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―実地検査とはどのようなものなのですか。
基本的には現場の確認をするために出張に行き、出張先(事務所等)でまずは資料を確認しながら先方の話を聞きます。その後、一緒に出張で来ている他のメンバー(調査官)と情報交換をしつつ、実際に現場(工事現場等)に行きます。ダムを作っている事業であれば、そのダムへ行きます。山の中にも行きます。例えばそこで、ダムに必要な強度が不足していて、地震や防災の時に機能する安全装置などが十分なものではなかったら、それはお金の無駄となります。なので、現場では、本当に強度が十分であるか、地震の際にきちんと機能するのか、などというところまで調べに行きます。設計書等を見て、設計書上で問題があるというのが分かる場合もあれば、設計書上では問題がないけれど、現場に行って本当に設計書通りにできているかを確認すると問題がある場合もあります。このように発見した問題に対して、指摘をしたり、改善の提案等をしたりします。
―検査は事前通告式なのですか?
場合によります。通告をせずに(無通告で)検査をすることもあります。しかし、担当の人に話を聞きに行ったり、現場を見に行ったりするということであれば、無通告で検査に行って現場に人がいないというのは意味がないので、目的に応じてしっかりと使い分けています。
―会計検査院はやはり怖がられている存在なのですか?
怖がられている存在であるというのは間違いないと思います。改善の提案などコンサルのような業務もありますが、会計経理をしっかりと確認するという監査的側面からみると、検査側と非検査側が緊張関係におかれるのは、健全なことですので、怖がられていることが一概に悪いとはいえません。しかし、過度に検査先の方々のガードが固くなり、現場の本当の声が聞けなくなると、実行可能な改善の提案が難しくなるので、信頼関係を構築することが重要になります。
―今までで、具体的に指摘や改善の提案をしたことはありますか?
-上床さん
各省庁はいろいろな民間企業等に補助金を渡しています。これは、民間企業等の方が行おうとしている事業が、日本社会全体にプラスになるようなもの(たとえば技術の開発や販売経路の確保など)であり政府の方向性と一致しているときに、民間企業等に補助金を交付しているものです。
各民間企業等は、明確な目的と事業の範囲を提示することで、補助金をもらっています。そして、事業終了後には、民間企業等がその事業に使ったお金を各省が確認して、補助金額を確定しています。さらにその後に、私たち会計検査院が、各省庁がきちんとチェックまで行っているか、それぞれの補助事業において無駄遣いはないかを確認しています。
以前、私がある補助事業を検査した際に、領収書・明細書等の書類を確認すると、お金の一部が、補助金の目的と関係のないものに使われていたことがありました。補助金の交付元の水産庁に確認をとり、実際に補助金の中から関係ないものにお金が使われていると確認されたため、企業はその分のお金を水産庁に返すことになりました。
-浜さん
政策そのものの効果を改善するための指摘も行います。例えば、厚生労働省が、民間企業等の行う職業訓練についてお金を交付して、失業者の方々に職業訓練を受けてもらう事業があります。この職業訓練について、訓練コースごとの就職実績を公表するよう、意見を表示しました。これにより、民間企業等の就職実績向上の取り組みを促したり、受講希望者がより就職につながりやすい訓練コースを選べるようになったりしました。
―指摘して返還されるお金は1年間でどのくらいなんですか?
会計検査院が指摘した金額は、平成25年度決算検査報告だと2381億円になっています。全体的にここ最近は増加傾向にあります。これは、政府全体の予算が増加し、各省での行政経費が増えていることも関係しているのかもしれません。
指摘金額が、そのまま財政上のインパクト(効果)となるわけではありません。指摘金額の中には、使ってしまって返還しようのないものがあったり、検査院の指摘により業務が改善されてその後の財政にも引き続き効果が生まれるものもあったりするからです。私たちの検査による、財政への実際の効果を把握するため、会計検査院では財務上の是正改善効果という指標を毎年次試算しております。26年次の是正改善効果は4102億円でした。
―政権が変わる際に、各省庁の動きが変わり、会計検査院の動きが変わることもあるんですか?
会計検査院は立法府にも属していないので、政権交代による影響を直接に受けることはありません。ただし、政権交代による各省庁の政策の変更点等については、検査の際に留意することもあります。
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