IT業界

多様な経歴やハンデがある人を雇用する/アイエスエフネットグループ

ソーシャルビジネス特集第6弾です!

今回は、一般的に就労が困難といわれる方々を積極的に雇用しているアイエスエフネットグループです。ニート・フリーター、障がいを持つ方々、生活保護受給者、ホームレス、犯罪歴のある方……一般的に就労が難しいとされるありとあらゆる人々を雇用し、しかもものすごい業績を上げている企業です!

どんな人が採用の相談をしても受け入れるため「『Yes』か『はい』の渡邉です」と名乗る、アイエスエフネットグループ代表の渡邉幸義さんにインタビューしました!

 

目次

履歴書にこだわらない採用を始めた

 

まず、事業内容について教えてください。

最初はIT事業だけをやっていたのですが、私たちは25大雇用を掲げ、様々な境遇の人を雇うので、レストランをやったり農業をやったりと、色々な声に答えられるようにしています。だから今は様々なジャンルの事業を行っていて、自分でも訳が分からなくなっています(笑)

 

なるほど(笑)
では早速、就労困難者支援について教えていただきたいです。なぜ、障がい者を始めとする多くの就労困難者を雇用するようになったのですか?

実は、最初から就労困難者を雇おうと思っていたわけではないんです。
アイエスエフネットグループの母体となっている株式会社アイエスエフネットは、IT企業として当初4人で設立したのですが、当然、エンジニアを集めなければ会社は動きません。アイエスエフネットで手がけようと思っている仕事にはコンピューターの詳しい知識が必要になるので、最初の頃はIT業界での経験がある人に来てもらおうと募集をかけました。けれど応募者はなかなか来てくれず、たまにITの経験者が来たと思ったら、面接に悪びれることもなく遅刻してきたり話し方が横柄だったり、「来てやったぞ」というような態度なのです。いくらITの知識を持っていても、そういう人と仕事がしたいとは私はどうしても思えませんでした。
一方、「IT業界での職務経験は全くないのですが、一生懸命勉強しますのでどうか働かせてください」という人が来てくれた時は、この人と是非働きたいと思いました。それからは履歴書にこだわらず、目の前にいる人の前向きさや表情、目の輝きなどで採用することにしたのです。
そうし始めてしばらく経ったある日、入社が決まってひたむきに頑張っている社員に「君はうちに就職する前は何をやっていたんだい?」と聞くと、「実はずっとひきこもりだったんです」と言われたんですよ。私は彼の入社してからの頑張りを知っていますから「どんな経歴やハンデがあっても、やる気があればいいじゃないか」と気づいたんです。そうしてさらに人間性を重視する採用を続けていったところ、アイエスエフネットの社員にはいつの間にか様々なハンデを持つ人が増えていったのです。

初めはニート・フリーター、FDメンバー(Future Dream Member)(※1)、ワーキングプア、ひきこもり、シニアの5つに着目して“5大採用”というスローガンを掲げていたのですが、他にも就労が困難とされる、働きたくても働く機会をもらえていない方々がいることが分かり、次第に雇用する人の枠が広がってゆき、今では“25大雇用”(※2)を掲げ、犯罪歴のある方や生活保護受給者など、ありとあらゆる就労困難者を積極的に雇用しています。

 

25大雇用ですか!凄いですね。
ですが、たとえば生活保護受給者やひきこもりの人々は「今まで頑張れなかったからそういう状態になったのではないか」という見方が一般的なように思います。そうした人々がアイエスエフネットではしっかりと働き、会社として高い業績も上げられているのは何故でしょう?

それは簡単な話ですよ。 たとえば、生活保護を受給しているというだけで就職を断られてしまう人がいます。受給せざるを得なくなった理由はある筈なのに、時にはひどい言葉を浴びせられてしまって。そんな中、ぼくが「あなたを雇いたいです」と言うと、みんなとても感激して、中には泣く人なんかもいて。そうして雇われた人はどうすると思いますか?当然、一生懸命働いてくれるでしょう。それはその人にとってだけでなく、会社にとっても社会にとっても良いことですよね。
もちろん、アイエスエフネットグループでは本当に様々なハンデのある人が働いていますから、一人ひとりに適切な配慮は必要です。彼らを受け入れる環境さえあれば、みんな人一倍頑張ってくれます。

 

大事なのは理と利のバランス

 

なるほど。 私事なのですが、実は私も将来は起業をすることを考えていて、その際にはホームレスやひきこもりの方を雇用したいと考えているのですが、そんなに大変ではないように思えてきました。

いや、大変ですよ(笑)当たり前じゃないですか(笑)私はそれを苦労とは感じませんが、やはり相当の努力はしなければなりません。

それに、障がいのある人々にはやる気のある人が多いですが、生活保護受給者やひきこもりの人の中には、やりたい思いはあるけれど、これまでの生活習慣の影響もあって、気力をなくしている人もいるので、状況はもっと大変です。 また、何年間もひきこもってすっかり気力がなくなってしまった人を突然雇用してもバリバリ働けるわけはありませんから、私たちは“Future Dream Achivement”(FDA)という、気力のない人に徐々に気力を取り戻してもらう訓練や就労支援をするNPOを設立しました。まずはそこに通ってもらって、徐々に就労訓練をしていきます。そういう順序はきちんと考えなければなりません。

 

 

それから、会社を立ち上げてからすぐにそうした法人を設立するのも駄目です。会社の事業がきちんと軌道に乗ってからでないと、会社そのものが潰れてしまいます。
私はよく言うのですが、大事なのは「理と利のバランス」なんです。人を助けるには、「これをやりたい」という思いや理性(理)と、それをやるのに必要な利益(利)の両方を考えなければなりません。気持ちがある人はたくさんいますが、気持ちだけではやはり上手くいきません。
たとえば、NPOには給料が安く、だいたい20万くらいしかもらえないところが多いと聞きます。22歳くらいで就職したばかりの頃はそれでいいかもしれませんが、数年後に結婚して子供ができて、子供を塾に通わせたいなどとなったときに、月給20万円で続けられますか?自分が良くても、きっと親や配偶者はそれを良しとしないでしょう。社会貢献をしたかったら、周りまで含めてちゃんと納得させられないと絶対にうまくいきません。 私は2016年までに、障がいのある社員に対して月額25万円を「平均」の給料とし、能力の高い方にはそれに見合う25万円以上の給料をお支払いすることを宣言しています。それは綿密に考えた計画なので、達成できる自信があります。

 

月額25万円平均ですか!驚きです。 他にも色々と計画があるのでしょうか?

はい。私は「未来ノート」という独自のノートを書いているのですが、そのノートに、今日やるべきことから未来に達成するべき目標までびっしりと書き、様々な計画を立てています。そのノートに書いた事は必ず実現させていますから、私が就労困難者の雇用を続け会社を大きくできたのは、このノートのおかげと言っても過言ではありません。(詳しくは著書、「『未来ノート』で道は開ける!」(※3)をご覧ください。)

今後の計画としては大きなものが2つあります。
ひとつは、全世界195カ国に拠点を作ること。
もうひとつは、日本中に1000拠点を作ることです。47都道府県で割ると、1つの県にだいたい25個ですよね。そうすると、日本のどこに住んでいる人でもすぐに地元に帰れるんですよ(笑)そんな状態を目指しています。 それが実現できるのが何年後になるかは分からないですが、未来ノートに綿密な計画を書き、日々そのための行動を続けているので、必ず実現できます。 5年後、うちの会社に入ることはできないかもしれません。応募者が殺到して、10万人とか20万人とかの会社になりますから。入るなら今のうちですよ(笑)

 

凄まじいスケールの計画ですね! ところでお話が変わりますが、学生に対し“1日かばん持ちインターンシップ”を毎月実施されているそうですね。どういう思いでなさっているのですか?

環境がないと人は変われないので、その環境をできるだけ多く作りたいという思いがあります。 人間は情報をインプットした後、納得して初めて行動しますから、納得をどれだけするかということが肝心なのです。
私の経験上、20代から30代、40代になるにつれて、その吸収力が半分ずつくらい下がっていってしまうと感じます。本当は歳をとっても鍛錬し、好奇心を持ち続けていたら、多少時間はかかりますが若い人と同じようにできるんですけどね。 若い人はスポンジみたいに色々なことを吸収していきますから、君みたいな若い人に1日かばん持ちをやってもらって、気づきがある人に、起業家や、社会を変える人になってもらいたい。そういう思いでやっています。「1日かばん持ちインターンシップ」って言っても、実際にかばんを持たせることはないんですけどね(笑)

 

では最後に、起業を志す学生へのメッセージをお願いします!

学生にはまず、社会課題や社会の流れを勉強して欲しいです。起業家というのは常に時代の先を行かなければなりません。ですが、現状を知らないと先に行けないですよね。なので新聞や本をひたすら読んで、まずは現状の情報をインプットして欲しいと思います。
また、既成の概念をぶち壊すことを考えて欲しいです。人が「できない」と言うところにチャンスはありますから。誰にもできないけど、社会にとって大切で必要なもの。そういうものを実現していくのが、起業家なのではないかと思います。

 

渡邉幸義さん、どうもありがとうございました!!

 

<Information>

HP:http://www.isfnet.co.jp/
twitter「渡邉幸義」 : http://twitter.com/YukiyoshiW
ブログ「渡邉幸義の日々」 : http://www.isfnet.co.jp/blog/
広報 FaceBook : http://www.facebook.com/isfnetPR 

※1.FDメンバー(Future Dream Member) アイエスエフネットグループでは障がいのある方を「未来の夢を実現するメンバー」として、FDメンバー(Future Dream Member)と呼称しております。

※2.25大雇用について
http://www.isfnet.co.jp/csr/society/index.html

※3.「『未来ノート』で道は開ける!」
http://www.isfnet.co.jp/books/book_index.html#books06

 

【ソーシャルビジネス企画記事一覧】

コラム:ソーシャルビジネスって何?この記事ひとつで丸分かり!

第一弾:証拠に基づき、報道の正確性を検証する/日本報道検証機構

第二弾:強い経営で、障がい者雇用に対する理解を伝える/日本理化学工業

第三弾:みんなの夢を実現する伴奏者でありたい/ソーシャルビジネス・ドリームパートナーズ

第四弾:Facebookのいいね!で、“公共革命”の足がかりに/gooddo株式会社

第五弾:発達に課題があっても受け入れられる社会を目指して ハッピーテラス株式会社

(第六弾:多様な経歴やハンデがある人を雇用する/アイエスエフネットグループ)

 

(編集後記)
渡邉さんはずっとマシンガントークをされていて、私は一時間圧倒されっぱなしでした。どうしてそれほど元気なのかとお聞きすると、いつも電車を使わず1時間半歩いて通勤されているそう。他にも、夜の8時に寝て2時に起きるとか、中島みゆきさんの「地上の星」と、ロッキーのテーマの「Eye of the tiger」を毎日聴いて燃えているとか、面白い習慣をたくさん聞かせていただきました!
このパワフルなエネルギーはお会いしてみないと分かりません!興味を持った人は是非、「1日かばん持ちインターンシップ」にエントリーしてみてはいかがでしょうか?実はぼくも11月に参加させていただいたのですが、非常に刺激的な体験ができ、とても勉強になりました!(久保)

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gakuseikichi

2 Comments

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  • 世の中で出来ないことを平然と行って、なおかつビジネスにしているのはすごいと思いました!社長の元気が伝わってくるようです。私たち学生にとっても、多様性がある会社で働かせて頂けるのは生涯の価値になると思います。良い記事を作ってくださりありがとうございました!困難な方の就労支援といえば、シングルマザーの支援をしているNPO法人リトルワンズを思い出しました。ソーシャルビジネス繋がりで、聞いてみてはいかがですか?

  • トパーズさん

    コメントありがとうございます!
    この記事を書かせてもらった久保でございます。

    ただ良いことをしているだけでなくて、しっかり利益を出しているのが本当に凄いことですよね。

    ぼくは実はこの記事の中にでてきたFDAというNPOでインターンをさせてもらうことになって、週に2回ほど通っています。本当に色々な人がいて、多様性のある環境に身を置くことは非常に勉強になるなと感じています。

    リトルワンズというNPO法人、調べてみました。素敵なところですね!ご紹介ありがとうございます!!

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