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ガラクタから生まれる至上の音楽/日本廃品打楽器協会 山口とも

スーツケースのバスドラム、一斗缶のスネアドラムに、車のホイールから作られたシンバル。

普通の楽器が一つも使われていないこのドラムセット。作ったのは日本廃品打楽器協会の山口ともさん。実際に演奏するとこんな音。

 

 

 

えっそんな音がするの!?そこも叩けるの!?驚きに満ち溢れた楽器と音楽を生み出し続ける山口ともさんにインタビューしてきました!

 

 

山口とも
祖父、山口保治は「かわいい魚屋さん」「ないしょないしょ」など数々の童謡を創った作曲家。父、山口浩一〔新日本フィルハーモニー/ティンパニー名誉首席奏者〕の長男として東京に生まれる。
つのだ☆ひろのアシスタントとして音楽の世界に入る。
1980年「つのだ☆ひろとJAP’S GAP’S」でデビュー。解散後、フリーのパーカッショニストとして中山美穂・今井美樹・平井堅・石井竜也・サーカス、また2012年には狂言師の大倉基誠、2013年には石川さゆりなど数々のアーティストのツアーやレコーディングに参加。
ガラクタに命を吹き込む打楽器奏者。
(ともオフィス/日本廃品打楽器協会HPより)

 

 

―音楽一家に生まれ、自身もパーカショニストとして様々なアーティストのサポートをしてきたともさんが、初めて廃品で作った楽器が「スペーススプリング」。バネと缶で出来たとは思えない神秘的な音が…!

 

(音の加工は一切していません!)

 

「この楽器を作るきっかけになったのは1995年に参加した音楽劇『銀河鉄道の夜』です。その時参加されていた歌手の方がとてもユニークな声をお持ちだったり、音楽監督がその当時はまだめずかしかったエレキバイオリンを使っていたりと、めずらしいことが盛りだくさんの環境でした。そんな中で別の星の大地を歩く時の音を出すときに、既成の楽器を使うとどんな音がするのか分かってしまうことがつまらなく感じていたのです。そこで思いついたのが、新しい楽器を自分で作ることでした。普通の人が絶対に使わなさそうな『ガラクタ』を使って楽器を作ることで、想像のできない音を作ろうと思いました。廃品打楽器で作る音楽は、予想していたのと全く違う!こんな音がするのか!と驚きの連続なので、いつも想像を裏切ってくるのが面白い所です。」

 

―ともさんの演奏も、次にどんな音がするのか・何をたたくのか全く分からない所に面白さがありますよね。 

「演奏しているときのテンションとか緊張とかって聞いている人にも伝わると思うんですよ。演奏しているのも聴いているのも人間だから。その気持ちのやり取りとか、共有している雰囲気を大切にして演奏することを心がけています。お客さん の反応を見ながら考えていた曲の構成をガラッと変えることは、僕の演奏では当たり前。同じ演奏をするっていうことはないですね(笑)」

 

―「生の音楽」を大切になさっているので、CDをあまり出していないのですね。

「その場の空気、お客さん、そして僕の演奏と全部の要素があって初めて僕の音楽は完成すると思います。だからCDで僕の演奏を聞いても、なんか違うって感じます。それに、さっきの『スペーススプリング』なんて、演奏しているところを実際に見なかったら、コンピューターでつくった音だと思うでしょ?楽器が見えなくなることで、コンピューターで作った音だとは思われたくないです。」

(ともさんのスタジオには、楽器へと生まれ変わるガラクタが所狭しと置いてある)

 

―ともさんは音楽の理論などは勉強されていましたか? 

「いいえ!一度も勉強したことはありません!でもだからこそ、既成の概念や考え方、世の中の『正解』と呼ばれているものに縛られない、自由な音楽ができていると思っています。勉強することで『枠』が生まれ、視野が狭くなるなら勉強しない方がいいんじゃないでしょうか。正解を知ったから、間違えちゃいけない!というプレッシャーは音楽には不必要だと思います。誰もが楽しめるのが音楽ですから。」

 

―そんなともさんの作る廃品打楽器には「正解」がないのですね。

「どんなものを作っても音がなればそれは楽器です。正解がないというよりも、間違いがないので、どんな風にたたいても全部正解です。難しいことを考えずに、誰でも純粋に音を楽しむことができるのが廃品打楽器のいい所だと思っています。日本では、音楽をやっていない人が『自分は音楽のことがよく分からないから、知らないから』と言って演奏会などで音楽を聴くことに壁を感じているような気がするんです。でも、音を楽しんでいれば、どんなものでも『音楽』。そう考えればどこにでもあるし、楽器を持っていなくても音楽できます。廃品打楽器を演奏することで、音楽に対する壁のようなものが壊せたらいいなぁとおもって活動しています。」

発砲スチロールの上にパイプや竹を並べた楽器も演奏していただきました!

―次々と新しい楽器を生み出すともさんだが、アイデアが出ないスランプなど悩みや苦労はあるのでしょうか。

「悩むことはないですね。壁にぶつかることもないっていうか…壁をそもそも認識していません。何かうまくいかないことがあったら、すぐにアプローチの仕方を変えて別の方法を試します。僕は何度も試すことが苦しいと思ったことがないんです。だって、実際に叩いてみないとどんな音がするか分からないじゃないですか。頭だけで色々考えたり悩んだりするのは、時間の無駄だと思います。短い人生の中で、悩んでいる時間ほどもったいないものはない。うまくいくまで色々試していたら、大抵のことは解決しますね。もはや壁にもぶつかりません(笑)」

 

―最後に大学生に向けてメッセージをお願いします。

「ぜひ、小さい頃の『趣味』を復活させてみてください。生活の中に、子供のころ自分の中に取り込んだ感覚を生かせる余裕を持てたらいいですね。子供のころの余裕があったら、壁にぶつかったときにもうまく乗り切れると思います。それに、一度取り組んだことのあるものだととっつきやすいですしね。後は、すさんだ日本をどうにかしよう…みたいなとてつもなく大きい問題はあんまり深く考えたらだめですよ。どうにもならない部分もありますし、考えてもどうしようもないことに対して悩むのは時間がもったいない!たまには止まることも必要だけど、それも長すぎたらだめです。ごまかしながらでも、ちょっとずつでも動き続けることが大切です。私たちには時間がないんです。いつ死んじゃうか分からないんだから、前に進み続けて!」

―ありがとうございました!

 

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