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社員はたったの3人。なのに年商は5億円⁉ジャンプライズがグッドデザイン賞を受賞した裏側

 

先日、普段は一般公開していないグッドデザイン賞の審査会ですが、主催の日本デザイン振興会さまのご協力で、審査会に特別に参加させていただきました!
<審査会のレポートはこちらから>https://gakusei-kichi.com/?p=40148

その中で私の興味を一番引いたもの。
それは、株式会社ジャンプライズ(JUMPRIZE)が出品した『飛びキング』

うーむ、なんともキャッチーな商品名。そして審査委員の方の説明によれば、なんとジャンプライズの社長はプロの釣り師で、しかも社員はたったの3人⁉
これは、ライターの本能がうずきますねぇ~。
ということで、ジャンプライズの社長の井上友樹さんにインタビューをしてきました。
飛びキングが生まれるまでのエピソードや、プロの釣り師から一転、会社を立ち上げるに至った経緯まで、目からうろこの話ばかりです!

プロの釣り師から一転、会社立ち上げ

―よろしくお願いします!会社のある千葉県の房総半島までやってきましたが、海がとても近いですね。
製品の開発・研究をおこなうために、実際に海に出ているんです。海に出て研究する月と、会社で製品開発をする月とでばらつきはありますが、多い月には20日くらい海に出ています。なので、年間トータルで120~150日は海に出ていますね。

―1年の約半分は海に出られるんですね!井上さんは元プロの釣り師だとお伺いしました。
大学3年生の20歳のときに、海のルアー釣りで、史上最年少でプロになりました。
それがきっかけとなり、21歳からはプロの釣り師として、メディアに出演したり、スポンサーとメーカー契約をしたりしていました。

井上さんが実際に釣ったことのある魚のレプリカ

―かなり順風満帆な人生のように感じられますが、自分で会社を立ち上げたきっかけは何だったのでしょうか?
プロ6年目の27歳のときに、スポンサーとメーカー契約をしていると、本当に自分が作りたいものを作れないという限界を感じたんです。
釣りをしていると、「こんな製品があったらいいのに」と思うことがよくあります。しかしそれはメーカー側からすると、「一部の人のみをターゲットにしており、一般的には受け入れられないのでは?」という懸念から、なかなか製品化にはつながりません。
そこで27歳のときに、スポンサーとの契約をすべて打ち切り、飛びぬけた性能の製品作るために自分で会社を立ち上げました。

―会社を立ち上げるにあたって、不安などはありませんでしたか?
全くありませんでした。
大手メーカーの会社経営者が見る視点と、本物の釣り師が見る視点は全く異なります。
本物の釣り師である自分が欲しいと思うものは、きっと他の人も欲しいと思っているに違いないという確信がありました。自分がチャレンジすることで狭い市場をもっと広げられるのではないかと思ったんです。
スポンサー契約をすべて切ってでも、起業して成功することに自信がありました。

大企業で働くこと。中小企業で働くこと。

―それではジャンプライズとはどのような会社でしょうか?
ジャンプライズは、とにかく釣りを追求している会社です。
釣りとは、「遊び」であって、生活の必需品ではありません。だからこそ、お客様はネームバリューではなくて、本当にいいものに惹かれます。
ジャンプライズのルアーは、無難で平均的なものではなく、ある性能がとびぬけたものばかりです。

―ジャンプライズの立ち上げから7年。まだまだ新しい会社だと思いますが、大手メーカーに対するプレッシャーなどはありますか?
プレッシャーは感じていません。中小企業だからこそできることはとても多いです。
例えば、大手メーカーは万人受けするために、あらゆるジャンルを幅広く無難に手掛けています。そのため飛びぬけたものを作ることは難しいです。
一方でジャンプライズでは、どのメーカーよりもよく飛ぶルアーを作ろうとしています。飛びぬけたものを極めることが私たちの役目です。
そういった製品を追求することで、2016年と17年には、大手メーカーをさしおいて海のルアーの最優秀メーカーに2年連続で選ばれています。

―それではそもそもジャンプライズと大手メーカーとでは、客層も異なるのでしょうか?
その通りです。
釣りは初心者から上級者まで幅が広いですよね。
初心者は会社のネームバリューなどで釣り道具を選びがちですが、上手くなってくると、道具の性能の差が分かりだしてきます。ジャンプライズのルアーは、そんな性能が分かるようになった多くの中級者、上級者に支持されています。
道具の性能が分かる上級者が、私たちの会社の製品を使ったときに、「すごい!」と思ってもらえるような製品を作ることが目標です。見限られてしまったら終わりですね。

―他にも大きな会社と異なる点はありますか?
一つは期限がないことです。会社が大きくなると、利益を上げるために作りたくないものを作ったり、納得していなくても期限だからと世の中に出す必要が出てきてしまいます。
一方、ジャンプライズは一つの製品を完成させるための期限は設けていません。期限を設けることで製品に限界が生まれてしまうからです。そのため一つの製品を納得して発売するまでに2~3年かかることもあります。飛びキングにも丸々2年かかっています。

もう一つの大きな会社との違いは、社員一人一人の能力や裁量権です。
学生のみなさんは、何を見て就職する会社を選んでいますか?
もちろんネームバリューや会社の年商は一つの指標になるでしょう。でももっと大事なのは、利益率や、その年商が何人の社員によって生み出されているか、です。
ジャンプライズはたった3人の社員で年商5億を生み出しています。

 

製品への徹底したこだわり

―ジャンプライズが一つ一つの製品にこだわっていることがとてもよく分かりました。そのこだわりについて教えていただけますか?
魚も人間と同じように、その日の天気・水温・水の濁り具合などで食性が変わるって知っていましたか?
水の温度が低いと、魚は動きたくないので激しく動くルアーには食いつかない。
一方で真夏の暑い日には、元気があるので、激しく動くルアーや早く動くルアーに食いつく。
そこでジャンプライズでは、「寒くて水が濁っている日に使うルアー」、「外洋で使うルアー」など、かなり細かいジャンルに分けて設計をしています。

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実際にルアーを泳がせているところを見せてもらいました!
ルアーによって、ゆっくり振動したり、素早く動いたり、全く動きが異なります。どれも本物の魚のように動いていました。

―「飛びキング」という商品名はとてもキャッチーですよね。
ネーミングで英語が使われていたり、しっかりしていたりすると、「かっこいいなぁ」と思いますよね。でもそれはありきたりだと思います。
そこでジャンプライズの製品はネーミングと性能を照らし合わせるようにしているんです。
例えば、「飛びキング」は、「飛ぶ」+「キング」です。この商品名から日本で一番飛距離があるルアーということが連想できます。
小学生や中学生にも何となく性能のイメージができる名前、性能をより強く訴えかけるネーミングを心がけています。

―開発にあたり、苦労はありましたか?
釣りのプロであるからこそのこだわりがあり、コンピューター設計から、マシンの制作、ルアーの塗装まで全て一人で行っています。
これまでスポーツ一筋だったので、コンピューター設計や流体力学など自分一人で1から勉強をするのはとにかく大変でした。コンピューター設計は独学で3年もかかりました。
でも勉強することによって日本一のルアーが作れるようになると思えば、辛いとは感じませんでした。
「今まで世の中になかったものをやり遂げてやろう」という挑戦心の方が大きかったです。

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井上さんご自身が制作されたマシン

好きなことを仕事にする

―井上さんはずっと釣りをされてきたんですよね。好きなことを仕事にしたことで、釣りを嫌いになったことはありませんか?
「好きなことを仕事にすると嫌いになる」というのは中途半端な人が言うセリフだと私は思っています。
私がこの会社を立ち上げて7年目を迎えて思うことは、「本当に好きなものは絶対に嫌いにならない、むしろどんどん好きになる」ということです。
私自身、会社を立ち上げてから釣りがこれまでの3倍好きになりました。

―釣りを3倍好きになったのはどうしてでしょうか。
プロのときは、撮影の本番で魚を釣り、結果を残すことが重要でした。結果が残せず、周囲から評価を得られなくなったらプロの釣り師として終わりという状況で、釣りをするのは、自分のためでしかありませんでした。
会社を立ち上げてからはお客さんが自分の開発したルアーを使って釣って魚のレポートをくれたり、喜びの声を聴かせてくれたりするようになりました。
これまで自分がのし上がることしか考えていなかったのですが、そのような感謝の声を聴いて釣りのもっと深い部分の喜びを知った感じがしたんです。

―それではこれから社会に出ていく学生に向けてメッセージをください。
好きなものとは、人に負けたくないと思えるものです。
成績云々ではなく、心の底から「自分が一番になりたい」と思うものです。
何気なく就職をして辞めてしまう人は結構多いと思います。それは決して周りのせいではなく、自分がそれを本気でやりたいと思っていなかったことが原因です。
本当に好きだったら、仕事になって嫌いになるということはあり得ません。
まずは自分が心の底から好きだと思えるものを探してみてください。

そして努力することは恥ずかしいことではありません
今の子たちは、変な固定概念を持ってしまっているように思えます。
「カラオケは好き。でも一人で行くのは恥ずかしい」とすぐに仲間を見つけようとします。
本気で上手くなりたい、好きだと思うなら、自分の意志で行動してください。
そして自分の好きなことに打ちこんでください。

―ありがとうございました!

 

10月31日から始まるグッドデザイン賞の受賞展「GOOD DESIGN EXHIBITION」会場で、
ジャンプライズさんの受賞作「飛びキング」も出展されます。ぜひご注目を。
 

(ルアー画像提供: 公益財団法人 日本デザイン振興会)

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