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【国境を越えて映画を伝える】カンヌへ25年通う映画ジャーナリスト、立田敦子さんインタビュー

カンヌ、ベネチア、ベルリンに代表される、言語や文化をこえて人を繋ぐ映画の世界に憧れる人は少なくないのではないでしょうか。今回は、ジャーナリストとして興味のあるものを追いかけ、25年も世界の映画を観てこられた立田敦子さんにお話を伺いました。

【 PROFILE 】
立田敦子(Atsuko Tatsuta)
映画ジャーナリスト。大学在学中にライターとして活動を始め、現在は『エル・ジャポン』など多数の雑誌に寄稿する。映画以外にも、多岐にわたり取材・評論活動をしている。

興味を追いかけ、楽しくて続けているお仕事 

ー 映画・洋画との出会いについて教えてください。

私が子どもの頃というのは、今のようにDVDや配信がない時代ですから、テレビと映画館で映画を観ていました。でも、ライターになろうという発想はありませんでした。

ー 大学在学中に編集とライターの仕事を始められたということですが、どのような経緯で始められたのですか。

ジャーナリストというお仕事に興味を持っていました。当時はニュースショーが始まった時代で、ただニュースを読むアナウンサーではなく、原稿を読む以上に裁量があるキャスターという人が、テレビで初めて出てきました。それが新鮮で、自分の言葉で何かを伝えるようなことをしたいという思いがありました。友達の紹介で興味を持ったバイトを色々していて、学生を探しているからということで参加したのがきっかけです。

ー 具体的な仕事内容はどのようなものでしたか。

テープ起こしをしたり、書いてみてと言われた原稿を書いたり、学生だということを内緒に取材へ同行したりというのを、2ヶ月に一遍くらいの頻度でやっていました。学生と言わずに原稿を書いて、プロのライター料金をもらっていたので、そのまま就職もせずに続けました。

ライターとして色々なことをしていたら、とある雑誌が創刊して、本か映画紹介のどちらかをやらないかと声をかけていただきました。本は場所と時間に関わらず一人で読めるけれども、映画は試写へ行けるので、映画を選びました。そこから広がっていきました。

ー 複数の媒体で発信されることになった経緯を教えてください。

ライターは、一つのお仕事で評価をいただくと、他から声がかかってきます。仕事を受けていると、次第に増えていったという感じです。

日本で配給されない映画を開拓するのが楽しい 

ー 記事の企画から公開まで、執筆の過程を教えてください。

批評、インタビュー、企画の、3つのパターンがあります。

批評は、メディアの方から、題材と締め切り、文字数を指定した依頼が来るパターンです。日本の場合はネガティブな記事を載せない傾向にあるので、映画を観てみて気に入ったら書いて欲しいと依頼されるケースが多いと思います。メディア媒体の他にも、プレスという資料やパンフレットの依頼もあります。

インタビューには、映画会社とメディアからの2種類の依頼があります。映画会社ならばインタビュー記事の執筆の依頼が、メディア会社ならば監督や俳優の指名とスケジュールを、それぞれいただきます。

企画は、ライターが自ら企画して編集部にお話をするパターンです。今までは、デンマーク映画やインド映画、トッド・ヘインズ監督とガスヴァン・サントのポートランド紹介の特集を組んだことがあります。

ー 国際映画祭へは、どのように行かれますか。

今はプレスパス(取材許可証)を出していただいて行きますが、最初にベネチア映画際へ行ったときは旅行のついででした。

私が行き始めた時には、招待された少数の新聞記者が行くという感じで、私が寄稿していたような一般の女性誌で映画祭を取り上げるということはありませんでした。プライベートでパリに旅行したついでにベネチアに寄った際に、ホテルでお茶をしたスペイン人ジャーナリストの方に「ジャーナリストならばカンヌに行かないとダメだ」と言われ、次の年からカンヌに行くようになりました。でも、プレスパスが厳しくて、記事になるかもわからないので、最初はディストリビュータ(配給者)のパスで行きました。次第に、日本で配給されない作品を観られることにハマりました。

帰国後に勧められて記事を書いたところ、現在の媒体からプレスパスを出していただけるようになりました。

ー 映画ジャーナリストというお仕事で、特に楽しいと感じていらっしゃることは何ですか。

日本に入ってこない映画を自分の目で開拓することです。ジャーナリストの肩書きがないと映画祭のパスも取れないので、作品に触れられることはこの仕事にしかない特権だと思います。

他にも、新しい視点を広報することが楽しいです。私が学生の頃は、女性誌ならばラブコメを紹介するなどという偏見がありました。私はそういうのに違和感を覚えていて、意図的にホラー映画やインド映画の特集をして、偏見にとらわれない記事を書くこともモチベーションにしています。

ー 反対に、どのようなときに大変だと感じますか。

インターネット時代になってから、原稿を書くスピードが速くなったことです。映画祭のレポートは、すぐに書かなくてはなりません。

ー 映画ジャーナリストとして心がけていることを教えてください。

先入観なしに映画を観ることです。日本語で書かれた批評は基本的に読みません。資料やポスターになった段階で、映画会社のバイアスがかかってしまっているからです。映画祭でも、資料を読まずにワールドプレミアを観ます。

映画ジャーナリストを目指すならば本数を観る 

ー 海外の映画業界で製作者として、また映画ジャーナリストとして活躍することを目指す大学生へ、アドバイスがあれば教えてください。

映画業界で働くことを目指すならば、学校は海外の映画学校へ行くことをすすめます。言語も学びたいのならば、アメリカの映画学校が一番の早道です。それは、実践で学べて、プロとして働く講師のインターンをすることもできるからです。

映画ジャーナリストを目指すならば、とにかく本数を観ることと、批評を読むことです。新しい作品がたくさん出ていますが、過去のものでも歴史に残っている作品を観るべきです。私が若い頃は、一日3本くらい観ていました。

ー 映画ジャーナリストとして活躍するために、言語能力など、必要なスキルなどがありましたら、教えてください。

英語は基本です。私は基本的に日本語だけで、英語やフランス語のレベルは低いです。私の時代はそれでも許されていましたけれども、今は英語は必須能力です。

一問一答 

最後に、一問一答ということで、私の素朴な疑問に答えていただきました。

ー 好きな映画のジャンルを教えてください。

色々なジャンルを観ます。特別これが好きというのはありません。

ー 映画を鑑賞する際、映画館に行かれるのと、ご自宅で観られるのと、どちらがお好きですか。

もちろん映画館です。

映画は、テレビで観るように作られていません。本物の絵と写真で見る絵の違いで、テレビで観ているものは映画体験ではないです。

ー 映画鑑賞の際に、一番最適な食べ物は何でしょうか。

食べないです。アメリカの試写会ではポップコーンが出ることがあり、いただいたものは食べます。でも、基本邪魔なので、飲み物も最低限にしています。

ー 一番好きな映画は何ですか。

難しいのですが、決めている答えは『ゲームの規則』です。生きている監督の作品でいうと、ポール・トーマス・アンダーソンの『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』です。

ー ありがとうございました。

 

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