今回のインタビューは地方教育に携わっている学生団体タルトタタンさんです。「自分らしく生きるための”環境づくり”」をコンセプトに活動されています。
今回は運営のお三方がインタビューを受けてくださいました。
目次
タルトタタンの皆さん:プロフィール
亀井美玖(かめいみく)/代表
東京学芸大学教育学部3年 中等教育教員養成課程(B類)理科専攻
栃木県足利市出身
ひとこと:2021年の目標は、「おしとやかに笑うこと」なのですが、未だ達成できていません。
貝森達(かいもりいたる)/地方実践チームリーダー
東京学芸大学教育学部3年 初等教育教員養成課程(A類)数学選修
秋田県大館市出身
ひとこと:好きな季節は冬です。雪が好きなんです。
綾野拓全(あやのたくま)/阿蘇塾チームリーダー
東京大学理科二類2年 工学部化学生命工学科(内定)
三重県津市出身
ひとこと:575を見つけるのが得意です。最近見つけたのは「accounts.google.com」です。
タルトタタンそのものについて
ー活動を始めたきっかけはなんですか?
亀井:団体を立ち上げたのは、私と貝森さん、そしてここにはいないけれど長岡さんの3人でした。全員が東京学芸大学の学生です。それから、他のメンバーを募集しました。時期としては、私達が二年生になった2020年の4、5月頃です。私が地域による教育格差の存在を知ってから問題意識を持っていて、団体を立ち上げることにしました。自分自身が地方にいたことで、進学の際に不利だったと感じたことがあり、それがきっかけにもなっています。
ー立ち上げた当時のお話を聞かせてください。
亀井:大学1年の秋学期に、まずはサークルが同じだった貝森さんに声をかけました。私たちの所属していたサークルは、ワークショップやイベントを開催するサークルでした。その活動も楽しかったのですが、それと同時に今のような活動をしたい気持ちはずっとあったので、「自分はこういうことをやりたいんだよ〜」とご飯に行った時に話してみました。すると、「じゃあ、やってみたら?」って貝森さんに言われたので、、誘うメンバーがいないことを嘆いたら、「私がメンバーになるから、やろうよ」って言ってもらえたんです。それがきっかけで始めることにしました。
貝森:恥ずかしい……。
亀井:もう一人、好奇心旺盛でパワフルな長岡さんに、「やってみない?」と声をかけて、活動を始めました。最初はコロナ禍ではなかったので、対面でずっとやっていたし、新歓も学芸内の広場でやろうと思っていたんですよ。でも、コロナ禍に入ってしまって、Twitterでメンバーを募集して、今に至ります。
ーどうして貝森さんは亀井さんのお話を聞いて参加を決めたのでしょうか?
貝森:一番最初、亀井さんから話をされた時は、スライドを使って「教育格差ってこういう問題があって、私はここまで勉強してこんなことが分かってるんだけど…」とプレゼンされたんです。それを見せられて、純粋に面白そうだなと思ったのでやろうと思いました。その上で、人が足りないんだよ、っていう話もされました。いざ活動を始めてみると、自分の経験と合致するところも見つかり、自分と似た境遇にいる子の助けになれる活動っていいなと改めて思いました。なので、この活動を代表と長岡さんと頑張りたいと思いました。
ー学生団体タルトタタンさんのコンセプトはなんですか?
亀井:私たちの団体ではミッションとして「自分らしく生きるための”環境づくり”」を掲げています。「自分らしく生きる」ことはとても大切なことですが、その前提となる環境づくりも同じくらい大切だと私たちは考えています。。
例えば、学ぶことを楽しむ可能性があったとしても、そもそも「進学」のような選択肢が本人の意識になければ、その可能性は無意識のうちに失われていくことになりうると思います。
無意識のうちに可能性を閉ざさないためにも、本人が多くの選択肢を現実的に検討してから進路を選べるようにすることが望ましいと考えています。私たちは、数ある選択肢の中から、「進学」という選択肢を身近に感じてもらおうという想いから活動しています。
ータルトタタンという名前の由来は何ですか?
亀井:完全に語感で決めました(笑)。
ライター:私はTwitterでこの団体を見つけたのですが、最初「お菓子作りの団体なのかな?」と思ったら全然違ってて、どうしてこの名前にしたのか、気になっていたんです。
綾野:その印象はあながち外れてなくて、僕も友人に「入りたいんだけど、お菓子は食べられるの?」って聞かれて「そういうとこじゃねんだわ」って言ったことがあります(笑)
亀井:最初は真面目な名前を付けようと思っていたのですが、名前をつけるのがあまりにも難しくて……。私は食べる事が好きなので、食べ物の名前を付けたいって勝手にずっと言っていて「よし、ちくわだ!」みたいな話もあったり(笑)。で「『タルトタタン』って(語感とか)よくない?」って私が言って「よし今日からタルトタタンだ!」ってなりました。
一応、後付けの意味もあります。
タルトタタンは林檎のタルトなのですが、普通のタルトとは作り方が違っているんです。(由来については諸説ありますが)最初に生地を入れ忘れちゃったから、後から生地を入れ足してひっくり返して完成させるみたいな。これを踏まえて、どのような環境で生まれ育っても、最終的に自分のなりたい形(=「タルト」)というひとつの形に出来たらいいなという意味を込めてタルトタタンという名前にしました。……だいぶ後付け感ありますよね(笑)
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【文中で語られているタルトタタンはこんなお菓子です。上の画像。:作り方のレシピはこちらから。】
具体的な活動・問題について
ー普段、活動はどのように行っていますか?
亀井:2つの企画チームがあって、1つが貝森さんのやっている地方実践チーム、もう1つは綾野さんがやっている阿蘇塾チームです。地方実践チームは地方の高校生を、阿蘇塾チームは特定の地域の中学生を対象に活動しています。それぞれ違うのは、地方実践チームはデータをとること、生徒の困りを聞くことを重視しているのに対し、阿蘇塾チームでは、学習支援をはじめ子どもと実際に関わる活動をしていることです。
貝森:地方実践チームは、教育格差が存在することはデータ上分かっているけれど、具体的に目の前の高校生たちがどのような悩みを考えているのかが分からないという点に着目しました。そこで、高校生たちが実際にどのようなことに困っているのか、その現状を知ることが必要だろうという話になりました。現在は、秋田県の母校に協力を頂き、高校生たちに周囲の環境や情報、家族関係などの様々な話を聞きながら、私たちに何ができるのかを考えています。学校とのやりとりは、責任が重いところもありますが、目の前に高校生がいて活動ができるというのはとても魅力的だと思います。
綾野:阿蘇塾チームでは、阿蘇塾という熊本にある学習塾で活動しています。阿蘇塾の代表の方と連絡を取りつつ、週何回かアルバイトとして学習サポーターの活動をしています。また、阿蘇塾のある地域には、大学進学者の数に行っている人が多くはないと阿蘇塾の方からお聞きしたので、大学生をもっと身近に感じてもらうことも目指しています。他には、私たちが進路選択について、何を考えて、どんな「困り感」を抱えてきたのかといった経験を伝えたり、大学で学んだことを講義形式で伝えたりするイベントを開催しました。
綾野:知らないことは選択肢として選べないと思います。手札の枚数はあればあるだけ良いと思うので、その手札の1つとして、大学進学という選択肢の存在を伝えようと活動しています。また、週に1度のミーティングでは、自分たちがこれからできること、したいことを話し合っています。
【タルトタタンさん活動写真】
ー実際の活動をしてみて想像と違ったことはありましたか?
綾野:僕はそもそも東大のような入試難易度の高い大学の受験が、自分の地域からでも全くのハンデなしにできるものかと考えた時、疑問を感じたのがきっかけで、この団体に加わりました。団体に入ってみると、いわゆる難関大受験だけではなくて、大学に進学する/しないという部分にも差ががあることにも意識が向きました。
これは、ちょうど僕の受けた年の現代文の問題でも触れられていたテーマだったのですが、実感が伴ってきたのは活動開始後でした。さまざまな階層において、さまざまな格差があるんだということに気づき、実際にそういう経験をしている/していた人の生の声を聞くことでそれが現実のものとして伝わってきました。
亀井:綾野さんと同じ考えを持っているメンバーは多いと思います。
私は、活動を始める前は理論的なことしか知らなくて、経験談を聞いたことがあるのは貝森さんとか友人数名くらいでした。でも、実際に活動してみると、同じ地域に生まれても不利さを感じていない人もいて。その一方で、都市部に生まれていても不利さを感じている人がいることを知りました。だから私たちは、今のところは地方を対象として活動をしているけれど、究極的には「どの地域に生まれたとしても自分の好きなように生きられるように」という目標を掲げています。活動を始めてからは「地方」だけに活動すれば良いのではなく、「困りを抱えた子がいるところ」に向き合うことが必要だと思うようになりました。
それをふまえて、現在の活動では、「困り感」を受け止めて、それにフィードバックすることが大事なのかなと思います。理論に当てはめることが大切なのではなく、その人を個人として見て、対応していくことが一番大切なのかなと感じますね。問題として「教育格差」を考えることは重要だけれど、それを一人ひとりをラベリングするものとしては使ってはいけないなという意識があります。
これは教育格差に限った話ではないのかもしれませんが。
貝森:私の話でいうと、自分も地方出身で、初めは地方にいる子たちだけが課題を抱えているのではないかと思いながら活動をしていました。しかし、活動をやっている中で、都会から今の大学に入った人が実は大変だったんだという話を聞きました。どうして都会なのに大変だったのかその理由を聞くと、学校によって進学に対する考え方の違いみたいなものがあって、いわゆる超進学校などは進学を強制することもあるとのことでした。その影響もあり生徒自身が自分の将来についてよく考えられないまま進学したり、無理な選択をさせられてしまったりするケースがあることに気づきました。これは代表が言っていたことにも通じていて、どこにいるかが問題ではない1つの例だと思います。
そのため、人それぞれ何が課題で、どこに問題があるのかを見ていくことが必要だと考えさせられました。ただ個人の状況に合わせた活動というのは学校では難しいので、このような公教育で届かないところを私たちの活動の中で支援していきたいと思います。
ー今している活動で苦労している点はなんですか?
貝森:メンバーが大学生ということもあって、参加が不定期になってしまうことがあることや、、責任的な問題で活動が制限されてしまうことに苦労しています。
綾野:活動の中身の部分ではないのですが、オンラインでのやりとりは時間と場所にある程度自由がきくけれど、対面のように、間を取ったり、相手の様子を見たりっていうのが難しくて、ミーティングの進行などに苦労を感じています。進行がぐだってしまったことは多々あります。
そもそも、直接会ったことのあるメンバーってあまりいなくて。僕も亀井さん、貝森さんとは一回も直接はあったことはないですね。まだまだ探り探りの部分がとても多いので、そういうオンラインによるよくわからない距離感を詰めていこうとはしています。
亀井:今、ここまで来るのに困りを抱えていた感覚はありますね。
以前、団体の人数が増える前の1月のタイミングで、あるイベントを行いました。そのイベントはオンラインで行ったんですけど、本当に届けたい子たちには届けられなかったんです。今は具体的な活動の対象があるけれど、以前は具体的な場がなかったので、苦労していました。どうやったら届けられるのかも分からなかったし。イベントをやりますと言ったとしても、本当に届けたい子たちというのは、自分が困っていることを自覚していない子たちなんですよね。だから、イベントには来てくれなくて。そもそも「不利なんだよ」っていうことを伝えるのも違うと思いましたし…。まだ模索しているところです。
続きはこちらから
今回のインタビューはここまでです。後半はこちらのリンクからご覧ください。
後半ではまた違ったお話、加えてこれからのお話などもお聞きしていますので、ぜひご覧になってみてください。
また、今回のインタビューを受けてくださったタルトタタンさんについてもっと具体的に知りたいという方は以下のリンクからSNSとサイトをご覧になってみてください。
SNS:学生団体 タルトタタン 自分らしく生きるための環境づくり
団体連絡先:tarte.tatin.edu@gmail.com(渉外担当)
Twitter:https://twitter.com/tarte_tatin_edu
Instagram:https://www.instagram.com/tarte_tatin_edu/
note:https://note.com/tarte_tatin_edu
タルトタタンさんが活動されている阿蘇塾さんの詳細はこちらから。
https://note.com/asojuku/n/nd076967ffa50
ガクセイ基地では他にもたくさんの学生団体のインタビュー記事が公開されています。関連記事の項目からぜひそちらもチェックしてみてください。
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