学生団体GEILが毎年夏に主催している「学生のための政策立案コンテスト」。オンライン開催となった今年のコンテストには全国から80名の大学生が参加し、テーマである「循環型社会」と向き合った。一体参加者はコンテストで何を見て何を感じたのか。そして大学生が政策立案をする意義とは何だろうか。
前編ではコンテストを主催される学生団体GEILのメンバーへの取材、後編ではコンテストの参加者への取材を紹介する。
学生団体GEIL
1998年設立。東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学・一橋大学などの関東の大学生を中心として構成される学生団体。毎年夏に「学生のための政策立案コンテスト」を開催するほか、一年を通して学生に政策立案を通して社会問題について理解し議論する場を提供している。
Twitter https://twitter.com/waavgeil?s=20
コンテスト概要
コンテストでは4人から構成される全20チームが9日間かけて政策を立案したのち、予選プレゼンテーションでスライドを用いて発表する。官僚や専門家による審査の下勝ち抜いた3チームが決勝プレゼンテーションで再び発表を行い、優勝したチームには賞金20万円が贈られる。
コンテストスケジュール
学生団体GEILに取材
まず「政策立案コンテスト」を主催するGEILのメンバーに、団体の理念やコンテストに対する想いをお話していただいた。
[お話を伺ったGEILメンバーの皆さん]
小川風香さん(上)、矢崎翼さん(左下)、小倉早恵さん(右下)
活動理念
僕たちGEILは「変化を起こす当事者たれ」というコンセプトを掲げて活動しています。ここでいう変化とは社会問題に対する変化に限らず、コンテスト参加者やGEILのメンバーのその後の人生や自分自身に対する変化のことも指しています。そしてその変化を受け身ではなく当事者として起こすということをこのコンセプトにこめています。
GEILメンバーとしてのやりがい
GEILの組織は代表を下に、「ケース局」「渉外局」「広報局」「学生対応局」「運営局」の5つの局から構成されている。
僕は各コンテストのミッションなど参加者さんに読んでもらうための資料作成を担当しています。知識ももちろんですが、文言ひとつで読み手の解釈も変わってくるので、参加者の方にどこに着眼してほしいかを考えながら資料を作成することにやりがいを感じます。
私は普段渉外局で活動しており、コンテストの運営に加えて、GEILの活動費を賄うために企業の方との交渉を行っています。企業の方に協賛していただくためにはGEILの魅力を伝える必要があるのですが、その過程で団体の理念や活動を振り返ったり自分自身と向き合い、新たに気付きを得ることができます。
私はGEILの広報活動を担当していて、主に集客のためにSNSの運営をしています。SNSで情報を発信するときには同世代が興味を持てる投稿を作ることを心がけており、そのために大学生がどこからどのような情報を得て行動に繋げるのかということを徹底的に考えたりするのですが、これがマーケティングっぽくて楽しかったです。あとはただ環境問題の実態を発信するのではなくて、例えばファッションや食を環境と絡めながら発信するなどの工夫をしています。このように、大学生をターゲットに投稿を作ることにもやりがいを感じています。
主に外部から参加者を集う「政策立案コンテスト」では、GEILのメンバーはCC(ケースチェッカー)とCS(ケアスタッフ)という形でそれぞれのチームに配属され参加者をサポートする。CCは主に論点の整理や知識面でのサポートによりチーム内の議論の活性化を図るファシリテーター、CSはチームビルディングや交流の促進といった役割を担う。
またGEILのメンバーは組織やコンテストの運営に加え、コンテストに向けて自身も政策立案や社会問題に携わっているという。具体的には研究者やNPOの方からのヒアリングを始め、GEILのメンバー限定の内部コンテストではチームに分かれてテーマを調査し、政策の模擬立案に取り組んでいる。「政策立案コンテスト」を支える身として、様々な準備を重ね、知識や理解を深めていることが窺える。
政策立案コンテストの意義
SNSではよく学生団体が政治への参加を呼びかけたり人権や環境問題を提起する内容の投稿をみかける。社会問題に対してこうした活動が存在する一方で、官僚や専門家の協力を得て大学生自身が政策を立案するというGEILの取り組みには斬新で特殊な印象を受けた。
実際にGEILで活動されているメンバーは「政策立案コンテスト」の意義をどのように考えているのか、お話ししていただいた。
「政策立案コンテスト」では社会問題に対する知識を深められます。私はGEIL内部のコンテストで政策を考案した時、その案が既に実際の政策になっていたことを何度か経験しました。実は私たち学生が立案した政策そのものは、実現が不可能だったり、既存の政策に自分のアイデアを加えただけのものになってしまうかもしれない。それでも政策や社会問題に対して幅広い知識を得られることはこのコンテストの意義だと思います。
私は「政策立案コンテスト」の意義を社会問題について真剣に議論できる仲間に出会えることだと考えています。社会問題について話す機会がなかなかなくても、ここでは100話せば120で返してくれるような仲間がたくさんできます。去年外部参加者としてコンテストに参加したのですが、その時知り合った人はコンテストの後にテーマの教育格差に関連したボランティアに参加していました。そういう話をコンテストで出会えた人とその後も共有できる点もコンテストの魅力だと思います。さらに、コンテストでは官僚の方と話す貴重な体験を得られます。「こういう人が日本のシステムをつくっているんだ」というリアルを味わえるのもコンテストの強みだと思いました。
コンテストでは社会問題や政策がどういう人に影響しているのかを調べる中で、今まで目を向けてこなかった人が被害を受けているという発見もあります。こうした社会のリアルな複雑さを実感しながら多角的に考える経験が学生のうちに得られるのはコンテストの意義だと思います。そしてこの経験を通して、自分の行動もまた思わぬ形で他人に影響していることに気付くことは、この先の社会や自分自身にとって大きな意味があると感じています。
後編では実際に「政策立案コンテスト2021」に参加した方からのコンテストでの経験や感想を紹介する。
後編はこちら→https://gakusei-kichi.com/?p=55719
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