IT業界

日本IBMのITスペシャリストが語るエンジニアの心構えとは

急速に需要が増えているITエンジニア。

今回は「優秀なエンジニアとは」、「企業が求める新卒エンジニアとは」を探るインタビュー特集第1弾です!

 

【ITエンジニア取材シリーズ】

第二弾:クックパッドCTOが新卒エンジニア採用で見るモノとは

第三弾:ポテンシャル採用を実施するヤフーが欲しい新卒IT人材とは

 

日本IBMでITスペシャリストとして働いていらっしゃる淺野さんにお話を伺いました。

 

日本IBM
100年以上の歴史を持つIBMの日本法人。
日本IBMは1937年に設立し、アメリカに次ぐ売り上げをあげており、IBM全体の中でも重要な拠点となっている。
近年、AIを活用したコグニティブ・ソリューションとクラウドのビジネス利用を推進し、これまでのビジネスモデルを大きく変革させようとしている。 

 

 

エンジニアになりたい。そう思った原点はアメリカ。

—淺野さん、今日はよろしくお願いします!はじめに、日本IBMに入った経緯を教えていただけますか?

実はIBMに入るのを決めたのは、アメリカのボストンだったんです。

僕は、大学は日本だったのですが、卒業後シアトルに1年間留学していました。

ボストンで日本人留学生向けに開催されていたキャリアフォーラムに日本IBMが参加しており、そこで面接を受けて入社したという感じですね。

 

—世界を相手にするIBMならではのエピソードですね!シアトルでの1年間ではどんなことをやられていたんでしょう?

向こうでは小さなメディアで活動をしたりしていましたね。

シアトルはIT系の大企業が多く、また優秀な大学もありスタートアップが盛んなんです。

現地のスタートアップを取材して、日本人向けに日本語で記事を書いたりしていました。

 

—アメリカでの活動はどんな体験でしたか?

実は、僕がITエンジニアになりたいと思ったきっかけがアメリカでの活動です。

アメリカではITエンジニアはスパースター的存在なんですよね。

取材に応じてくださった方々が本当に自分の仕事やビジネスに対する情熱に溢れていて、話を聞いていくうちにエンジニアってかっこいいなと感じたんです。

この経験があったからこそ、エンジニアとして働き始めてから辛くても、彼らのようになりたいという思いから頑張れている気がしますね。

 

エンジニアにとって重要なのは「T字のスキル」

—エンジニアとして働く中で難しいと感じるところはどういったところでしょうか?

最近「原理原則」が重要であり、かつ、それがエンジニアという職種の難しさだと感じています。

つまり、IT(情報技術)は様々な技術に細分化・専門家していますが、各分野の基本となる原理原則を押さえる必要性があるな、ということですね。

例えばWebの開発をしていたとしても、ある程度サーバ側やネットワークに関係する問題が出てきます。

そのときにベースとなる知識がないとその問題に対応できなかったり、調査を適切な担当者に依頼できなかったりします。

逆に自分の専門分野でなくてもうまく対応できるのが優秀なエンジニアだと思いますね。

 

—ITの世界では自分の専門にこだわりすぎてはいけないということですね?

学術的な分野では別かもしれませんが、ビジネスの世界では日々新しく出てくる技術を学ぶ姿勢というのがエンジニアとして最も大事だと思いますね。

開発をしているとよく言われることなのですが、阿部さん(※記者)は「T字のスキル」というものをご存知ですか?

 

—「T字のスキル」…ですか?詳しく教えていただいてよろしいでしょうか。

「T字のスキル」とは縦のスキルと横のスキルを持てということなんですよ。

縦のスキルとは、自分の強み・軸となるスキル、自分が専門にしたいと思っているスキルのことですね。

そして、横のスキルとは先ほど言った「原理原則」や、新しい知識・技術といった自分の専門領域以外のスキルのことです

自分の軸となる縦のスキルはもちろん大事ですが、常に横のスキルを広げていくことができるエンジニアが、求められる人材だと思います。

 

目指すは「自律したエンジニア」

—「優秀なエンジニアとは」ということについて聞いてきましたが、淺野さんが目指しているエンジニア像というものはあるのでしょうか?

僕が日頃から意識している像があって、僕はそれを「自律したエンジニア」と呼んでいます。

社内の話になるのですが、日本IBMにはDistinguished Engineer(DE)という職位のエンジニアがいます。

その人たちはお客さまの「今こういう技術が話題になっているけどどうなの?うちでも使えるの?IBMさん」という話に的確に答えられるんですよね。

そのためには常にITに関わる全分野の最新技術を勉強するのはもちろん、お客さまの業界動向や業務を深く理解し、お客様がその技術を活用するべきか、投資に見合うのかなど、経営の視点も持っていなくてはなりません。

彼らのような自分を律し勉強を怠らないエンジニアを目指したいと思っていますね。

 

—エンジニアは常に勉強し続けることが大事ということですね。

特に僕たちのようなお客さまと直接やりとりするような役割の場合、仕事が毎日忙しくなってくると、「どういうコード(プログラミング)かはよくわかっていないけど、そこは担当者に任せればいいや」となってしまいがちです。

でも、そういうことは絶対にしないようにしています。

先ほど言ったDEたちは、それぞれが専門家として持ってきたものに加え、フロント、サーバ、データベースなどの「原理原則」を全て一人でカバーできるんですよ。

それは家に帰って自分で実際にコードを書いて技術を理解したりだとか、常に技術を自分で使えるレベルまで勉強してるからこそなせる技ですよね。

エンジニアの魅力は「世の中の役に立つ」、それを感じられること。

 

—日本IBMという大手企業の中で働くことは、どういうところがメリットだと思いますか?

IBMは、世界中に、いろんな技術でいろんな経験をした人がいるので、自分が新しいことをやりたくなったときに情報にアクセスしやすく、始めやすいというのはメリットだと思いますね。

組織の改変も早いので、いろいろなキャリアパスがあるというのも魅力の一つです。

IBM CEO ジニー・ロメティー氏

 

—淺野さん自身のやりがいや、エンジニアの楽しいところはどこでしょうか?

自分のやったことが世の中の役に立つというのがわかると、エンジニアってすごく楽しいですね。

だからこそ、自分が作っているものの価値をよく考えます。

これを使ったらどれだけ嬉しくなるのかとか、何の役に立つんだっけというところを考えないと結局誰にも使ってもらえないポンコツしか生まれないんですよね。(笑)

 

—だからこそ、役に立つものを作れると嬉しいと。

そうですね。僕の立場ではお客さまとやりとりする立場なことが多いので、お客さまに提案をした時にこれいいですねとか言ってもらえるとすごく嬉しいです。

忙しさ・お金・時間・利害関係、いろんなことが絡んでくると表面的なところばかり見がちなんですけど、そうではなくて本質的なところを見て、本当に必要な一手ってなんだろうって考えることは常に意識しています。

 

 

IBMに入ると、まずやるのがチームリーダー

—次に日本IBMが新卒に求めるものを伺いたいのですが、どういったスキルが求められるでしょうか?

まずリーダーシップが求められると思います。

一つのプロジェクトにはチームが複数関わるのですが、日本IBMの新人はその中の一つのチームで自分の担当領域のリーダーを任されることが多いです。。

そのチームは外部の協力会社の人とだったり、中国などの海外の人とだったりするのですが、納期内に良いアウトプットを出すためにはチーム内で役割をしっかり割り振ったり、コミュニケーションを円滑にすることが重要になってくるんですよね。

 

—新人からリーダーを任されるのはすごいですね!他にはありますか?

これはどこでも言われることですが、コミュニケーション能力は重要ですね。

たとえばお客さまに解決したい課題などをヒアリングするとき、限られた時間の中で本当の課題は何かを聞き出せる力が必要です。

また聞き出す力だけではなくて、伝える力も必要です。

例えば、コーディングをしてくれる人に対して、どんなものを作ってほしいかをその人がわかるように伝えられなくてはなりません。

 

英語ができるだけで情報にリーチする速さも、深さも、広さも違う

—それではエンジニアになりたいと思っている学生に向けて、就職をするまでにやっておいたら良いことを教えていただけますか?

2つあるのですが、まずはやはり新卒の時点で原理原則がわかっていると良いと思いますね。

最初はAIだったりWebだったり好きなことから始めていいと思いますが、勉強していくと絶対にその分野ではない、わからない部分が出てきます。それをわからない、で終わらせないことですね。

概念レベルでいいので、わかるようにしておく。そうやっていくと原理原則、土台部分ができていくと思います。

 

—ベースとなる原理原則部分ですね。2つ目はなんでしょうか?

これはIBMにいるからというのもありますが、英語ができるようになっておくとすごく便利ですね。

IT先進国はやはりアメリカですし、最先端の技術は向こうから来ます。それにネット上も日本語の資料に比べて英語の資料の方が断然多いです。

英語ができるだけで情報にリーチする速さも、深さも、広さも違う

それを読めるようになっておくことは、自分の強みになります。

 

—最後に、エンジニア志望の学生に向けて企業を選ぶときのアドバイスをいただけますか?

その企業で働いているエンジニアがどういう人たちなのか、というのを知っておくのが大事だと思います。

エンジニアにはたくさんの種類があるので、その企業にはどんな種類のエンジニアがいるのかをインターンだったりOB訪問をしてわかっておくと良いです。

例えばその企業の収益の中心はBtoBかBtoCか。自分はお客さま先に出向いて課題を聞き出したりビジネスをまとめることをしたいのか、研究所などで技術力を高めたいのか。

それらの条件によって自分がなるエンジニアの種類も違ってくるので、そういった観点で企業を見てみると良いと思います。

 

—淺野さん、ありがとうございました!

 

日本IBM リンク

 

〜〜編集後記〜〜

今回は日本IBMでSEの仕事をしていらっしゃる淺野さんにお話をお聞きしました。

優秀なエンジニアとはという切り口で取材をさせていただきましたが、淺野さんは「仕事に追われて勉強を怠ると一定のエンジニアにしかなれない」ということを強くおっしゃっていました。

また、日本IBMに入社を決めた理由をお聞きすると「アメリカと日本のエンジニアの待遇には差があることを問題として感じていました。いろんなエンジニアがいる日本IBMには入ればそのギャップを埋めるための材料が見つかるのではないかと思ったんです。」と話してくれました。

きっとどの会社にも求められる人材になるためにも、そしてエンジニア自体の価値を上げていくという視点でも勉強が大事なのでしょうね! 淺野さん、ありがとうございました!

 

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