Let Yourself Be Yourself

【対談後編】美しさは自分で決める!ボディポジティブについてとことん考えてみた

ガクセイ基地では、9月21日に国連財団イニシアチブのGirl Up Tokyoさんと一般社団法人ATHENA代表、またアクティビストやフィットネストレーナーとしても活躍されている宇野唯奈さんをお招きし、ジェンダーとボディポジティブについて対談をしました。(対談の様子はガクセイ基地の公式インスタグラムからもご覧いただけます。)

この記事は後編です!前編はこちらから

対談スピーカー紹介

 
宇野唯奈さん
 
高校時代にジェンダー問題をはじめとする社会問題に興味を持ち始め、上智大学 国際教養学部において政治学学士号取得、ロンドン大学においてジェンダー学修士号を取得。

「性別の固定概念に縛られず、人々が自由な選択をできる社会」を目指し取り組む一般社団法人 (申請中) 「ATHENA」の代表理事、そして社会問題に特化したオンラインサロン 「Evolve」の設立者として活動。
フィットネストレーナーとしての顔も持ち、ボディ・ポジティビティやフィットネスを通した女性のエンパワーメントにも取り組む。
 

 

Girl Up Tokyo

国連基金によるGirlUp 運動から生まれた、東京中心に活動している団体。女の子のエンパワーメントとジェンダー平等を目指し、SNSを通して情報発信・拡散、ワークショップ開催などの活動を行う。



そそさん(写真左):大学4年生 中国出身 2020年、身近に感じたジェンダー不平等を変えたいと思いGirlUpTokyo を立ち上げました。女性にまつわる全ての問題に関心を持っています。
 
れいりさん(写真右):高校3年生。GirlUpTokyoではライターチームのリーダーとして活動しています。主に、SRHRや女性の貧困問題、男女の賃金格差に興味を持っています。個人では、「東京都の公共施設のトイレに生理用品を設置してください!」というオンライン署名を立ち上げました

 

ガクセイ基地から
桃子:ガクセイ基地代表。現在進行中のプロジェクト「Let Yourself Be Yourself」企画担当。

 

Q:「痩せたい」と思うことはBody Positiveなの?

桃子:

私がこれについて考えたい理由は、ダイエットはボディポジティブになっているのかと疑問に思ったからです。例えば自分のことをもっと肯定するために痩せることは確かにポジティブになるために必要かもしれないけど、それって結局「細い=美しい」という価値観に囚われていることになってしまうんじゃないかな、と。ダイエットは減量のイメージが強くて、一度初めてハマり始めると中々抜け出せずに苦しむこともあるような気がしているんです。唯奈さんはフィットネスをしながら、このことについてどうお考えですか。

唯奈さん:

私はBody Positiveについて発信をしている身ながら、フィットネスもしています。実際に周りの方に「Body Positiveについて発信しているのになぜトレーナーとして身体を鍛えるのか、ありのままが美しいのではないのか」という質問をいただいたことがあります。私は個人的に、何かをモチベーションにして頑張ることが自分のありのままを受け入れてないことにはならないと思うんですよね。たとえば私は元々ラテン系の女性の引き締まった体型がとても好きで、魅力的だと思っています。でも日本人として生まれてきた私はどんなに努力をしてもその体型にはなれないんです。だからいい意味でそれを受け入れるってだけでいいんじゃないかなと思います。自分が素敵だなと思える体型をスマホの待受画面などにして、「今日もトレーニング頑張ろう」と思うのは、ポジティブなモチベーションになっている限りは良いんじゃないかなと思います。それが「なんで自分はこんな身体なんだ、もっとダイエットして理想に近づかなきゃ」と思ってしまったらそれはストレスでしかないので良くないのかなと思います。

桃子:

憧れの体型を目指すことは、自分を肯定するために有効でありながら、自分の身体が嫌いになった途端すごくネガティブな影響にもなりますよね。自分が理想としている体型を肯定するのはもちろんのこと、それに加えて自分の今の体型も同じ態度で受け入れるマインドを持つことが大切ですね。そのマインドを持ち続けなければいけないし。

唯奈さん:

それが難しいですよね。Body Positiveの発信をしている中で、自分はフィットネスについても同時に発信をしているので、自分の発信が見てくれる人たちに良くない影響を与えてしまっているのではないかと考えたこともあります。「唯奈さんの体型にすごく憧れます」と言っていただけることが嬉しい反面、自分の体型が逆にダイエットを無理にするためのきっかけとなってしまっているんじゃないか、と。

れいりさん:

Body Positiveはどんな容姿も美しいというマインドで、それはそれで正しいし私も助けられてきたんですけど、やっぱり自分のことを肯定するのがすごく難しいと感じる時もあって。細い人を見ると「なんでBody Positiveを知ってるのに自分のことをネガティブに受け止めてしまうんだろう」とさらに嫌になってしまうことも多かったんです。しかしある時にGirl Up Tokyoのメンバーから*Body Neutrality(ボディ・ニュートラリティ)という考え方を教えてもらってから、すごく楽になりました。これは自分の体型や容姿を肯定できない自分さえも受け入れるという意味です。今の唯奈さんのお話は自分にも通ずる部分がありました。私もモデルさんの体型をみて肯定できずに焦ってしまうことがあるので。そんな時にBody Positiveを思い出しても中々ポジティブになれないんですが、Body Neutrality の考え方は自分自身を肯定するために必要だなと思いました。

*Body Neutrality(ボディ・ニュートラリティ)
体型や容姿が自分の価値や幸せを定義するものではないという価値観をもとにしている。自分の身体が外からどのように見られるかではなく、自分にとってどんな働きをしてくれているのかに焦点を当てた考え方。

 

桃子:

確かにBody Positiveと聞くと常に肯定していなきゃいけない感みたいなのがあって、それって心に余裕がないとできないですよね。「自分のことが受け入れられない自分」を受け入れるところから始めるという意味では、Body PositiveよりもBody Neutralityの考え方から入ってみるのも良いですよね。

 

Q:唯奈さんがフィットネストレーナーとして伝えたいことは?

桃子:

先ほどもフィットネスのお話がありましたが、フィットネス=ダイエットと考える人が多い中で、どんなことを伝えていきたいですか。

唯奈さん:

心身ともに健康であるためにどれだけフィットネスが大切かというのをわかっていただきたいなと思っています。運動はダイエットなどの効果もありますが、心の健康も促してくれる効果がとても強いです。なのでもしフィットネスを始める理由がダイエットだったとしても、それはそれでいいかなと思います。続けていくうちに身体だけでなく心もどんどん健康になっていくことを実感できると思うので。フィットネスでもダイエット目的の方が最初は多いように、メンタルヘルスは日本ではまだまだ話題に挙げられていないトピックです。そのメンタルケアの重要性も同時に知ってもらいたいなと思います。例えば今は「細い=健康」みたいになっているけれど、ダイエットを頑張りすぎてメンタルがボロボロ、といケースは本当によくある話です。それでも今の社会では肥満の方々に対して不健康というイメージがあって細い人に対してはないですよね。見た目で健康は判断できないということをもっと多くの方に知っておいてほしいなと思います。

そそさん:

自分はジムに2年くらい通っているんですけど、最初のきっかけはやっぱりダイエットでした。しかしだんだん減量できるかどうかよりも、筋トレによって身体に変化がついてくることに楽しみを感じ始めました。運動するってダイエットだけじゃなくてそれよりも色んなメリットや楽しみがあるんだなと気づけました!

唯奈さん:

素敵!!嬉しいです(笑)

桃子:

痩せているとか太っているとかいう言葉が意味することが人によって違うことを感じています。最近だと痩せている人に対して「細くて綺麗だね」と言うことが、その人にとっては嬉しいこととは限らないことに最近気づいて。誰かの外見に対して自分から印象を口に出すことが言えなくなったんですよね。

唯奈さん:

すごく共感します。私も「痩せてていいね!」と言われることもあるんですけど、「痩せすぎてるのか?」と一瞬思ってしまう自分もいるんです。自分はいいと思っていても相手がどう受け取るかは分からなくて。でも人に対して「痩せたね」とか「太ったね」っていう言葉は本当にいらないと私は思うんですよね。それがたとえ褒めているつもりでも、相手が良い意味で捉えるかは分からないから。実際にルックスに対して何も発言しなくても会話は成り立つので、なるべくしないようにしたいですよね。女性の中には美容に気を使っている方も多いので、どうしても「痩せてていいな」とか「胸大きくていいね」など、生まれつき持っている身体の形に関する会話が多いと思います。私もいまだにやってしまうので、控えたいです。

 

Q:フェミニストとして、またフェミニズムを発信する人として日々どんなことを意識している?

唯奈さん:

日本ではフェミニズムに対してネガティブなイメージが浸透してしまっています。日本で残っているジェンダー課題の根本的な問題は「一人一人が無意識に押し付けているジェンダーの固定概念」です。これに苦しまれているのは女性だけではなく、多くの男性にも当てはまります。今までのフェミニズムの歴史などを見てみると、ずっと女性がメインでした。女性がこういう苦しみを持っていた、男性に比べてこういう権利がなかった、など女性の主張が強いです。しかしやっぱりそれは男性からしたら男性が持つ苦しみや葛藤が蔑ろにされてしまうことになってしまいます。これによって男性側にもステレオタイプが生まれて、自分らしく生きられない男性の方も多くいらっしゃいます。私たちは男性と女性で持つ価値観が分かれると思い込みがちですが、女性の問題は男性も思考を変えれば考えられることがあると思います。本来フェミニズムの運動が本当にやりたいことは、性別関係なく固定概念に縛られずに一人一人が自由に生きられるようになりたいという思考を広めていくことだと思うので、女性だけでなく男性の問題も同時に考え、縛られたステレオタイプを解くきっかけを提供できればなという意識をしています。

桃子:

確かにちょっと視点を変えれば男性にも通ずることはたくさんありますよね。それをいかに気づかせられるかというところがフェミニズムの難しいところだと思いました。そそさんとれいりさんはどうですか?Girl Up Tokyoの運営代表として、意識されていることはありますか。

そそさん:

私たちはSNSの投稿をメインに発信しています。Girl Upという名前なので、最初は女性向けに発信していたんですけど、だんだん私たちの発信は女性だけに限定されないかも?と考え始めました。例えば女性に対する性暴力について扱う際、逆に男性側が被害を受けたときに男性側が持つ精神的負担は女性と同じくらい、もしくは女性よりも大きい場合もあります。なので男性の意見も取り入れて発信することを心がけています。

 

Q:自分の外見が嫌いなとき、自分になんと声をかける?

そそさん:「私も悪くないじゃん」

この人綺麗で完璧だなと思う人を見ると自分を変えたくなる時もあるんですけど、そういうときに「私って素敵な目をしているな」「私がその人よりも素敵じゃない理由にはならないな?」と考えて私も悪くないと言い聞かせることで割とポジティブになれました。

れいりさん:「ありのままで十分だよ!!」

自分自身の外見が嫌になったときに言い聞かせています。私は元からモデルさんの体型に憧れを抱いていて、でも私はどう頑張ってもコンプレックスは治らないので、良い意味で諦める、すなわちありのままで十分だと自分に声をかけます。この体型でこの顔である人は世界中に私一人しかいないので、もうそれをそのまま受け入れた方が楽で幸せなんだと、自分自身を信じます。

唯奈さん:「BUT WHY?」

自分の身体のこのパーツが嫌いなんだと思うことがあるんですけど、「でもなんでだ?」と一回振り返ってみると憧れのモデルさんがそうだったからとか、他の人との比較が元になっていて。その自分がすごい嫌だなと思うんですよね。変わらない自分の身体について嫌だなと思っていることがもったいなく感じてしまうので、そもそもなんで嫌なんだろう?あ、そうだ他の人たちと比べているだけじゃん、そんな自分にはなりたくないっていう思考の連鎖をずっと続けています。

桃子:「この子もかわいいけど、私もかわいい」

Girl Up TokyoさんがおっしゃっていたBody Neutralityの考えがとても好きなんですけど、やっぱり自分の身体を好きになれない時やどうしても人と比較してしまうことってあると思うんですよね。まずそこから否定するのではなくて「比較はしても、自分の良さは決して消えるわけではないよ」っていう考えを大切にしたいなと思います。なので街を歩いていたりメディアをみて綺麗な人を目にしても「この人は素敵、でも自分も同じくらい魅力的」と言い聞かせられたらいいなと思いました。

唯奈さん:

みなさん素敵ですね。今日話したことが一人でも多くの人に広がって欲しいです。

桃子:

本当ですね。そして、対談は以上になります。唯奈さん、そそさん、れいりさん、本当にありがとうございました!!

 

 

編集後記(桃子)
いかがでしたでしょうか?(実際の対談映像はこちらから)
どこでどのように育っても、人は美しい物や人について話しています。それがいつの間にか自分の価値観や物事の判断基準となって、自分自身もその価値観に習ってしまいます。特にダイエット文化が激しい日本では、美しいとされる基準がとても狭く、そこに自分を当てはめることが難しく感じることもあるでしょう。
大切なのは、美しさは外見だけでは決して図れないこと、そしてどんな人もありのままで十分美しいということ。今回の対談を通して、改めて強くそう感じました。

 

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