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【変化を起こす当事者たれ】学生団体GEILが開催する政策立案コンテスト2021を徹底取材《後編》

前編では「政策立案コンテスト」を毎年開催している学生団体GEILのメンバーに、団体の活動内容やコンテストへの想いを伺った。

《前編》はこちらから→ https://gakusei-kichi.com/?p=55697

本記事では「政策立案コンテスト2021」の参加者からのお話を紹介する。今年のコンテストテーマである「循環型社会」とどのように向き合い、政策立案に取り組んだのか。そしてコンテストで何を感じたのだろうか。

「政策立案コンテスト」参加者に取材

[お話を伺ったAチームの皆さん]

河野彩花さん(左上)、小山栞奈さん(右上)、青木裕太郎さん(左下)、本橋瑞紀さん(右下)

バックグラウンドは様々

年齢も出身も異なる学生が交流できる点はこのコンテストの大きな特徴である。Aチームのメンバーは学年が1年生から4年生までと幅広く、参加した理由も様々だ。

青木さん
青木さん
僕は今4年生で来年から中央官庁で働くことが決まっており、その前に一度政策立案を体験したいと思い参加を決めました。あとは循環型社会にもともと関心を持っていたので、他の人の考えを吸収し、学びたいという理由もありました。

本橋さん
本橋さん
僕はもともとGEILのメンバーで、去年はCCとしてコンテストに携わっていたのですが、今回は内部参加者としてコンテストに参加しました。

小山さん
小山さん
私はGEILが開催する別のイベントでこの「政策立案コンテスト」を知り、参加を決めました。

既に就職先が決定している青木さんやGEILのイベントでの経験を持つ本橋さんと小山さんに対して、河野さんは今年大学生になったばかりだという。

河野さん
河野さん
私はGEILのスタッフとして活動している同じ学校の友達に誘われ、夏休みで時間もあるし、イベントに興味を持ったので参加することにしました。

 

年齢差があると気後れする場面もあったのでは?

河野さん
河野さん
結構友達感覚で接していました。議論も円滑に進みました。何かに躊躇うこともなかったですね。

小山さん
小山さん
一番最初の顔合わせの時からあだ名で呼んでいましたし、敬語も使わずに言いたいことは言えてました。それにみんな妥協せずに議論していたので、意見がぶつかることもあり大変でしたが、今では良い議論だったと思っています。すごく楽しかったです。

政策立案過程

コンテストではいきなり政策を考案するのではなく、「現状分析」→「理想状態」→「政策案」の順で議論を進めていくという。まずは今起きている問題とその原因を考え、その後にそれをどう変えていくのかという部分に焦点を当てるのだ。ここからはテーマの「循環型社会」に対してAチームがどのように考えを深めて政策を考案したのかを紹介する。「循環型社会」とは廃棄物を減らし、資源の再利用等を通して環境負荷の低減を目指す社会を指す。(GEIL HPより)

議論の際にはCB(ケースブック)というGEILが参加者のために作成したオリジナルの知識資料集を参考にするのだが、これがまた凄い。環境問題や循環型社会などありとあらゆることについて、約400ページにわたりびっしりと書き込まれている。

青木さん
青木さん
Aチームは配布してもらったCBをもとに、まずなぜ環境問題に取り組むかという議論から始め、各アクター(政府、企業、消費者、NPO)とライフサイクル(生産、運輸、消費、廃棄、再利用)をそれぞれの段階ごとに分析しました。例えば消費者やNPOがどんな行動をしているのか、どんな問題が起きているのかといったことです。最終的に「いろいろな生物や世代、地域に不平等を生んでいる」ことを現状分析の結論としました。

本橋さん
本橋さん
そして、理想の社会像は「人々が技術への過度な依存を避け、人間の意識とそれを行動に変えるための社会システムによって環境負荷が抑制される社会」にまとまりました。
消費者も企業も環境に良いことに取り組んでいても、明確にすべきことを把握しておらず、ノウハウがないことが多いんです。例えば私たちが環境のためにマイボトルやエコバッグを使用しても、実はそれが環境にどう影響するのか、なんのために取り組んでいるのかを理解していないということが消費者の視点から分かるのではないでしょうか。そこで「新しい社会システムが各アクターの循環型社会達成に向けて行動を変えるためのインセンティブとして機能すること、そして彼らの環境への配慮に対する意識の変化によりその社会が維持・発展すること」を理想状態としました。

 

Aチームはこの理想状態を実現するために、政策を2段階に分けて立案。第一段階では循環型社会達成に向けて環境配慮型製品の推進を目的とした以下の3つの政策を考案した。

  1. 環境電子マネーEPOChの導入
  2. 規格外野菜の提供
  3. 環境配慮型容器包装使用製品ブランディング化

 

青木さん
青木さん
企業が環境配慮型製品を生産するには投資が必要ですよね。でもどれだけ売れるかの予測ができない状態では企業も踏み出しづらい。そこで①の環境配慮型製品のみを決済できる電子マネーEPOChを普及させることにより製品の一定数の需要を担保し、最終的に企業に環境配慮設計を促すという方策を考えました。

河野さん
河野さん
②はEPOChのチャージに応じて規格外野菜がもらえるというサービスです。より多くの人々がEPOChを利用するインセンティブとして考案しました。③の政策はブランディング化によって環境に配慮した製品の需要が高まることを目的としています。

 

第一段階で電子マネーやブランディング化により環境配慮型製品の市場拡大を目指し、第二段階ではその政策の実施を第一段階の15年後と仮定して循環型社会の維持・発展に向けた以下の2つの政策を考案した。

  1. 容器包装にかかわる環境負荷抑制法
  2. 教育現場における環境教育の強化

本橋さん
本橋さん
①では環境に配慮できていない容器包装を全面的に禁止しました。②では消費者の意識を内在化するために、教育現場における環境教育の強化を提案しています。若い世代に対して長期間に教育をすることで、自発的に環境配慮型製品を購入させるという目的があります。僕がヒアリングを行った際に、個人的なつながりがない限り学校が環境系のNPOとつながりを持つのは難しいと聞いたので、行政がしっかりと交流できる場所を設けるべきだと考えてプラットフォーム(画像)を用意しました。

それぞれの得意分野を生かして

本橋さん
本橋さん
ちなみにブランディング化のスライドではかんな(小山さん)が一から製品のデザインを考えて作ってくれたんです。

お洒落なデザインに目を惹かれるこの画像。第一段階の政策の一つである環境配慮型製品のブランディング化を説明したものだ。画像を作成した小山さんはもともとデザインに興味があったと話す。

小山さん
小山さん
同じ本でも表紙の見た目がいいだけで読みたくなるように、見た目は一番最初に入ってくる情報であり、より直感的なものですよね。この画像によって政策の内容を分かりやすくして聞き手に直感的にいいなと思ってほしかったんです。

政策に関する知識だけでなく、こういった技術的な面でもチームに貢献できるのはコンテストの魅力の一つだと感じた。

 

最も苦労したこと

Aチームのメンバーが口を揃えて大変だったと語るのは、理想の社会像を決める工程だ。環境問題の解決を制度設計上に限定するのか、或いは消費者の意識の部分まで踏み込んで文化を作ったり習慣化させるのかという部分で何度も議論を重ねたという。

本橋さん
本橋さん
一日の作業時間は長くて午前9時から午後8時までだったんですけど、それが丸二日理想状態の議論で消えました。あれは半分狂ってるんですけど(笑)

小山さん
小山さん
政策を考案するときはそれぞれの意見の良い部分を織り交ぜていくことができますが、理想の社会像はお互いが譲れない理想像を持っておりチームで一つのものを目指すとなった時にまとめるのが難しかったです。

青木さん
青木さん
あとは領域を絞ることにも苦戦しましたね。他のグループが早い段階でファッション業界とか食品ロスとか領域を決めて政策を考案していたのに対して、僕たちのグループはずっと大きい範囲で議論を進めてしまいました。

本橋さん
本橋さん
正直こうして時間をかけた割に闇雲なままで終わっちゃったなって思います。でも裏を返せばそれくらい意志の強い参加者が集まったということで、こうして意見がぶつかることこそが議論をしていく上での醍醐味だと思っています。

コンテストを終えて

本橋さん
本橋さん
このコンテストに携わっている方々は本当にすごい人ばかりでした。先程理想の社会像の議論に丸二日費やしたと話しましたが、僕は正直、環境問題に配慮さえできてればなんでもいいと思っていて(笑)でもチームのメンバーの理想の社会像に対する確固たる姿勢をみて僕もこうなりたいと思いましたし、こうして自分が尊敬できる部分を持った人たちがガチンコで議論をして政策を作り上げることが自分にいろいろな気付きを与えてくれました。

青木さん
青木さん
僕は環境省の方とお話したことがあるんですが、その方は50年後の社会といったときにデータ社会や5Gなどの発展した未来像を見据えられていました。それに対してチーム内では江戸時代的な資源の循環など環境問題に対して全く違う意見もあって、このような新しい視点に気付けたことは自分の中での変化だと思います。

小山さん
小山さん
私はコンテストに参加する前まで、環境問題が解決されることを最優先としていてそのためには人間が我慢を強いられることも厭わないと考えていたのですが、メンバーとの議論を通して人間も環境の一部として幸福を得た上で環境の保全が両立できていることがベストなんだなと気付きました。

河野さん
河野さん
私はコンテストに参加する前から、日本の四季をずっと後の世代にも楽しんでほしいと考えていて、環境問題を前にそれが不可能になるのでは危惧していました。でもこういう自分の環境意識に共感してもらえることがあまりなくて、私の考えがおかしいのかもしれないと不安を感じることがありました。
グループでの議論を通して、観点は違えど自分と同じように環境に対して問題意識を持つ人と話ができたことは自信にも繋がりましたし、これからもっと色んな議論に参加したいと思いました。

青木さん
青木さん
僕もこれから先もっと議論の場に参加したいです。議論する中で自分の考え方の傾向や得意不得意が浮かび上がったと実感したので、大学のゼミなどを活用して議論の場を増やし、話し合いの中で自分の弱味を補いつつ得意な部分は更に伸ばしていきたいと思います。

こうして聞くと、議論で意見を交換し時に衝突させることはお互いが相手に気付きを与えプラスに影響していることが窺える。

また、このコンテストが他の分野に関心を持つきっかけにもなったようだ。

青木さん
青木さん
僕は政策立案の過程で、環境意識が進んでいるフランスなど海外の政策も調べて個人的に興味を持ちました。今後海外の環境に関する事例であったり、現地の人々の意識がどのような形で定着していったのかをもっと学びたいです。

本橋さん
本橋さん
僕はコンテストの前から環境の中の消費者という立場に着目して、色々なことを学んできました。でもコンテストでは衣類や金属など自分が全く知らない分野が取り上げられていて、彼らがどういう問題意識を持っているのか知りたいと思いました。

さらに本橋さんは様々な分野に対する知識の幅を広げ、将来志望しているメディア関係の仕事に活かしたいと続ける。

本橋さん
本橋さん
官僚という目線から物事を考えて発信できるジャーナリストって多くないと思うんですよね。それに加えて、僕は問題提起で終わらずに解決策まで提案できるようになりたいです。

 

ジャーナリストという立場から問題や解決策を提示、発信したいと話す本橋さん。一方で小山さんは環境問題に対して全く別の視点からのアプローチを考えていた。

小山さん
小山さん
私は環境問題の解決に向けて、ただ現状の課題を人々に発信して取り組みを呼びかけるだけでなく、自発的に取り組むためのポジティブな要素があったほうがいいと思うんです。例えば宿題終わったらこれやっていいよという様な交換条件があると、ただやれと言われるよりもやる気が出ますよね。勿論研究して現状の問題を提起することはとても重要なことですが、私はそれよりも楽しいことを思いつくほうが得意なので、将来は人々が環境問題に楽しんで取り組むためのインセンティブを考案したいです。

「政策立案コンテスト」を振り返って

小山さん
小山さん
コンテストの参加者は、環境問題に限らず社会問題に真摯に向き合っている人ばかりでした。普段友達とこういう話を面と向かってすることはなかなかないので、熱く語り合える仲間がいることがすごく嬉しかったし、同じ時代を生きる人としてそういう人がいるのは心強いです。

本橋さん
本橋さん
このコンテストに参加している人は行動力や考えなど色々な面で本当にすごいやつばっかりなんですよ。そういう“すごいやつ”が集まって議論できる場所があるのはとても貴重なことです。そもそも「政策立案コンテスト」は珍しい場所であってはいけないし、もっと当たり前にこういう機会がなくてはいけないと思いますけどね。
議論で衝突して行き詰まってなんか上手くいかねえなと思いながらも、紆余曲折を経て一つの政策を立案する経験はこれからの社会で絶対に役に立つし、この議論を一つにまとめることは現代社会で一番足りていないことだと思います。だからもしチャンスがあればこの経験をしてみてほしいです。

 

編集後記
この度「学生のための政策立案コンテスト2021」の参加者とコンテストを主催する学生団体GEILの方々に取材させていただきました。一人一人が確固たる目標や信念を持ちながらもお互いの意見を尊重し合い、自分の考えを磨き上げていく姿勢に感服するばかりでした。人と交流することが憚られるご時世ですが、このような形で日本や社会、将来に対して真剣に向き合っている同世代の方とお話ができたことを光栄に思います。取材で「本来はこのコンテストが貴重な場であってはいけない」とお話していただきましたが、私自身も普段は母としかこういった話ができていないので深く共感しました(笑)。政策や社会問題に関して熱く語り合える場所が更に増えていってほしいし、自分自身がその「変化を起こす当事者」でありたいと思いました。取材に応じていただいた方々、ありがとうございました。 目崎

 

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