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石光商事株式会社/コーヒー産業×SDGsの取り組み

 

近年、日本でSDGsに取り組む会社が増えています。一体どんなことをしていて、どんなことを考えているのでしょうか。調べるべく、今回は石光商事株式会社のコーヒー・飲料部門の飲料原料チームの橋本智紀さん、管理部門の総務・人事チームの浅見正明さん、コーヒー・飲料部門の外食・量販チームの齊藤明日樹さんにお話をお伺いしました!

 

石光商事株式会社
食料品の原料調達から販売までを手がける食品の専門業者で、冷凍食品、お惣菜、飲料など幅広く事業を展開されています。特にコーヒー・飲料事業は設立した1906年当初からビジネスの核として展開されています。詳しくはウェブサイトをご覧ください。(https://www.ishimitsu.co.jp)

 

橋本・智紀(ハシモト・トモノリ)
2000年4月入社、東京支店コーヒー課に配属(以前は課がありましたが現在はチームとなっています)入社後内勤業務を3年半ほど従事。2003年7月退社後、渡英、2005年10月再入社。内勤業務を数年行い2007年にアフリカエリアの仕入れ調達担当となり10年程毎年アフリカに年に数回渡航し買付を行う。同時に国内外の営業担当にも従事し販売業務も行う。中国・上海、タイ・バンコクに海外現地法人設立後、日本国内から現地のコーヒー販売もサポート。現在はコーヒー飲料部門、コーヒー飲料原料カテゴリーのカテゴリーマネージャー補佐兼コーヒー飲料原料チームのチームリーダーを担いながら、営業担当およびアジアエリアの調達を行っている。

 

コーヒー・飲料部門 コーヒー飲料原料チームの活動内容

――橋本さんの業務内容をお聞かせください。

(橋本さん)コーヒーはコーヒー生豆を専門の機械で焙煎し、焼いた豆から商品にしたり様々な形態で売られます。弊社は焙煎する前の生豆と、焙煎した後の加工豆の2種類を取り扱っています。私たちコーヒー飲料原料チームは焙煎する前の生豆を買い付け、その生豆を国内のお客様に販売するという業務を行なっています。

(写真の右が焙煎豆、左が生豆)

――生豆の買い付けというのは、具体的にどのようなことをされているのですか。

(橋本さん)コーヒーの生豆というのは、赤道を挟む南北25度のコーヒーベルトと呼ばれる地域で栽培されるのですが、弊社では主にアジア、アフリカ、中南米、ブラジルの4つの大陸から輸入しています。ブラジルは世界のコーヒー生産の1/3を占める重要な生産国なので一つの大陸と認識しています。農園にいる生産者や輸出業者と長い期間をかけてパートナーシップを築き、付加価値の高い原料を輸入できるようにするため各エリアに専任の担当者を置いています。私たちは生豆を高品質で輸入できるように品質のチェックを現地の担当者とメールで行います。コーヒーの木に花が咲いたか、咲いた時期は去年と比べて早いか遅いか、風味はどうか、どれだけ収穫できたかなど細かいところまでチェックを行い、その結果に基づいて輸入する量や値段を決めていきます。

国内から生豆を調達する場合もありますが、直接輸入した生豆を主に事業で取り扱っています。お客様の求める価値は、産地と一緒になって創っていきたいからです。現地から輸入した生豆は栽培過程をこちらも把握できていて透明性があり、より付加価値が付いています。そのため私たちコーヒー飲料原料チームは現地の関係者と常にサステナブルな関係を保ち、生豆の品質と価格の最適化に努めています。

 

――なるほど…。商品は他社のコーヒー会社に売りに行くでしょうか。

(橋本さん)はい。当社はODMといって、ブランドを持つ他社の原料を調達する事業を中心に行なっている企業ですので、独自に工場やブランドを持つ企業に豆を売りに行きます。そのため商品名には当社の名前が明記されていることは少ないです。商品販売のサポートをする影武者みたいなものですね。

ODMOEMとは
ODM: Original Design Manufacturingの略で、製品の開発、設計、製造までを行い、委託者が製品を販売するという生産方式。
OEM: Original Equipment Manufacturingの略で、ODM企業によって作られた製品を自分のブランドで製造する生産メーカーのこと。

 

(橋本さん)当社の手がけるコーヒー飲料製品は主に家庭用、業務用、工業用として日本中、様々な人に提供されます。

街の自家焙煎店様から量販店様、全国展開されているチェーン店様など様々です。他にもOCS(オフィスで飲む用のコーヒー)や、ファミレスや飛行機で一般のお客様が飲まれるコーヒーの原料を卸しています。このように様々な形で提供させていただいており、そういった意味では一般の方であれ、コーヒーを飲む人は皆様私たちのお客様です。

 

――業務を行うにあたって心がけていることはありますか。

(橋本さん)たくさんありますが、売り買い両方に携わっている身として一つあるのが「ずっと続けること」です。

ビジネスで一番大事なことはいかにステークホルダーとの取引をコンスタントに続けることができるかだと私は思います。

商売はどんな形態であれ何かを提供していますよね。何かいいアイデアが生まれ、短期間で爆発的な売り上げを招いたとしても、続かなかったら意味がありません。リピートするお客様や市場があるから企業は成り立っています。そのため、常に広く長期的な視野を持ち、商売をリピートするにはどうしたらいいかを念頭に置きながら仕事をするようにしています。そのリピートで大事なのが、私たちと利害に関係する方達両方が同じ思いであることです。ビジネスは利害関係者の誰かだけが得をし、誰かが損をする状態では長続きしないと思っています。お客様はもちろん大事ですが、仕入先も他の関係者の方々も同じくらい大事なので全員が平等な立場にいることを常に意識しています。

SDGsへの取り組みについて

石光商事株式会社では、様々な社会貢献活動に取り組まれています。

・コーヒーカスのリサイクル・バイオコークス

産業廃棄物として廃棄されてしまうコーヒーの抽出カスを固形の再生可能エネルギーであるバイオコークスに転換する技術を近畿大学バイオコークス研究所と共同開発。新たにコーヒー豆を焙煎する際に使用する原料としてリサイクルができるだけでなく、工場のCO2排出削減にもなります。

・麻袋のリサイクル

コーヒーの運搬の際に使用される麻袋を紙原料へとリサイクルし、製品の化粧箱に一部使用しています。

・寄付

コーヒーの購入額一部を、「NPO法人 ラオスのこども」に寄付する取組みを行っています。「NPO法人 ラオスのこども」は絵本を制作し、ラオスの子供たちに配布するNPO法人。

-新型コロナウイルスの影響でマスク不足となった国(タイ、スリランカ、インド、ケニアなど)にマスクの寄付。

-医療従事者の方にコーヒー豆の寄付。

-養護学校、障害者施設、子供食堂の支援など

-World Research Coffee の支援メンバーとして機関に出資

World Research Coffee とは
気候変動、低収量、病害と害虫、品質向上を阻む経済的な障壁というコーヒーが直面するリスクに科学的なアプローチで解決を試み、コーヒー豆の生産者の生活向上を目標とするコーヒー研究機関。米国TEXASA&M大学のBorlaug研究所を中心に、消費国と生産国の数多くの研究機関やコーヒー業界関係者の出資の元成り立つ。

 

・フードバンクに登録しており、更に届ける施設(薬物更生施設、子供食堂、母子家庭、孤児院など)への配達も担うことで目に見えるCSRを実現

・企業の女性社員の雇用率を拡大し、女性の社会的地位の向上に貢献

 

――なぜ、このような社会貢献に取り組まれているのでしょうか。

(橋本さん)コーヒーを作るときは必ずカスが出ますよね。それも製造するとなるとかなりの量の廃棄物になります。これをどうにかできないか、とお客様にお声をかけていただいたのをきっかけに、バイオマスの取り組みをはじめました。その何年後かにSDGsが国連サミットによって採択され、その考え方を今までの弊社の方向性に徐々に取り入れているという感じです。今の社長が「日本が向いている方向性と同じ進み方をする」と考えている人なんです。SDGsが日本でも注目され始めたので、私たちも同じ方向を向いて活動しようということに至りました。

――社会貢献は直接利益に繋がらないという課題があると思うのですが、社会貢献に対してどのような姿勢で取り組もうとお考えですか。

(橋本さん)商売をやっている以上、売り上げ・利益を出すのは当然ですが、企業として成り立っていく中で社会貢献にも同時に取り組んでいきたいというのが弊社の考えです。行なっている社会貢献の取り組みの中には、利益に繋がるもの(CSV)とそうでないもの(CSR)とあります。利益になるかは別として今はなんでもいいからやってみるというのが現在の弊社の考えです。コーヒー業界にいる企業の一つとして、社会に貢献できることは何かというのを社員一丸となって常に考えています。

(CSV・CSRについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください→

CSRだけじゃない!新たな企業戦略、CSVとは?(1)https://gakusei-kichi.com/?p=44071

CSRだけじゃない!新たな企業戦略、CSVとは?(2)https://gakusei-kichi.com/?p=44085)

社会貢献と売上・利益を結びつけることは目指すべきこととはいえ、本当に難しいです。バイオマス燃料を使用したコーヒーも、品質は普段展開するコーヒーと変わりませんが手間がかかっているのでやはりコスト・パフォーマンスが悪くなったりします。World Research Coffee の支援や生産国にある施設への寄付なども、直接利益に結びついているとは限りません。しかし社会問題や環境問題に取り組むことに前向きであるという当社の方向性をお客様や生産者の方に明確に示すことができますし、自分たちの方向性を守りながら当社を存続させていくためには必要な投資だと思っています。

――現在の取り組みの今後の展開についてお聞かせください。

(橋本さん)私たちはOEMとして、他社様のブランドを借りて仕事をすることを得意としています。そのためバイオマス燃料を使用したコーヒーといった環境に配慮した商品に関しては弊社の機能や姿勢をお客様に示すサンプル商品程度のものとして扱っていくつもりです。SDGsや日本が注目していくことに目を向けるという方向性は確かにあります。しかし弊社の受け継がれている経営理念は「ともに考え、ともに働き、ともに栄えよう」です。社会貢献を目指した商品の製造拡大を測れば、取引先の企業の市場を奪ってしまい、当社の理念に反してしまいます。あくまでも「共に協業しましょう」という意思表示をすることを忘れずに、営業と社会貢献を同時にバランスよく行っていきたいです。

 

最後に

――この記事を読む学生に一言お願いします。

(橋本さん)最初からやりたいことが決まっている学生はほとんどいないと思います。就職したい理由がわからないまま職に就いた人と、やりたいことが決まって就職した人と将来どちらが伸びるかと言われたら、それはわかりません。自分の興味のあることと仕事には必ずギャップがあります。地味な作業もたくさんあります。やりたいことが決まっている人はそのギャップに耐えられない可能性が決まっていない人よりもあるかもしれません。目の前のことを一生懸命取り組める人は、自分は何が好きで何に向いているのかがだんだん分かってくる時がきます。なので何が好きかとか分からないで全然いいと思います。

齊藤さん) やりがいを感じる仕事が何か、既に自分の中の軸を以ている方もいるかもしれませんが、そうでない方もたくさんおられるかと思います。世の中の役に立つために何ができるのか、自分自身は何がやりたいのか悩んでいる方、漠然とでも誰かの役に立ちたい想いがある方、今はそれでいいと思います。働きながら自分自身の軸となる大切な想いが何かを探してみるのも楽しみの一つです。SDGsは壮大なテーマですが、まずはどんなに小さなことでも誰かの役に立つ、そこから取り組んでみるのもいいかもしれません。きっと同じ想いを持った人たちが集まってきて、大きな輪ができて、その輪が大きなエネルギーを生み出して、より多くの方々の人生を豊かにする事で世界は変わるのだと思います。まずは社会にでて色んな経験を積んで新しいアイデアを生み出していって欲しいなと思います!ファイト!

(浅見さん)自分の思いというのはすごく大切である一方で、まずはこだわりを持って視野を狭めるのではなく、何事にも挑戦していろんな知識を吸収していくことがより大切だと思います。自分から動き出してお話を聞いたり人間関係を構築し、その時やるべきことをやっていれば、自分が本当にやりたい仕事や思いが自然と決まってくると思います。

人事担当として新入社員の方とお話をする機会がよくあるのですが、本人がやりがいを感じるタイミングがご自身の経験の中で一貫していて、それが入る会社でも感じていけるかどうかをいちばんの就職活動の軸にしてほしいということをよくお伝えしています。 斎藤が言っていたように、何を大切にしながら仕事するかを自分自身が理解していると、どの就職先が合っているか合っていないかも分かり、企業のミスマッチも防ぐことができます。弊社としましては、個人の能力ではなく仕事へ感じるやりがいを弊社でも感じていただけるかどうかを見ながら社員を採用しています。そのため意味があるかないかは関係なく、とりあえず何年間かはしっかりと仕事に集中し吸収することをどの企業に就職するにしても大事にしてほしいと思います。

 

橋本さん、齊藤さん、浅見さん、貴重なお話をありがとうございました!

食品業界、SDGs、商社に興味がある方はぜひ石光商事株式会社をチェックしてみてくださいね。

取材にご協力いただいた石光商事株式会社様の公式HP→ 世界の食の幸せに貢献します。石光商事株式会社公式サイト (ishimitsu.co.jp)

 

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