「太っている自分が嫌だ」「私はかわいくない。もっとかわいくなりたい」ー誰しもが持つ、容姿や見た目のコンプレックス。あげたらキリがない、という人にぜひ読んで欲しい記事です。
今年の夏から始まったある署名活動が、オンラインメディア「BuzzFeed Japan」で取り上げられ、話題になりました。
ローティーン向け人気ファッション雑誌『nicola(ニコラ)』宛てに
「女子中学生雑誌No.1のニコラは、見た目に優劣はなくありのままで美しいことを子どもたちに発信してください」
というメッセージを発信した署名。現時点で約15,000人以上の署名が集まっています。
ガクセイ基地では、その署名の発起人/団体の運営代表である大学4年生の和香子さんに取材しました。
目次
「大好きだったからこそ、より良くなってほしい」署名活動を始めたきっかけ
ーー署名活動を始めた経緯ときっかけについて、詳しく教えてください。
もともとは、私自身が自分の見た目が嫌いだったことが始まりです。小学校高学年くらいから約10年以上、自分の見た目が好きになれず悩んできました。
大学3年の時に、ある雑誌で「Body Positive(ボディ・ポジティブ)」という言葉とその考え方を初めて学び、問題は自分の身体ではなく否定的な考え方なんだと気付かされました。それから自分の身体やコンプレックスを少しずつ受け入れられるようになると同時に、見た目の個性が認められていない日本社会に問題意識を感じ、アクションを起こしたいと思うようになりました。
ーーなぜ、オンライン署名を始めたのでしょうか。また、なぜ『nicola』というメディア(雑誌)を選んだのでしょうか。
きっかけはchange.org(チェンジ・ドット・オーグ)という一般社団法人の方々が開いていらっしゃったワークショップに参加した時です。世の中に自分と同じ思いを持った人を集めて一緒に声をあげられ、かつ社会に問題意識を持ってもらえるきっかけにもなると感じ、署名活動をしてみようと思いました。
『nicola』を選んだ理由は大きく二つあります。一つは私自身がこの雑誌が大好きだったからです。小学生の頃、『nicola』や『seventeen』などの女の子向けの雑誌をよく読んでいました。しかし、同時に自分の容姿に自信を持てていませんでした。理由を考えた時に、このようなメディアの存在がとても大きかったんですよね。雑誌の中にいる細くて白い女の子を目にし、決してそうではない自分と常に比較していました。当時はそれでも楽しく読んでいたし、雑誌に書いてある身長・体重の枠が自分にとっての正解だと思っていました。今もそれは楽しい思い出として残っているし、モデルさんや『nicola』を否定するわけではありません。しかし今振り返えると、「痩せていることが美しいこと」という固定観念に疑問を抱かずに自分を否定し続けた経験は、幼少期に目にしていた雑誌やメディアに大きく影響を受けていたんだとも思います。
もう一つの理由は、日本社会に生きる中でBody Positive(ボディ・ポジティブ)を知ったことで、社会の美の基準が子供の頃から潜在意識として刷り込まれてしまうことに気づいたからです。子供の頃の潜在意識は、大人になってもなかなか抜けません。なので、雑誌の中でも日本に住む女の子が一番最初に見るような、女子中学生向けの『nicola』を選びました。
ーー署名を通して、具体的にどんなことを伝えたいのでしょうか。
今のメディアの発信によって、自分の容姿や見た目に悩み苦しむ子供が多く存在すると思います。特に成長期(小学生〜中学生)の『nicola』読者にとっては、体重が増えること、外で運動することによって肌が焼けて黒くなることも当たり前です。その中で減量ダイエットや肌の白さのみを良しとするようなメディア表現は、容姿が社会の固定観念に合っていないことに対してストレスや恐怖心を抱くきっかけになる可能性があります。子供たちがありのままで美しいということを子供達自身が知れば、自分らしくファッションやメイクを楽しめるのではないか、ということをお伝えしたいと思っています。
「苦しんだ過去があるからこそ、強い今の自分がいる。」
ボディ・ポジティブを習慣化して気づけたこと
ーー社会に不満や問題意識を感じる人の人数は多くても、そこから実際にアクションを起こせる人は多くありません。なぜ署名や学生団体の立ち上げといったアクションを起こせたのでしょうか。
行動に起こせたのは、私自身が長い間悩んできた過去があるからだと思います。Body Positive(ボディ・ポジティブ)を知る前は太っていることが自分にとって一番のコンプレックスでした。常に自分はダイエットをしなくてはいけないと認識していましたし、減量するために色んなことをしました。しかし元々痩せにくい体質だからか、思うように痩せられないことも多かったです。それでまた自己嫌悪に陥っていました。
署名は今回が初めての挑戦だったので、正直とても不安でした。社会で当たり前とされていることに対して声を上げることが怖かったです。しかしいざやってみたら、大勢の方から共感の声をいただいたり、声をあげたことに感謝されたり、中には自分の辛い思いを共有してくださる方もいました。とても心強かったです。自分だけじゃないんだと勇気づけられると同時に、この状況を変えたいとより強く思えました。
ーー自分の身体を好きでいるために、日々の生活でどんなことを意識していますか。
「ありのままで十分美しい」というメッセージを自分にかけるようにしています。また今まではコンプレックスで見られなかった自分の身体をちゃんと見て、否定するのではなく健康に動いてくれていることに感謝するようにしています。これらを日々行うことで、社会の声ではなく自分の声によりフォーカスできるようになりました。着る服も単にかわいいと思う服ではなく、自分が着たい、または心地よいと思うものを選ぶようにします。例えば今はノースリーブの服を着る勇気がなくても、心から着たいと思った時を待てばいいんだ、という感じです。
ーー過去に「痩せている=美しい」という潜在意識が刷り込まれていると、そこから抜け出すのは簡単ではないと思います。
そうですね。正直私も自分の身体を受け入れるのに時間がかかりました。むしろ今でも自分のことが嫌になってしまうことはあります。それでも、心の準備ができていない不完全な自分さえも認めてあげることが大事だと思っています。少しずつ自分のやりたいことを自分の心の声のままに行動に起こせばいいんだな、と。
潜在意識はすぐにはなくならないと思います。でもその意識がなぜあるのか、どこから生まれたのかを考えると、自分自身ではなくメディアや他人の声など外部の影響が理由であることが多いです。なので社会にある「当たり前」を疑い、自分自身を優先できた自分は偉いと、誇らしく思うようにしています。
学生団体「as I am」としての今後の活動について
ーーas I amという団体として、今後どのように活動していきたいですか。目標などが゙あれば教えていただきたいです。
団体として二つのミッションを掲げています。一つは、「子供や若者が自分らしく生きることを妨げるものに対して声を上げること」です。これは今回の署名を通してアクションに起こすことができましたが、もう一つのミッションである「子供・若者が自分らしく生きるためのサポートを行う」ことも挑戦していきたいと考えています。具体的にはas I am でイベントを主催し、子供や若者たちと交流の場を設けたいと考えています。美の多様性に限らず、様々な形の多様性について発信していきたいです。
ーーボディポジティブの考え方が浸透していない日本では、美の基準に悩む若い女性は多くいると思います。その人た ちに、なんと声をかけますか。
「ありのままで十分だ」ということを一番伝えたいです。容姿と一概に言っても様々ですが、どんな服を着るか、メイクをするかしないか、体毛を剃るか剃らないかなど、自分の見た目に対してどう行動するかもそれに対する考え方も人によって異なるし、人の数だけ選択肢があっていいと思うんです。それでも今の社会は選択肢が少なく、また選択肢の多さを認めない風潮があります。そんな生きづらい中でも、自分の声に耳を傾けようと葛藤しているあなたは、本当に強く、優しく、美しい方であるということを忘れないでほしいと思います。また自分のことを認めると同時に、それぞれ違った美しさを持っていることをお互いに認め合えればいいなと思います。
ーーありがとうございました。
as I am さんの団体のHP、署名リンクはこちらから↓
as I amホームページ
署名ページ
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