文系と理系の融合は可能性を広げる
—菱木さんはロボットの開発に大きく関わっていると思いますが、エンジニアの方ですか?
私は理系の出身ではありませんし、農業とも関係ありませんでした。アメリカに1年留学したり、調理師学校に入って免許を取ったり、不動産に勤めたこともあったりと様々な経歴があります。
—なぜ、テクノロジー業界へ足を踏み入れたのでしょうか。
約5年前、まだ世の中でAIが浸透していなかった頃に、勉強する機会があったことが大きいと思います。「検索エンジン」という言葉を日本で初めて使った湯川鶴章さんや、東京大学で特任准教授を勤める松尾豊さんに直接お話を聞き、次の時代を作るのはAIに間違いないと思うようになりました。その技術を使って何かをしたい!と思いましたね。
—現在まさに、話題になっていますね。AIに興味を持ったあと、農業用のロボットを作ろうと思ったきっかけを教えてください。
アメリカで「ディープラーニング」というAI技術に出会いました。レタスを自動的に間引く、ブルーリバーという農機具メーカーを見たんです。これはすげーな!と。
地元の鎌倉に戻り、野菜を作る友人にその驚きを伝えたところ、「レタスの前にうちの雑草を何とかしてくれ」って言われました。私は今までやったこともなかったので、なんだと思って農場に雑草抜きの手伝いへ行きました。そうしたらとんでも無く大変で、人がやる仕事じゃないと思ったんです。ディープラーニングで、自動的に雑草だけを抜いてくれるロボットが作れるんじゃないかと思いました。
—ロボットを始め、テクノロジー業界といえば理系のイメージがあります。事業を始める際、葛藤などありませんでしたか。
何か事業をやろうと思った時には、様々な役割を持つ人が必要です。たとえ文系であっても、この業界で活躍することは可能だろうと思っています。自分のポジションをどう取るかということが問題です。
私の場合、当初現場の声を聞くために、仲間を巻き込んでいく必要がありました。しかし農家の知り合いもほとんどいなかったんですね。輪を広げることは文系も関係なく役割を担っていけますし、得意な方も多いのではないでしょうか。
確かに理系とタイプは違いますが、お互い持っていないところを補い合えば可能性を広げることができると思います。とはいえテクノロジーのことを全く分からないのも問題外ですから、勉強はするべきです。
—今まで関わりがなかった分野の勉強って、捗りますか?
学生の時は思いませんでしたが、社会人になってから、勉強することが面白いと思うようになりました。やりたいことにそのまま繋がりますからね。
実生活で役に立ったと感じられる時が好きなので、肌身で勉強の成果を感じられるとやってよかったなとモチベーションになります。
—菱木さんの予想する未来社会について、教えてください。
まだまだ困りごとは溢れているので、AIやロボットで解決できたらいいなと思っています。
理想の未来は、ベーシックインカムが導入される時代です。今はお金に困っている人だけが生活保護を受け取ることができますが、全員に最低保障金がもらえる社会ですね。
「生活をするためにしょうがなく」働くのは、心身的にも良くないですし、働かなくても生きていける世の中にしたいのです。もちろん、働くのが好きな人は働けばいいと思います。皆にとってより良い生活ができるのではないでしょうか。
それでも衣食住は欠かせません。テクノロジーの力で整えたいと思います。
—最後に、ガクセイ基地の読者へメッセージをお願いします!
「好き」はたまたま巡ってくるものです。ですから、普段と違うことをやってみる、ということを習慣化するのが重要かなと思います。
私は毎日To Do Listをつけていますが、「初体験」という項目を作り毎日チェックするようにしています。初めての人と会ったり、新しい本を読んでみたり…なんでも、初めての体験をするんです。
自分が興味なさそうだと思っていたことも、「意外に」はまることがあるかと思います。
リストを見ることだけ習慣化できれば、やることにつながりますよ。何か変わってくるのではないでしょうか。
ありがとうございました!
「テクノロジーで人を笑顔にする仕事」シリーズ
このシリーズでは、AI技術をはじめとするテクノロジー業界での働き方をご紹介するとともに、
学生時代の専攻とは一見全く反対の分野で活躍する社会人にお話を伺います。
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