インフラ事業などです。
いかがでしたか。中身の見えづらい総合商社ですが、少しは理解することができたでしょうか?
これからも、国際事情に注目することで、その重要な役割をより実感できるかもしれません。
参考資料
会社四季報 業界地図2018年版
総合商社と専門商社の違いとそれぞれの強み弱み/JOBRASS新卒
日本の5大総合商社、それぞれの成り立ちや特徴に迫る/PARAFT
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