都内の文系私立の大学で3年の秋学期を過ごしている筆者の脳内にいつも浮かんでいるのは「就活」の二文字。
来年の春の選考に向けて業界選びをはじめている所です。
就活を行う際にまずやらないといけないのは業界研究。
自分の専攻に近い職種の業界を受けることは決めているのですが、業界を一つに絞らずに色々な業界を見ておいた方がいいという事で、他の業界も受けてみようと思って色々調べています。
文系の女子大生に定番の人気業種として名前が上がるのが、金融・旅行・航空・化粧品などの業界。ですが、この辺りはもうメジャーすぎて倍率がものすごく高そう…。そんな倍率の中をくぐり抜けられるガクチカが自分にはないかも…。しかも超大手が多いから企業名は聞いたことがあるけど、実際にどんな仕事をしているのかってあんまりよく分かっていない…。自分のやりたいことが本当にその業界で実現できるんだろうか…。
と考えている内にものすごく不安になり、もう少し業界を広げて業界研究をすることにしました。自分が今まで見てこなかった業界のことを調べている内に見つけたのが「医療機器業界」。
調べてみたところ、医療機器業界は将来性抜群、年収も高い。さらにまだ業界に注目している学生が少ない…。これはねらい目なのでは…?
しかしも名前に「医療」のつく業界にゴリゴリの私文の私が入れるのでしょうか?他にも、そもそも医療機器業界ってどんな仕事をしているんだろう?他の業界と比較してどうなんだろう?など、疑問がたくさん出てきたので、医療機器業界の取りまとめをしている公益財団法人 医療機器センターに取材依頼をしたところ快諾していただけました。
今回の記事では、公益財団法人 医療機器センターの相宮さんにお聞きした医療機器業界のことをまとめていきます。
理系の4年制大学を卒業後、平成21年度に新卒で医療機器メーカーに入社。6年勤めた後、公益財団法人 医療機器センターに転職。現在は、学生に医療機器業界の情報を発信する活動を行っている。
目次
そもそも医療機器とは?
ー医療機器業界と聞いても、何を扱っているのかがイメージしにくいです…。そもそも医療機器とはどのようなもののことを指すのでしょうか?
(相宮)医療機器には本当にたくさんの種類があるので、一概にこういうものと言うのがものすごく難しいのですが、簡単にまとめると「病気やけがの予防・診断・治療をするために使うもの」ということになります。病院で使われているものの多くは医療機器と考えてもらって良いと思います。医療「機器」というと、メカメカしいものをイメージされる方も多いのですが、コンタクトレンズやばんそうこうなども医療機器です。
医療機器の必要性・存在意義
ー普段あまり医療機器業界の存在を認識することがないのですが、業界全体の存在意義と言いますか…医療機器があることで社会にどんな影響を与えているのでしょうか?
(相宮)医療機器は基本的にお医者さんが使うものなので、業界全体としてBtoBの仕事が多いです。一般の方からすると医療機器がどんな役割を持っているのかが見えないかもしれませんが実は医療機器の存在はものすごく重要です。例えば採血を一つ例にあげても、注射針、採った血を入れる採血管、血を分析するための機械…等々キリがありませんが、医療機器がないとお医者さんや看護師さんは仕事ができなくなってしまうと言っても過言ではありません。
ー確かに…病院から医療機器がなくなると満足な医療を提供することができなくなりそうですね…!逆に言うと、新しい医療機器の登場や、機器の進化によって、医療の質を高めることができそうです。
(相宮)そうなんです。例えば、AEDは機器の発達したこととで資格を持たない一般の方でも使うことができるようになり、さらに安価になったことで駅や学校などの公共施設などに設置されるようになりました。その結果、救命率が上がったというデータもあるように、医療機器の普及で救える命が増えることがあります。新しい機器の開発などは常に行われているので、文系だけどなにかものづくり系の仕事がしたい人にも医療機器業界はおすすめです。
年収:全業種平均よりも高い!
ー就活生として気になるポイントはやはり年収です。年収などを含めて、医療機器業界の待遇面はどのような感じなのでしょうか?
(相宮)全業種の平均年収は436万円なのですが、医療機器業界の平均は700万円超となっており、全業種の平均よりも高いです。また、業界全体の男女比に関しては、現在は男性の割合の方が多いのですが、医療機器を実際に使う看護師さんに女性が多く、営業や医療機器の使い方を説明する際に話がしやすいということで、女性の活躍も増えてきています。他にもマーケティングや経営戦略・企画、広報にも女性がいらしゃいますし、女性の執行役員の方もいらっしゃいます。
【医療機器業界の収入に関する記事】
>【コラム】医療機器業界で働く人の待遇は?(外部サイト)
医療機器業界の将来性
ーデジタル化や新型コロナウイルスなどによって社会が大きく変化したことで、業績が落ちているなど影響を受けている業界もありますが、医療機器業界の将来性はいかがでしょうか?
(相宮)医療機器業界は非常に安定している業界で、これまでもずっと成長を続けてきています。コロナで影響をほぼすべての業界が影響を受けたと言っても良いくらいですが、医療機器業界がむしろ業績が伸びています。さらに、これは日本国内だけでなく世界的な傾向で、10年後には市場規模が1.8倍にもなると言われています。
ー医療機器業界が成長している理由などはあるのでしょうか?
(相宮)大きな要因は2つあると言われていて、1つ目は健康意識の高まりです。ヘルスケア・フィットネスなどの言葉がトレンドに上がっていることからも健康意識の高まりが分かると思います。「長生きしたい」と思った時や、実際に長生きをしていく中では「医療」の存在というのは必要不可欠になってきます。
(相宮)2つ目の要因は、社会全体の高齢化です。高齢になればなるほど身体のどこかしらに治療が必要になってくることが多いので、社会が高齢化することによって必然的に医療機器の出番は多くなります。日本は特に世界の中でも高齢化が進んでいる国なので、この先も医療機器の需要はどんどん高まっていくと考えられています。
業界として信頼できる?
ー収入が高いことや、将来性があることを考えるとものすごく魅力的な業界に思えてきました…!ちなみに、医療機器業界と呼ばれる企業の信頼性などはいかがでしょうか?
(相宮)信頼性も、将来性と同じくらい医療機器業界が自信を持てている部分です。医療機器を製造・販売するためには国の許可が必要で、さらに人の命に関わる製品という事でひとつひとつの製品も厚生労働省の認可を受ける必要があります。その許可を取るための審査がとても厳しいものなので、医療機器を取り扱っている企業は信頼できると考えていただいて大丈夫です。
ー先ほど業界全体として伸びているというお話がありました。医療機器業界に参画する企業数も増えていると思うのですが、ライバル企業が出てきて倒産…といったようなことは起こらないのでしょうか?
(相宮)確かに参画する企業が増えていますが、それぞれの企業が独自の技術や製品という強みを持っています。また、業務の許可の獲得→製品開発→販売認可の獲得→販売というように参画までにハードルがいくつかあるという構造上、ライバルができるまでに時間がかかります。さらに、ライバルではなく共同開発や技術開発といった協力の方向性に行くことが多いです。
就職したらどんな仕事をする?
ー実際に医療機器業界に就職をすると、どんな仕事をすることになるのでしょうか?
(相宮)医療業界というと営業と研究開発のイメージが強い方が多いと思うのですが、仕事としては一般的なメーカーとほとんど同じです。なので職種としては、経理、管理、広報、事務、生産管理、資材調達などもありますね。医療機器業界独特の職種としては、例えば「学術」というものがあります。お医者さんに自社製品を営業しに行くためには専門的な知識が必要になってきます。その必要な資料やデータを準備するのが学術の仕事です。また、製品を売って終わりではなく、その医療機器の使い方を教えるという仕事もあります。
ー「医療」機器業界というと、文系の自分が就職するのは難しいのでは?と思ってしまうのですが、医学系の学部や理系ではない学生でも大丈夫でしょうか?
(相宮)もちろん大学で医学系の勉強をしていることは強みになりますが、そもそもそのような人はかなり希です。理系の世界に見えますが、文系の人も多く全く問題ありません。工学部出身の私も新卒で医療機器メーカーに入った際には、自分自身に知識が無かったこともあり「同期が医学部、薬学部ばかりだったらどうしよう」と思っていたのですが、医学部の人はいなくて、薬学部が数人いた程度でした。必要な知識や技術は働きながら身に着けることができるので、文系の人も医療機器業界をぜひ候補に入れて欲しいなと思っています。
実は【海外で働きたい人】【国際協力をしたい人】にも医療機器業界はおすすめ!
ー文系の大学生は海外で働きたいと思っている人も多く、その場合は外資・航空・旅行業界などが一般的な選択肢ですよね。医療機器業界が実は海外で働きたい人におすすめの業界だという噂を聞いたのですが、この噂は本当でしょうか?
(相宮)その噂は本当です!まず、人の健康に関する製品である医療機器は、国や地域の違いで求められるものが異なるという事がないので、医療機器業界は製品の市場をグローバルに広げることができます。そのため大きく分けると、日本の製品を海外へ展開するための業務、海外の良い製品を日本にもってくるための業務、海外生産拠点を管理する業務の3つのパターンで海外で働くことができます。
ー海外で働きたいという夢を、医療機器業界に就職することで叶えられることができるというのは知りませんでした…!
(相宮)さらに医療機器業界は国際協力をしたいと考えている人にもおすすめです。発展途上国などは日本と比べて医療機器導入の必要性がものすごく高いです。例えば、マラリアなどの感染症に困っている地域では、安価で血液から複数の感染症を迅速に診断できる検査キットのニーズがものすごく高いです。そこで、地域ごとの状況に合わせて安定的に医療機器を納品するためには…ということを考える必要があります。医療機器業界の企業の中にはこの様なビジネスを行っている所もあるので、発展途上国の援助に貢献することもできます。
終わりに
今回お話を聞くまで、医療機器業界が選択肢に入っていないだけでなく、そもそもこんな業界があるのか…!という全く知らない状態でした。
ですが、話を聞いてみると、将来性・安定性が抜群、年収も高い・海外で働くチャンスがある・文系でも活躍できる。しかも、まだその魅力に気づいている人が少ない…ということでめちゃくちゃねらい目じゃないか…!と思うようになりました。
今回の記事では医療機器業界全体の話が多めでしたが、もっと各社の詳しい話を聞いてみたい!という方にはこちらのイベントがおすすめです。
今回お話を伺った公益財団法人医療機器センター主催で、11月13日にオンラインセミナーが開催されます。多くの企業の話が聴けるチャンスです!イベントのエントリー期限が11月11日とのことなのでお申し込みはお早めに!
イベントの詳細・申し込みはこちらのサイトから
http://www.iryokiki-navi.com/webseminar2021/(外部サイト)
【関西・名古屋・広島・仙台・福岡】厳選!地方の狙い目企業
【24卒就活生向け】おすすめの合同企業説明会紹介!
【就活中の女子大生に読んでほしい】出産・育児・海外進出。自分らしく働く女性社員インタビュー記事まとめ!
これはアクセサリー?実は医療機器!【意外と知らない医療機器の世界】
Add Comment